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最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい  作者: アイイロモンペ
第2章 リーナと一緒に旅に出ます
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第20話 旅の同行者を紹介されました

 秋の到来と共に朝晩がすっかり肌寒くなった九月中旬、私はトランク一つを箒からぶら下げてふらふらとシューネフルトに向かって飛んでいます。


 そう、今日からズーリックへ向けて一週間ほどの旅に出ます。

 リーナが私の許まで馬車で迎えに来て、そこからズーリックまで行こうと申し出てくれました。

 しかし、それではシューネフルトから私の館まで往復約二十マイル分、無駄な時間を費やすことになります。

 ズーリックへ向かう街道がシューネフルトからしかないためです。

 クラーシュバルツ王国は山がちな上に、そこかしこに小さな湖やそこから流れ出る河川があり、街道を通せる場所が少ないのです。


 という事で、私の方からリーナの館に出向くことになりました。

 秋になりすっかり日の出も遅くなって、朝七時を過ぎるようになりました。

 今は六時を少し回ったところ、周囲はまだ薄暗く、空を吹く風は身を切るように冷たいです。


 何故こんな時間に飛んでいるかというと、 街中を飛んでいるのを人に見られないためです。

 今日は引き摺るほど重いトランクを抱えているので、小麦畑には降りずに直接リーナの館に向かいます。

 街の上を飛ぶことになるので、明るくなると人に見られる恐れがあります。


 聖教からはお目溢しのお墨付きをもらっているのでコソコソする必要も無いのですが、魔女であることを誇示するつもりもないので、こうして人目につかない時間に飛んでいます。

 私は、余り目立たずに、ひっそりと暮らしたいのです。



     **********



 とりあえずは、人目につかず無事にリーナの館に到着しました。

 ふらふらとリーナの私室の前のバルコニーに着地するとリーナが迎えてくれました。


「おはよう、リーナ。今日から一週間お世話になるわね。」


 この旅行、目的が私の用事なのにリーナにおんぶに抱っこです。

 旅をした事の無い私に代わってお膳立てを全てしてくれたのです。リーナの側近の方々が…。


「おはよう、ロッテ。

 こちらこそ連れて行ってもらうのだから、ロッテが出来ないことを手伝うのは当たり前よ。」


 リーナは笑ってそう言いますが、馬車を提供してもらった上、宿の手配まで頼んでしまって申し訳ない気持ちでいっぱいです。


「ところで、ロッテ、どこか調子でも悪いの?

 ずいぶん、ふらふらと飛んできたように見えたのだけど。」


「いいえ、どこも悪いところはないわ。

 ふらふら飛んでいたのは、この大きなトランクが邪魔だったから。」


「随分大きなトランクだけど、相当重いの?」


「重いことは、重いのだけど、重さはあんまり関係ないの。魔法で浮かしているから。

 問題はこの大きさ、大きすぎてバランスをとるのに気を使うのよ。

 これを保持して箒に乗るのが大変なの。」


 すると、首を傾げたリーナが尋ねてきました。


「以前、箒はスカートが捲れないように、スカートを押さえるのに使っているだけと言ったわよね。

 それなら、箒に乗らないで、トランクを横にした上に腰掛けて飛んでくれば良かったのでは?

 別に箒である必要はないのでしょう。」


「あっ!」


 旅支度をしていて、余りの荷物の多さに呆然となって、そんな単純なことを失念してしまいました。

 つい、箒に乗るという日頃慣れた動作から離れることが出来ませんでした。

 帰りは箒をトランクに括り付けてトランクに乗って帰ることにしましょう。



     **********



 リーナの部屋に迎え入れられた私は、今回の旅の同行者を紹介されました。

 考えてみればリーナも王家の姫です、一週間もの旅に一人で出かけられる訳がありません。


「ロッテ、紹介するわ。

 騎士の方がテレーゼ、今回同行する三人の護衛騎士のリーダーよ。

 私たちが乗る馬車の御者役も務めてもらうわ。

 侍女の方がヘレーナ、私たちの身の回りの世話をしてもらうわ。」


 リーナの説明では護衛は二人が騎馬で馬車の左右を護り、テレーゼさんが御者をしながら馬車そのものを護るようです。


「初めまして、アルムハイム伯王陛下。

 私はカロリーネ様の護衛騎士を拝命しているテレーゼと申します。

 これから暫く間、護衛を務めさせて頂きますのでよろしくお願いします。」


 テレーゼさんは二十歳位の女性騎士で赤髪をショートヘアにしていて快活な雰囲気の方です。

 折り目正しくて、いかにも騎士という感じがします。

 

 しかし、陛下とか呼ばれても困ってしまいます。

 私の一族の身分は聖教の魔女狩りから身を守るための方便として与えられたものなのですから。

 国民ゼロの国の王が陛下と呼ばれるなんておこがましいです。


「シャルロッテ・フォン・アルムハイムです。

 しばらくの間お世話になります。

 それで、陛下はやめて頂けますか。私のことはロッテとお呼びください。

 リーナから聞いていると思いますが、私の身分は魔女狩りから身を守る方便で皇帝が与えてくださったものですから。」


「いえ、帝国の皇帝が認めておられるということが重要なのです。

 例えどんなに小さくとも一国の王なのですから、陛下とお呼びするのが妥当かと。

 ただ、ご命令とあらばロッテ様とお呼び致しますが。」


 私はテレーゼさんの言葉に是非ともそうして欲しいとお願いしました。

 テレーゼさんは非常に生真面目な方のようです。



「初めまして、ロッテ様。

 私はカロリーネ様の身の回りのお世話をさせて頂いておりますヘレーナと申します。

 今日からしばらくの間、ロッテ様のお世話もさせて頂きますのでよろしくお願いします。」


 ヘレーナさんは気さくな雰囲気の二十歳位のお姉さん、栗毛色のロングヘアがとてもきれいです。

 ちゃんと私の会話を聞いていたようで、ロッテと呼んでくれました。


「初めまして。しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします。」


「ええ、ええ、可愛い女の子のお願いなら、幾らでもお願いされちゃいますよ。

 カロリーナ様から伺っていたとおり、本当に可愛いお嬢さんですね。

 とってもキレイな黒髪ですこと、でもその黒い服装は頂けませんね。

 黒に黒ではどうしても印象が暗くなってしまいます。

 どうですか?少しお洒落してみませんか?

 私が腕によりをかけて、磨き上げて差し上げますよ。ジュルリ…」


 私は思わず後ずさりしてしまいました。だって、このお姉さん私をみて涎を垂らしたのですよ。

 私の感が警鐘を鳴らします、この人はアブナイ人だと……。


「そんな、逃げなくても大丈夫ですよ。

 私は、主やその御友人に手をつけたり致しませんからご安心ください。

 お召し替えの時などに少々堪能させていただければ満足ですので。」


 いえ、その発言ではぜんぜん安心できないです……。

 こんな危険人物をリーナの側において良いのでしょうか。


「こら、ヘレーナ、そんなにロッテをからかわないの。

 ゴメンね、ロッテ。

 ヘレーナは少し悪ふざけが過ぎるのよ、こんな感じだけど仕事はきちんとするから安心してね。」


「カロリーナ様、悪ふざけが過ぎました、申し訳ございません。

 ロッテ様、今のは冗談としても、お洒落がしたくなったら遠慮なく言ってくださいね。」


 リーナは悪ふざけと言いますが、私の直感が告げています。

 ヘレーネさんはガチな人だと……。


お読み頂き有り難うございます。


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