Feed The Wolf_1
「ファラ、コイツを持っておけ。」
「え? ちょっと、それじゃぁアンタ剣だけじゃない。盾はどうするのよ。」
次の日の朝10時、俺達はギルドの門前でメノさんと合流。
挨拶を済ませたかと思うと、メノさんは早々に腰に掛けていた2本の短剣のうち、その1本と、背中に背負っていた盾をファラに渡した。
「必要ない。盾で防ぐ余裕があるなら俺は避ける。」
なにそれ、カッコよ……。
「あっそ。ありがと。でもお礼は言わないわよ。」
いや言ってるじゃんかよ、馬鹿じゃねーのかコイツ。
アホが露呈するからもう喋んなよ。
そしてメノさんは、当然と言えば当然、俺には特に何も持たせてくれなかった。
「シーヴ、おまえは武器を持っていても何の役にも立たないと思っている。」
グサッ……。
「特にあの樹海ではな。」
「……。」
ということらしい。
いやわかるんだけどさ、ダイレクトアタックは流石にキツい。
俺…めちゃくちゃハートブレイクオブザイヤー……。
そして準備も済んだところで、早速ダバに乗って出発。
が――
「お! ウマモン! おーーーい!」
「うっさいわね! ウッキーーーー!!」
「……。」
ー ははははははははははっ!!!! ー
「おいシーヴ……。なんだこれは……。」
「はぁ…見ての、通りです……。」
俺達に、逃げ場など無かった。
地獄の業火のように降りかかる笑い声に抗う術などない。
ダバは見せしめのように逞しく優雅にその嘲笑の中をのっしのっしとゆっくり闊歩していく。
大事な任務でなければ今すぐ逃げ出しているところだろうが――
「あれ!? 嘘……。ウマモンの隣にいるのって…厨二師匠じゃね!?」
『ほんとだ! リザー道の厨二師匠だ! おーいおーい!!』
「メノさん…多分呼ばれてますけど……。」
「い、いや、いい……。む、む、無視だ、無視……。」
「おーい! 厨二師匠! あれやってくれよぅアレーっ!!」
そういうとギャラリーの一人が決め顔で右腕の握りこぶしをグンッと力強く前へ突き出した。
「――これで対等だ……。くぅううう! カッケェーーーー!!」
「ブッハァァアアア……!!」
メノさんは情けなく鼻水を吹き出しプルプルと震えながら背中を丸めて蹲った。
ほんとうに、末恐ろしい街だ……。
「おい、よくみろ! あの哀れな不幸顔のマヌケ面――」
「はっ……。」
「アイツ! カーズマンだ!!」
「ひっ!!!」
「あぁほんとだカーズマンだーーー! ヒト喰いボーラに掘られたカーズマンだぞっ!!
うっはっはっは! キメーーーー!!」
「ちがーーーう!! 俺は掘られてない! 掘られてないからぁぁあああ!!」
「可哀そうにっ! よく堂々と生きてられるもんだぜ! 俺なら首吊って死んでるわっ!!」
「おーーーい! テメー顔覚えたからなーーー!
後でぶっころーーーーす!! オボエテヤガレチクショーーーーー!!」
ー あはははははははははは!!!!! ー
嗚呼、地獄。
ここは嗚呼、地獄なり。
彼らは獄卒。
俺達は、そう亡者だ。
ねぇ神様、俺達が何をしたの?
んーん、いいの解ってる。
この世界に神なんていないよ――でもいいの、ありがとう。
この世界を作ったアンタ、ありがとう。
そして潔く地獄に落ちやがれぇええええ!!!
「じゃーなー! ズッコケさんにんぐみーーー!!」
ー ははははははははははっ!!!! ー
「…………。」




