第十二話 融合と別離
若い男の身体を自分に吸収したマリアージュ。
これは信じがたい光景であるが、ここで起きている現実である。
吸収したときに彼女の下腹部の法衣が破れ、白い臍を覗かせていたが、そこに可愛らしさは全くない。
皮膚の表面が複雑に波打ち、吸収された若い男が彼女の胎の中で暴れているようにも見える光景。
あり得ないそんな行為に、この場に居合わせた人間の反応は三種類。
身の毛もよだつその行為に、この現場から逃げ出そうと思う少数の者。
恐怖のあまり言葉を失い、固まっている少数の者。
聖女と青年のその行為に羨望の眼差しを送る大多数の者だ。
順に聖女から遠い距離の者、中距離の者、近くに居た者の反応である。
そして、聖女から一番遠くに居た女性が椅子から立ち上がり金切り声を挙げた。
「キャーー、バケモノッ!」
その女性は逃げ出す事ができた。
マリアージュから一番距離があったため、彼女の神意による支配の影響が少なかったからである。
彼女が目指したのは主礼拝堂の出口。
彼女が居た場所から数十歩も進めば、たどり着ける場所である。
しかし、聖女はそれを許さない。
マリアージュは逃げ出した彼女の背中に自らの指を向ける。
「アナタ達は私の糧。神への供物。この聖域から逃れる事を赦しません」
ドーーン!
そう言ったマリアージュの人差し指は爆ぜて、弾丸のように飛び出す肉と骨の塊が、逃げ出す女性の背中を襲う。
それが凄まじい速度で女性へと迫り、そして、貫通した。
ドンっ!
「あ!」
そんな短い悲鳴を挙げて、女性は即死。
背中から心臓を撃ち抜かれた。
そんな死亡した女性は、自分が殺された事にも気付けず、走る勢いのまま出口の扉にぶつかって倒れ込んだ。
するとその直後、死体となった彼女の身体からは嫌な臭いがたち込め、その表面が泡立つ。
ボコ、ボコ、ボコ
身体が内側から溶解されてピンク色の液体が飛散した。
その体液が彼女の目指していた扉に付着する。
そして、そのドロドロに溶けた液体はすぐに固まってしまう。
ピンク色の液体はこうして出口を塞ぐ存在となってしまった。
数刻前まで人間だった女性が、その数瞬後には物言わぬ塊にされてしまう。
それは連想できないぐらいの悍ましさである。
まだ正気を保っていた一部の人達も、そんな悲惨な死骸を見せられて恐怖に固まる。
そして、その処刑を実行したマリアージュが集会の再開を宣言する。
「さあ、宴を始めましょう。アナタ達はひとつになるのよ。私とひとつにっ!」
そして、聖女は彼女の内なる神意を最高潮に高める。
瞳が桃色へと染まり、そこから最大級の魅惑の光が溢れ出した。
彼女を中心として同心円状に広がる神意による魅了。
それに侵された人々は、次々と身体の力が抜けてしまう。
身体の緊張が解け、そして、心の奥から熱いモノが込み上げてきた。
身体が、心が、聖女を求めた。
「嗚呼、ひとつになる・・・神とひとつに・・・信仰とひとつに・・・聖女とひとつに・・・融合しなければ・・・」
人々の口よりそんな譫言が漏れ、彼らはゆっくりと椅子より立ち上がる。
男性も女性も、大人も子供も、聖女を信奉する信徒も、そうでない者も、公国民も、少し前まで公国民から蔑みの対象となっていた枢機卿さえもが、マリアージュと一体になる事を求めた。
これは余りにも濃密な神意と信仰心による反応の果てである。
まるで磁石が互いの極を求めるように、彼らはマリアージュを目指す。
