7話 絞まらない出発
誤字報告、本当に助かってます。
いつもありがとうございます。
最近、どうしても文章が長くなってしまいますが、宜しくお願いします。
──俺は五日目の朝を迎えた。
そう、まだ五日目なんだ。だが体感では数ヶ月は経過している。とんでもない世界だ……逆時間泥棒。
俺は目を覚ましベッドから体を起こすと、さも当たり前の様にアルマスが実体化して俺を見つめていた。
少しビビったんだが……やめてほしいホント。
よく考えたらこいつとも出会ってまだ1日しか経ってないんだよな?なんか既に居て当たり前みたいな雰囲気を醸し出している。
俺は驚かせてきたアルマスを睨みつけてやるのだが、様子が昨日と違う事に気が付く。
俺が寝てる間に何かあったんだろうか?
「おまえいつもと違うけど、なんかあったか?」
「はい……おまえ……?」
「覇気がないぞ?どうしたアルマス?」
昨日はあれだけ過敏に反応していた、お前呼びにも鈍いリアクション。
俺はボケ&突っ込みマシーンのアルマスが、本職を放棄した事で更におかしいと思った。
おまえって100回くらい言ったろか?
「いえ……たか……マスターのステータスを確認しておりましたら、新しく加護が付与されておりまして……」
「勝手に見んなよ!……って、え?加護?なんで?」
俺はベッドから飛び降り、ステータスカードが置いてある机に向かう。そしてカードを確認した。
【ティファレトの加護】
「……どうしてなの?」
速攻で見つかったそれを見て俺は驚愕した。
いったい、いつのまに加護なんか……てかティファレトって誰だ?
「ティファレト様はこの世界の女神様ですよ?」
口に出してないのだが、アルマスは俺の心を読み取ったかの様なタイミングでティファレトの正体について教えてくれた。
この加護の人はこの世界の女神様だったのか……というか心当たりがまるで無いのだが?
それにこの世界の女神って性格悪いみたいだし、マイナスな効果だったり、これを人に見られたら避けられたりしないか?
俺は思った事をそのままアルマスに言うが、彼女は少し悲しそうな表情をみせた。
「……マスターはこの世界の女神様について色々聴かされているものかと思いますが、あまり真に受けない様にお願いします」
確かにそうかも知れない。
それに理由はどうあれ、ティファレトという女神がこの世界を見捨てたと言う話が事実だとしても、俺はこの世界の産まれでは無いので、薄情な言い方になってしまうが憎しみを抱いたりとかはない。
てゆーか今のアルマス、直接知ってるみたいな言い方だったな。
「……知ってるの?この女神様」
「はい……昔、会ったことがあります」
俺がその事を聞くと、アルマスはあっさり白状した。
「アルマスってすげぇ奴だったんだな」
この世界でも唯一の人型スキルとか言ってたし、もしかして女神に造られたとか?
少し気になるが、アルマスの出生などはもう少し落ち着いてから改めて聞くとしよう。
アルマスは神妙そうな顔で何かを考える仕草を見せると、嬉しそうな口振りでこんな事を言った。
「……それと、この加護がマスターに付与されているという事は、人の姿を借りて地上に降りてる筈です」
「……本当に?ってことは俺何処かで会ってるのか?」
「はい。その筈です」
うわぁ……心当たり全くゼロだわ……この世界ってダイアナさん以外にろくな女居ないもん。
……つまりダイアナさんが女神様?
俺が思考していると、アルマスは続けてこう言う。
「それと申し訳ありませんが、この事は他言無用でお願いします」
「解ったよ……つーかアルマスに関する事はだいたい他言無用じゃないかよ」
アルマスは少しバツが悪そうな表情する。
でもアルマスが口止めする事って本当に言わない方が良い事な気がするから従うけどね。
「そういえば人の姿を借りて、今は地上に降りてるんだよな?」
アルマスは黙って頷くだけだ。ティファレトという女神はアルマスにとって本当に大事な存在なのだろう。
思うところがあるみたいだし、どういう関係かは気になるが、アルマスが打ち明けてくれるまで詮索せずに気長に待つか……別に無理に話さなくても良いけどな。
「誰が女神なのか解ったりするか?」
まぁ100%ダイアナさんだけどな。
………え?てことは俺って女神様にロリコンだと思われてんの?それヤバくない?
「はい……心当たりが一人……いえ、恐らく間違いないと思います」
「……もし話せるなら教えてくれないか?」
ダイアナさんだろ?勿体ぶらずとも解ってるって。
……しかし、彼女が口にしたのは意外過ぎる人物だった。
「アリアンさんです」
「……マジで?」
「デジマデジマ」
──え?破壊神じゃなくて女神を聞いてるんだけど?
いやないないないない!アリアンさんが女神とか絶対あり得ないから!もしそうだとしたら詐欺って次元じゃないんだけど?
