プロローグ ー 10,000Miles ー
「んで、それが超絶くさくってよぉ~。」
「な~るほどですね~。さて、よくわかりませんが、そろそろ上映のお時間が近づいてまいりました。それではピルバーグ監督、この歴史的超大作『てんさま』について、最後になにか一言お願いします。」
「てんさまは風呂敷広げなければ、大体4部構成の予定でね、実は第1部の終わりまではストックがもう有るんだよ。」
「4部構成ですか。そういえば、これまでの監督の作品はすべてショート仕立てで簡潔なものでしたね?」
「だな!!」
「ですね。」
「だな!!」
「……。えーと、ストックがあるという第1部の見どころはどこでしょうか。」
「1部は終章が神!! そのあとも面白いよ!!」
「はぁ、具体的には……。」
「ひみつーッ!!」
「はぁ。あ、もういいです。時間の無駄なので。」
「ひど!!」
――シェイクス・ピルバーグ監督のインタビューより。
この世界へ放り出された時、記憶も名前も空っぽだった。
時々脳裏に浮かび上がる記憶を求めて彷徨って、空っぽのまま旅をする。
お世話になった村を出る時、共に行く仲間が出来て。
まだ旅の途中、大勢のヒトビトの悩みに触れて、悩んだり、助けたり、助けられたり、助けられなかったり。
まだ旅の途中、何かできたり、何も出来なかったり。
まだ旅の途中、後悔も過ちも、二度と取り戻せない幸せな日々もある。
まだ旅の途中、思い起こせば、たらればだらけの人生だった。
けれど別れより、出会いの方が多かったのは、とても幸せなことだろう。
空っぽのまま旅をしてたら、生きる理由ができた。
生きる理由が、生きがいになった。
生きがいが、人生になった。
そして人生は、新たな旅人の道しるべとなった。
空っぽを埋めた、旅の途中。
けれどまだ、旅の途中なんだ。
さて、次はどこへ行こうか。
キミも一緒に来るかい。
それならキミの空っぽを、何か意味のあるものにしなくちゃな。
ようこそ、このどうしようもなく、くだらない世界へ。
***
――皆さん、どうも初めまして。
名乗るほどの者でもありませんが、これでも名乗るだけの名前は一応ありまして「シーヴ」と申します。
実は先日の一件の後、ハルさんとピルバーグに頼まれたこともあり、このたび俺の細やかで壮絶な旅の思い出たちを文字に起こすことになりました。
なんでも今度シリーズ映画化するんだとかなんとかって話です。
たしか「10,000Miles」なんて、大層なタイトルのやつ。
ハルさんもピルバーグも「これもう歴史的大ヒット間違いねぇ!」とそれはもう嬉しそうに話していましたが、この星の地獄を肌で感じ、直に味わってきた俺に言わせれば、クソも同然です。
そう、クソも同然なんですよ。
このハチャメチャな世界で幾度となく死に、死にかけ、様々なヒトビトと出会い、多くの想いに触れて、泣いて笑った俺の旅の日々は――。
今でもあの目まぐるしい日々を思い出すだけで、ドッとため息が――いや、吐き気がしてきますね。
あぁけど、みんなで野球した時、あれはまあ、ドタバタのハチャメチャで結構楽しかったかな、なんて。
まぁ、それはともかく。
始まりから終わりまで、これはただの個人的な日記、大袈裟に言えば「伝記」ということになるのかもしれないです。
思い出しながら、色んなヒトから話を聞きながらの拙い文章になるから、正直、当時の事を上手く伝えられるかは解りません。
けれどどうか、最後までお付き合い頂ければと思います。
そしてどうか、俺が出会ったヒトビトの想いが、これを読んだアナタの生きる糧となりますように。
なんちゃって――。
「キャーーッ!! しー君助けてーー!!」
あ、ファラのヤツがまたなんかやらかしたみたいなので、ちょっと行ってきます。
――それでは、また後で。
ちょっと! 一話から凄い大火事!! 本当に大丈夫?!?
燃え盛る強大な火の手を前に足の竦んでしまったヨシネン。
怖気づいたその時、ヨシネンは死んだお爺ちゃんの言葉を思い出す。
そしてついにヨシネンは雄たけびを上げて、業火の中へ飛び込んでいっちゃったっ!!
頑張って!! ヨシネン!! きっと上手くいくわ!!
次回!! ヒケコイ2話!!
「ヨシネン、初めての火消しに大大大失敗!!」
お楽しみに!!