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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 3章 エンバー
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Lyla_5

 ギルドへ戻り、受付のヒトに事情を話すと、さっそくウタさんを呼んで来てくれた。

ファラには休憩室でライラの御守りを任せたが…正直かなり心配である。

またウマモンとバカにされるのを皮切りに腕相撲大会でも始めていたらどうしよう。


「ふむ。事情はよく解った、報告ご苦労だったな。

 状況がやや複雑だが、まずはその子の母親の安否確認が最優先か。

 ちょうど腕利きのハンターが街に来ている。明日の朝、樹海へ向かわせるとしよう。

 街での捜索と母親の調査は今からでも手の空いてる者に任せるとして、キミたちの仕事はここまでだ。」


 え……。

ここまでって――


「初任務から大変だったろう、今日はゆっくり休んでくれ。

 それと仕事料は用意しておくが、ちょっと今は立て込んでてな。

 面倒を掛けるが、また明日にでも来てもらえるかな。」


「はい。えと……、あの子…ライラはどうなるのでしょうか。」


「あぁ、その辺りのことは心配いらない。

 迷子はよくあるのでな、ギルドでは児童の預かりもしている。

 仮に親が帰らないとしても、孤児院との連携だったり里親に預けることもあるから、居場所がなくなることはまずない。」


「そうですか……。ハンターの方、明日の朝に樹海へ向かうんですよね?

 その……。俺たちも連れて行って貰えませんか?もちろん報酬はいりませんから。」


 突然沈黙が訪れ、受付越しの椅子にもたれ掛って腕を組んでいたウタさんの顔色が曇る。

目を一層細め、眉間にしわが寄り、今にも怒りそうだ。

しまった、そう思った。


「――それは彼次第だが、もちろん私としては断じて肯定出来ない相談だよ。

 ハッキリ言うと、絶対にキミたちは足手まといになる。最悪全滅もあり得る。

 樹海内部はそういう場所だ。こちらとしても貴重なハンターを無策に失うのはあまりに手痛い。

 そういう訳だ。すまないが解ってもらえるかな。」


「そう、ですよね。……。すみません。」


 すべて真実だ。人命優先を考えれば当然のこと、わかっている。

そして自分の発言が如何に愚かで身勝手なものか、改めて痛感する。

けど何か――何か出来ることはないだろうか……。


「かまわないぞ。」 


 突然低い声が割り込む。

聞き覚えのある声。

振り返ると、その主はリザードのメノさんだった。


「メノ、聞いてたか……。よく解っているだろうが、彼らと樹海へ同行するのは愚行だ。

 どんな事情があるにせよ、それは変わらん。明日はお前一人で行け。」


「え。」


 メノさんがギルドハンターだったこと。

腕利きのハンターというのがメノさんだったこと。

ふたつの驚きが同時にやってきた。

そして何故かメノさんは右腕を辛そうに押さえている。

  

「オレはかまわないと言っている。シーヴの事は知っているし、ファラもいるのだろう?

 それにシーヴ自身も、自らの発言の重さを理解している筈だ。

 それでなお望むなら、そこまでの想いがあるなら、オレは動向を拒否しない。

 だがオレは助けない。飽くまで構わない、そういうことだ。まだ何かあるか?」


「ちっ……。あぁもう好きにしろー。」


 はぁ、と小さくため息をつくウタさん。

屁理屈ともとれるメノさんのお粗末な擁護に頭を抱えながら面倒くさそうに答える。


「まったく、ここの連中は聞かん坊ばかりで禿げそうだよ。」


よくある事なのだろうか、無理を言ってしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになるが…どうか、ウタさんが禿げませんように……。


「ダバはまた用意しておく。明日の朝、勝手に出発してくれ。

 それと迷子はひとまずイスタに任せていくと良い。

 メノ、託児所は解るよな? その辺の事は頼んだぞ。

 私はちょっと胃薬を飲んでくるよ……。あぁ、あとこれ。」


 そう言ってウタさんが何かを投げた。

メノさんが上手くキャッチしたソレは、俺達が掛けそこなった最後の木札だった。


「逆らった罰としてソイツを行く途中に掛けてこい、反逆者ども。」


肩を落としたウタさんの小さな背中が哀愁を放ち、部屋の奥へトボトボと消えていく。


「そうか。…………。あー…ウタ……。その…、悪かった、な……。」


 疲れ切ったウタさんの様子を見て、動揺するメノさん。

ヒトを傷つけるのには慣れていないらしい。

けれどメノさんの謝罪にウタさんは振り返らず、後ろ手で小さく右手を振っていた。

ウタさん、メノさん、本当にごめんなさい。 

かくして、ギルドの先輩たちの心を思わぬ形で擦り減らし、明日の朝、再びアニーク樹海へ向かうこととなった。


「ところでメノさん、右腕どうしたんです? 昨日は何ともなかったと思いましたけど。」


「ん、あぁ、ちょっとな。気にするほどのモノでもない。それより、明日はよろしく頼む。」


 明日の朝、メノさんとここで落ち合う約束をした。

ライラを連れて、今日はボーラさんの家に戻ろうと思ったが、先ほどのウタさんの話では、ギルドの託児所にイスタさんという子守のエキスパートがいるというので、ライラはそのヒトに託して帰ることになった。


 ともあれ、ひとまず2人を迎えにいく。

休憩室を覗くとライラが楽しそうにはしゃいでいる、何をそんなに面白がっているのだろうと不思議に思ったが――


「うぉぉおおお!! やるじゃねぇかウマモン!!!」


「へっへっへ~! おととい来やがれってねっ!」


「どれ! 次はこの俺、ゴルゴンゾーラベビーホライゾン様が相手だ!!!」


「いいわよ? いくらでも相手になるわ!! かかってきなさいヘナチンどもっ!!」


 ファラが、他のハンターたちと、腕相撲大会を、繰り広げていた。

あー。メノさん……。腕相撲大会、してたんだなーこれ……。

虫がいたら、ファラが食っても大丈夫な見た目か考えてる。

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