俺が頭の中で全力否定してると、アルマスはそう思うに至った原因を語り始めた。
「はい、確証があります……昨日、マスターのピンチに彼女と出会ったのは偶然だと思いますか?」
それを聞いて俺もハッとしてしまった。
あの時は超ラッキー位にしか思わなかったけど、良く考えたら偶然って事はあり得ない気がして来たぞ。
「言われてみれば確かにそうかも……」
※偶然です
「それと出会った時の反応も普通と違いました。他人の様に振舞っていた私にマスターを託したのですよ?私は女神様であるアリアンさんがあそこにマスターが来るのを予知し、待っていたとしか思えません」
※違います
「そ、そうだろうか……でも何で俺を助けたんだ?」
一番確率が高いとすれば、アルマスが居たからってのが理由なんだけど──
「っっ!!そ、それは……」
どうやらそれだけではなさそうだ。
アルマスは激しく動揺し、気まずそうに目を伏せ出した。要するに言えない理由があるんだな?秘密の多い女だぜ。
「そうか!俺が勇者だからか!」
俺はアルマスを落ち着かせる為に、適当な事を言って誤魔化す事にした……が、アルマスにそれが当たり前の様に見破られる。
「本当にごめんなさいマスター……ですが時が来れば必ず話します……全ての事を……それまで黙ってる事をどうかお許し下さい」
「……わかった」
そんな申し訳なさそうな顔しなくていいのにな。
いずれ必ず話すとまで言ってくれたんだから、俺としてはそれで十分だ。
俺が気にすんなと手を挙げる仕草を見せると、アルマスはニコっと笑う。
そして1つ思った事がある。
アリアンさんが女神だったら、女神って伝承通りヤバい人じゃん!
──もちろん、真の女神はヴァルキュリエ隊のシーラであるのだが、孝志はこのやり取りを切っ掛けに盛大な勘違いをしてしまうのだった。
────────
時刻は午前8時過ぎ。
俺は指定された待合室の中に居る。中に入った時には既に穂花ちゃんがおり、今は一緒に時間が来るのを待ってる感じだ。
俺は30分前行動タイプだから早く来たが、穂花ちゃんは気が気でないので早く来過ぎたみたいだ。
穂花ちゃん緊張してるみたいだし、それを解せる会話は無いかと考えていると、先に話掛けて来たのは穂花ちゃんの方からだった。
「孝志さん、謝罪ってどんな風に言えば良いんでしょうかね」
穂花ちゃんは困った様な表情でこんな事を俺に尋ねて来た。
「……そうだな」
う~ん…獣人の文化とか知らないしな……どういった謝り方がいいだろうか?
そして俺も真剣にその事について深く考える。
俺が穂花ちゃんの質問に悩んでいると、穂花ちゃんはこんな事を提案して来た。
「でしたら、9時まで時間がありますし、少し練習しときませんか?」
「練習?まぁ良いけど」
謝罪の練習をするのはやらかした政治家かスクープされた芸能人くらいじゃない?
ま、時間までの暇つぶしにはなるだろう。
俺は軽い気持ちで了承した。
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~ユリウス視点~
俺は獣人国へと向かうブローノ王子と、二人の勇者の護衛に選ばれた。というより、俺が行く事になるのは当然だろうと思っていた。
今はオーティスと一緒に廊下を歩いており、彼の話を聴いてる最中(会話にならない)
長い廊下を歩いていると、大きな地響きと共に向こうからアリアンが突進する勢いで突っ込んで来た。
「ユリウスーーッッ!!」
そのまま飛び付いてくるアリアンを、俺は仕方なく抱き止めた。普通の人なら骨逝ってるわこれ。
俺は、ほんの少しの痛みを感じながらそう思った。
「5日も会えないなんて……私壊れちゃうわ!」
獣人国へは馬車で往復4日掛かるが、場合によっては彼方に滞在するかもしれないので、念の為に5日の旅だとアリアンには伝えてある。
「大丈夫だ……それに壊れても治せば良いだろう?」
「……それもそうね!」
どう壊れてどう治せばいいか……訳のわからない会話だが、アリアンと会話する時は頭を使わない方が良い。
いや、もう良い大人なんだから、脳をそろそろ成長させて欲しいんだけどね。
「では私は先に行く……我が盟友よ……赤の騎士と積もる話もあるのだろう……天命に背きし咎人ユリウスよ……しからば」
オーティスは無駄に気を使い、俺たちを置いて先に馬車へと向かって行く。
別に天命に背いて無いのだが?咎人でも無いし。
相変わらず何を言ってるかわからん奴だ。
そして今までノリを合わせて適当にあしらっていたら、なんか本人は親友みたいに思ってるし、周りからもそんな風に見えてるみたいだ。
いや、別に嫌いじゃないけど、5日間ずっと会話出来ない奴と一緒は精神持たんぜ?
