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終章 四話  届かぬ一歩、絶望の咆哮

「・・ははは!どうだ!楽しいか⁉」


「そんなわけあるか・・よ!」


会話しながらも的確に巨獣以外の獣を打ち抜きつつ、犯人も狙い撃つ橘さん。


が、犯人の近くには・・先程の強力な融合体・・獣王が護衛についていて、いとも簡単に矢を弾き飛ばしてしまう。


・・もしかすると獣王も増えているかもしれないと考えていたがその心配はなさそうだ。


「・・すまんアルム。巨獣は任せた」


橘さんの攻撃では巨獣にほとんどダメージを与えられない。ここからは予定通り、私が巨獣を担当し橘さんには援護に徹してもらう。


「・・断罪!」


「切断範囲」を強化した斬撃を放ち、獣王へと続く道を作る。


「はぁ・・!」


斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬!


「切断力」を強化しての全力の連撃。けれど、その全てをなんのこともなく捌かれてしまった・・それなら。


「・・断罪!」


同時に「切断速度」も強化して速烈の一閃を放つ!


「ガ・・グガァァ‼」


刀は胴に直撃・・が、頑丈な剛毛のせいで大したダメージになっていない。


「アルム!下がれ!」


橘さんに援護してもらいながらすぐさま後退する。


「・・さて、どうしようかね本当に」


「消耗戦も望めそうにありませんね」


・・予定ではこの時点で獣の半数が壊滅。獣王に気をつけながら消耗戦に移行するはずだったのだが、相手は強力な護衛に未だ圧倒的な物量。このまま消耗戦に持ち込んだとしてもすぐに限界が来てしまうだろう。


この強大な敵。どう攻略すれば良いのか・・妙案が思い浮かばない。


「ふむ、このままでは興が乗らんな・・そうだ。貴様たちが気になることを一つだけ話してやろう」


「・・何を考えてやがる?」


懐疑そうに問いかける橘さん。犯人の提案はまるでこちらに情けをかけると言わんばかりの内容だ、何かしらの裏があるかもしれない。


「お前たちの武力とモチベーションの回復」


・・隠すことなく犯人は私たちに情けをかけると答えた。


「私は貴様たちを徹底的に潰したいのだよ。情けをかえられ、全力を出しても勝てないともなればいい見せしめになるだろう?」


「・・なぜ、事件を起こした。お前の目的は何なんだ・・木葉」


有益な情報を得られると考え、質問する橘さん。


「・・随分とつまらないことを聞くんですね、橘先輩」


「うるさい。何でも一つ答えるんだろ?いいから答えろ」


「・・約束は約束ですね。私の・・いえ、僕たちの目的は神殺しの達成です」


ちょっとしたお使いのような気軽さと屈託のない笑顔でその大罪を口にした。


「・・本当に神を殺すつもりか?」


「はい。博士は神が憎くてしょうがないみたいなので。寝る間も惜しんで努力してますよ」


「神殺しなんてどうやって行う?神器は使用できないんだぞ」


「・・欲張るな。一つと言ったはずだ。聞きたければ私を倒して尋問することだな」


話を切る犯人。本当に一つしか教える気はないようだ。


「さて、貴様は何が知りたい?」


橘さんの質問に答え、今度はこちらに話を振る犯人。


・・本来ならば神殺しの方法について聞くべきなのだろう。けれど、今の話を聞き、どうしても聞きたいことができてしまった。それは・・


「・・サクラ兄さんについて教えてください」


兄さんが神殺しに関与しているかどうかだ。


「・・どこにいるかは分からん。あの人は我々の計画の中核を担っているからな」


「・・・・そうですか」


兄さんが・・神殺しを。それも中核として行動をしていると。


「・・ツバキといったな?どうだ、貴様もこちらに来ないか?そうすればサクラに会うこともできるぞ」


犯人のとびきりの甘言・・以前の私だったならば、この誘いに乗っていただろう。


「お断りします」


けれど、今の私には守りたい人がいる、守りたい場所がある・・果たしたい願いがある。


「神殺しは必ず阻止します。例え、兄さんと敵対することになったとしても・・私が兄さんを止めます」

今度は私が兄さんを助けるのだ。あるべき道へと正すために。


「・・あい分かった。これからも貴様を敵と認識しよう」


「私も、あなたを危険人物として必ず倒します」


「それでいい・・では、仕切り直しといこうか」


犯人の武力が跳ね上がる。


「・・アルム。お前が何を抱えているかは今は聞かない。けど、後で必ず話せ。仲間として俺は聞く義務があるからな」


「・・ありがとうございます」


「それと、作戦を変更する。ここで・・全部使うぞ」


「・・!それではこの後の作戦が!」


あれはどうしてもという時に使うはずのものだ。もし、今使えばもう手段が


「・・あいつの戦力を見てみろ」


犯人の・・圧倒的な物量と戦力。本気になったならば私たちだけでは勝てないだろう。


「あいつが油断している今しか機会はない。勝つにしても、負けないにしても」

「・・分かりました」


そうだ。私たちに残しておける余力なんてない。なら、一番効果的な時に使わないと。


「・・眷属よ敬意をもって相手をしろ」

「「グリャアアアアア!」」


一斉に襲いかかってくる獣の群れ。


「炎よ!」


接近に伴い、出来る限りの炎を前面に放ち足止めを行う。


「装填!」


その間に橘さんは矢を出現させ構える・・その数、三本。


「・・纏え・・風よ!」


その矢すべてに仕者の権能をかけた橘さんは


「風来一陣・・嵐!」


群れへと放つ!


