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最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい  作者: アイイロモンペ
第3章 魔法使いの弟子
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第50話【閑話】大空を飛ぶために

 ロッテお姉ちゃんに拾われて何日か経って、わたしはリーナお姉ちゃんの領地へやってきた。

 リーナお姉ちゃんの家に着いたのはもう夕方だった。

 リーナお姉ちゃんは、もう日が暮れるので今日は泊まっていけと言ったの。


 でも、ロッテお姉ちゃんはこの位の時間の方が人目に付かないから都合が良いって。

 二人が話しをしている間、わたしはリアとクシィ、それにリーナお姉ちゃんの契約精霊シアンと三人でお菓子をご馳走になっていたの。


 しばらくして、二人の話しが終わったようで……。


「お待たせ、アリィシャちゃん。じゃあ、これから私の家に帰るわよ。」


 そう言って、私を連れてきたのはリーナお姉ちゃんの部屋の外に広がるバルコニー。

 えっ、帰るってここから?どうやって?玄関からじゃないの?


 私が不思議に思っているとロッテお姉ちゃんは引き摺っていた大きなトランクを横倒しにしたの。

 ますます、訳が分からない。


「さあ、アリィシャちゃん、ここに腰掛けて。このトランクに乗って空を飛んで帰るわよ。」


 なんと、ロッテお姉ちゃんはここから空を飛んでうちに帰ると言ったの。


「ロッテお姉ちゃん、ここから空を飛んで帰るの?

 私も一緒に飛べるの?」


 信じられずに思わず聞き返しちゃった。


「ええ、そうよ。ここから私の館まで飛んで帰るのよ。

 大空の散歩を楽しませてあげる。」


 ロッテお姉ちゃんは自信満々に答えて、わたしを隣の座らせたの。

 わたしがトランクにしっかりと腰掛けたのを確認するとロッテお姉ちゃんは本当に空に浮き上がったの。


 私がビックリして、


「うわっ、本当に浮かんだ!」


と、思わず声を上げると、ロッテお姉ちゃんは得意げな笑顔を浮かべて前方を指差したの。


「それじゃ、出発!」


 ロッテお姉ちゃんの掛け声と共に、わたし達を乗せたトランクはふよふよと前へ進み始めたんだ。

 凄くのんびりした進み具合に、わたし思わず聞いちゃった。


「ロッテお姉ちゃん、これ、とっても遅く感じるのだけど。

 こんなに遅くていいの?」


 すると、ロッテお姉ちゃんは地上を走る馬車を指差して言ったの。


「遅いように見えるのは何もない広大な空を飛んでいるからよ。

 見なさいあの馬車、同じ方向へ進んでいるでしょう。すぐに追い越しちゃうから。」


 ロッテお姉ちゃんの言う通り、わたし達の前に見えた馬車をあっという間に追い越してしまったの。 結構速いんだなと、感心しているとロッテお姉ちゃんはこんなことも言っていた。


「もう九月も半ば過ぎでしょう、風が冷たいのよ。これ以上速く飛ぶと凍えちゃうわ。」


 ロッテお姉ちゃんは寒い時期に飛ぶときは風の精霊に風除けをしてもらうそうです。

 今の時期はそれほどでもないので、速さを落として風を切って飛ぶ感触を楽しんでいるのだって。


「ここから見える世界が私達の住んでいる世界、広いでしょう、きれいでしょう。

 良く目に焼き付けておくのよ、これがアリィシャちゃんが初めて空から見た光景よ。」


 ロッテお姉ちゃんは言ったの、わたしはこれから何度も空を飛ぶことになるだろうって。

 でも、同じ場所を飛んでも、季節や時間によって景色は違って見えるんだって。

 ロッテお姉ちゃんは、何度もこの辺の空を飛んでいるけど、同じ景色はまだ見た事が無いって。

 だから、初めて空を飛んだ記念にこの景色を目に焼き付けておけって。


 ロッテお姉ちゃんにそう言われて、改めて周りを見回すと高く連なる山々が夕日に照らされてオレンジ色に染まっているのが凄くきれいで思わず見入ってしまったの。

 たぶん、この光景は一生忘れないって思った。


 そして、わたしは心に誓ったの。

 絶対に魔法を覚えて、今度は自分の力で大空を飛ぶんだって。




     **********



 たどり着いたロッテお姉ちゃんのおうちは凄く大きかった。

 どのくらい大きいかというと、さっきいたリーナお姉ちゃんのおうちの何倍も大きかったの。

 

 ロッテお姉ちゃんはここはアルムハイム伯国と言って、さっきまでいた国と別の国だと言った。

 国と言われてもピンと来なかったの、ロッテお姉ちゃんは色々説明してくれたけどやっぱりよく分からなかった。

 ただ、リーナお姉ちゃんがいたところとここは別の国で、ロッテお姉ちゃんが一番偉い人だという事だけがわかったの。

 

「うん…、まあ、取り敢えずはそう思っておいて。」


 ロッテお姉ちゃんは疲れた顔でそう言っていた。何か違うのかな?