孝志なんて絶対おれにオーティスのこと押し付けて来るぞあの性格からして……
そんなオーティスを見てアリアンは眉間に皺を寄せながら、一言こう告げた。
「相変わらず頭のおかしい奴だな」
…………どの口が言ってるんだ?
俺はブーメラン発言を繰り出したアリアンを怪訝な眼差しで見る。もちろん眼差しの意味などアリアンに伝わる筈も無かった。
「それよりも今は充電するの!」
アリアンは俺を力強く抱き締める。
もちろん力いっぱいでは無く、ある程度加減してくれているが、それでも骨がミシミシ逝ってる……普通の人なら脊髄逝ってるわこれ。
「じゃ、じゃあ行ってくるけど、俺とオーティスが居ない間の留守番任せたぞ?」
俺は痛みに堪えながらも、なんとかそれだけは口にした。
「……うん」
さっきは成長してないと言ったが、無理やり着いて来ようとしない辺りは剣聖としての自覚があるようだ。
ラクスール王国の騎士のトップと、魔導師のトップが抜けるのだから、ここでアリアンが抜けるとシャレにならない。
ただでさえ俺たち3人とその他の者達とでは実力に大きな差があるのだから。
正直、オーティスは恐ろしく強い。
俺には高いアンチマジックがあるが、オーティスの魔法の前では気休め程度しか役に立たないだろう。
オーティスはアンチマジックで弾けない最上級魔法を連射しても全く魔力の底が見えない程だ。
俺もアリアンも、正面切った一騎打ちなら詠唱なんかに時間を費やすオーティスに負けることは無いのだが、オーティスが万全な対策をとって挑んで来たなら勝てるかわからない。
他の奴らには悪いが、俺が勝てるかわからないと思わせた人物はラクスール王国においては、アリアンを除いてはオーティスたった一人だ。
………………ま、力を解放した俺の敵では無いけどな。
そんな事を考えてる間も、アリアンのスキンシップは段々と威力を増して行き、今は俺の胸元に顔を埋めて額を擦りつけ始めている。
普通の人なら肋骨……いや!マジ痛い!いだい!
──それからアリアンが落ち着くまで10分程。
俺はその間ずっと殺人ホールドヘットを喰らい続けた。
そして俺もそれを受け入れる。
……しばらくのお別れだし、これくらいは許してやろう。
解放された後も体の節々が痛む……出発前に回復してもらわないとダメだなこれは。
俺は身体を引きずりながら医務室へと向かった。
─────────
~ユリウス視点~
──治療を終えた俺は、孝志と橘穂花が待機している部屋を訪れた。
この二人はこれがこの世界に訪れて初の旅となる。しかもこの旅の目的が、異国の王への謝罪という普通では考えらない理由だ。
元々二人が居た世界は平和そのものだと聞くし、ならば今感じてる緊張や不安は尋常ではない筈だ。
ブローノ王子もその事は気にしていたみたいだし、出発前に俺の方からも少し話をして落ち着かせるとするか。
俺は孝志と橘穂花が待機している部屋の中に入ってゆく……すると、部屋の中では意味不明な出来事が繰り広げられていた。
「──うう……ごべんなざい……どうか許して下さい……うぇ~ん……」
入った瞬間、泣き真似をしてる橘穂花の姿が見えた。泣き方が余りに残念だったので直ぐに演技だと解る。
というか何やってんだ橘穂花は?
すると、腕を組みながらその演技を見ていた孝志は、演技指導者の如く首を左右に振りながら橘穂花に近付いて行く。
「……ダメだよ穂花ちゃん。……ヘタッピさ……」
「う~ん……難しいですね~……」
いや、本当にヘタだったけど……いったいこの二人は何をやっているのだろうか?
孝志は澄まし顔で穂花ちゃんと話を続ける。
「いいかい穂花ちゃん?謝罪というのはこうするんだよ……」
すると孝志は大きく息を吸い込むと、まるで立腹しているかの様な表情で言い放った。
「ゆ゛る゛し゛て゛く゛だ゛さ゛い゛!!ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」
ああ、うるさいな~これ。
孝志の迫真の謝罪に俺は思わず耳を塞いだ。
「わぁ!孝志さんすごい!それなら謝罪の気持ちが伝わりますね!」
いやそうはならんだろ……もしかしてバカなのかな?
この子あれだな……少し思考がアリアンよりだな。今から気を付けないと将来ヤバくなりそうだぞ。
「はぁ…はぁ……だろ?」
孝志は息切れを起こしながらも、橘穂花の褒めの言葉に得意げな顔をする。
というかこの二人、まさかとは思うが今の感じで謝罪するつもりじゃないだろうな?
