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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
4章 明かされる真実と『狂』の襲撃者
61/217

8話 オーバー・ザ・デビル 中編

本日、6話連続投稿


4話目です



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


~アリアン視点~



この場所へアリアンがやって来たのは松本弘子と同じ理由である。



──孝志達が獣人国へ向かった次の日の朝、王からアリアンに勅命が下った。



その内容は──


『危険地帯の警戒を行なっている宮廷魔導師が最重要監視区域デルラット深穴の最奥地【封印の間】に侵入者を確認。直ちアリアンはこの場所へ向かい、悪魔の封印が解かれる前に侵入者を拘束、及び、排除せよ』


──とのことだ。



正直、ユリウスから国を任されたアリアンとしては、約束を反故にする様で嫌だったが王の勅命を断る方がユリウスから怒られると考え、素直に引き受けた。


そして、王国の三強と謳われているユリウス、オーティス、アリアンの三人が同時に王国を離れてはマズイとの事で、信頼出来る魔法使いが偽装の魔法を施し、今はアリアンを演じている。

実際に事が起こればどうしようも無いが、この偽装で抑止力にはなる筈だ。


因みにその魔法使いが語るに、アリアンに成り代わるのは非常に難しいらしい……性格的な意味で。



──そして勅命を受けた数分後にアリアンはデルラット深穴へと向かった。


移動手段は徒歩だが単独行動のアリアンは尋常じゃなく速い。

王宮を飛び出してものの数分の間に王宮が小さく見える場所まで移動した。

集団移動では周りに合わせて行動するが、今は邪魔になる者が居ない為、数時間も立たないうちに遠く離れた目的地に到着する事だろう。


「確か、大掛かりな封印だから解くのには一日掛かると言っていたっけ……」


アリアンは移動しながら宮廷魔導師に言われた事を思い出した。

そして何とか封印解除が終わるまでに間に合わそうと、更にスピードを上げて走った。



──休み無く走り続けたアリアンは数時間後に目的地のデルラット深穴に到着する。


そして到着後も休む事なく深穴に突入した。


難易度は最高レベルと言われたこの深穴もアリアンにとって攻略は容易い。迫り来る敵を次々と、一撃で切り伏せながら進み続ける。


加えて、迷宮の地図を預かって来たので、迷う事無く目的の最奥地に到着する事が出来たのだった。



しかし──予定よりも遥かに早く到着したにも関わらず、悪魔は既に解き放たれてしまった後。


悪魔と思わしき人物は、封印の施された扉の直ぐ近くで立ち尽くしている事から、たった今解き放たれたのだろう。

タッチの差で間に合わなかったというのは、まさにこの事だとアリアンは思った。



悪魔の姿は、真っ白な髪で、血のように真っ赤な瞳と八重歯の様に尖った牙が吸血鬼を思わせる。


性別は、恐らく女性。

それも人間の様な見た目で、人間として見ても非常に整った容姿の女だ。


また、それが周囲に振りまく威圧感の凄まじさから、やはり、アレが悪魔で間違いないだろうとアリアンは考えた。


そして一眼で、自分でもまともに戦えば勝ち目が無いと悟る──それならば、と。


彼女は自分の美学に反するが、解き放たれた直後で油断している隙を突いて攻撃する事にした──!



アリアンは相手に飛びつく為、脚に力を込める。

力を受けた地面はピシピシと音を立ててヒビ割れて行く。

脚に力を込めていつでも飛び出せる状態になった所で、アリアンは相手に隙が生まれるまで待つ事にした。


そして、攻撃目標の悪魔が後方を振り返り、誰も居ない岩場を気にする素ぶりを見せ始めた。



──今だ!