半分以上意識を飛ばし、目には欲望の炎を浮かべ、そして、ゆっくりゆっくりと、ひとりひとりが整然と・・・しかし、マリアージュのいる教壇へ次々と人々が狂気を宿して殺到した。
それを慈愛の籠った表情で迎えるのがマリアージュ。
まるで聖なる絵画の一幕のような慈愛の籠る抱擁。
しかし、その光景は異常。
ひとりが彼女に抱かれたかと思うと、その身体は聖女に吸収される。
それが胎であったり、胸であったり、足であったり・・・人々が彼女に縋る場所で、彼らの肉体が聖女の白い肌に囚われるのだ。
その度に聖女の衣服が破れて、素肌を晒していく。
人間を吸収した彼女は、その皮膚が波打ち、そして、しばらくすると白い肌はより輝きと艶を増す。
マリアージュの神意の高まりはそこに吸収された人間の生命力が費やされるため、彼女の力は強くなるばかり。
そして、それがある臨界点を超えると、変化が起きた。
マリアージュの身体が強く輝き、そして、彼女の身体の表面に僅かばかり残っていた衣服が全て吹き飛んだ。
光に包まれる裸身のマリアージュ。
その直後に彼女の肉体が肥大化し、その背中には二組の白い羽根が生えた。
裸体を晒した彼女の身体は、女性の際どい部分が白い布で隠され、黄金の髪が伸びてきて、彼女の僅かな乳房の膨らみを隠す。
そんな彼女の姿の変化を目にした彼女の信者達はこう叫んで涙する。
「天使様だ。聖女様が天使様に成られたぞ!」
降臨した天使に跪き、自分達の信仰をより高める公国民達。
自分に向けられるより深い信仰を感じた天使マリアージュは慈愛と魅惑の籠った恐ろしいほど甘い声で彼らを誘う。
「迷える人々達よ。ここへひとつに」
それは神より与えられた融合の許可である。
そんな許可を得た人々は、我先に天使マリアージュへと殺到する。
肥大化したマリアージュは愚かな人間達をひとまとめに捕まえると、それを自分の胸へと当てる。
そうすると、瞬く間に彼らは大きくなったマリアージュに吸収してしまう。
「嗚呼~ ひとつになる! 幸せぇだぁ!!」
幸福に包まれた断末魔が、吸収された人の成れの果。
彼らは自らが死ぬ瞬間――自分の命が他人の糧となった事――を全く気付けないだろう。
こうして、多くの人間が天使と化したマリアージュに吸収されてしまう。
それは神意に満ちた悪魔の所業であり、人命が無残に散らされる悪魔の儀式であった。
それを少し離れたところでこれを静観しているのは元々聖女派だった面々である。
マリアージュの部下達は今のマリアージュのこの姿を見ても直立不動。
頭のどこかでは、いつものマリアージュとは違うなと思いつつ、この暴挙を納得して観ていた。
その納得は普段聖女の部下であった彼・彼女達が持つ尊敬の念とは別な意思。
(逆らってはいけない。これは神の行為。これは天の裁き・・・)
そんな声が彼女達の心の視野を奪う。
今の部下達は天使マリアージュが人々を吸収する行為を、聖なるものとして見守り、この行為に邪魔が入らないようにする事が今の仕事である。
リニスもそんなひとり。
リニスは元々に持ち合わせた神意の高さから、マリアージュと波長は近かったし、リニスは荒事担当として今まで活躍していた。
そして、今のリニスはマリアージュの神意に共鳴して、その能力が底上げされている状態である。
そんなリニスだから気付けたのだろう・・・空間の一部の違和感に。
「そこっ!」
リニスは違和感のある空間に、懐に隠していた鞭を手に取り、それを伸ばす。
恐ろしいほど長い鞭はリニスの意のとおり空間をスルスルと進み、そして、何もないところを激しく弾いた。
パチーーーン!
