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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
5章 魔族を統べる者、囚われの王女
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27話 孝志は懲りない




この場所は王宮の会場だけあって驚くほど広い。

地獄の勇者歓迎パーティーの時も数えきれない位の大人が集まり、更には大量の料理が並べられていたというのに全然窮屈にならなかった。


そんな広々とした空間のほぼ中央付近では現在、橘とカルマが睨み合いをしている。俺は絶対勝てないから辞めた方が良いと思う……もちろん勝てないのは橘。

でもその橘は引く位にヤル気満々だし、後ろ斬りさんも橘へ対する殺意がバンバンと漏れている。

説得してもこんなの絶対止められる気がしないって……



「雄星さま~!!かっこいい!!」

「ゴールドパワーを使えるなんて凄いなり!」

「見た目が良いだけでなく、強いとは流石ですな!」

「私を第一妃にしてぇぇ!!」


止まらないのは目障りな連中が雄星の事を煽りに煽っているのも原因か。その中には中岸さんに酷い罵声を浴びせてた人も居た。


マリア王女から前に聞いた事があった。

貴族の半数以上がああいうどうしようも無い性格なんだと悔しそうな顔で話してくれた。

あの時は正直言って他人事だったけど、実際にそういった連中を自分の目で観てしまうと笑ってられない。

マリア王女やブローノ王子の苦悩が本当に良く解る。


あの人達に罵倒された中岸さんがどんな気持ちだったのか想像できるか?自分が同じ立場だったら彼彼女等はどう思うんだろう?

プライド高そうだから絶対耐えられないだろどうせ。



──あの連中はどうしようもないとしても、二人が戦いになれば間違い無く橘はタダでは済まない。


テレサに頼めば止められそうだけど──



「おっと、言い忘れてたが松本……手出しは無用だ。そこで指を咥えながら僕の勇姿をその目に焼き付けるといいよ」


奴は手で俺を制しながらこんな事を言いやがった。

もう許すまじ。



「オッケー」


アイツ本気でなんなん?

人が助けるかどうか葛藤してやってたと言うのに!

ほんのちょびっと……本当にちょっとだけ心配したけど損した気分だわ!!もう俺の為にも斬られろ!!


俺はその場から離れる事にした。

取り敢えず、反対側に居る彼女の所へ向かうとするか。

因みに屑女は付いて来ない……雄星に夢中の様だ。



「──どうも」


「……いえ、こちらこそ」


「お名前をお伺いしても宜しいですか?」


「これはご丁寧にどうも……私はリーシャ。リーシャ・フランツと申します。以後お見知りおきを」


「自分は松本孝志と言います。宜しくお願いします」


互いに簡潔だが丁重に挨拶を済ませると、リーシャさんは俺にこっそりと耳打ちし、ある事を尋ねて来た。



「──なにか、あの状況を覆せる手段があったのではないかしら?」


お、テレサを呼び出す直前の仕草で気付かれてしまっていたのか。凄い人だなリーシャさん。

俺はまともな人間に対しては真面目なので、はぐらかす事なく素直に答える。



「──はい。正直、かなりの確率で逆転可能な手がありました……でも」


此処まで聴いてリーシャさんは深く溜息を吐いた。


「はぁ~……そのタイミングでアレが現れて邪魔された訳ね……」


「はい……アレの所為です」


言うまでも無いがアレとは金色に輝くアレである。

そしてリーシャさんも俺の話を聴いて気持ちが楽になったらしく、少し表情も柔らかくなっている。

そりゃあ高い確率で逆転可能な手があるとまで豪語しちゃったら、聴いてる側は気持ちも楽になるわな。まぁ実際大丈夫だと思うけどね。



……しかしもうどうでも良くなったな……はぁ~



「……ごめんなさいね、あの連中が酷い言葉を彼女に言ってしまって。彼女にも後で謝っておくわ」


これは中岸さんの事だな。

俺は見ていたけど、リーシャさんは一人だけ彼女の事を庇っていたっけな。マジで優しくて芯がしっかりした女性だ。

人質にされていた立場とはいえ、何も言ってあげなかった屑女……いい加減しつこいか──奥本も少しはリーシャさんを見習うといい。



──雑談も程々に……対峙する二人の様子を観てみると、今にも戦いの火蓋が切って落とされそうだ。まだ始まって無かったのは互いに牽制しあっての事か。

俺やリーシャさんが何もせず止めなければ、このまま戦いが始まるだろう。


しかも橘は剣を構えているんだけど、訓練を1ミリも行なってないから素人目で観ても相当不格好だ。

俺はアリアンさんに散々型を叩き込まれたから、ある程度はサマになってると言うのに……奴が独自で編みだしたと思われる隙だらけの構えには、対峙してるカルマも驚きを隠せない様子。カルマさんは、ふざけられてると疑うかも知れないがそいつガチだぞ?



