4話 ロイヤルファミリー
誤字報告、いつも助かってます!
今回も少し長いです。
実に衝撃的な出来事だった。
なんとか王女……いや、なんとか呼ばわりはもう流石に悪いな。
ネリー王女に人生で二度目の告白をされた俺……少し男としてのレベルが上がった気がする。
俺は周囲の視線に居心地の悪さを感じながらも少し満足した気分になっていた。
──俺がそんな風に調子にのっていると、こちらへやって来る穂花ちゃんの姿が見えた。
さっきの彼女達とはもう良いんだろうか?
「騒がしかったみたいですけど、何が有ったんですか?」
そうか!移動してる内に穂花ちゃんとは結構離れてしまっていたから、さっきの恥ずかしいやり取りは観られていなかったんだな!
ならば正直に言う事も無いだろう。
知られたら恥ずかしい事だし。
「なんか酔っ払って発狂した人がいたんだよ…怖かったよ」
……いや、適当にいま思い付いて言ったウソだけど、だいたい合ってね?
「うわっ……居なくて良かったかもです」
穂花ちゃんも特に疑う事なく信じてくれたみたいだ。
──すると、今度はユリウスさんがやって来る。
……良かった、オーティスさんは一緒じゃないみたいだ。
「いや、はははは!見てたぞ?大変だったな?まさかネリー王女がお前のk──」
「剣帝おじさんうるさいっすよ!」
「…急にどうしてだい?……てか剣帝おじさんって……」
俺は穂花ちゃんから少し離れた所にユリウスさんを連れて行き小声で話す。
「穂花ちゃんに言うのやめて貰って良いですか?」
「なんでだよ?良いじゃん別に?」
「いえ…僕は穂花ちゃんの前ではしっかりとした素晴らしい男でありたいんですよ?…ネリー王女に告白されたなんて若干恥ずべき事じゃないですか」
「…お前……本当に変なとこで無駄な見栄を張るし、堂々と失礼な事を言う男だよな」
ユリウスさんは俺が嫌がってる事をわざわざ言うつもりも無いらしく「じゃあ黙ってるわ」と簡単に了承してくれる。
別に言ってもユリウスさんにメリットがある訳でも無いので、口止めしておけば言う事も無いだろう。
これで一安心だ…直ぐに穂花ちゃんの所へ戻る事にする。
俺達のやり取りを気にしている穂花ちゃんには、適当に訓練の話でもしていたとでも言おう。
…ん?穂花ちゃん、俺とユリウスさんが場を離れてる間に誰かと話を始めたみたいだな……相手は……げっ!
──「おおっ!穂花じゃないかっ!」
「ああっ!アリアンさん!こんばんわ!真っ赤なドレスが素敵ですね!」
「穂花こそ、純白のドレスが似合ってるぞ?…はは〜ん、さては一昨日好きだと言っていた孝志との結婚式でも考えてウェディングドレスを意識したな?」
「…っ!?ど、どうしてそこまで鮮明にわかるんですか?…ぜ、絶対に孝志さんには言わないでくださいねっ!?」
「分かってる、言わない!」
「ふぅ〜……アリアンさん変な所で鋭い…」
「ところで穂花聞いてよ…ユリウスってば酷いのよ?」
「何かあったんですか?」
「さっきドレスを見せに行ったら『赤いな!』としか感想をくれなかったの!」
「そ、それはひどい!酷すぎます!」
「やっぱりそう思う?」
「…それに比べて孝志さんは……うふ♡」
「嬉しそうだな!なんて言われたんだ?」
「はい『かわいい』って、それに『天使みたい』とも言ってくれました!…もう本当に嬉しくて…!」
「い、いいな〜……孝志ってそういう事をストレートに言う奴なのか…ちょっといいな…」
「ええ?!アリアンさんも孝志さん狙いに!?」
「それは絶対にないから安心しろ」
「そ、そんな!孝志さんの何が不満なんですか!?」
「…お前頭おかしいのか?」
──俺とユリウスさんはたった今二人の側に到着した。
位置的に背後なので穂花ちゃんはこちらには気付いて居ない。
何やら楽しそうに話してたみたいだったけど、アリアンさんと仲良かったんだね
そういえば朝もアリアンさんの話題を振ろうとしていたっけ?
