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普通の勇者とハーレム勇者  作者: リョウタ
5章 魔族を統べる者、囚われの王女
123/217

24話 孝志と美咲

ちょっとイラッとさせてしまう話になったかも……



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


~由梨視点~


本当に予測通りの展開になっている。

お爺ちゃんが武器を手放すように言ったので、私は手筈通りに武器を投げ渡した。これで問題ない筈だよね?



──しかし、予想外の展開も発生する。

それは武器を手放した途端、ずっと怯えていた貴族や令嬢達から由梨に対する非難の声が上がった事だ。



「貴様っ!!武器を手放すとは何事だ!?」

「勇者なら最後まで戦いたまえ!」

「戦わずに逃げるつもり…!?」

「そうよ!好待遇でもてなしてやってるのにっ」

「勇者が聞いて呆れるよまったく!」


「……え?」


あまりの言われように言葉を失った。

あの人達……特に女性達は、ネリーさんと一緒にいた人達で、私や雄星達と一緒にいる事が多かった人達だよね?


優しくしてくれたから良い人達だと思ったのに……まさかそんな風に言われるとは思わなかったや。

追い詰められて本性が出たのかな……それにしても酷いよ。



「貴方達!!黙りなさい!!」


庇ってくれるのはリーシャさんだけだ。

リーシャさんは本当に優しい人なんだね……ありがとう。

美咲ちゃんは黙ってるけど、不安で喋る余裕がないんだろう、早く助けてあげなくちゃ!



「──可哀想じゃのう。殺すのはちと気が引けるんじゃが、恨むんならお主らを呼び出した国を恨むんじゃぞい」


「………」


全くその通りだと思う。

しかも身勝手に呼び出しておいて、あんな酷い言い方はするし、しかも帰る手段が無いってどういうこと?!

良く考えたら腹が立って来た……ムカツクなぁホントにもぉ~!!



「──ではさらばじゃ!!」


「──ッ!?」


お爺ちゃんは可哀想だと言っていた割に、何の躊躇いもなく、懐から取り出した小刀を私へ投げつけてきた──!

少し良い人だと思ったのに全然そんな事ないじゃん!


一応、小刀は目で追える。

でも速すぎて身体能力がついてこない。

加えて武器を手放した私に、あの小刀を防ぐ手段が無いのだ──!



………


………



尤も、初めから避けるつもりも、弾き落とすつもりも無いんだけどね。



──小刀が当たる直前、ポケットに入れてあったアイテム【ロングレジスト】が強制的に発動する。

コレは松本くんがコスプレが趣味の年配女性から譲り受けたアイテムらしい。

投擲や射撃による攻撃が直撃する場合、一度だけ、その攻撃を無効化させるというものだって……とにかく凄いものだ!



「……なんじゃとッッ!!?」



──予想外の出来事で明王に隙が生まれる。

この隙に様子を伺っていた孝志は煙玉を発動させた。


すると、一瞬の内に場内には煙が充満。

予め耐性を付ける秘薬を飲んだ由梨と、外で様子伺っていた孝志とアッシュ以外の視界は完全に阻害されるのであった。



「……チッ!!まさかロングレジストを持っていたとはのう!!この明王の目を持ってしても見抜けなかったわい!!」


ロングレジストとは自分の死を一度無効にする能力。

対象は射撃系の攻撃に絞られているものの、投擲や飛び道具は需要が極めて高い。

故に、かなり有用な道具となっているのだが、この世に数限られた珍しいアイテムなので、長い年月を生きてきた明王ですら見るのは初めてシロモノだった。


また、一定時間経つと再使用も可能である。



……因みに、わざわざ言うまでも無いが、コスプレ趣味の年配女性とは松本弘子です。




「──ゴホゴホッッ!な、なによこれっ!ゴホッ──ぐぇっっ!?」


「あっ!松本くん!」


皆は視えてないようだけど、薬を飲んだ私にはハッキリと観えた!

混乱に乗じていつの間にか松本くんが、美咲ちゃんの背後へ近付き彼女を引っ張っているのが見えた!

という事はつまり、作戦は大成功!

松本くん!私やったよっ!やったやった!


……ただ、何故か松本くんは足を掴んでいたので、美咲ちゃんは勢いよく頭を地面にぶつけている……い、痛そうだ。

普通に手を掴んで連れて行けば良いのに、それは嫌だったのかな?




「な、なんじゃと!?全く気配に気づかなんだわいっ!──くっ、逃さぬぞよっ!!」


明王は不用意に相手の接近を許し、挙げ句の果てに目の前の人質を奪還されるといった凡ミスを冒すが……無理もない話だ。


何故ならただでさえ能力が低く、敵から認知され難い孝志が【気配遮断の秘薬】飲んでいる。

あのフェイルノートですら出し抜いた秘策を、彼女より格下の明王が見抜ける訳がないのだ──!!


