You Are All I Have_6
「今度はダバデートですか……。く、女心を解ってますね、あのヒト。」
「えぇ、懐かしいわ……。昔ヒロシとあぁしてダバに乗って熱いベロチューしたのを思い出す……。」
やめろやめろ。
ウットリとした表情で開幕いらん回想持ち込むなブラバされんだろが。
ダバに乗って優雅にケズバロンの街を観光。
それはここケズバロンで、カップルから大人気のアクティビティの一種らしく、今も建物の陰からこそこそと見守る2人から無駄に高評価を得ていた。
ダバの上で堂々としているホロさんに対して、珍しくファラは少し恥ずかしそうに俯いて、困ったようにソワソワしながら縮こまっている。
流石に大勢のヒトにデートをしているところを見られるのは恥ずかしいのだろう。
その辺りはやっぱり女の子かもな。
うんうんと一人頷きながらそう思っていた、しかし――
「あー! ウマモンだーーーーー!!」
ん?
「お! ズッコケのモンチッチ!!」
「ははははははっ! ズコモン!!」
お?
「おーい! ズッコケぇ!! 残りの2人はどーしたー? 解散しちまったのかー?」
「ズーッコズッコズッコズッコズコッ!!」
ー はははははははははははははっ! ー
おいおいなんのイジメだこれ。
しかし、なるほど。縮こまってたのは、こういう事か。
アイツ本当に可哀想だな、今日……。
ダバの周りに湧きに湧いたNPC共。
見ればファラは顔を真っ赤にしてリスのように頬を膨らませ、目に涙を浮かべてプルプルと震えていた。
ホロさんはと言えば、何故か嬉しそうに笑いながら、その罵声に両手を大きく手を振って応えている。
「ふふ、ファラさん。
どうやら街のヒト達も僕たちの愛の門出を祝福してくれているみたいですれらねっ!!」
「違うわよーー! アイツらアタシを見て笑ってんのっ!!
なにがズッコズコよ! もうイヤーーー!!
ふぅえぇぇえええんっ!! おろしてよぉぉおおおおぉぉ!!」
遂に再び大声でビャービャーと泣き始めた。
けれどそれを見た大衆の笑い声は一層大きくなるばかり……。
可哀想に――こんなに可哀想なズコモンこれまで見た事ねぇぞ……。
どこまで哀れなんだズコモン……。
「ははっ、照れてるファラさんも可愛いれらぁ!
そぉれらっ! 皆さ~ん! お祝い、ありがれらぁぁあ~~~!!
これは僕からのお礼れらーーーーっ!!」
して、何を血迷ったのか――突然ホロさんは持っていたアタッシュケースをパカッと開き、そこから何か紙のようなものをバッサバッサと宙へ撒き始めた。
それらはヒラヒラと舞う様に、大声で笑いながら集まって来た大衆へ降り注ぐ。
てあれ、え?――お金じゃねーか……?
「そぉ~れらっ! そぉ~れらっ! そぉ~れらぁ~!! ははははははっ!!」
風に舞い、2人を乗せたダバを中心に、過激に振り回したスノードームの如く降り注ぐ札束の雨。
その瞬間、指をさして大声で笑っていたヒトビトの目の色がギラリと変わった。
「おいっ! あのヒト! ゴールドマンさんだっ!」
「うぉぉおおおおおおお!! 金だーーーー! 金だぞーーーっ!!」
「あぁ神よ! これでうちの子に、美味しいモノを食べさせてあげられる――うぅっ!」
「どけっ! 俺のだ糞ガキッ! へへっ!!」
「ぅわ~ん僕の1000レラ取ったぁ~!」
「んだてめぇ! コイツは俺が拾ったんだよ!!」
「あぁん!? 俺が先に目付けたんだよこの野郎っ!!」
「ははははははっ! ははははははっ! ありがれらーー!! みんな! ありがれらーー!!」
涙を流して札束を握りしめる者。
子供を突き飛ばし金を奪い取る者。
ついにあちこちで血みどろの殴り合いが始まった。
ー レラ……レラ……レラだ……レラ……レラだ……レラだ…… ー
目の血走った大衆は金の亡者となり、辺りは一瞬で戦場と化し、高笑いしながら札束を空へばら撒くホロさんはまるで運命を弄ぶ悪魔のようだった。
というかあのヒトさっきの100万レラと言い、実は物凄い金持ちなんじゃないか……?
「って、あれ……?」
ふと気が付くと、今の今まで建物の陰から見守っていたはずの2人が居なくなっていた。
「おいコラてめぇ!! 何してやがるぅぅううう!!」
ん?
「うわぁあああ! ヒッ! ヒト喰いボーラだぁっ!!」
「オラァァアアアア!! ここら一帯のはオレ達のだぁぁああああ!!
盗ったらボコボコにブチのめして掘るぞコラァ!!!」
……。
「ボーラさん見てください!! 沢山集まりましたよっ!!」
「おっ! よくやったなシルフィ! へへへっ!! これで俺達は! 大金持ちだっ!!!」
ダメだこりゃ。




