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第八話 ‐救出作戦‐

「処刑は三日後か。

 こちらからは間に合わないな。」


ダビアテは大きな溜息をつく。


「じゃが、西の部隊はギリギリ間に合う位置にいるそうじゃな。

 ゾルアス様のことは向こうに任せるしかなさそうじゃのう。」


マコトたちは、さきほど初めてダビアテと会った部屋まで戻っていた。


「あの、ゾルアス、様って?」


恐る恐るマコトが聞いてみる。


「ゾルアス様はいわば革命軍の要、象徴じゃ。

 早くからこの国の現状に異を唱え、何度も王国軍と戦い勝利してきた男じゃ。」

「彼はこの王国でも珍しい中級魔法使いだ。

 属性は火。

 圧倒的な範囲攻撃が可能で兵士が複数いようと火炎を放ち焼き尽くす。」


するとサラが手を上げる。


「・・範囲攻撃? 

この前サラが殺した隊長さんが、魔法使いは単体攻撃しか出来ないのが、

弱点の一つだって言ってた。」


「あぁ。

 魔法のことを良く分かっていない兵士の認識などそんなものだろうな。

 確かにこの国の多くの魔法使いは単体攻撃しか行えない。

 それは皆殆どが下級魔法使いだからだ。

 レベルが三十を超えれば中級魔法使いとなる。

 つまり範囲攻撃が可能だ。」


「ちなみに、レベルが六十超えれば全体攻撃が可能な、

 上級魔法使いになると言われておる。

 じゃが、そんな者は、この王国にはおらんじゃろうて。

 お隣の国は分からんがの。」


なるほど、とサラが手を降ろす。


「でもどうして、あんなにお強いゾルアス様が捕らわれてしまったのでしょうか?」


ニーナが悲しい表情でダビアテの目を見る。


「それはな、あまり公にしてはいないが、魔獣が現れたらしい。」

「―――――ッ!?」


「エデ村に現れたあの化物のことですか?」

「あぁ、さきほどのモゼ村長から話を聞いたが恐らく同じタイプだろう。

 兵士たち五人が懐から謎の液体を取り出し飲み干したと思ったら、

 たちまち五体の魔獣となってしまった。」

「ゾルアス様は仲間を逃がす為に魔力が枯渇するまで前線で戦ったのじゃが、

 一体を倒したところで力尽き、捕らえられてしまったのじゃ。」


そんな、と更に悲痛な顔になるニーナ。


「とにかく、

 さきほども言ったようにゾルアス様の方は西の奴らに任せるとしてじゃ。

 問題はエステ様の方じゃ。」

「そうだな。

 エステ様は古代魔法の一端『鑑定』が扱える貴重な存在。

 例の館の地下二階に移動されたのであれば、残された時間は少ないな。

 そこでだ、マコト!」


急に名前を呼ばれ、ビクッとなるマコト。


「エステ様救出を命ずる!いいな?」

「ぇ、あ、はい。

 でも何で僕なんですか?

 超能、いえ、魔法の力ならサラの方が断然上ですよ?

 それに他の戦闘員の方たちは?」


モゼ村長とダビアテが互いに顔を合わせ頷く。


「確かにそうかもしれないが、サラはどう見ても子供だ。

 例の館には入れないだろう。」

「そうじゃな。

 いくら仮面を着けるとはいえ、背格好まではごまかせん。

 それに、他の者では入り口で革命軍とバレてしまうじゃろう。

 マコト君は幸い二十歳以上に見えるし、清潔感もある。

 服さえ整えれば貴族に見えるはずじゃ。」


――――館? 仮面? 貴族?


不安に思うマコトはダビアテに疑問点を聞こうと思ったが、

口挟むタイミングが無く話は続く。


「それにマコトが物の回復が出来ると聞いた時点で、

 ある作戦を思いついたのだ!」

「ほぅ! それはどんな作戦じゃ?」

「ふふ。使用済みの魔道具。

 爆裂リングを装備して潜入してもらう!」

「――――ッ!?」


モゼ村長とダビアテが盛り上がっている。

なるほど、その手があったか! などと爺と見た目おっさんの二人が目を輝かせている。


「・・でも真実の鏡の対処はどうするの?

 その館って革命軍の要の人を捕らえるぐらいだから、重要な施設なんでしょ?」


サラが当然の疑問を口にする。


「それは心配ないじゃろうな。

 確かに入り口で、特殊な鏡で簡単なチェックはされるが、

それは『革命軍』か『否』か、だけじゃ。

さきほどの件で、マコト君は必ず否になるはずじゃ。」

「そういうことだ。

 逆に名前や所属が分かってしまう物は絶対に使われないだろうな。

 あの館の性質上。」


うんうん、と爺とおっさんが共通の認識を確かめ合いニヤリとする。


「ところでモゼ村長、なにか面はあるのか?」

「ありますぞ。

 マコト君、例の仮面をダビアテ様に見せて差し上げなさい。」


例の仮面とは、村長の地下室にあった、あの不気味なお面のことだった。

颶風の剣はその悪を退けたという伝説があるそうだが、その悪の象徴がそのお面であった。

二つは対になっており、お面から颶風の剣を遠ざけすぎると、邪悪なる何かが復活するという言い伝えがある為、しかたなく一緒に持ってきたのだ。


「ぉお、これはなかなか悪趣味な仮面だな。

 不気味な面を着けてくる貴族も多いそうだ。

 これで問題ないだろう。」

「よし! そうと決まれば夕方には出発じゃ!

 急がねばエステ様の精神が壊れてしまうやもしれん!」


意気込むモゼ村長だったが、マコトは一番気になっていたことを問いかける。


「あの、その館ってどういう所なんですか?」

「うむ。

 一階は金持ちしか入れないような高級で洒落た酒場じゃ。

 じゃがその地下にある施設の性質上、通称『牝馬の館』と呼ばれておる。」

「・・ひんば、の館?」

「奴隷、多額の借金を抱えた者。反逆者。

 理由は様々じゃが、共通しているのは美しい娘たちがそこに集められておる。

 ここまで言えば、どういった場所かは想像がつくじゃろう?」


理解できないという顔をしているサラ。

それとは対照的に、マコトは顔面蒼白になり、

改めて異世界に来たことを痛感していた。

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