第72話 海賊のお宝、ウマウマです!
私はブリーゼちゃんに先導してもらい海賊船の倉庫に向かいます。
薄暗い船内をシャインちゃんが気を使って明るくしてくれるので助かりました。
辿り着いた船倉、この海賊、五十人もいただけあってかなりの荒稼ぎをしたようです。
そこには、金貨、銀貨それに数多くの宝飾品が蓄えられていました。
私は肩から下げたカバンの中から一枚の布切れを取り出します。
常に持ち歩ている簡易の転移魔法の発動媒体です。
物を送るためのもので、出口は私の館の宝物庫に固定されています。
私は船倉の中にある金銀財宝を次々に床に敷いたその布の上に置き、片っ端から館の宝物庫の転送していきます。
金銀財宝の他にも、壺やら絵画やらもありましたが、取り敢えず館の宝物庫に送ることにしました。
私には価値が解らないので、あとでハンスさんにでも見てもらいましょう。
船倉は一ヶ所ではなく、かつ、金銀財宝以外にも小麦や香辛料といった食料品もありました。
海賊達の食料品と思われる肉や野菜といった腐り易いもの以外は根こそぎ頂戴しました。
略奪品の中に、砂糖と胡椒、そして紅茶を大量に発見した時には思わず小躍りしてしまいました。
どれも、私が住むアルムハイムでは入手が難しく、ハンスさんから買うとえらい金額を請求されるのです。
もちろん、全てありがたく頂戴しました。
えっ、なんか私の方が盗賊っぽいって?
良いのです、どうせ持ち主に返すのは難しいのですから。
目ぼしい物を全て転送し終わった私は船倉を後にし、この船の船長の部屋を目指します。
倉庫とは別に何か良い物を隠し持っているかも知れませんから。
ブリーゼちゃんの案内でやって来た船長室と思われる部屋、物色するまでもなく棚の中に大きなダイヤモンドらしき物が嵌め込まれた王冠がありました。
王冠などどこから盗んできたものやら。
そこに嵌め込まれた大きな透明の石、わざわざ船長室に置いてあるのですからガラス玉ということはありませんよね。
「ノミーちゃん、この石、なんだか分かる?」
鉱物のことなら、大地の精霊ノミーちゃんに聞けば分かるかも知れません。
「これ?ダイヤモンドだね。ロッテちゃん、こんなもの欲しいの?
言ってくれれば幾らでも作るのに。」
やめてください、そんな市場を破壊するようなマネは……。
「私は別に宝飾品はいらないかな。
単に価値のない物なら放っておこうと思っただけ。お金に変えようと思っているから。」
ノミーちゃんのお墨付きもありますで、この王冠もありがたく頂戴することにしました。
船長の部屋には他にも、柄頭と鞘に宝石があしらわれた懐剣や金でできた意匠の凝らされたティアラなどやんごとなき身分の方が持つような物が置かれておりました。本当にこの海賊船、いったい何を襲撃したのでしょうか?
まあ、この持ち主も今頃は海の底でしょうから、私がありがたく頂戴いたします。
結局、船長室を物色しただけで、一財産できた感じですね。
海賊船に襲われたゲーテ船長は災難でしたが、私としてはカモがネギをしょって出向いてきてくれたようで有り難いです。
そろそろゲーテ船長も心配しているだろうし、『海の女神号』に戻ろうと思った時のことです。
「ロッテ~、ここにもお宝があるよ~!」
船長室の隣の部屋を指さしてブリーゼちゃんが言いました。
ブリーゼちゃんの言葉に従い私は船長室の隣にある扉を開きました、確かにお宝がありました。
しかし、これは本当にお宝でしょうか?私には飛び切りの危険物に見えるのですが……。
そこには私のようなナンチャッテではない本当のお姫様がいました、しかも二人も。
確かに、聖教徒の国のことなどお構いない異教徒の国の好色な男性にはお宝だとは思いますが…。
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「私はシャルロッテ・フォン・アルムハイム、神聖帝国の貴族です。
この船の海賊を退治したところなのですが、お二人は海賊に捕らわれた方でよろしいのですよね。」
一応確認します。もしかしたら、この海賊船の船長の娘かもし知れませんから。
確認は大事です。
「助けてください。乗っていた船が海賊に襲われて、妹と二人、捕らわれてしまったのです。」
