表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第七話 ‐真実の鏡‐

マコトは焦っていた。

なんだか昨日もそうだった気がする。

今は待機中だ、奥の部屋で村長と誰かが話をしている。


「まさか教会の下に、こんなに広い地下があるなんて。」

「・・確かに。」


つい先ほど馬車が到着したのは古びた小さな教会だった。

下に通じる隠し扉があり、降りると長い廊下や幾つもの部屋があった。

どんどん奥へ進み、今はとある部屋の中で、鉄製の長椅子に座っている状態だ。

マコトは真実の鏡について熟考していた。


――――その者の魔力を感知して全てを暴くというが、

いくらなんでも大袈裟じゃないか?

そんな便利なものがあるなら、

何故王国側は反乱分子を見つけるのに使用しないのか?

ニーナの父は鏡が普及していると言っていた。

ならこの世界の人々は日常的に嘘がバレてしまうのか?


考えても答えは出ない、こうなったら出たとこ勝負と、結論に至る。

一方で何も心配していなさそうな隣のサラに提案する。


「なぁサラ、超能力の力を流し込んでみないか?」

「・・鏡に?」


超能力も一種の魔法と言えるのではないか、とマコトは前向きに考える。


「・・それでもし上手くいっても鏡に表示されるのは“真実”」

「うぐ。」


想像してみた――――――。



ーーーーーーーーーーーーーー

名前 城下 真

年齢 十九

性別 男

身長 168㎝

体重 59㎏

特記 異世界からの来訪者 超能力保持者 Bランク

能力 操作系‐『静物記憶覚醒』

性格 優柔不断

思想 現状の王国体制を憂いている。

   革命軍の一員となり世直しの方法を模索中。

ーーーーーーーーーーーーーーーー



――――こんな感じで表示されるのだろうか?

あれ、真実の鏡で嘘偽りのないことが表示されるのなら、

逆に異世界や超能力のこと信じてもらえるのではないだろうか?

そうだ、そうすれば説明の手間も省けるし、

僕とサラが咄嗟についた嘘も押し通さずに済む。



――――ガチャ――――


ドアが開き、村長が微笑みながら三人に手招きする。

サラ、マコト、ニーナの三人は隣の部屋に入った。

長方形の机の上座には、屈強な戦士たちが既に着座していた。

その中でも特に大柄な男が立ち上がり、両手を広げ口を開く。


「ようこそ革命軍へ! 

 俺は東の部隊を任されているダビアテだ。

 モゼ村長から話は先ほど聞いた。

 貴重な魔法使い、しかも風と水ときた。

 歓迎するぞ!」


マコトはキョトンとした。


―――風の魔法使いはサラのことだろう。

だが水? ニーナさんが実は水の魔法が使えるとか?


「ん? その後ろのいるのがアロンの娘か?」


サラとマコトの後ろに隠れるようにしていたニーナが進み出る。


「は、はいッ!

 ダビアテ様にお会いでき光栄です。

 今までも革命軍のために食料の運搬等でお手伝いをしてきましたが、

 目の前でこの国の酷い様を知り、戦闘の方に参加したく参りました。」


「ニーナだな。よろしく。

 武器は扱えるか?」

「はいッ! 弓を父から教わっておりました。

 必ずやお力になって見せます!」


うむ、とダビアテは頷き。三人に椅子に座るよう促す。


「今“真実の鏡”の準備をしている。

 その間少し話を聞かせてくれないか?

 マコト。」

「ぁ、はい。」

「マコトは水の魔法使いだそうだな。

 物の回復が行えるそうだが、

 実際に見せて欲しい。」


そう言うとダビアテは机に立て掛けてあった古びた杖を手渡す。


――――僕が水の魔法使い?

古物を新品に出来るとは、あの時サラが嘘を言ったけど、何で水何だろう?


