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プロローグ

・・・・人間と同じくらい大きい獣と遭遇する。


現代の日本で生活していればまず有り得ないだろう。いや、昔もないかもしれないけど。


「おいおい、勘弁してくれよ」


けど、俺の・・(ひいらぎ) (さく)()にとってはこれが最近では当たり前の日常だった。


最初は真っ黒なオオカミのような物体と遭遇したときには多少なりとも恐怖はした。けど今日でちょうど一週間。もう飽きるほど見たし、戦った。


・・ああ、一週間前が懐かしい。今の時間ならマンガ、ゲームをしながらスナック菓子を食ってゴロゴロしていたのに。今や学校にパトロールと、社蓄並みに働いている。


おまけに給料も無ければ労災もないのだから、ブラック企業も裸足で逃げ出すはずだろう。


「止めに、敵さんもやる気満々と来たもんだ」


・・俺を囲うようにしてジリジリと距離を詰めていく獣たち。


普段は二、三匹で行動するはずのこいつらなのだが俺を囲っているのは五体。正直、個々では強くないが俺一人ではもしものことが起きるかもしれない。


なので、こんな時の便利アイテム・・もとい、仲間に頼ることにする。


「灰。助けてくれ」


俺の近くでスタンばっている親友であり戦友の(たちばな) (かい)に通信機ごしのラブコールを送る。


「悪いがこっちも戦闘中だ。一人でやれ」


が、あっさりと振られてしまった。

ヒドイ‼俺たちの友情はそんなものだったというの⁉


「・・バカなこと考えている場合じゃないか」


灰がすぐにこちらに来られないということは、あいつも同じような状況になっているということだ。ならば一刻も早く合流しなければなるまい・・さてはて、どうしましょうかね。


愛用武器の「牙鉄」を締め直しながら、現状打破の方法を探る。


うーむ・・・・ま、正面突破でいいか。


試行時間三秒。正面の獣を殴り飛ばすために接近する。


「・・ガァ!」


獣も爪を振るい応戦してくる。が、遅い初速と大振りな攻撃。到底間に合うはずもない


「遅い!」


がら空きになった鳩尾にカウンターを打ち込む。獣はたまらず吹き飛・・ばない


・・変だな?いつもならこれで消滅するんだけれど。


不審に思いながらも鳩尾に埋まった拳を抜こうとする。


「あれ?」


・・獣の体がゲル状の物体に変わり身動きが取れなくなってしまった。

いくら動かしても変化なし。力技ではどうにもならなそうだ。


「・・・・やっばい」


身動きが取れない状況で四匹に囲われている・・・・体を四等分にされるのにそう時間はかからないだろう。


「えーと、見逃しては・・」「「ガァ‼」」


獣たちが否定の雄叫びを上げる・・・・デスヨネー。


「「グアァァ!」」


一斉に襲いかかってくる獣たち。そこには一切の容赦も慈悲もない。


・・ヤバイヤバイヤバイ‼


俺はたまらず目を閉じ、残った左手で顔を守る。


「・・・・?」

が、獣たちは一向に襲ってこない。状況を確認するために目を開けると


・・赤茶色の長髪をなびかせた少女が獣の一匹を切り伏せていた。


・・頭が真っ白になっているこの状況でも分かることが二つ。


一つは少女の武器。正確な長さまでは分からないが少女の身長半分ほどの刀を持っている。女性にしては長身な少女と同じということは半分でもかなりの長さであることが分かる。


そして、もう一つはこの少女は俺の敵ではないということだ。


獣を倒したこともそうだけど・・少女がとんでもない殺気を獣に放っているからだ。


首筋に刃物を突きつけられているようで俺に向けられていないと分かっていても足が竦んでしまう。殺気を向けられている獣たちも距離を取り、警戒レベルを最大に上げている。


「大丈夫ですか?」


警戒しながらも俺の拘束を解いてくれる少女。


・・少し無機物的だが、凛としたとても綺麗な声だった。心地のよい声とはこのようなまさにこの声のことではないかと思うほどだ。


だが、その声以上に・・少女の美しさに心を奪われた。


スッとした顔つきに黒目が大きく強い正義感と誠実さを感じさせる瞳。そして、普通の人なら負けてしまい宝の持ち腐れになるだろう鮮やかな赤髪に劣ることない美しさと気品を少女は内包していた。


百人中百人が美少女と答えるであろう美少女。 うちの学校の制服。 も似合っている。


「・・うん?」


うちの学校の制服?ということは同じ学校のはずだ。

が、こんな子見たこと・・・・いや、一人だけ心当たりがあった。


「始めまして。私はツバキ・アルムといいます」


今日うちのクラスに転入してきたツバキ・アルムさんだ。


「やあ、アルムさん。学校ぶりだね」


「・・え?」


知り合いと分かり気さくに挨拶する。きっと彼女も「あ、柊さん!」と気さくに・・


「・・同じクラスのバニーガール好きな人?」


「・・柊咲夜だよ、転校生さん」


どうやら彼女の俺に対する認識は完全に変態のようだ。


「卑しい気持ちなんて一切持ってないから。ね?」


誤解を解くために出来る限りの満面の笑みを浮かべる。


「・・そうですか」


「うん。心底どうでもよさそうだね・・」



・・え、何があったかだって?


それじゃあ俺と彼女のファーストコンタクトについて話すとしよう。

・・言っとくけど、本当に誤解だからな!


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