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一章 二話  ファーストコンタクトはバニーガール

教室に入り、少しでも足掻こうと教科書を開く。が、たった数分でホームルーム開始を知らせるチャイムが鳴り響く。


「よーし、みんな席に着けー。出席取るぞー」


担任がいつものように出席確認を取り始めるが、そんなことよりもテスト勉強だ。


「よし、全員いるな。今日は昨日話した転校生を紹介する。入って来なさい」


「・・はい」


凛とした声の女性が扉を開ける・・整った顔。その美しさに劣らないほど鮮やかな赤茶色の髪。女性にしては身長は高めで胸はそれほど無い。俗にいうスレンダー美人というものだろう。


「・・・・」


見とれて言葉が出ない。


「「・・・・」」


だがクラスメイトも見とれて声を出せないでいる。思うことは同じということか。


「・・ツバキ・アルムです。本日よりよろしくお願いします」


丁寧に自己紹介をする転校生。アルムさんっていうのか。


「席は一番後ろの空いている席だ」


「分かりました」


アルムさんは転校生のお約束。一番後ろの席に座ることになった。


え、俺の席?前から2番目だけど?めちゃくちゃ遠いけど?


・・・・クソ‼なんで近くじゃないんだ⁉こういうのはお約束があるだろう‼神はいないのか!いや実際はいるけどさ!こうなったら、休み時間中に話しかけて・・!


「これでホームルームを終える。次の授業はテストがあるから準備するように」


・・そんな余裕はありませんでしたとさ。


                     〇✖〇


午前の授業が終わり昼休み・・この時点でアルムさんとは会話はおろか接触すら出来ていない。それというのも・・


「ねえ、ツバキさん。一緒にご飯食べない?いい場所があるの」


「落ち着けものども!ツバキ様の前で失礼であろう‼」


いや、お前が落ち着け。


・・お察しの通り、人の壁によって接触はおろか姿を見ることすら困難な状態だ。


まあ、日本人離れした美貌はもちろん、スポーツや勉強もそつなくこなすときたら人気になるのは当然ではあるが・・噂じゃもうファンクラブも設立されたらしい。


「短期間で凄い人気だな」


混ざることを諦め、自分の席で昼食を食べていると、灰が俺の机で弁当を広げ始める。


「どうしたの灰?折角席が近いんだから混ざればいいのに」


灰の席はアルムさんの右斜め前と他の人からすれば羨ましがられる位置なのに。


「あんな人混みの中で飯が食えるか。それに・・」


「次、抽選番号・・・・百十五番!」「よっしゃ――‼」


「・・あんなことしてまで話しかける気はない」


ガッツポーズをする当選者を見ながら灰がぼやく。


抽選番号が三桁あるって・・うちのクラス以外の奴も参加してるのかよ。


「そういうお前はなんで混ざらないんだ?」


「・・あることに気付いたんだ」


「あること?」


そう、俺にとって世界の真理であり、何よりも大切なこと。それは・・


「アルムさんにバニーガールは・・似合わないんだ・・!」


金髪でグラマーなバニーガールが俺の理想像。対してアルムさんはどうだろうか?


・・髪が赤茶色なことはまだいい。寧ろ、新たな可能性を見出したくらいだ。


けど・・スレンダー体型であることは看過できない・・!


最初こそ見とれていたが、バニーガールが似合わないと分かった時点で、興味の八割は消失してしまった。そうなった今、わざわざ人混みに混ざる気持ちにはなれない。


「・・そうか」


あまりにも重大な事実に、感情を感じさせない返答をする灰。やはり灰もショックなのだろう。


「ア、アルムさんの趣味は何ですか?」


「・・あえて言うのであれば鍛錬でしょうか。それと私のことは良ければ名前で呼んでください。あまり名字は好きでないので」


「は、はい!ツバキさん!それじゃあ次は・・」


アルムさんにあれよこれよと質問するクラスの男子。周りも静かに耳を傾けてメモを取っている・・傍から見れば記者会見だ。アルムさんも淡々と質問に答えているし。


・・ふむ、アルムさんに質問か。


「灰。アルムさんに何か質問出来るとして何をする?」


「・・海外産のオススメゲームは何か」


「・・これだからゲーマーは。もっと現実を見ろよ」


「・・そういうお前は大層な質問なんだろうな?」


「当たり前だろう?俺は・・バニーガールに興味はないかだ!」


「・・自分の発言すら覚えていられないのか?」


哀れみを通り過ぎ、軽蔑の目を俺に向ける灰。


「灰の言うことは尤もだ。確かに、俺は似合わないだろうと言った・・だがな。それでも見たいものは見たいんだよ!」


そう。似合わないと言ったのはあくまで俺の想像だけでの判断。実際には俺の想像を超えるかもしれないじゃないか!


「・・・・(興味を失いソシャゲを始める)」


「アルムさんは髪が赤茶色だから赤色が似合うはず。胸はともかくそれ以外・・特に足が綺麗だから網タイツもいらない。ヒップも肉付きが足りないけど、高水準でまとまっているからそれを強調することで胸のハンデをものともしない魅力が・・」


「・・申し訳ありませんがバニーガールというものには興味ありません」


「へーそうなん・・だ」


・・・・恐る恐る回答者へと顔を向ける。


「ア、アルムさん」


なんでアルムさんがここに⁉・・いや、そんなことより説明を・・


「は、始めましてアルムさん。俺は・・」


「・・失礼します」


俺の弁明を聞くことなく教室を出ていくアルムさん。


「良かったな。話が出来て」


「・・そうだね」


好きの反対は無関心なんて話を聞いたことあるけど変人扱いとどちらがましなんだろうか。


ともあれ、悲惨なファーストコンタクトとなったことだけは間違いないだろう・・。


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