 ロッテのお姉ちゃんのおうちはブラウニーって言うおうちのお世話をしてくれる精霊がいっぱいいたの。

 多すぎてロッテお姉ちゃんも何人いるかわからないんだって。


 わたしが住み始めた日は、ブラウニーが作ってくれた鹿肉の煮込み料理をご馳走になったの。

 柔らかく煮込まれた鹿肉がゴロゴロ入っていてとても美味しかった。


 それから、住む部屋を与えられたのだけど、部屋も広いし、ベッドも大きいしで、かえって落ち着かなかった。

 その部屋にいると、一人ぼっちになっちゃたみたいで寂しかったの。


 結局一人では眠れなくて、その晩からロッテお姉ちゃんの部屋で一緒に寝ることになったの。



 ロッテお姉ちゃんのおうちに来て何日か過ぎて、ロッテお姉ちゃんが魔法の勉強を始めると言った。

 最初に書庫にいって、ロッテお姉ちゃんが魔法書の実物を見せてくれた。

 何か細かいものがいっぱい書いてあって、ロッテお姉ちゃんはそれが文字だと言ったの。


 それを見て、ロッテお姉ちゃんが最初に言った文字の読み書きが出来ないと魔法が理解できないと言うことが分かったの。

 たしかに、こういう風に書かれているのなら文字が読めないと話しにならないと。


 ロッテお姉ちゃんは文字の読み書きの勉強が捗るようにって絵本を読んでくれた。

 捕らわれのお姫様を救い出す勇者の話しだったけど、ドキドキしながら聞いてたの。

 とっても面白かった。

 ロッテお姉ちゃんは、絵本がたくさん入っている棚の前で、文字が読めるようになったら自由に読んで良いって言ってくれた。

 わたしはその時思ったの、頑張って文字の読み書きを覚えて早く絵本を読めるようになろうと。



 絵本を読みたいと思って毎日読み書きの勉強を頑張っていたら、今度は魔法の基礎を教えると言われたの。

 魔法って本を読んで覚えるものだと聞いていたけどそれだけではないみたい。


 魔力を感じ取って、それを操作するのは本を読んだだけじゃ良く分からないんだって。

 体で覚えるほうが早いってロッテお姉ちゃんは言ってた。


 実際にやってみて、案外簡単ですぐに出来たら、ロッテお姉ちゃんが凄いねって褒めてくれたの。

 頭を撫でてもらって凄くうれしかった。


 それから、魔力を操作する練習にと、光、水、風、土の簡単な魔法を一つずつ教えてもらったの。

 毎日欠かさず練習するようにって。


 わたしは読み書きの勉強が終った後は欠かさず魔法の練習をしたよ。

 早く覚えれば、それだけ空を飛ぶ魔法を教えてもらえるのも早くなると思ったから。

 ロッテお姉ちゃんが留守にしていた四日間も、リアとクシィに協力してもらってずっと練習してた。


 わたしの上達具合をみていたロッテお姉ちゃんが、今度は宙に浮き上がる魔法を教えてくれた。

 空を飛ぶ魔法の前段階なんだって、その練習を続けていくといずれ空を飛べるようになるって。


 最初にロッテお姉ちゃんがお手本を見せてくれて、次に私の体にロッテお姉ちゃんが魔力を通して浮かぶための魔力の使い方を教えてもらったの。


 ロッテお姉ちゃんがやって見せてくれた魔力の使い方を真似してみたんだけど、上手くコツが掴めなかった。

 そしたら、クシィがわたしの体を何度か浮かべてくれたの。

 クシィの力で浮いたり降りたりを繰り返すうちに、なんとなく浮くという感覚がつかめてきたの。

 そして、そのためにどういう風に魔力を使ったら良いかも。


 それから、また何度か失敗したあと、ちゃんと宙に浮くこと出来た。

 わたしは凄くうれしかった、これで空に一歩近づけたと思ったから。


 その日から、わたしは読み書きの勉強の合間をぬって浮く練習を続けたの。

 そして、もう冬も間近となった今日、ロッテお姉ちゃんが真新しい箒を持ってきてこう言ったの。


「大分、自然に浮き上がれるようになったし、高さも上がってきたわ。

 今度はこれに乗って前に進む練習をしましょう。

 この練習は落ちると危ないから私が一緒にいるときしかやったらだめよ。

 まずは、高さ一ヤード位からね。

 誰もがこの練習を始めると大空を飛びたがるけど、焦ってはダメよ。

 徐々に高さと飛ぶ時間を延ばしていくから、大空を飛べるのは二、三年先だからね。」


 ロッテお姉ちゃんはわたしがすぐにでも大空を飛びたいと思っていたのをお見通しだったみたい。

 先にダメと言われてしまいました。


 でも、明るい光が見えたよ。

 頑張って練習すれば、二、三年で大空を飛べるんだ。

 わたしは頑張って空を跳ぶ練習をしようと心に誓ったの。

お読み頂き有り難うございます。

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