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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
3章 仮面少女との出会い
45/217

10話 扉の向こうに

更新遅れて申し訳ないです。


2章を大幅に改稿しておりました。


改稿した話は2章 2話 3話 4話 5話 エピローグです。


お時間ある時に見て頂けると嬉しいです。







「ん……ここ……は……?」


ダークエルフの女が目を覚ました。俺とアルマスは仁王立ちで彼女を見下ろしている。

ちなみに今は完全な非常事態なので、アルマスは消えずに一緒に居て貰う。


俺たちの姿を見たダークエルフは、一瞬だけ息を呑むのだが直ぐにニヤリと笑みを浮かべ始めた。



「──は……ハハ、はははは!どうやら成功した様だな!この場所から出られるとは思うなよ!貴様は!ここで死ぬのだ!はははh──むぎゅっ!」


俺はげんこつをかましてやった。

正直、女を殴るのは初めてだったが、殴らずには居られなかった。後悔は無い、うん。


そして頭を殴られたダークエルフは叩かれた箇所を抑えて肩を震わせていた。



「……うう……いだい……痛い痛いっ!どうして殴るのよ!」


「どうして殴られないと思ったの?」


俺は即答で返してやった。てか泣いてるし。

なんか思ってたのとキャラが違う。もっとクールビューティーかと思ったんだけど?



「いいだろう……ここで殺すが良いさ……殺せ!さぁ殺せ!──魔王様ばんざーい!」


そう言うと彼女は大の字で仰向けとなった。なんか唐突に覚悟を決めやがったなこの女。

ま、本人が言うなら仕方ないか……



「よし、アルマス。俺は手を汚したくないから、代わりに殺ってくれ」


「了解しました、マスター」


「──え?」


このやり取りを聞いたダークエルフは、長い耳をピクピクと動かしながら跳ね起きた。



「こ、殺すのか?本当に?──力を失って抵抗出来ない私を殺すのか?」


心底意外そうな表情をするが、自分で殺せって言っただろ?というか、殺すなんて話がそもそも冗談なんだけどね。

まぁ少しはビビらせないと気が済まない。



「ああ……お前を殺す」



俺の言葉を聞いたダークエルフは、それが意外だったらしく引き攣った笑みを見せ始めた。



「ゆ、勇者なのよね?──て、抵抗出来ない相手を手に掛けて何とも思わないの?!」


「いや、まぁ……なんというか、仕方ないから殺すしかない的な?」


「か、軽い…」


すると彼女は俺がマジで殺すつもりだと思ったのだろう。今度は必死の形相を見せ始めた。



「ま、待ってくれ!た、頼む!命だけは助けてくれ!この通り!」


……土下座だと…?しかも角度も完璧な誠意の伝わるものだ。ダークエルフが一体どうやってここまで極めたのだろうか?

ふー……ここまでの土下座を見せられたら、もう許すしかないな。初めから殺す気は無いけど。



「てかさっきあんだけ覚悟決めてたのに、何で今更嫌がるんだよ?」


そうだ。さっき僅かしか見れなかったが、あのカッコイイ大人のお姉さん的なキャラはどうなったんだよ。



「さっきまでは精神を抑える魔法を使っていたのよ!使ってない今は覚悟なんて出来てないの!わかった?!」


「なんでキレてんの?」


「ダークエルフは魔力が全てなのっ!だからそれを失ったら……うわ〜ん…!どうして寝てる間に殺してくれなかったの…!うぅ……怖い……」


あ、めっちゃ泣いてるんですけど。こんな所に飛ばされて泣きたいのはこっちなのに。

俺は思わず額に手を当てるという、橘が好んで使いそうなキザな仕草をとってしまった。


そんなやりとりをしていると、今まで黙っていたアルマスが未来兵器の様な銃を取り出し、ダークエルフのこめかみへその銃口を向けた。20cm程の至近距離だ。



「泣き止みなさい。でなければ引き金を引きますよ」


「──………」


一瞬で泣き止みやがった……プライド無いのかこのダークエルフは?いや……それよりも──



「アルマス、その銃はなんだい?」


それが気になって尋問どころじゃ無いんだが?

真っ白で綺麗な色をした片手サイズの武器だ。至る所に何らかの紋章が彫られている。

何というか、死ぬほどカッコいいんだけど?