鞭は石の床を激しく打ったが、それは只の空振りではなかった。
確かに今までそこに居た何かがパッと飛び退き、何人かが空間より突然現れる。
それは・・・黒仮面を被る騎士と数名の姿。
灰色ダボダボのローブ姿の魔術師が魔法の鏡を片手に持ち、そして、もう一方の手には大きな布を持っていた。
その布は裏面が白い生地、そして、もう片方の表面はこの大礼拝堂と同じ風景が映っている。
驚きの光景であったが、この布は魔道具の一種であり、姿を隠すものであるとリニスは一瞬にして理解した。
そして、現れたこの面々をリニスは知っている。
「太陽の小鹿・・・それと漆黒の騎士!」
リニスは思わぬ敵の出現に、そんな警戒の声を挙げるのであった。
ここに現れた太陽の小鹿の面々については、昨日まで話を戻さなくてはならない。
「ハル・・・この招待状、どうする?」
アークは聖女派の女性より手渡された招待状をハルに見せた。
それは『ひとつになる集会』と書かれた招待状であり、招待対象者の欄にアークひとりだけの名前が書かれていた。
これを見たハルは怪訝な顔をするしかない。
「これって、あの聖女からの誘いでしょ? 嫌な予感しかないわよね」
ここでハルが危惧していたのは、先日のアークより聞かされた聖女マリアージュの為人である。
彼女と出会ってすぐに受けた強烈な色香攻撃のことをアークより報告受けていたからだ。
あらゆる支配の魔法と毒を防ぐことのできる漆黒の仮面により、アークには影響がなかったが、もし、これが普通の人ならば、聖女より放たれた濃厚な神意により支配を受けていた可能性が高いとハルは結論付けていた。
神意とは、神聖魔法使いの持つ魔法の波動・・・つまり魔力と同義である。
強い祈りが魔力となったものであると理解して違いがない。
街中でそんな強い神意を放つ聖女など、ハルからすると危険人物に他ならなかった。
そんな人物から名指しでイベントの誘いを受けるなど、全く以て良い予感がしないのだ。
そんな悪い予感は太陽の小鹿の面々も共有できていた。
「こいつぁ、事件の匂いがするぜぇ」
神父リュートはハルより招待状の中身を見せて貰うと、そんな所感を口にする。
彼が掴んでいた情報より、その日に大々的な集会が行われる事は既に知っていた。
その集会には枢機卿全員と、公国の名立たる実力者の動員が予定されている。
大司教も数多く集められていたが、神父リュートの上役であるプロメウス・ヒュッテルト大司教は、その集会に招待されていなかったらしい。
プロメウス大司教は自分の親しい知人に「自分はポアソン枢機卿から嫌われているのだろう」と愚痴を溢していたようだが、詳細はどうでもいい話である。
それよりも、神父リュートは開催されるこの集会自体に大いなる違和感を持っていた。
公国の要人達を数多く集める集会。
しかも、こんな時期に・・・
神父リュートはそれが不可解だと思っていた。
今は法王が拉致されて緊急事態である筈なのに、要人全員をひとつのところに集める集会など・・・もし、そこで何らかのテロが起これば、公国の機能が停止しかねないと危惧される。
そんな彼の悪い予感が警鐘を鳴らしていた。
「この集会・・・臭うな」
リュートの悪い直感にハルも素直に従う。
「解ったわ。全員でここに侵入しましょう。ちょうど良い魔道具もあるし」
そして、ハルが出してきた魔道具が『消魔布』である。
それは物理的にも魔法的にも気配を消す事に特化した魔道具であり、ラフレスタの乱でも多大に実績のある魔道具であった。
「これを使い、全員でその集会に侵入しましょう。アークひとりにだけに任せられないわ。そして、この魔法鏡も使えると思う。もし、聖女が悪い事をしたならば、これで記録していれば証拠に残るわ」
ハルは懐の魔法袋からもうひとつの便利な魔道具、『魔法鏡』を取り出す。
この魔法鏡はその場で起きた事象を記録・再生できる魔道具。
記録できるのは可視光の映像情報だけでなく、魔力の流れも記録可能である。
この魔法鏡は元々にハルが研究用で作った魔道具だが、放たれた魔法も記録するに長けている。
魔力の可視化が可能ならば、神意も計測可能だ。
こうして、これらの魔道具を駆使して、集会に潜入した太陽の小鹿達。
