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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
番外編 私の気持ち
21/217

私の大好きな人





《これは孝志達が異世界召喚されるちょっと前の話》



~穂花視点~



私はよく親友の松本弘子ちゃんの家に遊びに行く。


そして今日は日曜日だが、ここ数週間は連続で弘子ちゃんの家に遊びに来ている。



「いらっしゃい~穂花~」


「お邪魔しま~す……んしょっと」


私は履き慣れていないオシャレな靴を四苦八苦しながら脱ぎ終え、親友の家に入って行く。


服も靴と同じくオシャレに着飾り、学校制服以外では普段着ないスカートも履いていた。

変なところが無いか念入りにチェックも済ませた、完璧なハズだ、うん。


友達の家に遊びに行くだけなのに、気合いを入れているのにはもちろん理由がある。



──そう、弘子ちゃんの兄、松本孝志さんに会うからである!



弘子ちゃんの家では、それぞれの部屋にテレビやパソコンが無く、パソコンもテレビも居間に家族の共有として置いてある。


なので、ここで弘子ちゃんとテレビゲームをしている時に、孝志さんがパソコンを使っていることが多い。

だからこそ一緒の空間に居る時間が長くなって有り難いんだけどね。



最初は気を使って私が来ると離れていったのだが、流石にそれはまず過ぎると思い、弘子ちゃん経由で私が気にしてない事を伝えてもらった。


私が来たらパソコン出来ない=私が来たら嫌だ思われるのだけは絶対に避けなくてはならない!



そんなに気を使うんだったら来なければ良いって?


それは無理!孝志さんの顔を見れないなんて死んだも同然。

ごめんなさい──でも孝志さんが悪いんですよ?

私の心を鷲掴みにして離してくれないのは貴方自身なんですから♡



あっ、孝志さんの臭いがこのソファーのこの位置からする!多分、さっきまで座っていたんだろう。


──よし、今日はここに座ろう!


私は孝志さんに抱き締められる様な抱擁感に包まれながら、弘子ちゃんとゲームを楽しんだ。



……って今日は孝志さんが居ないじゃないっ!


私は大きな絶望感に支配されるのだった。




────────



──そして、私はいま深刻な悩みを抱えている。


それは、孝志さんに声を掛ける事が出来ないでいるのだ!簡単な挨拶ですら弘子ちゃん経由でしか出来ない!

もう1年以上も頻繁に顔を合わせて居るのに!



流石にこのままではマズイと思ったので、今日は孝志さんが居ないという事もあり、思い切って弘子ちゃんに孝志さんへ対する気持ちを伝える決心をした。



「私は孝志さんが大好きです」



私の告白を聞いた弘子ちゃんは少し考えた後──


「穂花なら任せてもいいかな──協力してあげる!」


と笑顔で答えてくれた。

良かった~友達に『あなたの兄が好きです』と告白するのだ。弘子ちゃんに嫌われるかもと覚悟していたけど、ほんと良かった…。



「それにしても、まさか穂花が兄ちゃんの事が好きだったとはな~」


「好きじゃないよっ!大好きなのっ!」


「お、おう!そう…なんかごめんね」


本当に解ってくれてるのだろうか?

私の好きさを甘く見てない?

孝志さんの声をボイスレコーダーに録音して、それを毎晩子守唄にしてる位に好きなんだよ?


私が弘子ちゃんの事を疑っていると、彼女はとんでもない事を言ってきた。



「私はてっきり、穂花は兄ちゃんが嫌いだと思っていたよ」


「え?」


私は思わず立ち上がり弘子ちゃんに詰め寄った。



「どど、どうして?」


私は動揺しながらも弘子ちゃんにそう思った理由を聞いた。



「え?だってさ~なんか側から見たら、穂花、兄ちゃんを避けてる様に見えたんだよね~……なんか目も合わせようとしないし」


「……あ、あぁ………」


あの態度はそういう風に捉えられてしまうのか……ってことは……もしかして……

私はひとつの可能性を思い至り、絶望したまま弘子ちゃんに質問した。



「じゃあ…孝志さんは……私が自分を嫌ってると……思ってるの?」


返答次第では死のう。私はそう覚悟を決めた質問だったのだが、弘子ちゃんの返答は実にサッパリとしたものだった。



「いや、それは絶対にないな」


嫌われてない事への嬉しさよりも疑問の方が先にきた。

孝志さんに私はどう見えているんだろう?