「はい、レーザーガンで御座います、マスター」


レーザー?それ凄くね?しかもアルマスのアンドロイド的な見た目とマッチしており、そこも恐ろしく似合ってる。と言うかコイツ……



「そんなの何処から出したの?」


「内蔵部品ですが?何か?」


アルマスはそう言うと手を前に出した。

すると、そこにアサルトライフルの様な物が出現し、彼女の手に握られる。

部品というか、異空間から取り出した様な感じだ。



「……めっちゃカッコイイじゃねーか」


「ッッ!!……ふふ、他にも小型ミサイルやこれ以外の実弾兵器なんかも備え付けてありますよ?マスターって銃系の武器大好きですもんね」


彼女は俺が褒めた事で嬉しそうな表情を見せながら語ってくる。

実はアルマスが言う通り俺は銃が大好きだ。もちろん、所有したいとかでは無く純粋に見るのが好き。


…まぁそれは良いとして。



「おお?何で知ってるんだよ?」


「え!?あ、え?いや、まぁ良いですじゃん?」


唐突に言語機能が狂い出すアルマス。



「動揺してるのが見て取れんなお前、はは」


思わず笑ってしまう。するとそのやり取りを黙って見ていたダークエルフが間をみて話し掛けて来た。



「それで?これからどうするんだ?出口なら判らんぞ?」


「………」


誰のせいだと思ってんだよ…ふざけ過ぎだろこの女。

俺はもの凄くイライラを募らせるが、アルマスもムカついたみたいで、降ろした銃口を再び彼女に向けた。



「ま、まて!悪かった!謝るからその変なヤバそうな物をこっちに向けないでくれ!」


すると、アルマスは大人しく銃を降ろした。

案外、素直に言うこと聞くんだな……いや、多分やり取りを続けるのが面倒くさかったんだろう。



「てかここから出たいの?」


「当たり前だろ?何を言って──ひっ!?わ、分かったから銃口を向けないでくれ!」


このエルフ面倒くせぇ…。

俺はアルマスを手で制止し銃を降ろすように指示する。

と言うか人前だと素直に言うこと聞いてくれるんだなアルマス。俺の好感度上げてどうしたい?

俺は再びダークエルフに向き直る。



「お前ってさ、俺を閉じ込める為に術を使ったんだよな?なのに俺たちが脱出出来ても良いのか?」


この問いに対しダークエルフは気まずそうに上を見上げ問いに答えてくれた。



「さっきまでは、いわゆる自分で自分を洗脳していた状態だった。もとより私は争い事は好まない性格でな」


ダークエルフはここで僅かに間をおき、気持ちを落ち着かせて話を続ける。



「だから戦う覚悟を常に維持して居られる様に、常時自己暗示を掛けていたのだ。魔力が消え、この自己暗示が完全に解かれて今は、普通に死にたくない」


最後の方は何故かキメ顔。

……もしかしてこのエルフ、無理矢理に戦わされていたのだろうか?


そう思うとちょっぴりだけ可愛そうに見えて来たぞ。少し優しくしてやろうか。

俺はそんなことを思うのだが、アルマスは少し引っかかる事があるみたいだ。



「腑に落ちませんね…では何故、魔王軍に居るのですか?争い事を好まない魔族を無理矢理戦わそうなんて難儀な事を魔王軍ではわざわざ行ってるのですか?それとも貴女は最初から強かったのですか?」


「いや、最初は弱かった。ここまでの力を身に付けたのは修行の賜物だ」


「では戦いたくない貴女が、何故、魔王軍に?」


え?別に強制じゃ無いのか?てかアルマスって何気に凄い頭回るよな。

そしてアルマスの質問に対して、ダークエルフは少しモジモジした後で口を開いた。



「無論、魔王様のお役に立ちたかったからだ!」


それを聞いてアルマスは呆れた様に息を吐いた。



「大した忠誠心ですね」


「そうだろ?」


カチャ──

アルマスは無言で銃口を向ける。本日4回目。

因みに俺だったらもう撃ってるね。



「冗談です!調子に乗りましたごめんなさい」


そして当然の如く速攻で土下座を披露するダークエルフだが、今回は銃を中々下げようとはしない。

まさか本気で撃つ気じゃないよな…?一応は止めておくか。



「アルマス、脳みそブチまけると汚いから、やめときなさい」


「脳みそをブチまける!?なんて恐ろしい表現をする人間なんだ!野蛮人め……!」


「「………」」


コイツしんどいわ。アルマスが大人しくて良かったよマジで。あれ?そう言えばアルマスさっきからうるさい様で静かだな。



「お前大人しくないか?」


俺の疑問にアルマスは何を言っているのか?と言いたげな表情を浮かべる。



「現在、敵とはいえマスター以外の人物がいらっしゃるのですよ?マスターが恥を掻くような事は言いませんよ」


「…二人の時もそれで頼む」


てかコイツここまで演じられるなんてすげぇな、頭おかしいけど。


そして、もう一度ダークエルフの方を向いた。視線が合うと一瞬だけビクッとするが、すぐに睨み返して来る。良い根性してるよマジでコイツ。



「それで?お前はどうしたいんだ?」


「出口まで同行させて下さい。それと出来れば安全を確保して頂けたらと」


睨み付けてきた割には殊勝な物言いだな。

てか言ってる事は図々しいにも程があるぞ!


