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最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい  作者: アイイロモンペ
第5章 渡りに船と言いますが…
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第90話 余計なことを言う人がいました 

「ハハハ、もっとも、その作戦も実行できるは分らんがな…。」


 口を開いたのは、苦々しい顔をしたレティーシェ提督でした。

 その自嘲的な口ぶりの発言にニルソン提督が返します。


「それはいったいどういうことだ?」


「おい、お前ら。

 ここにいる女は虫も殺せないような顔をしてるが、とんだ玉だぞ。

 俺は百隻からの艦隊を率いていたんだぞ、その旗艦が逸れたら捜索するに決まっているだろうが。

 幾ら海が広いと言ってもアクデニス海と大洋を結ぶ海峡は一番狭いところなら十マイルもないんだ。

 そこで、捜索隊を分散配置していれば見つからない訳がないだろう。僚艦が俺の旗艦に気付かない訳がない。

 それなのに、なんで、この女は無事にここに辿り着けたんだ。

 普通おかしいと思うだろが。」


 あっ、こいつ、余計なことを…。

 レティーシェ提督の言葉に周囲の注目が私に集まりました。

 これは、誤魔化し切るのは難しいようです。


「レディー、あなたはセルベチアのアクデニス海艦隊とは遭遇しなかったのですか。

 いえ、アクデニス海艦隊の捜索隊の目をどうやって掻い潜ったのですか。」


 ニルソン提督が私に尋ねました。

 ハァッ…。これまでですか。

 私は、ため息をつきながらも、最後のカードを晒すことにしました。


「アクデニス海艦隊、あれ、沈めちゃいました…てへっ…。」


 年頃の女の子らしく可愛く言ったつもりなのですけど…。


「「「はあぁ?」」」


 レティーシェ提督まで加わって疑問の声を上げました。

 さすがに、沈めてしまったと返されるとは考えていなかったようです。


「レディー、沈めてしまったというどういう意味でしょうか?

 もう少し具体的に説明をお願いできますか?」


 可愛らしく言っても、追及を躱すことはできなかったようです。

 私はどうやったかの方法は語らず、結果だけを伝えることにしました。


「ごめんなさい。

 ちゃんと数えていなかったのですが、セルベチアの方に引き返した船は八隻でした。

 十隻ほど航行不能で取り残されていたので、八十隻くらいが沈没したと思います。」


「なぜ、十隻が航行不能だと思ったのですか?

 レディーは素人ですよね。」


「はい、その十隻から次々に人が引き返した八隻に乗り移ったのです。

 少なくとも、十隻の甲板には一人も残っていませんでした。。

 見た目にすごく壊れていたので、航行不能になったから退避したのだと思ったのですが。」


「ふむ。素人判断とは言え、あながち間違いとは言えないようですね。

 そうすると、アクデニス海艦隊は九十隻以上の艦艇を失った訳ですか。

 壊滅状態ですね。」


 ニルソン提督はセルベチア海軍の戦力がどの程度削がれたかが一番の関心事項の様で、結果についての評価を口にしました。

 このまま、肝心なことをスルーしてもらえれば嬉しいのですが…。

 