「ど、どうして言い切れるの?」


「兄ちゃん、人間関係では恐ろしく敏感だけど、恋愛での人間関係には逆で恐ろしく鈍いからね」


私が話を聞き入ってるので、弘子ちゃんは話を続けた。


「それに、穂花ってばウチに来ても騒いで遊ばないじゃん?兄ちゃんはそういう物静かな子が好みなんだよ」


そういえば、ほとんど一目惚れだったので最初から孝志さんを意識して騒がないように心掛けていた。

弘子ちゃんが言うように、騒がしい女と思われたく無かったからだ。



「むしろ割と有効に好感度稼げてるハズだよ」


「……ほ、ほんとうに?」


「うん、ほんとだよ」


「うわぁぁーーっっ!!やったーーーっっ!!」


私は勢いよく飛び上がり弘子ちゃんに抱き着いた。

さっきまでネガティヴだった反動もあり、喜びを抑えきれなかったのだ。



「喜び過ぎじゃね?兄ちゃんが家に居るときは、そんな感じで騒いじゃダメだよ?」


そう言いながら、弘子ちゃんは私を抱き締めながら頭を撫でる。

そういえば私達もうすぐ家族になるね!



「はい、義妹ちゃん!」


「はえーよ…」



よし!弘子ちゃんという強力な助っ人も手に入り、更に好感度も悪く無いという空前絶後の朗報まで聞けた!


それから、私は弘子ちゃんに孝志さんの趣味を聞いたり、それを勉強したり、着々と攻略を始めていった。




……まだ1人では話掛けられずにいるのだが、私の未来は明るかった──




──ハズだったのに……



─────────



~異世界召喚後~



「そうだよ!2人とも!こんなところでイチャイチャしないで!」


思わず私は叫んでいた。


私達が別の世界に呼び出されたと言うかなり深刻な話を聴かされたにも関わらず、目の前ではいつも以上に小恥ずかしい展開が繰り広げられていた。


後ろには孝志さんが居る……これ以上の恥はやめて欲しい。今まで築き上げた印象を壊さないで欲しい。


だというのに……



「こら、穂花ちゃんも嫉妬して怒っちゃダメよ」


何を勘違いしたのか、由梨お姉ちゃんが私にそんな事を言うものだから、恥ずかしくて声も出せず私は顔を真っ赤にして押し黙る。


あまりにも恥ずかしい……こんな羞恥がこの世にあっていいんだろうか?


そしてそれを見た3人は私が照れてしまったと思ったのだろう、こちらを見て微笑んでいる。

別の世界に今から飛ばされてくれないだろうかコイツら……



もう孝志さんの方が怖くて見れない……絶対良く思われていないよね……?

結局、私はそれからはショックで一切喋る事が出来なかった。


それから兄が訳の分からない事を言って赤い髪の女性を怒らせたり、調子に乗った発言を繰り返し私をドン引きさせ続けた。



ようやく話が終わり解散となった所で私は勇気を振り絞り、孝志さんのところを振り返ったが、私達の事など眼中に無いといった風だった。

むしろ関わりたくないといったオーラをバリバリ発していた。


そうだよね……この人達と一緒に居るんだから、私も同じだと思うよね。


孝志さんは何やら込み入った話があるので残るらしい。


そして私は涙を堪えながらトボトボと3人の後に付いて行くのだった。



────────



そして夜を迎え、夕食でも孝志さんと顔を会わせる事は無かった。


ただ、孝志さんにどう思われても構わない、こんな世界であの人を独りぼっちにはしたくなかった。


意を決して私は、人の気も知らずに目の前で楽しそうに会話を楽しんでる3人にある事をお願いする。



「あのね……一緒に来ていた、たか……松本さんはどうするの?ほっとくのは可哀想だよ?……良かったら明日少し話してみない?」


い、言えた!普段言いたい事は我慢している私だが、さっきと同じ様に言えた!