大聖堂の主礼拝室の壁際に潜み、『消魔布』の隙間から魔法鏡を出して、聖女の行いを観察していた。
そして、この惨劇を目にする。
太陽の小鹿としても、ここまで大きな事件になるとは思っていなかったようだが、もう隠れる意味がないほどに凄惨な現場へ事態は進行していた。
「失敗だった。こんな状況になる前に姿を現せば良かった」
ここで後悔の念を呟くのは漆黒の騎士アーク。
彼としては静かに隠れるよりも早く行動を開始したかった。
しかし、神父リュートからの「もう少し様子を見よう」との言葉で、待機していたのだ。
この主礼拝室で、凄惨な姿を晒して死んでいるのは数名。
しかし、その死体以上に、既に多くの人の命が亡くなっているのをアークは解っている。
多くの命は、それまで聖女だったモノの中に吸収・融解されてしまっている。
それが正しく理解できるのは黒仮面の能力によるもの。
加速した思考、魔力の流れを読める視界、拡張された鋭い感覚・・・そのすべてがこの過酷な事実を肯定していた。
マリアージュに吸収された人間の確実な死亡。
それが解るだけに、悔しさに奥歯を噛みしめる漆黒の騎士アークである。
そんな彼に対して、物欲しそうな好意の視線を投げてくるのは、天使姿となったマリアージュである。
「ああ、素敵なアナタ。ようやく私の前に来てくれたのね。早速、私と融合しましょう。アナタとならば私の中で蕩けない。強い力は残るに決まっている。私の胎で神の子を宿せる・・・嗚呼、なんて素敵な事なのでしょう。これこそが愛。これこそが運命。さあ、私の愛しいヒト」
マリアージュはそう述べて、一層強い魅惑の神意をアークに向かって放つ。
強烈に甘い空気がアークへと纏わりついた。
アークはそれを蜘蛛の巣を掃うように片手で防ぎ、そして、剥がしていく。
元々に魔力抵抗体質の能力が高い彼ではあるが、現在は黒仮面を付けているので、魔力抵抗体質の力も著しく強化されていた。
今のアークは天使にまで昇華を果たしたマリアージュからの魅惑の神意にも全く効果なし。
そして、この魅惑の神意は余波として近くの太陽の小鹿の面々にも降り注ぐが、ここで彼らの正気を保てるのは、彼らの装着している指輪が守っている。
その指輪が強い青色に変化して輝いている。
青色になるは強い魔力反応がある証拠。
魔光反応とも言われるが、そんな高出力な魔力の放散がこの指輪から放っている。
そんな魔法防御の指輪は、ハルが用意した三つ目の魔道具。
もし、聖女が精神系の強い魔法攻撃を放つならばと、その攻撃に対抗できる魔道具を準備していた。
それがうまく嵌った。
太陽の小鹿達の誰もが正気を失わず、ここでマリアージュからの魅惑の神意に対抗できている。
そんな自分の誘いに全く効果ないと悟ったマリアージュは、とても残念な顔になる。
「やはり、アークさんとそのお知り合いの方達は神を信じていないのですね」
ここで、そんな落胆のマリアージュの言葉に強い憤りで反応したのが、彼女の部下であるリニスだった。
リニスは主君に憂いを与える漆黒の騎士に対して酷い怒りを覚えた。
「漆黒の騎士! アナタは私の主をガッカリさせた。これは万死に値します。死になさい!」
リニスが鞭を振り、ここに神への祈りを高めた。
「聖なる鞭よ。敵に茨を与えたまえ」
リニスの祈りは彼女の神によって正しく認識されて、そして、力が与えられた。
鞭に鋼鉄の茨の棘が無数に生え、それが蛇のように波打ち、アークに向かって飛ぶ。
アークはそれをサッと避ける。
そうすると近くにあった木製の椅子に茨の鞭が命中して粉々に破壊した。
それは恐ろしい破壊力であり、もし、生身の人間が受ければ、あっという間に肉を抉られるだろう。
そんな凶悪の鞭を手にするリニス。
しかし、ここでの彼女のそんな行為は主君から不快を買った。
「リニス。私の許可なく彼を殺してはいけません!」
「し、しかし・・・マリアージュ様っ!」
ここで何かの言い訳をしようとするリニスだが、主君は部下に対して厳しく、連帯責任となる。
「貴女達も信仰が足りていないようです。私が試練を与えましょう。修行をやり直しなさいっ!」
天使マリアージュはそう言うと、十本の指を前に出して、そして、それが爆ぜた。
バン、バン、バン!