二本は側面の獣を吹き飛ばし、もう一本は獣王へと一直線に向かっていく!


「ガァァアアア!」


・・獣王はそれを正面から受け止める!


少しづつ傷ついていく獣王の体。が、威力はそれよりも早く落ちていってしまう。


「なめているのか?全力でなければこいつには届かないぞ」


・・暴風の矢はある程度の傷をつけるだけで消えてしまった。


「はぁ・・はぁ」


嵐を・・それも三本も同時に放ったことで息も絶え絶えの橘さん。


側面の獣も、壊滅的な被害を与えたはずなのに驚異的な速度で増えていく。


「・・終わりだな。安心しろ、命まで」「いいや、まだだね」


ふらふらになりながらも立ち上がる橘さん。


「・・見苦しいぞ。もう貴様に有効的な攻撃はないだろう」


・・その通りだ。橘さんはこれ以上は嵐を放つことはできない・・そう、嵐は。


「アルム!」

「はぁぁ!」


橘さんが作ってくれた、がら空きの正面を全速力で突き進む!


「断・・罪!」


そのままの勢いで獣王を一閃する!


「・・ガ?」


・・私の一撃は剛毛を削ぐだけでダメージを与えることは出来ていない。


けれど、これでいい。私が使った強化は切断範囲。これで獣王に攻撃が・・矢が通る!


「よくやったアルム!」


橘さんは私の出した炎を「烈波」に纏わせる!


「火焔陣・・陽炎!」


豪炎の矢が無防備となった獣王を襲う!


「ガァァァ⁉・・・・グ、ガァァ‼」


全身を焼かれ、身を崩しながらも苛烈な攻撃をしてくる。


こんな状態になってもまだ倒れる様子がない・・それでも


「火焔陣・・陽炎!」


烈波は後・・一射残っている!


「グギャアアアアアァ!」


再び燃え上がる爆炎。この火力ならば獣王といえども・・!


「グ、グ、ガ」

「「・・⁉」」


嵐を一回、陽炎を二回打ち込んだのにまだ動ける・・⁉


一歩また一歩と接近してくる獣王。


「・・まさか、私の最上の眷属を一体とはいえど倒すとはな」


しかし、獣王は私たちの目前に迫りながらも霧散していった。


・・これで敵の最大の障害を倒した。後は一気に!


私の突撃を止めようと襲いかかる獣を斬り倒しつつ一直線に犯人へと迫る!


「・・これで終わりです」


喉元に刀を突きつける。これで・・終わった。


「随分と、必死だな」


「負けるわけにはいきませんから」


「・・やりたくなかったのだがな」


何かを諦め・・そして、達観する犯人。


「貴様たちが負けられないように・・僕も負けられないんですよ!」


周囲の獣が・・犯人に噛みつき始める!


「・・・・っ⁉あああああ⁉」


叫び声を上げる犯人を中心に巨大な影が現れる。


「気を付けろアルム!武力が跳ね上がってる‼」


・・影の中から異形な姿をした巨大な腕が現れる。


それだけじゃない・・影の中にとてつもなく恐ろしい何かがいる!


「くそ!止まれってんだよ!」


影の中にいる何かに気付いた橘さんも出来うる限りの攻撃を犯人へと仕掛けるが異形の腕によって全て防がれてしまう。


・・けれど、腕一本だけなら!


「・・断罪!」


私が斬り落とす!


「・・・・」


私の渾身の一撃は・・異形の腕によっていとも簡単に受け止められた。


「な⁉」


「切断力」に「切断速度」も強化したのに・・ほとんどダメージが入っていない!


・・それならもう一撃だ!


「断ざ・・ぐっ⁉」


再びの攻撃も新たに現れた異形の腕によって防がれ、そのまま突き飛ばされてしまう。

そのまま腕が追撃を仕掛けてくる。


・・まず・・い!逃げ・・ないと!


「・・風よ!」


踏みつぶされる直前。突如吹いた風によって吹き飛ばされギリギリで窮地を脱する。


「アルム!立てるか⁉」


「・・すみません。助かりました」


危なかった。橘さんの助けがなければ確実に潰されていた。


「・・間違いなく俺たちでは手に負えないな」


「犯人を直接狙う以外に方法はなさそうですね・・」


それすら可能性の低すぎる賭けではあるが。


「あ、ああアああアアアア!」


ホオズキさんの悲鳴が増すごとに活発になっていく影。


・・影からまたもや腕が現れ・・足が現れ・・体が現れる。



「「ルオオオオオオオオォォ!」」




・・獣王の数倍近い大きさ、いくつもの腕を持ち出現したそれは地上に現れた喜びの咆哮を高々と上げた。


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