あまり強くは言え無かったが、いつもの取り繕う様な嘘の意見ではなく、自分の正直な意見が言えた!



そして勇気を出した私の意見に彼らは──



「ん?なんで?そんなこと穂花が気にする必要はないだろ?」


「松本くん……もう少し様子を見た方が良いと思うよ?」


「そうそう。それに松本って何考えてるかわからないとこあるし……ねぇ雄星?」


「……まぁそうだな」


「でしょ?わたし苦手なのよ、ああいうタイプ……由梨もそうでしょ?」


「う、うん……急に絡んでもビックリするだろうから、しばらくは様子見した方が良いと思うよ?」


「…そ、そ……ぅ…だよ、ね……ゆりおねぇちゃん………」


正直言って泣きそうだった。

勇気を精一杯振り絞った成果はまるで無かった。むしろ孝志さんの悪口を言わせてしまう事になった。

……ごめんなさい孝志さん。



そして改めてほんとに信じられなかった。3人のうち誰1人として孝志さんを気にかける人が居なかった事がだ。



もう嫌いだ……



もう由梨お姉ちゃんなんて嫌いだ!

美咲さんも苦手から嫌いになった!

兄は元々嫌いだが、更にもっと嫌いになった。



私は決心した。

こんなとこに居たくない。

明日、孝志さんのところへ行こう。



─────────



そして次の日の朝、私達は食堂らしき場所に朝食を食べに来ていた。


私の中で敵と認定された由梨お姉ちゃんと居るのも、もう嫌だ。

顔も見たくないほど嫌いになった訳では無いけど、兄と一緒に居る時は出来るだけ一緒に居たくない。

だったらもう此処に居なくてもいいはずなのに……いつもの癖だ……一緒に行動している。



人の気配があったので入り口の方に視線をやると食堂に入って来た孝志さんが見えた……が、もの凄い形相でこちらを睨んでいた。


な、なんで!?どうして!?

もしかしてこの人達のウザいやり取りに怒って居るのだろうか?私も同じ様に思われているよね?


……嫌われてるのかな?

……もう、本当に終わってしまったのだろうか?

ショックだな……けど



それでも……




それでも私は──




──今日の私はめげなかった。




私は会話を楽しんでいる3人気付かれない様にそっと席を立ち、孝志さんの元へと向かった。




──孝志さんは何やらメイドさんと話し込んでいる様でまだこちらには気が付いていない。


私はしばらく待ち、メイドさんが離れたタイミングを見計らって孝志さんの元へ駆け寄った。


私の駆け寄る足音に気が付いた孝志さんはゆっくりと顔を上げた。


あ、目が合ってしまった!

それだけで心臓が壊れそうだ、けど……



お願いします神様っ!今この瞬間だけで良いので私に勇気を下さい!

私は信じても居ない癖に神様へお祈りを捧げた。

うん、少し落ち着いて来た。ありがとうございます神様!



充分に覚悟を決めた私は、孝志さんが絶対に聞き逃さない様に、出来る限り精一杯の勇気と笑顔で、そしてはっきりと大きな声で話掛けた。





「お、おはようございます!松本孝志さん!」



ちょ、ちょっと噛んじゃった…っ!えへへ。



……だけど、声を掛ける事が出来た!

勇気を振り絞った!逃げなかった!もう今までの私じゃない!






──これからは全力で追い掛けてやる!

逃がさないからね!孝志さん!


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