破裂して飛び出したひとつひとつの肉塊は、非規則な軌道を描いて空中を舞う。
クル、クル、クル
そして、天使の凶悪な指弾はリニスを含めて十の頭蓋へ命中してしまう。
ドンッ!
「ぎゃあっ!」
リニスからそんな悲鳴が発せられる。
彼女の頭蓋を割り、脳へと侵入する天使の指弾。
それは元の脳をズタズタに破壊し、そして、融合して、再生していく。
ここで、指弾を放ったマリアージュの指はもう再生していた。
次なる指弾を放つことも可能であるが、その必要はなかった。
命中したリニスの目の焦点は合わなくなり、一瞬身体をビクンとさせる。
そして、その直後、首から下げた禍々しい護符が濃厚な紫色の光を放ち始める。
そんな護符の反応をアークとハルは覚えていた。
「これはあの時・・・砂漠の牙王と同じか!」
牙王が最後の足掻きで復活した死人。
それと同じ光景だった。
そして、今回も牙王と同じように、復活した死者としてリニスの目から紫色の光が放たれている。
彼女と同じ運命を辿った者が他に九名・・・これがマリアージュの部下だった人間の成れの果てである。
これを目にしたハルの気分が悪くなった。
「それまで自分に仕えていた人間を、こうも簡単に殺すなんて、アナタはもう聖女ではないわ。天使でもない・・・悪魔か堕天使という言葉が良く似合うと思う」
そんなハルの言葉を聞いたマリアージュも挑戦的な笑みで返してきた。
「私の事を堕天使だなんて・・・アナタは相当に罰当たりな魔女のようだわ。神の御心を信じない不信者め」
「不信者・・・それは結構な事よ。私は神なんて信じない。私が信じているのはアークだけ。そして、アークが信じているのは私。それが全てでも結構満足しているからね」
「アークさんの事を・・・アナタの心が読めないけど・・・そう、そういうことね・・・アナタはアークさんの女だと言うつもりね」
ここでマリアージュは天使には似つかわしくない醜悪な顔へ変わる。
情欲を求めて、そして、そんな愛欲に敗れた女の醜い顔。
呪ってやろうと願う堕天使の顔がそこにあった。
「いいわ。アナタは一番最後に殺してあげる。四肢を切断して、身体の自由を奪われた状態で強姦されれば良い」
そんなマリアージュからの死刑宣告を受けて、厭らしい笑みを浮かべたのは、復活死人となった彼女の部下だった十人。
マリアージュの指弾により試練を受けた十人である。
男性も女性もハルに着目し、彼女を目で凌辱した。
「そんな状況で、彼を奪ってあげる。私と融合する姿を魅せつけてあげるから」
それだけを言うとマリアージュはアーク目掛けて突進する。
背中の羽根を開けて、最大速度で宙を舞うマリアージュ。
その速度は音速に迫り、アークと衝突すると彼を掴み、急上昇した。
パリーーン
そして、主礼拝堂の天井のステンドグラスを割り、大聖堂の外の世界へ飛び出して行った。
こうして、ここに残されたのはハルを含む太陽の小鹿達である。
それを逃がさまいと、取り囲んだのは堕天使マリアージュの強い神意により支配を受けている公国民の人々。
そして、主君より復活死人の呪いを受けた十人の覚醒者が、ハル達に神罰を下すため、迫って来るのであった。