アリアンは心で掛け声を上げると音速の速さで悪魔に突進した。

遠慮は一切なし。敵を確実に屠る為、アリアンは頭目掛けて剣を全力で振り下ろした。


だが、その全身全霊の一撃は悪魔の右手によってアッサリと掴み防がれてしまう。

それも後方に身体を向けたまま此方を一切振り返らずに……


「ば、バカなッッ!?」


アリアンは驚きの声を上げる。

この驚きの声は全力の一刀を防がれたことのみが原因ではなく、自分の予想を遥かに上回る相手との力の差を理解してしまい思わず上げてしまった声だ。



「うむ……良い一撃じゃ。人間にしては中々悪くない」


「クッ!」


アリアンが後ろへ飛び引く動作を見せると、悪魔は掴んでいたアリアンの剣をアッサリ離した。

剣を離された事で簡単に体勢を立て直す事が出来たアリアンは、剣を構えて悪魔と対峙する。


「う~ん……後ろに逃げたのう……だいたいそう言う事をする奴は妾の敵では無いぞ?」


「……ふー……」


アリアンは相手の言葉に耳を貸さない。

深呼吸で気持ちを落ち着かせ、再び悪魔目掛けて踏み込んだ…!


上段から振り下ろし。先程と同じ軌道だが、相手がその一閃を掴みとろうと右手を出した瞬間、アリアンは強引に身体を捻り、一回転して下からの斬り上げに攻撃方法を変える。


しかし、回転が加わった事で更に鋭さを増した筈の一撃だったが、今度は刀身を足で踏まれてしまう。


「ぐぅッッ!」


アリアンがバランスを崩して地面に倒れると、白髪の悪魔は尖った爪で攻撃を仕掛ける。


剣は脚で踏まれたままだったので、止む終えず剣を手放して横に転がり攻撃を躱した。

アリアンが居た場所には、悪魔の手刀が地面に深々とめり込んでおり、避けなければ確実に死んでいたとアリアンは肝を冷やした。


そんなアリアンを悪魔はつまらなそうなに見る。


「なんじゃ?得物を手放すのか?……では、勝負あったのう……」


剣を手放し、徒手となったアリアンでは勝負にならないと踏んだ悪魔は戦いに決着を着けるべく、アリアンの元へ歩み寄る。


アリアンは格闘戦は得意な部類だが剣術と比べる程ではない。

故に、剣を失ったアリアンに勝ち目など無い……筈だが──



「それはどうかしら?」


アリアンは近付いてくる悪魔に笑みを浮かべた。



「ん?」


悪魔は絶望的な状況で笑ってみせるアリアンを不審に思うも、歩みは止めず、ジリジリとアリアンとの距離を詰めて行く。


まだ充分に距離は開いてる状態だが、不意にアリアンが手を前に向け叫び声を上げた。


「目覚めよ!【聖剣シュヴァリエ】ッッ!」


アリアンがそう叫ぶと、彼女が突き出した手の中に真っ白な剣が姿を現す。

その剣は刀身はもちろん柄の部分さえも真っ白で、剣全体からまるで冷気の様な目で見えるオーラが放たれていた。


これはアリアンがかつて白龍を討伐した際に、討伐した龍に認められ授かった剣だ。

鉄をも紙のように簡単に斬り裂き、刀身に念を込めれば一切の魔力消費なしで氷系魔法を放つ事が出来る恐ろしい能力を秘めたシロモノ。



そして冷気を放つ剣は、炎の様に赤いアリアンの長髪とはアンマッチに悪魔の目には映った。


「……ほう…?隠し球があったとは……だが──」


それでも妾には勝てない……と悪魔が言葉を続けようとした時だった。


「【神化】ッッ!!」


アリアンは畳み掛ける様に自らのスキルを開放した。



──神化と叫んだアリアンは、悪魔が思わず後退りする程に眩い銀色の輝きを放つ。

この神化というスキルは、使用者の腕力・速度・魔力を爆発的に引き上げる事が出来るユニークスキル。


だがデメリットとして効果を発揮している間、使用者の肉体に相当な負荷が掛かってしまう。


故に、アリアンは決着を急ぐ為直ぐ様悪魔に攻撃を仕掛けた。


──アリアンは力強く地面を踏み、白髪の悪魔の懐に潜り込んだ。

アリアンの踏み込んだ地面は、神化前のアリアンではヒビ割れる程度の損傷だったのが今は大きく歪みクレーターの様に形状を変える。


懐に入ったアリアンは、そのままノーモーションで悪魔の頭目掛けて剣を強く突き刺す。


「──ぬぁッ?!」


悪魔は、先ほど迄までとは段違いなアリアンのスピードに反応が遅れるも、何とか頭をズラして脳天への一撃を躱した。

だが、反応が遅れた悪魔の頬を掠めたらしく、悪魔の頬からは赤い血が滴り落ちていた。


「──はぁッ!!」


もちろん、頬を掠めた程度で勝負が決まる事は無い…!

