薔薇
あの娘は、いつからあんなになってしまったのだろう。
私がいくら止めても聞く耳を持たない。
「好きだから、愛してるから、いいの、彼が何をどう考えてようと、私が好きで愛してればいいの。」
彼女の心のごみは口から不規則に飛び出してくる。
彼が消えてから何年たったのだろうか。
長い間彼女の心に寄り添って来たけど、彼への愛は日に日に増していく。
「本当に、愛し合ってたの。絶対、絶対、絶対!」
その叫びの中の'絶対'には現実という絶対を否定する刺がみえる。
彼女の愛は美しいと思う。
美しいものには刺があるのがお決まりだ。
その刺は、何を貫くのだろう。
私は鏡を見た、血だらけの私を見た。
鏡の中の私は、想いという服を脱ぎ捨てるように唇を動かす。
「あぁ、私だったのか。」