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最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい  作者: アイイロモンペ
第5章 渡りに船と言いますが…
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第99話 ステラちゃんの昔語り

 サクラソウの丘の麓にある屋敷を購入することにした私は、首相官邸に戻りその日のうちに売買契約と代金の支払いを済ませました。


 代金?ええ、それは抜かりありません。

 帝都を出る前に、クレディ・ズーリックの帝都にある支店から皇宮に人を呼んで、ソブリン金貨建ての為替証書を発行してもらいました。最初から王都に土地建物を購入する予定でしたので。

 クレディ・ズーリックの信用力は大したものです。

 こんなに遠く離れたアルビオン王国でもちゃんと支払いに使えました。

 もちろん、使えるという事は予め確認はしてきたのですが、少し不安だったのです。


 ミリアム首相のサービスは至れり尽くせりでした。

 官邸の法律家を呼んで契約書に私に不利な条項が入ってないかを確認くださったことに加え、公証人を呼んで所有権の認証手続きもしてくださいました。

 こうして私は無事に館を手に入れることができました。


 そして、数日後、私はサクラソウの丘の麓の屋敷の玄関を潜ったのです。


「ロッテ、待っていたわよ。

 館の中をチリ一つないように掃除しておいたわ、すぐに使うことができるわよ。」


 玄関ホールへ入るとすぐにステラちゃんが飛んできて、元気に迎えてくれました。

 文字通り、ふよふよと宙を飛んで。


「今日からよろしくね、ステラちゃん。」


「ええ、久し振りにお話ができる住人だもの、大歓迎だわ!」


 そう言ってステラちゃんは私達をリビングルームに先導してくれます。


「この精霊さんが、お嬢様の言ってらしたステラさんですか。

 アルムハイムの館にいるブラウニー達に比べて随分と社交的なのですね。」


 私の後ろをトランクをぶら下げて付いてくるカーラがもらしました。

 そう言えば、うちのブラウニー達はみんな恥ずかしがり屋であまり人前に姿を現さないですね。

 人と話すのはアインちゃんしかいませんし。


「うん、なに?

 ロッテが今住んでいる処にも、私のご同輩がいるの?」


 ステラちゃんが尋ねてきました。

 そうですね、私のことについての詳しい話はしていませんでしたね。


「リビングルームでゆっくり話すけど、私の住んでいる館には数え切れないほどのブラウニーが住んでいるの。

 ただ、ステラちゃんと違ってみんなシャイで、人と話すことがないのよ。」


「へえ、そうなんだ。

 数え切れないほどの同輩が住み着いているってどんな大きなお屋敷なんだろうね。」


 そう言えば、この館、そこそこ大きな館なのにステラちゃん一人しか見かけませんね…。


 リビングルームについた私は、カーラをステラちゃんに紹介しました。


「ステラちゃん、私の後ろにいるのが侍女のカーラよ。

 これから、この館で私の身の回りのことをするから、色々教えてあげてね。

 カーラ、ステラちゃんはこの館ができた時からいるので、館の事は何でも知っているわ。

 分からないことがあったら、ステラちゃんに聞くのよ。」


「カーラというお名前なのね。私はブラウニーのステラよ。

 分かっていると思うけど、幽霊じゃないからね。」


「ええ、存じ上げていますよ。

 ブラウニーさんは家のお手入れをしてくださる、とっても有り難い精霊さんなのですよね。

 私はカーラと申します。

 これからいろいろ教えてくださいね、ステラさん。」


「まあ、カーラってば、分かっているじゃない。

 ロッテ、あなた、良いメイドを抱えているわね。」


 カーラがステラちゃんに対し丁重に対応したので、ステラちゃんは上機嫌です。

 今までのメイドさんは、この館を気味悪がって居付かなかったようですからね。



     **********



 私はカーラにお茶を淹れるように指示をして、ソファーに腰を落ち着けました。


 そして、


「みんな、出ていらっしゃい!」


 私が宙に呼びかけると、


「「「「「「「「は~い!」」」」」」」」


 元気な返事と共にテーブルの上に八人の精霊が現れました。


「ええええぇっ!

