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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
最終章 優しい物語を、君に
204/217

3話 アルマスの消失 

あらすじ


孝志の死んだ場所に残されたのはアルマス、穂花、雄星、由梨、美咲、アレクセイ。


王国側のアリアン、ユリウス、マリア、ブローノ、アンジェリカ、ミレーヌ。


魔王側のネネコ、ルナリア。


聖王国側のアルマス2、フローラ、ランスロット。


孝志が死んだと思ってるアルマス達は絶望のドン底にいた。




※明日は一日忙しいので前倒しで書き上げました。

前半と後半の温度差に注意です。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


〜アルマス視点〜


孝志が死んでしまった。

この世の何もかもの中で最も愛して仕方ない子。


生まれた時からあの子を知っている。

命懸けで守るべき存在で、これまでもあらゆる災厄から孝志を守り続けて来た。

怪我しそうになった時はいつも直前で阻止したし、風邪を引いても瞬時に全快させたりもした。

危害を加えようとする奴らは片っ端から苦しめてやったし、お風呂も一緒に毎日欠かさず入っていた。


触れられないのはキツかったけど、可愛いあの子を近くで見守ってられるなら満足できる。

もう孝志の居ない人生なんて考えられない。



「………死にたい」


その人生から孝志が居なくなった……守れなかった。

私が目を離した所為で殺されてしまった。

もう人生なんかどうでも良いわ……一刻も早く自害して孝志のところに向かわないと。


きっと寂しい想いをしてると思う。

なのにユリウスやアレクセイが邪魔をする。

孝志が可哀想だと思わないの……?



「……ゔぅ……たかしさん……」


私の隣には穂花がいる。

この子も私と同じで死のうとし、ユリウスに止められていた。

孝志をストーキングするくらい好きなのは知ってたけど、まさか死ぬほど好きとは思わなかった。


でもちょうど良い。

孝志は穂花を気に入ってるし、彼女が一緒なら喜ぶと思うわ。

穂花なんて嫌いだけど、今だけは認めてあげる……一緒に死んで孝志を安心させましょ?



──ああ、でも本当に人生真っ暗だわ。

楽しそうな未来が想像できない……どんな未来にも孝志が一緒に居たんだから。



「……ゔ……うげぇ……」


油断してると思い出してしまう。

胸元から血を流して倒れる孝志の姿が……顔が真っ青で、なんど確認しても息をしてなかった。

ポーションも全部使った、回復魔法が唱えられる者には協力して貰った……やれる事は全部やった。


でも孝志が目を覚ましてくれなかった。

次第に抱き締めてる腕の中で孝志は冷たくなり、私は泣き叫んで気を失ってしまった。

穂花も孝志に抱き着いて止め処なく涙を流し続けていたし、アリアンは呆然と立ち尽くしていた。



「………新しい袋持ってくるわね」


「アレクセイ、私を殺しなさい」


「……だめよ──ユリウス、代わりに見張ってて」


「ああ、わかった」


袋に吐き出した吐瀉物をアレクセイが片付ける。私を生かしておくから汚物を処分することになるのよ。

でも私に消化機能なんて無いから、それは体内に溜め込まれた腐敗エネルギー……そこまで汚くは無い。


それでも……孝志には絶対に見せたくないモノ。



「……ゔ……また……」


血だらけでグッタリする孝志を思い出すと吐き気が込み上げてしまう。

あんな姿見たくなんて無かったのに……ああもう!お願い孝志ッ!元気な姿を見せてっ!

絶対に怒ったりしないから、私を驚かせる為の演技だって……そう言ってよ……!



「……アルマスさん」


「……なに、穂花」


傷心しきった表情で穂花が話し掛けて来る。

顔に生気がない……目は虚で、身体は力が抜けてダランと両手足が死体の様に伸びている。

私もきっと同じ姿をしているんだろう……ユリウスやアレクセイが心配になる気持ちも少しだけ分かる。


二人ともベッドに寝かされてるから、知らない人が入って私達を見れば、死体を収容してるテントと勘違いするでしょうね。



「孝志さんが居ないと………何も楽しくない……ひぐっ……ですね……うぅ……」


「………そうね」


泣かないで穂花……もう泣いたって涙なんか出ないわよ、私たちは。

涙なんかとっくに出し尽くしたんだから。



「……二人とも……すまん」


ユリウスが何か言いたそうにコッチを見ている。

同情するなら殺しなさいよ……ドイツもコイツも。



──唐突に、ユリウスの懐が光を放ち始める。

何かの通信魔法かな……?誰かから連絡が入った様だけど……これを隙に自害が成功しないかしら?