そして穂花ちゃんは近くに俺達が居る事には気付いてないので、こちらを意識する事なくアリアンさんと話を続けてゆく。
「それよりもさっきは孝志やばかったぞ!」
「え?何か有ったんですか?」
いきなり何言おうとしてんの?ちょっとま───
「ネリー王女に告白されていたぞ!しかも結婚してとか言われてたな!」
「………ふ……ふぅえぇ……????」
……おおぉう……伏兵過ぎる。
そして速攻過ぎたから止められなかったわ。
折角ユリウスさん口止めしていたのに全部無駄かよ!
…出来れば穂花ちゃんには知られたくなかったが、まぁバレてしまったものは仕方ない。
俺も可能な限り知られたく無かったに過ぎないしな。
何て楽観的に考えていたが……
「わ、わああぁぁっ!!うそですよね?!ゔえ?告白っ?!意味わからないですよ?!ネリー王女ってそもそも誰ですか!?」
そ、そんなに驚くのね……それよりネリー王女を知らなかったんかい!
確かに挨拶はしてくれ無かったけど、穂花ちゃんは一昨日は訓練のとき一緒だったんじゃないの?
──すると穂花ちゃんは俺の気配に勘付いた様で、背後に立っている俺に顔を向けると、昨日訓練の時に体験したアリアンさん並のスピードで詰め寄って来た。
「うぉあっ!?」
「ちょちょちょちょっと孝志さん…ここここ告白ってどどどうして」
「落ち着いて!ねっ!?」
「落ち着いてられませんよ!まさかオーケーしてないですよね!?」
「大丈夫だ橘穂花!少し頭冷やせ、な?」
「ユリウスさんは黙ってて下さいよ!」
「…ええ……」
ユリウスさん可哀想……めっちゃ落ち込んでるし。
俺は穂花ちゃんを落ち着かせる為に必死で説得するのだった…
──────────
途中から何だかんだユリウスさんも加わり、二人掛かりで穂花ちゃんを宥め続けること数分──ようやく穂花ちゃんを落ち着かせることが出来た。
だが穂花ちゃんは「少し作戦会議です!」と言いながらアリアンさんを連れて少し離れた所へ移動してゆく。
アリアンさんの腕を引っ張って行くなんて……穂花ちゃんってば凄い子なのね……
俺はアリアンさんが余計な事を言わないか心配しつつも、女性同士の会話に割って入る度胸は無いので追い掛ける事はしなかった。
──そして二人が離れて少し経ってから、俺とユリウスさんの元へやって来る二人組の姿があった。
一人はマリア王女で、もう一人がさっき紹介されたシャルちゃん──もとい、シャルロッテ王女。
マリア王女は少し離れた所で立ち止まり、シャルロッテ王女の頭を撫でて何やら話をしている。
両者の表情を見る限り、教育の一環としてマリア王女は俺への挨拶をシャルロッテ王女に一人でさせようとしているのだろう。
他の貴族達には付き添っていた癖に…俺ならひとりでさせても大丈夫ってか?舐めやがって。
そして二人は話し終えると、案の定シャルロッテ王女が一人だけでトテトテとこちらへ歩み寄って来た。
うん、実に可愛らしい。
「えっと、こんばんは、シャルロッテと申します……今年で7さいになります。ゆうしゃ様…この世界を救いにきてくれてありがとうございます」
うん、喋り方は幼女そのものだが、話の内容はしっかりとしたものだ。
それに頑張って話してる感じも垣間見られて好感が持てる。
俺はシャルロッテ王女に目線を合わせるため腰を屈ませた。
「うん!こちらこそ宜しく!シャルロッテ王女はとてもしっかりしているね」
俺がそう言うと、シャルロッテ王女は嬉しそうに表情を明るくした。
「あ、ありがとうございます!ゆうしゃ様!これからもよろしくお願いします!」
うんいい子だ……しっかりと教育が施されてる様で安心だ。
姉二人を見習わない様に気を付けるんだぞ?
