10話 魔王・ベルゼバブ
誤字報告いつもありがとうございます!
今回は結構文字多くて時間掛かりました!
宜しくお願いします!
「じゃあ、おばあちゃんはその悪魔の復活を阻止する為に、デルラット深穴って場所に行ってるんすか?」
孝志はアレクセイから事細かな詳細を教えて貰っていた。
弘子が何処へなんの目的で向かったのか…
それと怪物と呼ばれる悪魔の強さも教えて貰っていたが、これまで怪物じみた者達を散々見てきた孝志にはイマイチパッとしなかった。
だが、以前この世界に住んでいたアルマスは、孝志と違い青ざめる。
「デ、デルラットの怪物ですか…?だ、大丈夫でしょうか?──もし、復活を許してしまったら、この世界がとんでもない事になりますよ」
「そんなにヤバいのか?」
割と他人事だった孝志も、アルマスのリアクションを見て少し不安な気持ちになってしまう。
そして、アルマスからの返答でその不安は一気に加速する。
「──はい……この世界に来て、マスターは沢山の強者達と出会って来ましたよね?馬車で共に行動していたユリウス、オーティスもそうですし、女神アリアンさんにも出会いました。……そうですね……簡単に言いますと、女神であるアリアンさんと同レベルの相手だと考えて下さい」
「……!!??」
この時、孝志の中に電流が走った。予想を超える衝撃とは正にこの事だろう。
孝志は身体を震わせながらこう思った。
『アリアンさんと同レベルってヤバくない!?」……と。
孝志にとってアリアンが二人居るなど、恐怖でしかない。
もし万が一にアリアン二人に挟まれたりしたら……
孝志は有り得ない想像を勝手に行い、気を失いそうになるのだった。
そして、勝手な被害妄想で青ざめている孝志を見てアルマスが心配そうに声をかける。
「大丈夫ですか?!……マスター、女神様はアリアンという狂人を演じてますが、アレは間違いなく演技です。……なんであの様なイカれた演技をされてるかは謎ですが、女神様は孝志が思っている様な人物ではありませんよ?」
孝志の隣に寄り添う様に座ってたアルマスは、宥める様に彼の背中を摩りながら語る。
「わかってる……わかってるんだがよぉ……震えが止まらねぇんだよ…!」
孝志はガクガク身体を震わせる。
アルマスはそんな孝志の震えを止める為に背中を優しく撫で続けた。
「ま、マスター…!か、可哀想に……ううぅ……」
アルマスは孝志を不憫に思うあまり、ついには泣き出す始末である。
──それと一つ勘違いしないで欲しいが、孝志はアリアンを嫌っている訳ではない。ただ怖いだけなのである。
──そんな二人の姿をアレクセイはジトッとした眼差しで見つめる。
アレクセイにとって既に孝志は弘子の孫という事もあり、大切な存在の一つであるのは間違い無いのだが、ここまで深いノリには流石について行けなかった。
そして何より、二人の話している事は【全てを知っている】アレクセイにとって、なにを勘違いしているのかと思う所であった。
「あんたら、さっきから何を言ってるのん?」
「……?」
顔を上げ、アレクセイを見る松本孝志。
隣に座るアルマスも同じ様にアレクセイに体を向けた。
そして次に発せられたアレクセイの言葉で、二人は驚愕に目を見開くのだった。
「あのアリアンとか言う騎士は、女神様じゃないわよ?」
「……ふえぇ?」
目を見開きながら可愛らしい声を上げるのはアルマス。
孝志の方は目を見開いたままジッと動かなくなってしまった。
「──あ、アレクセイ!?なんでそんな事がわかるの?!」
予想だにしないことを聞いた事により、いつもの様な丁寧語がなりを潜めてしまうアルマス。
「いや~ね?私達って、アルマスを【あっちの世界】に送った後、結構ティファレト様と交流が有ったのよぉ?それでティファレト様がいまどんな人間の姿をしているのか知っているんだけれど、もっとまともな人間よ~?」
「………ま、マジすか?」
このマジすか発言は孝志では無く、アルマスのものだ。
ザイスの一件で、アルマスの中ではアリアン=女神様だと凝り固まっていた為、衝撃のあまり孝志が普段使う様な口調になっていた。
そして孝志はと言うと、オカマが【あっちの世界】と口にした事で違う世界を想像していた。