でも刃物類は全部取り上げられてるし……どうやって死のうかしら?


アルマスと穂花の考えてる事が分かるユリウスは、二人を警戒しながら通信魔法石を取り出した。



「………オーティスか……!?どうだった………ああ……!!!──そうか!良かったぞ!!」


「………ちっ」


孝志が死んだって言うのに、何をそんなに喜んでいるのかしらね?コッチはお前の所為で死ねないのに。


私と穂花は憎しみ篭った目でユリウスを睨んだ。

けど、ユリウスは目を輝かせて此方に近付いて来たかと思うと、大粒の涙を流しながら私と穂花の肩に手を置いた。


いつの間にかアレクセイも居た。

アレクセイもユリウスと同じ反応だ……なんなのかしらいったい……?



「よく聞けッ!!孝志が……孝志が──」




「──孝志が生き返ったぞッ!!!」


「…………え」


「……な、にを?」


……あまりにも都合の良過ぎる言葉に、私と穂花はしばらく意味を理解する事が出来なかった。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


〜孝志サイド〜


オーティスが通信石で孝志の蘇生を報告した後、一向は直ぐに聖王国へ向けて移動を開始していた。


ただ孝志にとって誤算だったのが、途中から移動手段が徒歩になるという事だった。

今はとある洞窟の入り口付近だが、そこから歩いてトンネルを抜けるらしい。


そこまでは1時間掛けて馬車移動だったが、洞窟内は流石に無理のようでそこからは歩きなのだ。

どうやら洞窟内にワープ装置があるらしく、そこを通れば数時間で聖王国に着くらしい。


普通に馬車で移動すれば2週間以上も掛かる距離がここまで短縮出来るのなら、文句を言うべきじゃないかもしれないが……楽に移動できると思ってただけに孝志は面倒くさそうにため息を吐いている。



「はぁ……ダル」


「……ふん……深淵の巣窟に我を誘うとわな……しかし闇こそ我が領域……恐れることなし」


「オーティスさん、久しぶりに中二病全開っすね!」


アーサーという幼女がフェイルノートを担ぎ、アイギスが彼女の後ろを歩いている。

構図としては先頭にオーティスさん、その後ろを俺、次がアーサーと担がれたフェイルノート、一番後ろにアイギスといった感じだ。



ま、暗い洞窟とか雰囲気最悪だし、とっとと抜け──



「……うおわぁぁぁッッッ!!!???」



──今の悲鳴は、なんと孝志によるモノだ。

【それ】に気付いた孝志が思わず大声で悲鳴をあげてしまっていたのである。


そのリアクションで周囲も警戒する。

肝の据わっている男がアレだけの反応を見せるのだ、尋常ならざる何かがあるのかも知れない。



「…………」


特に孝志を良く知るオーティスは注意深く辺りを観察する。孝志が生半可な事であんな情けない悲鳴を上げるとは到底思えないからだ。



「【気配感知】………うむ」


魔法も使うが周囲には何もない。オーティスは警戒を緩めず、孝志に何があったのか話を聞く事にした。



「……何が有ったのだ?」


「とんでもない悪魔が……さっき壁に居ました……」


「何!?」


オーティス、アーサー、アイギスの三人は一斉に壁の方に目を向ける。

しかし、そこに居たのはゴキブリだけでモンスターの姿など何処にも見当たらない。



「はむはむ……なにもないよ?」


アーサーは首を傾げながら孝志にそう答えた。

アイギスも怯えながら『うんうん』と頷いている。



「いや、居るだろ!!ほらゴキブリっ!!」


「………?ごきぶり?」


「そうだよゴキブリ!!俺はゴキブリが死ぬほど嫌いなんだよ!!」


「………はむはむ」


それを聞いてアーサーはゴキブリに近づく。

そして次の瞬間、ゴキブリを素手で掴み取り、孝志に向かって放り投げた。マジサイコ。



「ふうぎゃぁぁっっ!!!」


孝志は悲鳴を上げながら、来た道を引き返すように勢いよく逃げ出した。

そこに普段の逞しさは微塵もない。



「ま、待つのだ!」


それをオーティスが追い掛けた。

少しすると、肩で息を吐きながら立ち尽くしている孝志を発見した。



「孝志よ……そんなにゴキブリが怖いか?」


「…………おいっ!クソガキ!おいっ!」


「……た、たかし」


孝志はオーティスの質問に答えず、同じように後から追い掛けて来たアーサーに詰め寄った。


それも今まで見た事もないような血走った目をしながら、とんでもない怒気を放っている。

オーティスは驚く……ここまでの怒りを露わにする孝志を目の当たりにするのは初めてだったからだ。



「お前やって良い事と悪いことの区別もつかないのか!?急にゴキブリ投げ付けるとかクソゲスガキがっ!!怖すぎるだろっ!?ゴキブリほんと無理だからなアホッ!夢に出るわっ!謝れおい!なぁおいサイコガキ!!」