まあ、そうでしょうね。さっきのガラの悪い船長からこんなお姫様のような娘は生まれないでしょう。
「分かりました。事情は後で聞きます。今は急ぎますので、私に付いて来てください。」
さっさと帰らないと本当にゲーテ船長が心配してこの船に乗り込んできてしまいます。
そうなると私がお宝をネコババしたのがばれてしまうかも知れません。
いえ、海賊の盗品を退治した者が頂戴するのは別に構わないようです。
先ほど言ったように、海賊の被害者は海の底に沈んでしまっていることが多いようなので。
問題は私が独り占めしてしまったことです。
私一人で退治したのですから別に構わないのでしょうけど、船が襲われて被害が出たというに気まずいではないですか。
私が二人を連れて甲板に上がってくると、ゲーテ船長は海賊が使った渡し板を使ってこちらに渡って来ようとしていました。
「ゲーテ船長!海賊に捕らわれていた娘を保護しました。『海の女神号』で保護してください。」
「お嬢様、ご無事でしたか。三十分ほどと言われたのに一時間経ってもお戻りにならないので心配しておりました。」
おや、もう一時間も経ってしまいましたか。思ったよりお宝が多かったようです。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。とにかくこの二人の保護をお願いします。
私はもう少しすることが残っていますので。」
そう言って私は二人の少女をゲーテ船長に託すと海賊船に戻りました。
そして、上陸用と思われる手漕ぎの小舟が十艘、船の側面に固定されているのを見つけました。
私はそれを全て海面に降ろしました。
そして、ノミーちゃんに刃の付いたひも状の金属で固定されている海賊たちを浮遊の魔法で次々に小舟に降ろしていきます。
さっき、ブリーゼちゃんの突風で海に落とされた四十人ほどの海賊達も小舟に気づいたようで寄ってきました。
どうやら、この船によじ登ることはできなかったようです。
私は海賊船に誰も残っていないことを確認すると『海の女神号』に戻りました。
私が渡し板を渡り切って『海の女神号』に降り立つと海賊船は動き始め、ゆっくり離れていきます。
そして、徐々に離れる速度を上げて行きました。
「お、俺の船が!おいこら待て!止まるんだ!」
海面に浮かぶ小舟から、大きな声が上がりました。あれは海賊船の船長でしょうか。
まあ、そんなことを言っても無駄ですが、あの海賊船は無人です。
今はブリーゼちゃんの起こす風で動いているのです。
そうこうしているうちに大分距離が開きました。これだけ離れれば大丈夫でしょう。
「サラちゃん、最近あまり力を見せる機会がなくて退屈していたでしょう。
思いっ切りやっちゃって良いわよ。」
私が呼びかけると、私の肩の上に火の精霊サラちゃんが姿を現しました。
ちゃんと私以外には見えないように気遣ってくれたようです。
「ふふん、今こそアタシの力を見せてあげるわ。
恐れ、慄きなさい!」
ゴージャスな真紅のドレスを着たサラちゃんは薄い胸を反らしてそう言うと、
「燃え尽きなさい!」
という掛け声と共に巨大な火の玉を海賊船の上空に生み出しました。
それが、静かに海賊船に向けて落下し、海賊船が火に包まれます。
海賊船が、サラちゃんの作り出した火に包まれ、しばらく燃えた時です。
突如、真黒な煙が高く立ち昇り、少し間を置き「ドーン」という大音響が響きました。
先程の大砲の音とは比べ物にならない、おなかに響く大音響です。
海賊船の中に樽で積まれれていた火薬に引火したのです。
最初は海賊船を沈める必要まではないと思って乗り込んだのですが、大量の火薬を見て気が変わりました。
こんな船を残して置いたらロクなことがないと思ったのです。
「俺たちの船が……。」
小舟に乗る誰かが絶望にくれた声を上げました。他の海賊たちは声にならないようで一斉にため息が漏れました。
静かだなと思ったら、海賊船の船長は泡をふいて気を失っていました。
海賊船の皆さんとはここでお別れです。皆さん、頑張って陸まで辿り着いてくださいね。
因みに、近いのは皆さんを敵視する聖教徒の国ですから覚悟しておいてくださいね。
さて、私は二人の少女の事情を聴くことにしましょうか。
お読み頂き有り難うございます。