アリアンが女神では無いと知り、少し心にゆとりが生まれていたのだ。
そして直ぐにアルマスを殺意の篭った目で睨む。
「……アルマスさんよぉ………自信満々で言ってくれたよなぁ?アリアンさんが女神だって……どう落とし前つける気だ?おおん?!無駄に精神が追い詰められたじゃね~かよ!」
孝志は顔をアルマスに近付けて詰め寄る。
孝志の顔が目の前にあるが、女神と確信していた人物が的外れで申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちが同時に生まれたアルマスに、それを喜ぶ余裕なんてない。
とりあえずは目の前の孝志には謝っておこうと手を合わせた。
そして心を込めて謝罪の言葉を口にする。
「………ご、ごめんね☆テヘペロ」
──そして、アルマスは孝志から強烈なチョップをお見舞いされるのだった。
─────────
その後、女神の正体が気になった俺はアレクセイさんを問い質すのだが『女神様自らが正体を明かさないなら私が言う訳にはいかないわ』と言って、頑なに教えてくれなかった。
そしてチョップされたアルマスは『家庭内暴力……』と涙目で呟きながら落ち込んでいるが、自分が悪いので反省して欲しい。
「──それで?孝志ちゃん、他に聞きたい事はあるかしら?」
手を横に広げて幾らでも聞いてきて良いわよ、っと話を聞きやすい状況を作ってくれるアレクセイさんだが……俺はこれ以上は聞かないつもりだ。
……聞きたい事がない訳ではない。
細かな所で気になる事は幾つもあったが、これ以上は自分のキャパシティが持ちそうになかった。
「いえ、あまりに色んな事を聞きすぎて、これ以上は頭がパンクしますよ……オカマに出会ったってだけでも大ダメージなのに……」
「……孝志ちゃんって割と酷いことをサラッと言うわよね…」
……自分でもそう思う。
何て言うか、大人の人にこんな事は普段絶対に言わないんだけど……アルマスの言うように、無意識にアレクセイさんに心許してしまっているのかも知れない。
「まぁ、アレクセイさんとは気楽に話せる間柄って事で」
俺が素直に思った事を口にすると、アレクセイは少し寂しそうな表情を浮かべてた。
え?結構いいこと言ったつもりだったんだけど?
「……悲しいわ~……さん付けだなんて……アレクセイで良いわよぉ、もぉ!敬語もなしでいいわ。お姉さんだと思って頂戴♡」
んだよ!敬語だから寂しそうな表情してたのかよ!
不安になったじゃねーか、ド変態二丁目野郎が!
「……わかったよ……けど、別に心許した訳じゃないからな?勘違いしないで?!」
「……なんでツンデレ口調なの?ていうか孝志ちゃん、さっきから言ってることメチャクチャよ?」
「……いや自分でもそう思う、ごめん」
そうだな……無茶苦茶だな、俺。
多分、おばあちゃんが生きてるって知って……母さんとおじいちゃんを捨てて無かったと解って浮かれているんだと思う。
早く会いたいな……例えおばあちゃんが水着でキメ顔ポーズを決める人だとしても……
そんな事を考えながら、俺は話の途中から催促して用意させたコーヒーを飲む──苦っ!
「あの……甘くしてってお願いしたのに、苦いんですけど?」
「え?そんな筈ないわよ?甘くしてって言われたから、角砂糖3つも入れたわよ?」
「少なっ!?あと5個は入れて貰えないと」
孝志のこの言葉を聞いて、アレクセイは風変わりな者を見るような目で孝志を見た……オカマという風変わりな自分を差し置いて。
「あ、甘党なのね……将来太るわよ?──それよりも敬語!」
あっ!癖で敬語になってしまったみたいだ。
やっぱり年上相手だと普通に話すのは少し大変だな。
アルマスが相手だと躊躇わないんだが……てかアレを年上と考えて良いんだろうか?
隣のアルマスに視線を向ける。
身長は俺と同じくらいで大人びた綺麗な容姿。
そして長くきめ細かな水色の髪が大人の感じを引き立てている。
──そんな美少女アルマス様は、さっきのチョップを引きずっているらしく今だにブツクサ文句を垂れて居た。
話にもさっきから全然入って来ないし……いや、静かだからいいか。
良し!このまま黙ってろアルマス!