「は、はむ……ご、ごめん……おもしろそうだったから……つい……」


「面白そうだったからぁ〜?」


孝志の中に殺意の炎が芽生えた。

しかし、アイギスの話によれば見た目通りの年齢で、まだ10歳にも満たないらしい。

なので冷静に考えてみる……幼女を相手にマジでキレるのは如何なものかと。



「はぁ〜もういい、謝ったし許してやろう」


「はむはむ……にいちゃん……ありがと」



その姿を見てオーティスは拍手を送った。


「孝志……成長したのだな……」


「へへへ──それはそれとして……引き返そうぜアイギスさん。もう馬車で時間掛けて行きましょうよ」


生暖かい目で三人のやり取りを黙って見ていたアイギスも、これには抗議の声を上げる。



「はぁ?!馬車移動だと二週間は掛かるわよ!?此処を通り抜ければ2時間で着くと言うのにっ!」


「でもゴキブリ出るじゃん」


「ええ、魔物が存在しない洞窟ですから……ですので代わりに害虫が出るのも仕方ないわよ?」


「……ゴキブリもっと居るの?」


「はい、ゴキブリもっと出ます」


「じゃあ二週間ルートで行きましょう」


「そんな馬鹿なっ!!」


アイギスは頭を抱えた。

強い怪物が出るという理由で迂回するのは良くあること……しかし、ゴキブリに恐れて長旅コースを選択するなど前代未聞の出来事だ。


しかし、孝志を説得出来る自信がない……彼女はどうして良いか分からずオーティスに助けを求める。

目線で交わされた合図……オーティスはその意図を察し、孝志の説得を試みる。



「安心しろ孝志……我が護るぞ……」


「そういうのいいから出ましょう?」


「酷いぞ孝志……ゴキブリだけでモンスターは出ないのだから相当安全な洞窟であるぞ?」


「そのゴキブリがもう本当にダメなんすよ……」


「……そんなにか?」


「そんなにです」


「……あむあむ……ペタペタ」


「テレサとも連絡取れないし……ん?」



孝志とオーティスが話してる最中、何やらアーサーが右手で孝志の服を触り始めていた。その不審な行動に気が付いた孝志はアーサーに声を掛ける。



「……何してんねん?」


「はむはむ……ごきぶりのあしが手についてた……ふくとこないから……あなたにつけてる……」


──バキッ!!


孝志のゲンコツが炸裂した。

アーサーは唖然としながら孝志を見据える。



「はむぅぅ!?──い、いたい……なぜゲンコツ?」


「またしてもサイコッ!!──いまの話の流れで、よく俺の服にゴキブリの足を擦り付けれたなっ!!舐めんなクソガキッ!!もう汚いなぁ!!」


「あいぎすにも……なぐられたこと……ないのに」


「殴ってなぜ悪いか?!貴様はいい、そうして嘆いていれば気分も晴れるんだからな!!──けどな、ゴキブリを服に付けられた俺の心の傷は二度と癒される事はないんだよっ!!」


「おおげさ!!……ばかばか!!」


「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!!」


「……ごきぶりくさい!!」


「お前が付けたんだろっ!?しばくぞこらっ!」


「……はむっ、まけない!」


「よっしゃ、じゃあ勝負だ!──因みにお前は1%の力しか出すなよなっ!」


「はむぅ……せこい」


一触即発となった男子高校生と幼女。

ただし、本当に戦いになってしまうと孝志に勝ち目なんてない……そう、例え1%の力しか出さなくても孝志は十中八九勝てない。

なんせ相手は一撃でフェイルノートを無力化した相手なのだ。クソザコ孝志では恐らく手に負えない。


なので慌ててオーティスとアイギスが止めに入る。



「落ち着け孝志っ!!大人気ないぞ!!さっきの拍手を返してくれ!!」


「だってアイツがゴキブリ付けるんだも〜ん!!」


「やめなさいアーサー!!」


「だってあいつが……なぐったんだもん……!」




「うぅ……何を騒いでるのじゃ〜?」


そしていつの間にか床に投げ捨てられたフェイルノートの呻き声が、洞窟内に虚しく鳴り響いていた。






孝志、幼女と同レベル。



かなり投稿間隔が開いてるので、前書きに、大まかですがあらすじを書いてます。


次回投稿は21日に投稿します。

孝志サイドの話+他の人達の話を書きます。


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