あ、そういえば名乗りを受けたのに、こちらは名乗り返してなかったな。失礼をしてしまった。
一応、お互いに名乗り合っているが、再び名乗られたからには同じ様に返すのが礼儀のはずだ。
「おれは松本、孝志、と言います。覚えてくださいね」
俺はシャルちゃん王女が覚え易い様に名前のところを強調して話した。
途端、シャルちゃん王女の顔が更に明るくなった。
「あ!たかし様ってあなただったのですね!さっきはきんちょうして聞きのがしてしまいました!」
「ん?俺のこと知ってるの?」
「はい!おねえ様から聞いていました!」
「……なんと言ってた?」
「はい…とてつもなくへんな人だとおっしゃってました」
「…実際に会ってみてどうおもった?」
「へんなかんじの人です」
おいおい、どういう育て方をすれば俺を見てそういう評価を下すんだ?育て方間違ってんじゃないの?
「……教育者は誰かなぁ?」
「はい!マリアおねえ様です!」
「ははは!どうりで!」
「……おい」
「ふほぉ!?」
耳元からドスの効いた声が聞こえてきた。
そちらを見ると、マリア王女はシャルロッテ王女に顔が見られない位置に立ち、とても王女とは思えない形相でこちらを睨んできた。
………普通に怖い。
「いえ……とても素晴らしい教育がなされてるみたいで大変感服しておりました」
「そう?ありがとうございます…………本当は?」
「再教育が必要っすわ!」
「うん死刑♡」
「…申し訳ありませんでした」
「ごめんで済むなら警察はいらなくてよ」
「いやこの世界に警察居ないでしょ…変な日本の知識入り過ぎですよ貴女」
この後、彼女を説得するのに結構な時間を要した。
ユリウスさんは穂花ちゃんの時は手伝ってくれた癖に、今回は近くに居ながら意に介さずといった感じで傍観を決め込んでいた。
王族相手だとマジで使えんなこのおっさん…
─────────
何とかマリア王女を落ち着かせると、シャルロッテ王女を連れて二人はアリアンさんと話し込んでる穂花ちゃんの下へと向かった。
俺がマリア王女を説得している間、シャルロッテ王女は動揺なく静かに成り行きを見守っていた。
去り際にマリア王女が「後で貴方が再教育よ」と耳元で呟いて行ったが……怖過ぎるわその捨て台詞。
……そしてマリア王女、シャルちゃん王女と入れ替わるようにして、今度はブローノ王子が此方へとやって来た。
失礼が無いように、マリア王女が来る時とは比較にならない程に気を引き締める。
ブローノ王子相手へ抱く緊張感は、王様の時の様な怖さの影響ではなく、ましてやネリー王女に対する時の面倒くささから来るものでもない。
純粋にこの人の前で無様を晒したくないと思ってしまうんだ。
また、すでに穂花ちゃんも合流しており、一緒にブローノ王子が向かって来ているのを大人しく待つ。
因みに、アリアンさんの姿は無く、離れた場所でめちゃくちゃな量の食べ物を食している……胃袋も相当ヤバい。
「孝志…昨日挨拶は交わしたけど、また改めて宜しく頼む」
ブローノ王子は静かに手を差し出す。
「はい、こちらこそ。公にこの様な歓迎の舞台を我ら勇者の為に用意して頂いて感謝の極みです」
俺は何の躊躇もなく、差し出されたその手を丁重に握り締めた。
「……は?」
後ろでユリウスさんが誰コイツみたいな目で見てる。
言っときますけど、俺は向こうの世界では普段こんな感じでしたからね?