──その後、アレクセイさんが追加で用意してくれた砂糖を使い、程よく甘くなったコーヒーを頂いた。
「それで?孝志ちゃんはこれからどうするの?」
「………?」
俺がコーヒーを味わっていると、唐突に変な事をアレクセイが言ってくるので思わず首を傾げてしまう。
そしてアレクセイは、そんな孝志を見て優しく微笑むと、彼が思っても無かった事を口にした。
「……これからは、この城に住むんでしょう?」
「………え?どういう事?」
「これからの事よ──ねぇ孝志ちゃん……良かったら、弘子や私の住むこの城で一緒に暮らさない?」
何を言ってるんだ?っと言おうとしたが、少し考えるとそんな言葉を口にしようとは思わなかった。
その表情を見てアレクセイは孝志の考えを見抜いたかの様な言葉を口にする。
「確かに孝志ちゃんは勇者として呼び出されたわ……孝志ちゃんに魔王を倒して貰わないとこの世界は困るのでしょうけど……無理やり呼び出された孝志ちゃんがそんな事気にする必要は無いのよ?」
「確かにそうですけど……」
俺は言葉にして頷く。
いまアレクセイさんが言ってくれた理不尽さは、ずっと抱いてきた事でもあったからだ。
「──それに、今回の魔王は力こそ強大だけど好戦的なタイプでは無いわ。だから此処に隠れていたら、攻撃される事も無い……私はね?──弘子、ハルート、アルマス、ミーシャ……それに、貴方が無事なら、ほかの者がどうなろうと構わない。冷たく聞こえるかも知れないけど、私は大切な人たちさえ無事ならそれで良いと思ってるのよ」
「幾ら何でもそれは……というか俺のこと甘やかし過ぎじゃないですか?」
「あらぁ?別に良いじゃ無い?好き放題私たちに甘えちゃいなさいよ?」
マジでどうしようか?
本当に今から此処に暮らしても良い気がしてきたぞ。
「──ふふ……無理に答えを焦らなくても良いわよ。さっきも言ってたけど、獣人国に用事があるのよね?それが終わってからでも構わない……ただ、私は残って欲しいと思っているのは覚えて置いて?」
「……わかった」
「それにラクスール王国に戻ったら、いやでも面倒事に巻き込まれるはずよ?勇者である立場上、それからは逃れる事は出来ないわよ……それに──」
アレクセイさんは一息置いて言葉を続ける。
「今回の国王、ゼクス・ラクスールは信用できないわよ?」
「あの国王ですか?」
確かに、あの人はヤバイ。
マリア王女は勇者である俺相手に、王様のことをボロクソに言ってたけど、結構有能そうに見えたんだけどな。
「一度話したこと有りますけど、あの王様なら結構凄そうな人でしたよ?」
孝志の問いに対し、アレクセイは首を横に振りながら答えた。
「孝志ちゃん。凄いじゃなくて、実際に凄いわよ…?いえ、正確には凄かったと言った方が正しいかしら?」
「過去形なの?」
「そう。彼はね、妻と死別してから性格が大きく変わってしまったわ。無能になったとかでは無いけどね?……何か良からぬ事を考える様になったと言った方が良いかしら?……まぁともかく底の知れない男ね」
「……それはめんどくさいですね」
俺がそんな風に深く考え込んでいると、アレクセイさんは更に気になる事を言い始めた。
「それに国王とは別にもう一人、ラクスール王国には信用ならない人間が居るのよね~?……孝志ちゃんも良く知ってる人物よ?」
「俺も知ってるだとぉ?!」
「……え?何で急にそんなキレてるの?」
「なんとなくです」
「うそぉ~、もうどんだけ~!」
やっぱり二丁目じゃねーか。
それより、俺の良く知ってる人物か……いや、アレクセイさんは俺のこと今日まで知らなかったはずだろ?
「どうして俺が知ってると思ったの?」
俺は直接聞くことにした。
「だってね~?数日前にラクスール王国が勇者を召喚してたのは知ってたし~?だとしたら勇者として孝志ちゃんは間違いなく、王族の連中やトップ戦力達とは会っているわよね?」
「確かに、会って来たけど……信用できない人間なんて居なかったよ?」
「それはどうかしら?──居なかった?勇者に対して不審な行動をしてきた人物が一人」
俺は少し思い返してみた……
…………
…………
一人じゃなくて沢山居たな!!俺に対して不審な行動してきたやつ!全く的が絞れないんだけど!?