絶対にあり得ないと思いながらも、俺は恐る恐る聞いてみる事にした。
「お前ら何やってんだ?」
「「あ、ユリウスさん」」
二人は声をハモらせる。この二人はこういうとき本当息ぴったりだよな。
「ユリウスさん、実はいま獣人国の王への謝罪練習をしてたんですよ。僕の方は完璧です……穂花ちゃんも当日までには仕上げてみせますので安心して下さい」
孝志はドヤ顔を披露する。絶対あり得ないと思ったがそんな事は無かったみたいだ。
橘穂花も「頑張ります!」みたいな表情でいきり立っている。
橘穂花はどういう子かまだ判らないからアレだけど、孝志……お前はこっち側だろ?お前までそっちに行ったら旅の間、俺の胃がもたないぞ。
というかコイツら全然緊張してねーな、ハハ。
……少し気が楽になった……ありがとう二人とも。
──リラックスさせる為に来たはずのユリウスだが、逆に気持ちが和らぐのだった。
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~孝志視点~
あの後ユリウスさんに怒られてしまった。どうやら俺達の緊張を解す為に出向いたのに、俺と穂花ちゃんがふざけてたもんだから「逆に少しは緊張感を持て」との事だ。
まぁ確かにふざけてたけどさ……
いや、俺だって最初は真面目に謝罪の練習してたんだけど、言い出しっぺである穂花ちゃんの演技があまりに可笑しかったから、つい気が抜けてああなったんだよ。
でもお陰で心が楽になった。ありがとう穂花ちゃん。
それにあの子は真剣そのものだったからそれも面白かったし。
──ユリウスさんと合流した後、俺と穂花ちゃんは旅の移動手段となる馬車の前まで来た。
そこではブローノ王子が既に待ってくれており、オーティスさんも一緒だ。
そしてマリア王女とダイアナさん、見覚えは無いが騎士の方々やメイドさん達が見送りに来てくれて居る。
──「では松本孝志、橘穂花、それにユリウス……お気をつけて行ってらっしゃい」
既にブローノ王子やオーティスさんとは別れを済ませたのだろう。挨拶の言葉は俺たち3人に対してのみだ。
そして周りの目があるので、いつもみたいなちゃらけた会話など無い。特にブローノ王子の前だと互いに猫被るというのもあるが。
「ではマリア王女もお元気で……また5日後に」
「……お元気で、マリア王女様」
穂花ちゃんは少しムクれ気味で別れの挨拶をするが、仲が悪いのかこの二人?
「ではマリア、任せたぞ?」
「はい……お兄様」
ブローノ王子とマリア王女が、改めて互いに挨拶を交わした後、五人はそれぞれ馬車に乗り込んだ。
どうやらユリウスさんとオーティスさんには高い騎乗技術があるようなので、二人が交代しながら馬車の操縦をするみたいだ。
乗り込んだ馬車から窓の外を見ると、マリア王女と目が合う。彼女はにっこりと笑顔を俺に向けて来た。
実はもう少しマリア王女と話をしても良いと思っていたんだけど……まぁ後生の別れじゃあるまいし、帰って来たら話す時間くらい沢山あるさ。
そしてユリウスは獣人国へ向かう馬車を走らせた。
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~メイド視点~
旅立つ孝志達……いや、孝志のみの姿を少し離れた場所から覗き見してる一人の女が居た。
その姿を目撃してしまったメイドは、恐る恐るといった感じでその人物に話掛けた。
「あの?ネリー王女様?何をなさってるのでしょうか?」
声を掛けたメイドも、本当は癇癪持ちのネリーに声を掛けるのは嫌だったが、王家専属のメイドとして見かけたからには無視する訳にいかないのだ。
「はぁ?!何を言ってるの?!別に松本孝志を見ていただけよ!」
「……どうしてでしょうか?」
「どうしてですって?!」
この瞬間、問い掛けたメイドはマズイと思った。
ネリー王女が他人に興味を持っていたので、珍しいと思いつい踏み込んで聞いてしまった。
面倒になると思い覚悟を決めるメイドだったが、次にネリーが発した言葉は予想だにしていないモノだった。
「お前は勘違いしているみたいだから言うけれど、愛情込めて見ていただけよ!」
「……え?……愛情……ですか?」
また踏み込んで聞いてしまったが、今度はマズイとは思わなかった。
確かに勇気を持って聞きはしたものの、純粋に一人の女として興味を持ってしまった。
「違うの!ただ本当に好きだから見ていただけなの!……って、もう良いですわ!」
ネリー王女は真っ赤な顔で吐き出す様に言うと、この場から足早に立ち去ってしまった。
私は唖然として立ち尽くし、ネリー王女の去り行く後ろ姿を見つめていた。
ところで────
────ネリー王女ってこんなに可愛らしかったかしら?
あんなに怖かったネリー王女に対し、そのメイドは初めて慈しみの気持ちを抱いたという。
おふざけ全開です。