アリアンは更に攻撃を畳み掛ける。


先程と同じ突き刺しによる一撃…!悪魔は身を躱そうにも間に合わないと悟り、両手を前に出して防御に試みる。


高い硬化魔法を使っていた悪魔の手に突き刺さりはしなかったのもも、破壊力の有る一撃で悪魔は後方彼方まで吹き飛ばされてしまった。

そして、広い洞窟内の岩の柱を幾つも壊しながら壁際にめり込んだ。


「……ぐぐッ…!」


それでも、悪魔は死なない。

直ぐに立ち上がろうと動き始めた。



──だが、アリアンはそれを許さない。


アリアンが刀身に力を集中させると、切っ先に青色の球体が出現する。

そして、禍々しいオーラを放つそれを悪魔に飛ばした。


その球体が悪魔に接触した瞬間、的となった悪魔を中心に広範囲が氷漬けとなり悪魔は完全に活動を停止した。



「──はぁ~……」


アリアンは神化とシュヴァリエを解放したまま、氷漬けとなった悪魔の確認へと向かう。

広いとは言っても洞窟という密閉された空間に、突如として巨大な氷の柱が生み出されたのだ……周囲の温度が極端に下がり、ヒンヤリとした冷気が洞窟内を漂っている。


アリアンが氷漬けになった柱の側に到着すると、悪魔の姿が氷の中に確認できたのを見て、この戦いの勝利を確信した。


「ふぅ~、強敵だった。ここまでの相手は、本気になったユリウスとテレサ以来だな」


そう呟いてアリアンが神化を解こうと力を緩めようとした……その時だった…!


ピシピシ、と氷の柱に亀裂が入り始めた。


「なにっ?!」


それを見て再び身構えるアリアン。


この氷は聖剣魔法によって造られたもので、アリアンが自らの意思で溶かない限り、どれだけ高温の炎で炙ろうとも決して溶かれる事がない。


それに今、亀裂が入り始めていた。


アリアンは氷漬けにされた悪魔を見る……すると、閉じられていた筈の彼女の目が見開き、真っ赤な瞳に再び光が灯っていた。


その目が開かれたのを合図に亀裂が瞬く間に広がり、氷が粉々に砕かれる。

そして中からは悪魔がゆらりと何事もなかった様に顔を出し、こちらへ近付いて来た。


「ふぅ~……冷える冷える…!──それよりも、お主は強いのう~……前言撤回じゃ!お主は人間にしては強いのではない。妾が戦った中でも、ティファレトの次に強いぞ!ははは、良いのじゃ!復活した甲斐があったわい!」


「クソッッ!!」


アリアンは問答無用で悪魔に斬りかかった。

だが、今度はアッサリと爪で防がれてしまう。


「くはははっ!少し本気を出すぞ!」


氷漬けから抜け出した白い悪魔は本気を出すと言った通り、本当に手を抜いて戦っていたらしく、神化したアリアンと互角の攻防を繰り広げる。

いや、互角とは言ってもまだ手を抜かれてるとアリアンは感じた。



……アリアンのシュヴァリエと、悪魔の尖った爪の撃ち合いが洞窟内に響き渡る。


互いの攻撃が重なり合う度に洞窟内には甲高い反響音と轟音が鳴り響き、周囲の地形が壊されて行く。



──そして数百回ほどの撃ち合いの後、神化による身体への負担からアリアンの肉体は限界を迎え、力尽きる様にその場に倒れ伏してしまうのだった。







戦闘シーンは難しいです。


何回か書き直しましたが、自身ないです。

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