それでも阻害された視界の中、慌てて孝志と美咲を追いかけるが、それを許さない人物が明王の前に悠然と立ちはだかるのだった。




「──よぉ師匠……手合わせ頼むぜぇ?」


「……このワシが、お前の接近を許すとはのぅ……煙玉も、弓勇者の降伏も、ましてや女勇者を救い出した事までも、全てはワシの意識をあっちに逸らしてアッシュを近付かせる為の策じゃったか」


「そういうこった」


「うむ……お主の裏切りは知れ渡っておるし、言ってしまえば、この城にお主が訪れた事にも気が付いておったわい。じゃが──」


「へへ、途中から気配が無くなっただろう?」


そう言うと、アッシュは気配遮断の秘薬の空き瓶を取り出した。

その空になったビンを観て明王は全てを察する。



「そうであったか。それを飲んで、気配を最小限に抑えておった訳かのぅ?」


「おうさっ!!──じゃあ取り敢えず……いくぜぇぇぇ!!」


アッシュは素早く剣を抜き取り、すぐさま明王へと斬り掛かった──!


「ぬんッッ!!」


互いに渾身の一撃から始まった戦いは、五分五分の攻防を繰り広げている。

さっきまでのイージーな白兵戦とは裏腹、アッシュとの戦闘力は互角で拮抗した戦いとなる。

そしてアッシュも余程の戦力差がない相手には魔神具を使いたがらないのが、互角の理由でもあった。


周囲はリーシャを含め、信じられないモノでも見るかの様に固唾を呑んで戦況を見守っていた。

魔族っぽい見た目ではないので、貴族達はアッシュが救世主に見えている筈だ。

また、それだけの戦いが繰り広げられている。



「……す、凄い」


それは助けられた美咲も例外ではない。

彼女もまた、引き摺られながら二人の戦いを観ていたのだ。


そして次第に自身を助けた人物が誰なのか気になりだし、美咲は足下へ視線を向ける。


「え?……松本……?………くっ!離せっ!」


だがそれが孝志と分かるや否や、美咲は足を激しく動かし彼を振り払った。

どうやら助けてくれた相手を知った途端、危険を顧みず助けて貰ったというのに、その恩は完全に消え失せてしまったらしい。



「………助けたのに、礼も言わないの?」


「なによ?恩を着せようとか考えてる訳?あんたみたいな奴に礼なんか言う訳ないでしょ?別に頼んでもないじゃん」


「………あっそ」


「な、何よ、その目は!!言いたい事があるなら言えば良いじゃない!!あんたのそう言うところが──」


「次は見捨てるから」


「はぁ?!」


「………」


「無視しないで!!聴こえてるでしょ!!」


「………」



彼女がいくら喚こうが一切無視し、孝志は戦況を見守る事にした。

一方、それからも美咲はいろいろ文句を言ってる様子だったが、孝志は決して反応をみせなかった。


松本孝志という男は、本気で心の底から嫌いになった相手に対しては、失礼な態度で接する事も無ければ、嫌味やふざけた返しすらしない。

完全に自分の中で存在しない者として扱うのだ。


あの雄星ですら此処まで嫌う事は無かった。

孝志にしてみれば、わざわざ危ない思いをしてまで助けたのに、こんな態度で来られたのだから堪ったものでは無かったのだろう。


向こうの世界でも、ある出来事をキッカケに牽制しあってた二人だが、今回を機に溝はより一層深まったと言えるだろう。



──例えこれから先、彼女について何が分かろうとも、奥本美咲を拒絶する強い気持ちは変わらない筈だ。

とにかく松本孝志は恩を仇で返す……彼女のような人間がこの世で一番嫌いなのである。



美咲関連の話……これから先、作風の割にちょっと悲しい展開になりますけど、他が明るい話なのでお許し下さい。


水曜日と日曜日が休載日ですので、明日は休載となります。


次話は明後日の20時以降に投稿致します。

宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 仮に「たっくん」とわかっても今惚れてるのは雄星だからなんの問題もないですね。 無の扱いをされる「みっちゃん」の反応が今から楽しみです。
[良い点] ようやく追いついた。取り敢えず美咲はこれが本性な段階でヒロインレース云々以前の問題よな。ぶっちゃけ、ただウザいだけな橘君のがマシまであるかもしれん。アイツは基本はラジコンで空気読めないだけ…
[一言] >この明王の目を持ってしても見抜けなかったわい なんか世紀末の世界で海の明王とか名乗ってそう
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