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「今日はまた一段と可愛いね。」
「ありがとう。ディオンも着替えてきてくれたのね、そのスーツ似合っているわ」
「今日のために仕立てたんだよ」
無邪気な笑顔に癒やされるようだ。
遠慮してか、少し後ろを歩くカールにも声をかける。
「今日は正装でいらしたんですね。とても格好いいです」
微笑みかけると明らかに戸惑ったような顔をしたが、軽く咳払いしてありがとうございますと目を合わせずに言った。
うわ、遙に年上なのに何だろう、凄く可愛いですこの人。
「私にお言葉は無いのですか?」
笑顔で何故かハーディスが割り込んできた。
「いつもの執事服じゃない」
「実はおろしたてです」
「そう」
胸をはられて言われたけれど、どこも違いがわからない。
横でディオンが身体を丸めて笑うのを堪えているのでムッとして脇腹を突っつけば、堪えていた笑い声が漏れた。
「ふふ、やっぱりディオンは脇腹が弱い」
「もう君は16歳なんだよ、そういうのは僕以外にしちゃ駄目だからね」
「わかってるって」
「お二人は本当に仲がよろしいですね」
カールの平坦な声に、私は慌ててしまう。
「子供っぽくてごめんなさい」
「いえその、少し羨ましい、と思っただけで」
あー、こういう照れたような言い方良いわ。
隣でもの凄く笑みを浮かべるハーディスは何だか面倒なので無視することにした。
客間でローテーブルを囲み、両親は二人用の椅子、ディオンとカールは一人用の椅子にゆったりと座って、軽食をまずは食べつつ談笑となった。
私も一人用の椅子に座っているが、斜め後ろにはいつも通りハーディスが控えている。
「さて、こうやって二人が集まったのは以前から話していたとおり。
ティアナの16歳の誕生日に正式に交際を申し込みたいという二人が揃ったわけだが」
父の言葉に自分の斜め向こうに並んで座っているディオンとカールの目がこちらにむいて、どういう顔をして良いのかわからない。
なんせ今の私には急な話に思えてしまうから。
「どうした、二人が名乗り出ることはわかっていただろう?」
「その、こう正式にとなるととても恥ずかしく」
何を今更と呆れた顔の父に言われ俯いてしまう。