「お前ら、何を納得しているんだ。

 おかしいと思わないのか、百隻からの艦隊を壊滅させたと言っているんだぞ、この女。

 この女が乗ってきた船は、大砲の一門も積んでいない貨客船なんだぞ。

 どうやって、軍艦を沈めたって言うんだ。

 しかも、海上全体を俯瞰したように言いやがる。

 おい、ニルソン、お前も提督なら、海戦の損害状況を即座に把握することがどんなに難しいか分かっているだろが。」


 あっ、またこいつ余計なことを…。

 『聞かれたこと以外はしゃべるな。』と命令しておくべきでした。



「レディー、レディーのおっしゃることはいささか突飛すぎて信じて良いモノか判断に苦しむのですが…。

 艦隊を壊滅させたというのであれば、どの様な方法を取られたのか教えて頂けますか。」


 ニルソン提督が私にもっともなことを尋ねてきました。

 本当は最初に聞かれると思っていたのですよね。

 「黙秘します」というユーモアは使えそうな雰囲気ではありません。


「この年頃の女の子は秘密が多いモノなのです。てへっ」


「レディー…。」


 ニルソン提督が私をジト目で見ています、外してしまったようです。

 仕方ないですね。


「どの様にして艦隊を壊滅させたかは秘密です。

 あまり手の内を晒す訳には参りませんので。

 アクデニス海艦隊の状況についてはそちらの諜報関係の方に調べさせたら良いと思います。

 すぐに私の言葉に嘘偽りが無いことがわかるはずです。

 その代わりに、ひとつ面白い話を致しましょう。

 ちょうど1年ほど前、セルベチア陸軍がアルム山脈を越えてロマリア半島に侵攻しよう計画していたのはご存知ありませんか。

 約四万の兵を率いてセルベチア皇帝自ら出馬していたのですが。」


「貴様、なぜそれを知っている?」


 声を上げたのはレティーシェ提督の方でした。

 ミリアム首相はご存じない様子ですが、軍関係のニルソン提督の耳には届いていたようです。


「そのような話は我が国の諜報機関からは聞いていませんが。

 それが、今回の話とどう関係があるのです?」


「その作戦は、決行寸前まで来ていたのです。

 作戦決行のまさにその前夜、作戦決行が不可能になって急遽中止になったのです。」


「ええ、閣下、実は我が国の諜報機関はその作戦を掴んでいたのですが、原因不明の中止になりまして。

 幾ら調査しても中止となった原因が掴めなかったものですから、閣下まで報告が行っていないのだと思います。

 しかし、あの計画をなぜレディーがご存じなので?

 あの作戦は密かに準備され、中止となったので一般人の知る所ではないはずですが。」


 ミリアム首相に対しニルソン提督が実際その作戦がセルベチアで計画されていたことを明かして、私に問い掛けてきました。


「作戦が中止となった理由は、作戦決行の前夜に補給物資が全て焼失してしまったからです。

 特に半年かけてかき集めた火薬を全て焼失したのは打撃だったようですよ。」


「貴様、何でそれを知っているのだ。

 それは我が軍でも上層部しか知らないことじゃないか。」


 今度は良い具合にレティーシェ提督が口を挟んでくれました。

 レティーシェ提督の驚愕した表情が話の真実味を強めてくれました。


「ほう、そのことも後でゆっくりと尋問することにしよう。

 どうやら、レディーの話は本当のようですな。

 しかし、我が国の諜報機関でも調査できなかったこと、セルベチアの軍人ですら限られた者しか知らされていないこと。

 それをなぜレディーがご存じなのですか。

 それと、それが今回のこととをどう関係しているのでしょうか。」


 ニルソン提督は私の言葉が事実だと信じたようですが、逆に謎が深まったようです。


「簡単なことです、補給物資を焼いたのは私ですから。

 私一人で、セルベチア陸軍四万人分の補給物資を全て焼き払って作戦決行を不可能にしたのです。

 今回の事とは直接関係はありませんが、今回私がどのような手段を取ったかを教えすることは出来ません。

 ですから、私がそれだけのことを出来る力を持っているということで、納得して頂ければと思いまして。」


「何を馬鹿なことを言う、補給物資は何ヶ所にも分散しておいてあるのだぞ、それを一人で焼ける訳がなかろうが。

 移動するだけでも一晩かかってしまうわ。」


「そうですか?火をつけるだけなら二時間ほどで終わりましたけど。

 全てが燃え尽きるのを確認して帰ってきたので、家に帰ったらもう夜明け前でしたけど。」


「うん?

 レディー、火をつけてから家に帰って来たと言いましたか?

 レディーはどこにお住まいで?」


 あら、ミリアム首相はずいぶんと細かいことを気にするのですね。

 どうでもいい話だと思うのですが…。


お読み頂き有り難うございます。

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