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「ティアナ様に私が交際を申し込みたいと思っていることは、もちろんアイオライト公爵ご夫妻はご存じです。
ティアナ様は覚えていないでしょうが、幼い頃私達は城で会っているのですよ」
「城?それは家に来る前って事よね」
「えぇ。まずは私の生い立ちについて話をしましょうか。
国王はいえ当時はまだ王太子でしたが、地方へ視察に出かけたときに貧しい貴族の娘に一目惚れし一夜限りの時間を共にしました。その娘が母です。
母を城に連れて行こうと国王はしましたが、病弱な家族を置いていくことは出来ずに断りました。
その後人知れず私が生まれましたのです。
貧しい母の家を支えるために支援していた国王はそれを知り、再度母と私を城に迎えようとしましたが拒否。
結局母達が病で亡くなり、まだ幼かった私は城に連れてこられました。
別に嫌がらせに遭ったわけではありませんが、私の存在はあまりよく思われてはいなかった。
そんな中で過ごしていて、城に来ていたアイオライト公爵に抱きかかえられたまだ一歳だったティアナ様と出会った瞬間、思い出したのです、自分が何者かを」
優しげに話すハーディス。
ハーディスの両親の話は父親から両親がいないので引き取ったと聞いていた。
だがまさかそんな話があったとは。
「ん、ちょっと待って。
転生じゃ無いって言ったわよね、でも思い出したって事は私と同じ状態でしょ?」
「いえ違います。
私という入れ物に鍵が刺さって本来の姿になったというか。
理想であれば貴方の鍵穴の鍵に私はなりたかった」
何それよくわからないと言うと、その前に通じていないですね私の話、と悲しげに言われた。
いやわかっている多分良くない話だ。
段々朝からの事が再度脳内に押し寄せて思わず頭を抱える。
「ティアナ様?!」
何だか色々ありすぎて頭痛がしてきているが、全て今はっきりさせたいと思う気持ちと疲れに頭が動かない。
気がつくと大きな腕が私を抱き上げていた。
「もう寝ましょう」
「だけど」
ベッドに優しく寝かされ、布団を掛けられる。
自分を包み込むように沈むベッドで、気を抜くとあっという間に眠ってしまいそうだ。
「私は貴女の側にいるためにいるのです。
消えたりはしません。
まずはゆっくり寝て下さい」
優しく髪を撫でられ、心地良い低い声が私を眠りへと誘う。
「約束よ」
そう声を出すのが精一杯で、閉じそうな私の目には今日一番優しそうなハーディスの顔が見えた気がした。