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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
2章 スキル「???」
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3話 少女騎士団








廊下を歩きながら、俺は先ほどユリウスさんに言われた言葉を思い出していた。


『すまん孝志、脳筋のアリアンだったら言い忘れてる可能性が高いから念の為に言っておくが、今日の夜に君たち勇者の歓迎パーティーが行われる予定だ。──なので昼の訓練は、なしだ』



こんな大事な事を言い忘れるなよ……と思うが、もはやアリアンさんなら覚えてる方がおかしい。


それにしても俺達勇者の歓迎パーティーか。だからダイアナさんは忙しそうにしてたんだな。



話によるとブローノ王子を含む王族の面々が、勇者1人1人に挨拶を行う予定だと言っていた。

出席の時は恥を掻かない様に気合いを入れて行こう。


──というか昨日ビンタをかましてくれた、え~と……なんとか王女からの挨拶とか嫌なんだけど。まさかビンタで挨拶とかして来ないだろうな?


それと、橘の野郎がここでブローノ王子に無礼を働こうものならマジでいっぺん締めてやる。



──そして急に暇になった俺は、取り敢えず廊下を歩いて城の中を見学している。

この世界に呼ばれてから、なかなか落ち着いた時間を取れなかったので、これを機に色々と観て周ろうかと思う。


穂花ちゃんも着いて来たそうにしてたけど、何やらこれから行く所があるそうだ。


ものすごく名残惜しい表情をしていたが、穂花ちゃんからの「明日も一緒に朝ごはん食べませんか?」という誘いに俺が了承すると嬉しそうに去って行った。



因みにどうでもいい話だが、ユリウスさんは食事場に来るの遅かったので、まだ食事中。

当然、待ってやる義理もないので、そのまま置いてきた。



───────



昼からの訓練がなくなり、心が晴れやかになった俺はルンルン気分で無駄に広い廊下を歩いていた。

心情としては、休校で学校が休みになった時の気分に似ている。なんかテンション上がるんだよね、平日に堂々と学校休めるあの時って。

もっとも、学校なんて訓練の辛さに比べたら全然だけど。



廊下をしばらく歩いていると、向こう側からダイアナさんが、何かを押しながら此方へ歩いて来るのが見えた。


台車で沢山の荷物を運んでいる。

すれ違う直前にこちらに気づいたダイアナさんは、一旦、台車と足を止めて挨拶をしてきた。



「あら?今朝ぶりですね、孝志さん」


「こちらこそ、大変そうですね」


なんかこちらがフリーなのが申し訳ない気になる。これがマリア王女なら心で笑ってやるんだけど。


……王女の身分で台車なんか引いてる姿想像したら実に面白い。

次に会ったら台車引いてくれないか頼んでみるか。



「そういえば先ほど、食堂へと向かうギアード様とすれ違った時に聞いたのですが、夜にパーティーがある事を孝志さん知らなかった様ですね。私が少し話題に出せば良かったのかも……気が利かなくてごめんなさいね……」


