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吹き抜けの広いホール、透明なガラスがふんだんに使われたシャンデリアがキラキラと照らす。
白い壁に大きな窓が続き、窓の外には大きなバルコニーがある。
ホールの奥では弦楽器と管楽器による生演奏が流れ、出席者は美しいドレス姿や燕尾服でワインを片手に談笑していた。
「おめでとう、ティアナ。とても美しいよ」
「ありがとうございます、ヘリオドール公爵、奥様」
私はハーディスに徹底的にドレスアップされた。
胸元は広く開いていて、そのデコルテには両親からから誕生祝いとして贈られた大きな青の宝石がはめられた金のネックレス。
ドレスも可愛い令嬢が着るようなフリルたっぷりの物では無く、薄いピンク色のシンプルなラインのロングドレスだが、細部に金の刺繍がされていて非常に上品だ。
髪はもちろんハーディスが手際よくアップにしてくれ、パールの髪飾りが焦げ茶色の髪に映えている。
「息子は遅くなりそうだが必ず来ると言っていた。
君に会えるのを心待ちにしていたからね」
「私も久しぶりに会えるのを楽しみにしております」
目の前にいるのはディオンの両親でアイオライト家の親戚でもあるヘリオドール公爵夫妻。
穏やかな公爵と、美しい奥様。
ディオンは母親似で、幼い頃ディオンはその辺の女の子より、そして私なんかよりも美しかった。
初めて会ったときは女の子と思っていたくらいだ。
「とうとう娘も16歳、そろそろ相手を決めて貰わねばと思っているのだが」
私の横立つ父親が困ったように笑う。
「アイオライト家のお嬢様には素晴らしい男達が言い寄っているから手が出せない、ともっぱらの噂だからね」
「どう言うことですか?」
ヘリオドール公爵が楽しそうに言うので私は驚いてしまう。
父親は知っているのか誇らしそうな顔で話し出す。
「ヘリオドール公爵の長男であるディオン、そして王太子の側近であり武勇で名高いツァボライト侯爵のカール、そんな二人がお前に交際をずっと申し込んでいるのだ、他の者達が諦めるのも無理は無い」