でも置いて行ったら確実に死ぬだろうし、連れて行くしかないか……

俺は渋々連れて行く事にした。



「安全の確保は無理かも知れないけど、出口までの同行は許可してやろう」


「おお!流石は勇者だ!では宜しく頼む!」


ちっ……クソエルフが偉そうに。

まぁ俺たちを守るのはアルマスだし、俺も何だかんだ人の事言えないので余計な事は言わないでおくか。

俺にはいざって時のバリアがあるしね!……いや、これもアルマス頼みになるのか。


とりあえず、お騒がせエルフさんは臨時とは言え一緒に行動する事になった。

それと一緒に行動するなら毎回呼ぶ時に、お前とかダークエルフとか言うのはなんか嫌だし、名前くらいは聞いておくか。



「名前は何ていうんだ?」


「?…ミーシャだが、それを聞いてどうするんだ?」


「いや、お前とか言い続けるのも嫌だしな。因みに俺は松本孝志。あの水色なのがアルマスだ」


最後に指を指してアルマスを紹介すると、合わせる様にアルマスは丁寧なお辞儀をしてきた。

居るよね〜こういう他人と接する時に猫被るヤツ。いつもの俺たちのやり取り見せてドン引きして貰おうか?


そして互いに名前だけの自己紹介が終わった後も、ミーシャは怪訝な表情を崩さない。



「…人間のそういう気持ちはサッパリわからん」


文化の違いというヤツだな。一緒に行動するなら名前を知っていた方がお互い何かと便利だぞ?

お前って言い方だと誰に言ってるか解らないし、ダークエルフだと種族名だから呼んでて可笑しな気分になるし。



──そう言えば、この女に何か大事な事を聞こうと思ってたんだけど何だっけ?

余計なやり取りの所為で忘れたじゃないか!……まぁその内思い出せば良いか。



そして話が終わり、アルマスの生み出した光を頼りに周囲を探索した。

アルマスの光魔法は便利だが、照らせる範囲が狭く探索は難航している。


それを見たミーシャが「魔力を失う前の私ならこれの10倍の光を生み出せるぞ」とアルマスを挑発し、睨ませたりもしてたな。


しばらく探索を続けてると、上へと続く階段を発見する事が出来た。

人がひとりギリギリで通れる位の幅の狭い階段だが、この階段を登って地上を目指す事にした。


壁避けの為にミーシャを先へ行かせて、最後尾にアルマスが居る。前と後ろで俺を挟むような形だ。

聞きようによっては実に素晴らしい。


そしてミーシャを先頭に階段を登ろうとした、まさにその時だった──



「──ッッ!!……マ、マスター……う…ぐぅ…」


唐突に後ろを歩いていたアルマスが気持ち悪そうに姿勢を前のめりに崩しだす。

俺は慌ててアルマスの元へ駆け寄った。



「どうしたアルマス!?」


「……うぅ…」


口元を抑えて気持ち悪そうにしている。

先程まではピンピンしていたのに……何処かで体を悪くしたのだろうか?もしかしてミーシャか?

そう疑って彼女の方を見るが、ミーシャも具合が悪そうにフラフラしている。彼女が何かをした訳ではなさそうだ。

ただミーシャの場合は少しアルマスとは違って、ある一言を口にした。



「──ま、魔王様だ……どうして……そ、そうか……魔力を失ったから耐性が……」


ミーシャはある場所を見つめてこんな事を口にした。

魔王?どういう事だ?


そしてミーシャは階段から少し離れた所に設置されている、黒塗りの扉を見つめている。

暗くてさっきまで存在に気が付かなかった。ミーシャも何らかの気配を感じて今し方その扉を発見したのだろう。


これに関してはアルマスも同じで、扉の方を苦しそうに見ている。

四つん這いの体勢だが、土を力強く握り締める事で、どうにか気分を紛らわそうとしてるのが分かってしまう。



俺も二人と同じ様に扉の方を見るが………何ともない。

彼女達が見せている、気持ちの悪さや恐怖心など全く何も感じない。



だけど──



──俺はその扉から目が離せなかった。

扉の向こう側に何者かが居るのはわかった。隠しきれない程の存在感を扉の向こう側から放って居たからだ。


そして、その存在感を俺は不快とは思わない。


ただ、自分でも信じられない程の興味を抱いてしまっていた──














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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王様楽しみです。 [一言] この状態からエルフの人がついてくるのはかなり違和感…
[一言] この状況でミーシャを同行させるのは理解出来んわ 露骨なハーレムトロフィー要因出されたら萎える
[一言] ボクっ娘魔王来たか( ゜д゜ )ガタッ
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