15
「嬉しいね。
小さい頃は女の子と思われていたけれど、僕もようやく男として認めてもらえたかな」
「もうディオンったら」
こうやって私を和ませてくれるのはディオンの優しさだ。
「それで、だ。実はもう一人交際を申し込みたいという者がいてだね」
言いにくそうに父が切り出して皆驚いた顔を向ける。
「それは誰ですか?」
カールが眉間に皺を寄せて言うが、ディオンも初耳だったらしく困惑しているようだし何より私だって驚いている。
「それがまだ言えないんだ」
「どういうことなの?私にも言えないの?」
「本人の希望でね。時が来ればきちんと申し込むと言ってるんだよ」
「ティアナ嬢も知らないのですか?」
カールの疑問に私は頷く。
「その彼は後からでも自分には勝ち目があると見ているのでしょうか。
そうでなければアイオライト公爵がその彼に肩入れしていると思わざるを得ないのですが」
ディオンが鋭く疑問をぶつけ、父もどう答えるべきか悩んでいるらしい。
「よろしいではありませんか」
緊張したような居心地の悪い部屋の空気を破ったのはまさかのハーディス。
にこにこと明るい声で皆を見渡している。
「その方が後からでも良いというのでしたら、お二人は早々にティアナ様を落とせば良いだけ。
何を心配することがありますでしょう」
にこにこと笑っている。
これが胡散臭いことくらいディオンとカールもわかっているので、二人はハーディスに鋭い視線を向けた。
「君は三人目の彼を知っているのかな」
「私からは何も申し上げられません、カール様」
「ハーディスがその三人目の味方についているって事は無い?
僕たちの知らないうちにティアナと逢い引きのセッティングでもされたら困るな」
「ご安心下さい。
私が誰かを勝手にティアナ様と会わせるようなことはございません」
笑顔だ。
ディオンのいつになく不信感を持った目にも動じない。
ただ父だけは珍しくオロオロとしているように見える。
私には甘いからそうなるのかもしれないけれど、父だけ知って私には知らされないなんて何故なのだろう。