「たくさん居たわ!」
「やだ~!モテモテェ~羨ましい~!」
テーブルの向かいから手を伸ばし、俺の胸を指先でクリクリしながら煽ってくるオカマ。
──ヤベェ……思わず殴る所だったぜ……手を出しても勝てないから気を付けないと……
てか不審な奴は沢山居たけど、信用できないのはあまり居なかったと思うけどな…?
敢えてそのメンバーで信用出来ないと言うならネリー王女くらいか…?
いや、もう気になる事は聞いちゃえ!
「誰なんです?その人物って?」
「ふふ……♡ラクスール城に戻るなら、その人物を警戒させる為にも教えるけど、ここに残るなら知る必要は無いから教えないわん」
つまり、出来るだけ俺には教えたくない人物って事か……
「それは……おれが聞いたら落ち込む様な相手って事ですか?」
「……そうよ。聞いたら恐らく孝志ちゃんは、裏切られた気持ちになると思うの……だからここに残るのなら、そんな気分を味わせるつもりなんて無いから教えない……私たちは全力であらゆるモノから貴方を護り続けると宣言するわ」
「………」
孝志は無言で真剣に考え込んでいた。
──松本孝志という男は何より面倒事を嫌う。
にもかかわらず、この世界に来てからは面倒事に巻き込まれ続けていたので、アレクセイの提案には驚くほど心が揺らいでいた。
「それに、王国だと色々なしがらみがあるでしょう?魔王の討伐が終わった後も、それなりの権力を持たされて、自由気ままに生きる事は出来なくなると思うわ」
それっぽい事は、初日にマリア王女から聞かされて居た。
魔王討伐後も面倒事には巻き込んでしまうけど、何かあったら助けるから相談してとも言われてったっけ…?
そう考えたらあの女……何気にいい奴じゃね?
そしてアレクセイさんは、考え込んでいた俺が落ち着いたのを見て話を進める。
「だけどこの城で暮らして行くなら、そんな心配は皆無よ?私達は全力で貴方を甘やかしてあげるわ。弘子は勿論、アルマス……もちろん私やハルートもよ?……それに、欲しい物は何だって用意してあげるし、一生好きな事をさせてあげるわよ?」
「そんな夢のような人生が…?」
「ええ。ここで暮らすなら、実現しちゃうの♡……ああん♡先に言っておくけれど、私は男が好きだけど弘子の孫である孝志ちゃんには手を出したりしないわ……それは安心して頂戴♡」
……クソッ!言い方は全く信用できないのに、なんとなく本当の事を言ってると信用出来るんだよな、この人は……
……けど、おばあちゃん初対面の孫を可愛がってくれるだろうか?アレクセイさんは絶対に大丈夫みたいな事を言ってるけど、拒絶されたら嫌だな……それが凄く不安だ。
まぁどっちにしろ、今は此処に留まっている事は出来ないけどな……どう生きるかにしろ、全ては獣人国の一件が終わってからにしよう。
いや、待てよ?
──ここで俺はテレサの事を思い浮かべる。
仮にこの城で俺が暮らして行くと決断した所で、アレクセイさんはテレサの事を容認してくれるだろうか?
テレサは眼に映るモノと、周囲200m圏内の生命に恐怖感を与える呪いを宿している。
アレクセイさんは懐がかなり広そうな人だけど…彼女は受け入れてくれるだろうか…?
俺は思い切ってテレサの事をアレクセイさんに伝えた。
すると、テレサの名前と呪いの話を聞いたアレクセイさんは驚愕の表情を見せる。
そしてオデコに手の甲を当てる仕草を見せた後で、ある事を淡々と語り出すのだった。
「実はね?一応、私はオカマなりに色々と調べて、今の時代の要注意人物という者を挙げているんですけどね……」
オカマなりにって……
しかし大事な話っぽいので、俺は茶々を入れずに黙って聞く事にした。
「まず、私が危険度S級の要注意人物に認定したのは、人間側に二人、魔族側に一人。魔族の方は十魔衆の序列一位・【カルマ】と言う者で、人間側ではユリウスとアリアンの二人……そして極めてS級に近い物にオーティスが居るわ」
なんだ……話を聞く限り、人間側が超優勢じゃんか。
ぶっちゃけ、勇者要らなくね?もうこの城に引き篭もってもいい気がするんだけど…?
