第11話 蠢く影
「酷いな。上半身と下半身が焼き切れてやがる」
フォルテナ王国王都カルディア。商業地域から少し離れた草むらにて、三人の軍服を着た男たちが、死体を検分していた。
死体も三人。軍服こそ来ていないが、彼らも軍人である。
「こちらは背後から心臓を一突きです。抵抗した形跡はありません。即死です」
「最後の一人は喉を割かれているな。傷跡を見るに凶器は恐らく長剣か槍のようなもの。心臓を突いた奴と同じだろう。下手人は二人か」
声すら上げることもできず殺されたのだろう。
「ちくしょう。まさか王都でしてやられるとはな。奴らはここで何をしてやがる」
「まずは本部に報告だ。すでに目標はフォルテナ王国内に潜伏中。王都にて不審な動きあり。王都周辺の警備を増やすよう提言しなければ」
「王都に潜伏しているのならば、包囲網を敷き、一挙に捉えるべきでは? 王都に駐在中の兵数を考えれば可能かと」
「止めておけ。腕利きの軍人三人が抵抗すらできずに殺されたのだ。包囲することは諦めた方が良い」
殺された三人は魔術装置の扱いに長け、魔闘術も使えるエキスパート。並の軍人とはわけが違う。
「とにかく今は目的を探ることが優先だ。少尉、本部と回線をつなげ」
少尉と呼ばれた青年はトランク程の大きさの機器にいくつか番号を入力し、音声を伝える通信用魔術装置を起動させる。
「――ああ、私だ、コロネルだ。そうだ、予想通りだ。この手際の良さ間違いない」
「――災いを喰らう者だ」