いやでも良く考えてみれば、そもそも何で橘なんかの戦いを見届けなくちゃならないんだよ。どうせボコられて終わりだろう?

いいや、すげぇ怒らせてたから多分殺されると思うけど、あんな奴の事なんて気にしなくていいか……そもそも橘が自分から吹っかけた喧嘩だしな。


あんな奴ほっといて、カルマとジジイが橘に集中している間に、中岸さんの様子でも見に行くとするか~



…………



…………



「(………なぁテレサ。死ぬような一撃が来そうなら直前で止めてくれないか?それ以外の一撃は痛い思いさせたいから無視して良いけど……てかこっちに居なくてもそれって出来る?)」


『うん!出来るよ~……孝志の中に回廊を繋いであるから!孝志を通して魔法や衝撃波でなら援護可能だよ!』


え?回廊ってなんぞ?

よく分からないけど、俺の身体の事はテレサに任せるとしよう。可愛がってあげてね。



「(そうか、やっぱり凄いなテレサは)」


『ふふ、ありがとう。大好きな孝志の為なら何だって出来ちゃうんだからね』


「(もしかして可愛いって言われたくてわざと言ってる?)」


『あ……う、うん、バレちゃった?ダメ?可愛いって言ってくれないの?』


あざとい子だ……流石に欲しがり過ぎかな?

確かにクソ可愛いけど、それを此処で口にしてしまうとテレサは付け上がる。完全に尻に敷かれる気がするんだ。だからここは彼女の為にも思った事を口にする訳にはいかない。


俺は心を鬼にする事に決めた。許せテレサ。




「(──テレサ可愛い)」


あっ、言っちゃった……………別にいいか、テレサ可愛いし。言われたテレサも本当に嬉しそうな声を上げてる。



『やった!!──でも……ふふ』


「(なにわろてんねん)」


『いや別にぃ~?何だかんだで助けるんだなぁ~と思って……やっぱり孝志は優しいなぁ』


「(は、はぁ?ち、ちげぇし!そんなんじゃねーしっ!マジで意味わかんないし何なん急にはぁ?同郷の人間を殺されたら気まずいだけだからな?後は穂花ちゃんの兄だからってのもあるし、中岸さんにも悪いからって思っただけだからだしな!!別に死んだら流石に可哀想とか、そういった同情心は微塵もないよ!!……ほんとだよ?)」


『孝志……意外に良く喋るね』


「(え?もしかして喧嘩売られてる?この戦いが終わったら言えないようなセクハラするから覚えとけよ?)」


『きゃっ!どんな事されるのかなぁ~?楽しみにしてるね!ワクワク』


「(……嘘だろおい)」


なんで直ぐそうやって誘惑すんの?

天然スケベにも程があんだろ……えぇ……



──これ以上口を開いてもドツボにハマるだけだと悟り、孝志は黙って戦いの行く末を見守る事にした。

でも合意を得られてしまった以上、実際にそれを行っても合法となってしまうので、彼はセクハラ計画を辞めることにした。決して日和ったわけではない……多分。


すると、ここでドスケベテレサから孝志に対して忠告が入る。



『ただね?僕の援護はあくまでも孝志を通して行うモノだから、出来れば孝志にはそこでジッとしてて貰いたいんだ。激しく動いちゃうと照準がズレれて大変な事になっちゃうからね』


孝志はもちろん了承するつもりだ。

しかし、先程の復讐も兼ねて嫌味を言う事にした。



「(要するにちょろちょろするなと?)」


『あ!そうそう!そんな感じ!』


「…………」


だがテレサには通用しなかった。

だって彼女はバk……天然過ぎるから。



──いや実際、発言に悪気は一切ないのだろうけど、これまでに常識を教わって無いから言葉遣いが天然過ぎるし、いかんせん直球過ぎる。逆に裏表ない性格と解釈も出来るんだけど……


本当にテレサってば末恐ろしいよね。

だって普段から本気で俺を誘惑して来るんだもん……頭おかしいよ……頭の中アリアンさんだよ。



取り敢えずテレサの忠告には従おう。

中岸さんやアッシュの様子を観に行きたいけど、中岸さんは気を失ってるだけみたいだし、アッシュはもう傷が完全に塞がってるから大丈夫そうだ。

という事は目下の問題はやっぱり橘だけだな。


俺は念話を繋いだまま、仕方なく目の前で行われる戦いを見届ける事にした。


明日、ちょっと色々あって休載します。

日曜日は休みの予定だったので、次回は明々後日(月)の20時以降に投稿します。



ようやく孝志の見せ場となります!

お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 合法セクハラ…なんというパワーワード…!
[一言] そんなテレサが橘の前に出てきたら、口説けるのかどうかだけちょっと気になったりならなかったりw
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