「本当なら、勇者全員と顔合わせと挨拶をしたかったんだけど……孝志と橘穂花さんしか居ないみたいだね」
「…彼らの愚行は、同じ勇者である私の責任でもあります……申し訳ありません」
「君が気にする事ではないよ。気に病まないでくれ」
「はい、お気遣い感謝致します」
「やだ、こいつ怖い…二重人格だ…あー怖い怖い」
「孝志さん……かっこいいです…」
背後がほんと煩いさっきから……ユリウスさんはもう絶対許さないけど。
穂花ちゃんもやめて……カッコいいとか言われるとブローノ王子の前で鼻の下伸びちゃう。
俺と握手を交わした後、ブローノ王子は俺の側に居る穂花ちゃんへと視線を向ける。
「橘穂花さんは初めましてだね。私はラクスール王国の第一王子ブローノ・ラクスールと言う。宜しく頼む」
「──え!あっ、すいません、はい!宜しくお願いします!」
うんうん…穂花ちゃんもブローノ王子のオーラを感じたみたいだ。
でも違う事を考えていて、急に話し掛けられたから驚いている様にも見えちゃうんだけど……違うよね?
それから三人でしばしのあいだ雑談を交わすのだった。
─────────
「それでは、引き続きパーティーを楽しんでくれ…ではこれで…」
最後にブローノ王子は一言残すと、優雅にこの場を去って行った。
マリア王女の『お前を殺す』的な捨て台詞とは偉い違いだ。
そしてブローノ王子と話が終わってから間もなく、入れ替わるように今度はゼクス国王がやって来た。
……代わる代わる実に面倒くさい話である。
しかし、姿を見るのは召喚された時以来だな。
こうして面と向かうのに至っては初めて。
……この人、威圧感凄いから怖いんだよ。
「おおっ!確か君は松本孝志と言ったか?今日は良くぞ来てくれたぞ!」
「はい、今日はお招き頂き、恐悦至極であります」
一応は名前を覚えてくれて居たのね。
「恐悦至極だなんて……素敵過ぎる………ふひひ♡」
例え穂花ちゃんでもいい加減にしないと、さすがに後で怒るんだからね?
俺は国王に礼をし、顔を上げて国王の顔を見る。
謁見の時は橘が話を進行させていたので、面と向かって顔を見るのはこの時が初めてとなる。
相変わらず怖い顔してるなこの人………いや……アレ?
「うむ!今日は存分にパーティーを楽しんでくれたまえ!そしてワシの事をしっかり守ってくれよ?ガハハハ!」
「…はい、努力致します」
「隣の子は、橘穂花と言ったか?そちもしっかりと頼むぞ?」
「は、はい!」
たったそれだけの言葉を掛けて王様はこの場を去る。
穂花ちゃんは王様の圧にやられて少し怯えてしまった様だ。
声を掛けられた瞬間、飛び跳ねてた。
……それより、この王様───
──確かに怖さは有ったが、近くで表情を見たらそれだけで無いことがわかった。
そして面と向かった感じが……昨日味わった、ある感覚と非常に似ていた。
そう……似ていたのだ。
ブローノ王子と初めて顔を合わせた時の感覚に。
少なくともマリア王女が言うような無能な人間にはとても見えなかったけどな……いや、俺の勘違いの可能性も十分あるけど。
王様とブローノ王子で違うところが有るとすれば、国王さんの方は分厚い仮面で本性と自らの能力を隠している様に見えた……あくまで推測に過ぎないけど。
そしてそれとは全く逆で、ブローノ王子は仮面などせず真っ直ぐな凄みを感じさせた。
──王様と挨拶を終えた俺は、そのままユリウスさんの所へと向かう。
ちょっと確認したい事が出来たからだ。
「ユリウスさん……あの王様、凄いですよね……なのに、なんであんなアホっぽい仮面被ってんすか?」
「ッ??!…お前……わかるのか…?」
やっぱりか…ユリウスさんのこの返しで王様に対して疑惑に過ぎなかったものが確信に変わった。
ユリウスさんの国王が来た時の反応が少しおかしかったから、この人なら何か知ってるんじゃないかと思ってた。
ブローノ王子やマリア王女が来た時には王族に対する敬意を示していたが、王様が来るとそれとは別に強い尊敬の念も感じられた。
王様相手だからそうした可能性もあったんだけど。
「僕が初対面でわかるんだから、わかる人は結構居ると思いますよ?」
「……いや、そうだな──」
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──孝志は料理を取りにこの場を離れるのだが、そんな彼の後ろ姿を、ユリウスは異様な何かを見るような視線で見つめていた。
孝志が普通で無い事は何となく解ってきていたが…まさか、ゼクス王の有能さを見抜かれるとは……
優秀な家臣も、仲の良かった貴族も…そして子供達ですらも王についてはあまり解って居ないと言うのに。
まさか、たった一度の顔合わせでそれを見抜いたのか?
