anthem_8
「おーい! こっちに銀闘券くれ!」
「はいよまいど! 20000レラね! あ、今回もゴライアスに掛けるのは禁止だからねー!」
「へへ! わかってるよー!」
「あの……。一枚下さい。」
「はいよ! 1000レラね! 兄ちゃん観戦目当てかい?」
「あ、はい……。どうも。」
よかった、買えた……。
いくつかある窓口は全てチケット購入客でごった返していた。
どうやら闘券は一枚1000レラの観戦用も販売しているようで、俺のような観戦目当てのヒトもいるらしい。
まぁ俺は本当に金がないだけだけど……。
掛け用の闘券は金、銀、銅の三種類。
それぞれ50000、20000、10000レラから購入できる。
そして「ゴライアス」という戦士には掛けられないらしい。
なにか特別な存在のようだが、恐らく雇われの優勝候補とかだろう。
観戦用のチケットには無いが、闘券はその部の優勝者を予想し記入するというシンプルなシステムらしい。
隣に選手名簿と記入台が幾つもあり、そちらも凄まじいヒトだかりだった。
ファラのファイターネームが気にはなったが、なかなかどうしてこのヒトだかりでは確認するのも難しそうだ……。
それとこのシステム、普通に不正が横行しそうだがその辺はどうなっているのだろうか?
そんな疑問を抱きつつ、俺は闘券を握りしめ観戦席へと向かう。
十数個はある入り口は全て長蛇の列を成し、それぞれゴリゴリで犬面の係員たちが念入りにボディーチェックと闘券の確認をしている。
「おい貴様! その股間の破廉恥な膨らみはなんだ!!」
ん? なんだなんだ?
「コイツ! 万年筆をこんなところに隠してるぞ!」
「ひぃいいいい! すんません! ゆるしてぇええええ!!」
「覚悟しろよぉ? たぁ~っぷり、ねちねち…苛めてやるから…な……?」
ふっ……。やっべぇな。
時折悲鳴と共にどこかへ連行されるヒトがいるが、もしかして不正がばれるとあーなるのだろうか……。
俺はまた何か問題が起こるんじゃないかとソワソワしたが、特に何事もなく無事入場することができた。
はぁ、よかった。
間もなく試合が始まる。
ファラ――もうこの際、試合の結果はどうでもいい。
どうか無事でいてくれよ……。
俺は手ごろな席を見つけ、そこにジッと座って始まりの時までファラの無事を祈っていた。
ついにゴング鳴り響き、熱い戦いが、始まる。