 同輩がこんなにいっぱい…。」


「ロッテ、ここが新しい家なの。

 まあまあね。

 そこにいるのがこの館を管理しているブラウニーね。

 私は火の精霊サラよ、よろしくね。」


 たくさんの精霊が現れたことに驚いているステラちゃんにサラちゃんが偉そうに挨拶をします。薄い胸を張って…。


「サラさん、まあまあなんて言い方は失礼ですわよ。

 とっても素敵なお屋敷ではないですか、それに手入れも行き届いていますし。

 ごきげんよう。私は水の精霊アクアです。

 よろしくお願いしますね。」


「そうなのじゃ、お主の偉そうな態度がわらわと被るのじゃ。

 少しは謙虚にしたらどうなのじゃ。」


 淑女然とした話し方のアクアちゃんが、上から目線のサラちゃんをたしなめました。

 それに便乗して冬将軍のヴィンターがサラちゃんに理不尽な苦言を呈しています。


「ああ、これはご丁寧に。

 私は、この館の家付き精霊のステラです。

 よろしくお願いします。

 って、ロッテ、あなた、こんなにたくさんの精霊と契約しているの。

 ただ者ではないと思っていたけど、あなたいったい何者なの。」


 たくさんの精霊の出現に目を丸くしていたステラちゃんが、私に尋ねてきました。


「改めて、自己紹介するわね。

 私はシャルロッテ・フォン・アルムハイム。

 アルム山脈の麓に住む魔法使いで、昔から精霊と共にあった一族の末裔なの。

 昔、私の先祖が住んでいた地は精霊がたくさん住んでいたらしいわ。」


 そう言って私は契約精霊のみんなを一人一人、ステラちゃんに紹介していきました。


「そうなの、嬉しいわ、こんなに多くの同輩に会えるなんて何百年ぶりかしら。

 昔はね、この島にも精霊がたくさんいたのよ。

 この島の民は、あなたの先祖と同じ精霊と共にある一族だったの。

 ある時、異教の民が入ってきて、精霊を信仰する人達を迫害したのよ。

 それから、精霊に対する信仰は廃れてしまって、私達が見える人も減っていったの。

 そのうちに精霊たちが姿を消したわ。」


「精霊が姿を消す?

 姿を消した精霊はどうしてしまったのかしら?」


 私が尋ねるとステラちゃんは遠い目をして言いました。


「私達精霊は死にはしないから、みんな、人の住むところに愛想を尽かして何処かへ移って行ったのね。」


 ステラちゃんの話では、王都の北、南北に長いこの島の真ん中くらいのところに美しい湖水地方があるそうです。

 その辺りに行けば、水の精霊や風の精霊に会えるのではないかと言います。

 光の精霊や大地の精霊も自然が豊かな地を好むのでその辺にいるのではとのことです。


 また、この島の北に、火の島と言われる年中火山が噴火している島があり、火の精霊はその辺りにいるのではと言っていました。

 


「私達ブラウニーは家に憑くから、精霊を見える人の家を探して彷徨うことになったの。

 そして、私はこの家に辿り着いたわけ。

 この家の初代の主の家族は、多分、精霊と共にあった一族の末裔だと思う。

 家族のみんなが精霊を見ることができたから、何人かの精霊も集まってきたわ。

 あの頃は賑やかで楽しかった…。

 それがね、…。

 初代の娘が嫁に行き、初代の主が天命を全うして、精霊を見える人が減ってきたの。

 何代かするうちに、精霊を見える人はいなくなってしまって。

 精霊が何かすると幽霊がいると言い出すようになったわ。

 そして、私の他の精霊はここを去っていったの。」


 家付き精霊のステラちゃんは初代の主に可愛がってもらったので、この館を去り難かったようです。

 一人、この館に残って館の手入れを続けてきたそうです。


 そして、いつしか幽霊屋敷と呼ばれるようになってしまったのですね。

 

 そのおかげで私は手入れの行き届いた館を格安で手に入れることができたのでステラちゃんには感謝です。

 ステラちゃんも、私の契約精霊たちに囲まれて楽しそうです。


 でも、これは少し…。

お読み頂き有り難うございます。

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