しかも俺がゼクス王について、何かを知っている事にも気が付いていた。
問いただされた時に反応してしまったのは大きな失態だったが、それに至るまでは大した反応を見せていなかったはずだ。
もしかして【???】のスキルか?
だとしたらもう解放されて居るのか?
孝志の精神は異様に高いので、彼の隠れスキルの正体は精神に影響を及ぼすモノである可能性が非常に高いはずだ……だとしたら相手の真意を見抜くスキル?
…いや、一度タイミングを見て直接孝志に確認を取った方が良いかも知れない。
黙って下手な詮索をすると、かえって信用を失くしてしまうだろうから直接聞いた方がいい。
もし仮に何のスキルでもなく、あの洞察力が彼の本質だとしたら?
知略において松本孝志はとんでもない化け物になるかもな……
──だとしたら要注意人物になるかも知れない。
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………食い過ぎた。
正直、すれ違う度に同じ人からも何度も挨拶されて面倒くさいと思っていたのだが、食べてる間は誰も話しかけて来ない。
流石は貴族……マナーには忠実だ。
それに気付いた俺は、それ以降はひたすらに食べ続けた……その結果が満腹である。
因みに今はデザートを食べてる最中。
デザートは別腹なので、俺なら満腹の状態でもケーキだったらホールごと食える……かもしれない。
一緒にいる穂花ちゃんも俺と同じでデザートは別腹発言をしており、いま一緒にケーキを食べてる。
ただし、一口一口が小さいので量としては俺より控えめ……ケーキを味わいながらチビチビと食べる姿も実に可愛いらしい!
そしてアリアンさんは未だに肉食ってる…!すげぇ…!
もうアリアンさんは今日だけで、ヤバい人ポイントと同じくらい、凄い人ポイントが貯まってる気がする。
途中から付き纏いだしたユリウスさんなんて、カッコつけてアルコールの入ってないカクテルばっかり飲んでるのであまり食事をしていない。意識高い系の大学生かよ。
──俺がそんな事を考えながらユリウスさんに対する尊敬度を下げていると、パーティー会場の入り口が騒がしくなり出した。
すると、パーティー会場の大きめの扉が開かれ数人の人物がこの会場へと入って来る。
入って来たのは、中岸と奥本。
そしてメイドが三人に、騎士の格好をした女性が二人。
そして先頭を歩くこの中で唯一の男は──
「いや、すまないね…このパーティーよりも大事な用事があったから、少し遅れてしまったよ」
と会場全体に言い放つ橘雄星だった。
……少しじゃねーよ。
もうパーティーも終わりかけで、既に場は国王の締めの挨拶を聞いたら解散という状態だ。
…絶対今からやらかすわコイツ。
橘の意味ありげな表情を見て俺はそう思った。
──俺はこれからコイツのやらかすであろう事を想像し、ウンザリした気分でケーキを頬張った。
次話から、物語がだいぶ進みます。
感想はごめんなさい。
時間がある時に返します。