ダイアナさんが謝る事など何もない。

それより、話をする前から俺が知らないと確信してたのか、あの人。

そこはもうちょっとアリアンさん信用してやれよ。



「いえいえ、悪いのはユリウスさんですので」


そうあの人が全部悪い。



「悪いのはルクレツィア様ではなくて?」


「そ、そんな、アリアンさんを責めるなんて自殺みたいなこと出来ませんよ」


本人が居なくても陰口はどこで本人の耳に入るかわからない。

さっきはユリウスさんだったから良かったが、あれがもしアリアンさんだったら殺されるよりも先にショック死してただろう。



「ふふっ、相変わらず面白い事を言いますね……ではお暇になったこの後のご予定は?」


「はい、手伝う……と言いたい所ですけど……」


この世界に来てから城の外に出たこと無かったな。

これを機会に外出してみるのも良いかも知れない。



「せっかく休みになりましたし、出来れば城を出て遊びに行こうかな~と」


最初に教えて貰った事だが、簡単な申請で外出許可が降りるらしい。この国の中はあまり危険は無い様だ。

一応、スラムなど気を付ける場所はあるらしいので、そこへ近づかない様にすれば問題ないとの事だ。



「オホホ、正直でよろしい。私としてはむしろ手伝うと言われた方が困ってましたよ」


ダイアナさんの言う事は当然だろう。

こういう大きなイベントの時に、知識の無い素人の手伝いは邪魔になるだろう。

人によっては器用にこなせるだろうが、パーティーの催しとなると、俺には到底手伝えそうにない。


荷物運びも台車で押してるし、押し方を見ても重そうには見えない。

故にここで俺が手伝える事は無いのである。



挨拶を済ませてお互いが立ち去ろうとするのだが、ダイアナさんは何かを思いついたかの様に再びこちらに向き直った。



「城を出る前に、どこか訓練中の騎士団を見に行かれては?」


「騎士の訓練……ですか?」


「はい。難しく考えずに……劇を見る位の気持ちで1時間程度でも、どうでしょう?」


「騎士団ですか。確か結構な数の団が有りましたっけ?」


正直良い提案だと思った。

他者の訓練なんて観たことは無かったし、自分みたいな素人ではなく、実力者同士の戦いというのを見てたかった。



「いくつかオススメの騎士団が有りますが……誰かから聞いたなどで何処か観たい騎士団など有りますか?」



騎士団の名前は聞いてない、と言い掛けたところで俺はマリア王女の言葉を思い出す。

女性だけで編成された騎士団が存在するのだとか……確か名前は……



「そうですね……でしたらヴァルキュリエ隊という所を見て見たいですかね」


「ヴァルキュリエ隊……ですか?」


それを聞いたダイアナさんは複雑そうな、何というか微妙な顔を見せ始めた。

い、いいじゃない!女騎士に興味を持ったって良いじゃないか!



「しかし、孝志さんにそんな趣味がありましたとは……ひとつ忠告しますが、絶対に手を出してはいけませんよ?」


「流石に出しませんよ!」


急にどうしたんだダイアナさん!本当に観て楽しむだけですよ!?

いや、まぁ、それもどうかとは思いますけども!


いろいろ疑問に思う事も有ったが、俺はダイアナさんにヴァルキュリエ隊の訓練施設の場所を聞いた。


この世界に来てから出会った騎士と言ったら、召喚された時に囲っていた人達にユリウスさん、第一王女のイケメン取り巻き、そして訓練所付近でたまに見掛ける男性騎士。そう、全くと言っていいほどに女っ気が無い!


唯一接点のある女騎士と言えば、アリアンとか言うイカれた恐ろしい人だけだ。

俺はどうしても綺麗でまともな女騎士を見たいんだ!

……そうなればやる事はただ一つ。



俺はヴァルキュリエ隊の訓練所へと向かった──



───────



意気揚々とヴァルキュリエ隊の訓練所に到着したのは良いものの……入ってから直ぐに、俺はこの場所の異常性に気が付いた。



「うわぁ……勇者様だって!」


「凄い!私達を見に来てくれたの!嬉しい!」


「勇者様~!わ!手を振ってくれた!やった!」


「なんかカッコイイね!この後、質問も受け付けてくれるんだってさ!優しいね!」


「やった~!触っても良いのかな!?」



………


………



んんんんんんんん??????


俺の視線の先では沢山の女の子がこちらを見ながら嬉しそうにしている。

中には手を振って来る子もおり、俺が笑顔で手を振り返せば黄色い悲鳴が響き渡る。

まるでたちば……いや、アイドルにでもなった気分だ。


今まで城に籠ってたから実感が無かったんだけど、勇者ってやっぱ凄いのね。

でもおれアリアンさんにイジメられてる情け無い勇者だよ?それでも良いの?


俺はそんな事を思いつつも、改めて彼女達を見渡した。

四十人以上は居るだろうな、そして──



──うん、全員小学生くらいの少女だ。

大人の女性は全員休みなのかな?



何故全員が少女なのか解っていない俺は、とりあえず一番近くに居る子に聞いてみる事にした。



「ちょっと良いかな?」


「え?わ、わたし?本当に私ですか?どうしようどうしようっ……勇者様に声をかけられちゃった、嬉しい……」


いや、ほんと照れるからそんな顔を真っ赤にしておかしなリアクションするの止めて!お願い!



「いや、あの、そんなかしこまらないで!」


「ひゃぁい!何でもおっしゃって下さい!勇者様!」


も、もうええわ。

この子の動揺を無視して質問を続ける事にする。



「いや、見た感じ、子供しか居ないみたいだからさ」


「……?」


それを聞いた少女は、不思議そうな表情を浮かべたかと思うと、次に予想だにしてなかった事を言い出した。


「ここは12才以下の見習いが集まった少女騎士団ですよ?」


「12才以下の少女ですって?」


「……??」


少女は俺の反応を見て、ますます不思議そうな表情を強めた。全員中学生以下じゃないか……


マ、マリア王女……やってくれたな。

というか子供だけの騎士団とか紹介してんじゃねーよ…



そして、あの時のダイアナさんが見せた微妙な反応の意味が全て解ってしまった。

早い話、ロリコンと思われたのである。


……マジでやばい。これからダイアナさんになんて言い訳しようか。




──いや、というかもうホントに今すぐこの場から逃げ出したいんですけど……



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