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初めての眷属づくり

本日2話めの更新です

「深淵の黒道をさまよう魂よ……」


 エルガーは呪文を唱えようとして、暗黒神の権能に詠唱は不要だと気づく。

 

「《眷属作成・闇・ヴェールトロース》」


 闇の魔力が二人の遺体を包む。

 まずは遺体を眷属にふさわしいモノへと創り変える。


 そして二人の魂を冥界から連れ戻さなければならない。


 反魂の法とも呼ばれる秘術だが、暗黒神としての力を使うなら難易度は高くなかった。


「ヒトの身では禁忌だが、神なら造作もないか」


 エルガーは己がもうヒトを超えたのだと直感する。

 創り変えた二人の肉体に魂が宿り、動き出す。


「う……あ……?」


「あ……れ?」

 

 彼らはまず何が起こっているのか飲み込めていない。

 ゆっくりと自分の手を動かしてみて、それから周囲をきょろきょろと見る。


 そしてエルガーの存在に気づく。


「あなた、は?」


「成功か」


 老人にエルガーは言った。


「そんな、わたしは、たしかに死んだはず」


「蘇生とは少し違うな。お前の肉体は別物になったんだから」


 エルガーの答えは老人が欲した答えではないのだろう。

 だがていねいに説明するつもりは彼にはない。


「お前は俺の眷属<デュラハン>として復活した。たしかめてみろ」


 エルガーにそう言われて老人は再び自分の体を見回す。

 皮膚は青白くなっていて、肉体は若返ったように見受けられる。


「<デュラハン>……」


 老人はそう言って彼にひざまずく。


「眷属として忠誠を誓います」


「……いきなりだな」


 唐突と思われる行動にエルガーは驚く。

 眷属に対する支配の効果が出てきたのかもしれない。


 一方のアンナもつられて自分の体を見る。

 

「アンナのほうは<レヴェナント>としての復活だ」


 彼女も祖父同様、肌が青白くなっていた。


「獣人としての身体能力はそのままだがな」


 二人を分類するならアンデッドになる。


 エルガーが彼らの魂を呼び戻したのは人格や知性を保持させるためで、正確には死者が蘇ったわけじゃない。


「ありがとう、ございます」

 

 彼らはエルガーに礼を言った。

 エルガーは小さくうなずく。


 彼らに何があったかとは聞かない。

 魂を呼び戻した際に、彼らの記憶を読みとったからだ。


 同時に老人の名前がレフというのも知った。


「レフ、それにアンナ。ここは移動しよう」


 ゲスどもが一度はやってきた場所にとどまらないほうがよい。

 

「わかりました」


 エルガーは彼らを連れて林の奥へと移動する。


「本当なら組織を作って拠点を持てたらいいんだが」


 歩きながら愚痴に近いつぶやきを彼は漏らす。


 彼のイメージには魔王軍の存在があった。

 魔王がいて幹部がいて、配下の魔物たちがいる強大な組織だった。


 敵だった時は厄介きわまりない存在だったが、今にして思えば利点の多さが分かる。


「あなた様は……あるじ様は闇の神々に連なる方ですか?」

 

 エルガーの少し後を歩いているレフがおそるおそる話しかけてきた。

 

「そうだ」


 暗黒神は闇の神々の中でも有力なひと柱なのだが、彼らが知っているかは怪しい。


 それに暗黒神ラスターの名前が有名なうえに「エルガー」の名前は出したくないという理由がある。


「これからあなた様を何とお呼びすればいいのでしょう?」


「そうだな……」


 エルガーもラスターも使えないとなると、新しい名前が必要だ。

 彼は歩きながら考えつつ一つの名前をひねり出す。


「エドラス」


 古代語で「何もない」という意味の単語だ。

 現状彼は何者かわからないと言えるのでぴったりと言えるだろう。


「俺は暗黒神エドラスだ」


 神になった経緯などを省略してしまって何の問題もない。

 そもそも神にとってかわったなど信じてもらえるかが怪しい話だ。


「エドラス様……」


 アンナが名前をつぶやく。


(そう呼ばれることに慣れないとな)


 とエドラスと名乗った元勇者は思う。

 もはやエルガーという名前は捨ててもよい。


 復讐の時に使うのがせいぜいだ。


「おそれながら……我々は何をすればいいのでしょうか?」


 レフに聞かれてエドラスは考える。

 彼らに何をしてほしいのかと言われても、何のプランも持っていなかった。


 理不尽に踏みにじられたことに対する同情と、眷属作成の実験という目的があったのは事実である。


 つまり眷属となった彼らに何かを期待しているわけじゃない。


「何ができるか、だな」


 エドラスはとっさにそう言った。


 <デュラハン>も<レヴェナント>もアンデッドなので死なないし、それなりに戦える。


 そこらの町民レベルには負けたりしないだろうから、本当なら身を隠す必要はない。


 エドラスが懸念しているのは、一定レベルの光属性魔法の使い手に発見されることだ。


 彼らはアンデッド系の天敵であり、元が一般人の二人が相手するには荷が重すぎるだろう。


 だからと言って二人を護衛する戦力を配置するのも何だか変な気がする。


「決めるまでは待機だ」


「はい」

 

 レフとアンナは残念そうにうなずく。


「……獣がいるはずですが……」


 アンナがぼそっと言った。

 林の中に住んでいる獣や魔物が一切出てこないのが彼女には意外だった。


「俺がいるからだろうな」


 とエドラスは言う。

 危険察知能力がある生き物は、誰も彼には近づかないはずだ。


「暗黒神に近しい魔物は寄って来るんじゃないかとぼんやり思っていたが、そんなことはなさそうだな」

 

 なかなか上手くいかない。

 

 エドラスたちがやってきたの林の奥だった。


「《闇の波動》」


 分類するなら暗黒神の力を魔法のように使った、になるだろうか。

 地下に空間を作り、


「《闇の根城》」


 続いて生き物が入れるだけの空間を作った。


「中に入ってしばらく待て」


 そして二人の眷属に命令する。


「エドラス様はどちらに?」

 

「……少し用がある」


 レフの問いに答えて彼は闇の家の外に出た。

 赤い瞳から抑えられていた憤怒の炎が燃え盛っている。


 レフとアンナのことを優先させただけで、彼らを蹂躙した連中を見逃すつもりなど最初からなかった。


 二人の安全をひとまず確保して憂いを断ったので、安心して報復に向かえる。


(待っていろよ……)


 加害者たちの顔を思い出しながら心の中で宣告した。


 暗黒神の権能の一つ<生命追跡>を使えば、彼らがどこにいるのか探し出すことができる。

 

 これは顔と名前だけがわかっているだけでは不可能だ。

 レフとアンナが直接的な被害を受けた副作用とでもいうべき事情がある。


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