俺はそんな事を考え始める。
「それで、ここからが大事な話になるんだけど……私が唯一、危険度EX級に認定した人物が居るの。それがこの時代の魔王と呼ばれている者よ……はっきり言って、今回生まれた魔王は歴代魔王の中でも圧倒的な強さを誇っているのよ」
「……なんでよりによって俺が呼び出された時期にそんな魔王が産まれたの!?」
もうホントに引き篭もった方が良いのかもな……この城に残るか……お外怖いし。
「それでねぇ?その魔王の正体を私は既に掴んでいるですけど……その魔王、名前はテレサと言うのよ?しかも特徴として、醜い容姿と他者に恐怖を与える呪いを身に宿した少女なのよ…………もうわかったでしょ?」
「………うそでしょ?」
俺は思わず信じられないと言った表情でアレクセイさんを見てしまう。
あんな可愛い子が魔王なんて……だけど、それと同時に納得も出来た。
あれだけ凄いスキルをバンバン使っていたから、只者では無いとは思っていたからだ。
流石に、まさか魔王でユリウスさんやアリアンさんよりも強いとは思わなかったけど……
でもよりによって魔王か……
正直、テレサが魔王だからと言って、俺のテレサの扱いが変わる事はない。
だけど、テレサはどうだろうか?
無いとは思うが、俺が勇者だと知ったら離れて行ってしまうかも知れない。
それに、アレクセイさんも俺が連れて来たのが魔王だと知ってしまったから、もうテレサを受け入れてくれる事は無いだろうな……
孝志は少しナーバスな気分に落ちるが、アレクセイの愉快そうな表情を見て不審に思う。
「しかし魔王ね……ふふ」
「あまり驚いて無いですね?」
「弘子も……孝志ちゃんとはだいぶ始まりは違うけど、自分が倒した魔王と和解して友達になったのよ?」
おばあちゃんマジかよ……血は争えねーな……
そしてアレクセイさんがあまり驚かなかった事も納得がいった。
知り合いのおばあちゃんが魔王と仲良くなった所為か、他の人が同じ事になっていても『そうか!お前もか!』といった感想しか出てこないものである。
──それにしても400年前の魔王か……
魔王に選ばれる者は人外だと聞くし、長寿なエルフ族のアレクセイさんや、不老長寿になったおばあちゃんの様に、その魔王もまだ生きているかも知れない。
もしかしたらアレクセイさん、その魔王について何か知っているのかもと思い、俺は興味本意でその件を訪ねる事にした。
「アレクセイさんは、400年前からおばあちゃんと一緒なんですよね?……もしかして、その魔王について何か知ってます?」
いや、やっぱり癖でどうしても敬語になってしまうな。
その内慣れるかも知れないから今は許してくれ!アレクセイさん…!
そんな事を思いながら顔を上げると、何やらイタズラっぽい笑みを浮かべるアレクセイさんの姿が眼に映った。
……何をニヤニヤしてんねん!っと言いかけたが、それを言うよりも先にアレクセイさんから衝撃的な事実を突き付けられる事となる。
「……うふふ♡目の前に居るじゃないの♡」
「……え?」
そう言うとアレクセイさんは立ち上がり、自らの胸に手を当てウインクしながら軽く会釈をする。
それから、改めて自己紹介を始めた。
「──では改めましてぇ……私の名前はアレクセイ。【アレクセイ=ベルゼバブ】。400年前、弘子に敗れるまでは魔王を名乗って居たわ……それと同時に、弘子とアルマスに哀しい運命を背負わせるキッカケを作ってしまった者よ……」
「……ま、魔王?」
俺はテレサが魔王と聞かされた以上のショックを受けてしまう。
アレクセイさんが魔王とか嘘だろ?
──ていうかアルマス、いつまでも落ち込んで無いで、会話に加わって欲しいんだけど?
驚愕な事実が立て続けで、そろそろキツイです……
孝志のセコムが強化されていく…!
別のサイトより孝志がつけたアダ名で質問が有りましたので、お教えしておこうと思います。
孝志が偶にアレクセイを『二丁目』と呼びますが、これは新宿二丁目にオカマが集まっている事から、それに因んで付けたあだ名です。
分かりにくくて非常に申し訳ない…!




