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最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい  作者: アイイロモンペ
第5章 渡りに船と言いますが…
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第71話 言葉が通じないのは何かと不便です

 私は異教徒の国の海賊に取り囲まれて海賊船に乗り移りました。私が連れ去られるのをゲーテ船長は不安げに見つめています。


 海賊船の甲板には如何にも海賊という風体の、柄の悪い連中が三十人ほどたむろしていました。

 その中の一人、ひげを蓄えた偉そうな男が私を連れてきた連中に何か声をかけると、私の周りで歓声が上がりました。

 どうやら、目の前に現れた偉そうな男が海賊船の船長で、私達の船に乗り込んで制圧した人達に褒美の話でもあったようです。

 言葉が解らないというのは本当に不便ですね。


 「なに?ロッテ、こいつらが何言っているかわからないの~?」


 突然、頭の中にブリーゼちゃんの声が響きました。


 「へっ?」


 咄嗟のことに私は言葉にならない声を発してしまいました。


「ロッテのことをすごい上玉だって、王に献上すれば褒美をたんまり貰えるって。

 ロッテを連れてた連中に分け前増やすって言っているよ~。」


 なんと、ブリーゼちゃんは異教徒の言葉が解るようです。見かけによらないとはこのことですね。

 今度、時間のある時にでも教えてもらおうかしら。


「見かけによらないって、それは失礼じゃないかな~、ロッテ。

 風はどこへでも行けるんだよ~、隣の大陸の言葉くらい解るよ~。

 それより、良いの?」


「えっ、なに?」


「こいつら、ロッテ気が乗ってきた船のお宝を頂戴するって言っているよ~。

 金目の物を運び出せって…。」


 どうやら、私の身柄だけでは海賊たちは満足しなかったようです。

 仕方がないですね、荒事が起こる前にとっとと片付けてしまいますか。



    **********



 私はここで一つの実験を試みました。


『武器を海に捨てろ!』


 私が突然大きな声を上げたことから、五十人ほど集まっている海賊達の注目が集まりました。

 やはり、ダメかと思い、次の手を打とうとしたときのことです。


 目の前で偉そうにしている船長らしき男が腰に下げていた短剣を外して海に放り投げました。

 続いて、懐に忍ばせていたマスケットの短銃も取り出して海へ投げ捨てたのです。


 そして、それと同じ行動するものが五人ほど続きました。



 なるほど、魔力乗せた力ある言葉は万能ではないようです。言葉を解さないものには効かないようですね。

 先ほど実験といったのは、この魔法が私の使う言葉を理解できない者にも効くのかどうかを試したのです。

 今まで、この魔法を使った相手は帝国語かセルベチア語を解する人達だけでした。

 今まで私はこの二ヶ国を使い分けて魔法を使っていたのです。

 先程は帝国語で魔力を込めた言葉を発しました、この中で六人は帝国語が解る人のようです。


 逆に言うと帝国語を解さない人にはこの魔法は効果がないということのようです。


 取り合ず、六人だけでも無力化しておきましょう。


『眠れ!』


 私の言葉に船長をはじめとする先程武器を投げ捨てた六人が、糸が切れた操り人形のように力なく甲板に倒れました。


 海賊たちも私の発した言葉に原因があると察したようで、近くにいた者達が私を拘束しようと動きました。


「シャインちゃん、お願い!」


「はい、お任せくださいませ。」


 私が声を発すると同時に、傍らに現れた光の精霊シャインちゃんが眩い光を四方に発しました。


「「「「目が!目が!」」」」


 周囲に悲鳴が上がりました。

 不意に目が焼き付くような眩い光を目にした周囲の海賊たちが目を抑えて蹲ります。


 まだ、これで終わりではないですよ。


「ブリーゼちゃん、お願いして良いかな?」


「まかせて~、おいたをする悪い子にはおしおきよ~!」 


 ブリーゼちゃんはノリノリでとっても楽しそうです。

 しかし、そんなブリーゼちゃんのお気楽なな言葉とは裏腹にとんでもない突風が私を中心に吹き荒れました。

    

 人が面白いように巻き上げられました。そして一人、また一人と海面に落下し水柱を立てます。


 ここまでは、計画通りです。

 船に戻ってから賊が貴賓室に押し掛けるまでの間に、シャインちゃん、ブリーゼちゃんと打ち合わせをしておいたのです。

 むしろ、この手段が本命です。最初の魔力を込めた言葉は本当に、他言語を話す人に通じるかの、実験に過ぎなかったのです。



 突風が収まると甲板に残された海賊は十人もいませんでした。

 その全員が、船の縁や船室の入り口、果てはマストに打ち付けられて気を失っています。

 幸い、打ちどころが悪くて亡くなった方はいないようでホッとしました。

 悪党でも、殺してしまうと後味が悪いですからね。


「ノミーちゃん、ちょっといいかな?」


「はい、喜んで!」


 私は元気良く現れた大地の精霊ノミーちゃんに、盗賊達が甲板に落とした短剣を細いひも状に伸ばしてもらいました。

 金属加工が得意なノミーちゃんにはお手の物で、刃がついたまま次々に細いひも状のモノが出来上がります。



「で~きた!これ、どうするの?」


「申し訳ないのだけど、それで甲板に気絶している賊どもを拘束してもらえる?

 簡単には解けないように、拘束して欲しいのだけど。」


 私はノミーちゃんにお願いして、刃の付いたひも状の金属で気絶している賊たちを拘束してもらいます。

 私がすると手を切っちゃいますもの。


「合点承知!おまかせあれ!」


 ノミーちゃんの気風の良い言葉と共に、細長い金属のひもが蛇の様に動き気絶している賊に巻き付いていきます。

 そして、金属のひもはあっという間に海賊たちを身動きが取れないように拘束しました。

 ご丁寧に、刃は外側を向いています。誰かが迂闊に外そうとしたら手が血だらけになることでしょう。



「ロッテ~、見てきたよ~。船の中にもう海賊はいないよ~。」


 用心のため、船内に海賊が残っていないか調べに行ってもらったブリーゼちゃんが戻ってきました。

 どうやら、海賊は片付いたようです。

 では、お宝を頂戴しに行きましょうか。


お読み頂き有り難うございます。


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