疑問に思いながらも『静物記憶覚醒』を発動させる。

マコトと杖が青白く光り始め、数秒で新品同様となった。


「「「ぉおおーッ!」」」


周りから感嘆の声が上がる。


――――ふぅ。颶風の剣はよっぽど昔の物だったんだな。

あれだけ時間が掛かったのは初めてだったし。


そんなことを思いながらマコトはダビアテに杖を手渡す。


「た、確かに新しくなっている。

 かつての力が出せそうだ! 礼を言うぞマコト!」


ダビアテは満面の笑みで杖を眺める。


「ところでマコトは人の回復は可能か? いわゆる治癒魔法だ。」

「いえ、ケガとかそういったのは出来ないです。」


ふむ、とダビアテは考え込む。


「ダビアテ殿。サラさんとマコト君は遠い島国出身じゃ。

 少々我らの常識が当てはまらない部分があるのじゃよ。」

「なるほどな。

 独自の発展をしているということか。」


一応納得してもらえたようだ。


「あの、ダビアテさん一つ質問が。」

「なんだ?」

「物の記憶を呼び覚ます魔法ってありますか?」


思い切って聞いてみたが、ダビアテが即答する。


「いや、生き物相手ならまだしも、

 そのような魔法は聞いたことがないし、存在しないだろうな。

 なんでだ?」

「い、いえ。

 ちょっと気になったもので。」


そして、話題がサラに移ろうとした時、一人の女性が奥のドアから入ってきて

鏡の準備が整った旨を皆に伝えた。


「よし! では移動するぞ。楽しみだな。ハッハッハ!」


即戦力の新人参加が嬉しいらしくダビアテは上機嫌だ。

お互い大した自己紹介をしていないが、

それは、これから確実に明らかになるからなのだろう。


長い廊下を歩くと開けた場所に出た。

そこには巨大な鏡があった。

幅約十メートル、高さ約二十メートルといったところか。

部屋の中央に石碑のように鎮座していた。


この短時間でどうやって噂が広まったのか、

革命軍の戦士と思われる野次馬が多数同じく広場に集まっていた。

皆大型新人と呼ばれる二人を好奇な目で見つめ、会話をしている。


「ニーナは前に使ったことはあるか?」


鏡の前に移動しながらダビアテが問う。


「いえ。これほどの鏡は一度もないです。

 手鏡サイズの簡易的な真実の鏡ぐらいしか。」

「身分等の証明に使うタイプじゃな。

 最近あれは関所や重要な施設を警備している兵士に持たされることが多くなったの。

 じゃが、名前や身分以上のことが事細かに分かるオリジナルの巨大な真実の鏡は、

王国広しといえど、五つと無いじゃろうて。」


手本を見せよう、とダビアテが鏡の前に立ち、表面に触れ魔力を注ぐ。

すると全体が白く光り反射がなくなった。

代わりに大きな文字が表面に表示される。



――――――――――――—―――――

レベル  34


名前   ダビアテ・ゴリデ

年齢   27

性別   男

出身   バラオ王国 ジェリドゥ街

身分   平民

所属   革命軍 隊長


クラス  魔法戦士

属性   土

魔法   防御系土魔法

魔力量  500

魔杖   大地の杖


武器   片手斧『バトルアックス』

鎧    全身鎧『ランドアーマー』

――――――――――――――—―――



「ッとまぁ、こんな感じだ。

魔力にはあらゆる個人の情報、己の強い意志、認識が内包されている。

ここから操作して更に細かな情報や数値も見れるが、俺のはいいだろう。

次、ニーナやってみてくれ。」


はい、と返事をし、表面に触れると再び普通の鏡に戻り、ニーナを映し出す。

意識を集中させ、額に汗を浮かべるニーナ。

数十秒後、鏡が大きな文字を表示する。



―――――――――――――――――

レベル  12


名前   ニーナ・ヘブラ

年齢   22

性別   女

出身   バラオ王国 エデ村

身分   平民

所属   革命軍 見習い


クラス  アーチャー

属性   風

魔法   なし

魔力量  10

魔杖   なし


武器   木製の弓

鎧    布の服

――――――――――――――――



「ふむ、レベル十二か、悪くない。

 では、いよいよだな。マコト!」


マコトは真実の鏡まで歩き、表面に手を付ける。

鏡には不安げな黒髪の青年が映っている。


――――クソッ! どうにでもなれッ!!


心の中で叫びマコトは、超能力の力を流し込む。

体が青白く光り、鏡も光る、そして無事大きな文字が表示された。

が、それを見た周りから、どよめきが起こる。

マコトも後ずさりして鏡の全体を把握する。


「え?」



――――――――――――――

レベル  不明


名前   不明

年齢   不明

性別   不明

出身   不明

身分   不明

所属   不明


クラス  不明

属性   不明

魔法   不明

魔力量  不明

魔杖   不明


武器   不明

鎧    不明

――――――――――――



「な、何だこれは!?」

「初めて見た、不明ってどゆこと?」


ざわつきがどんどん大きくなる。


「静かに! 皆静かにしてくれ! 

 マコト、もう一度だ。」


ダビアテに言われ再度トライするも結果は同じだった。

続いてサラも二度試したがやはり同じ。

最後に近くにいた戦闘員が魔力を流すと、通常通り表示がされた。


「一体どういうことだ? 

 こんなことは今までなかった。」


ダビアテは考えむ。

すると周りから罵声が聞こえてきた。


「モゼ村長の推薦だから大目にみてやったが、そいつら本当に仲間なのか?」

「簡単にこの隠れ家に入れてしまって、もし王国側の密偵なら一大事ですよ!」

「防御魔法の一種か? 鏡が表示できないなんて。」


皆マコトとサラに対して疑心暗鬼になり始める。

モゼ村長はというと、困った顔をしながら独り言をぶつぶつ呟いている。


「おかしいのう。オリジナルの真実の鏡は絶対じゃ。

 失われし古代魔法と古代技術の結晶。

 魔力さえ流せば分かるはずじゃ。

 “不明”とは、まるでサラさんとマコト君が、

魔力を一切持っていないと言っている様なもの。

じゃがそんな人間は存在するはずがない。」


周りが混乱し、考え込む中突如、


――――バタンッ!!――――


ドアが勢いよく開き、一人の男が入ってきた。


「た、大変だ皆!!」


全速力で来たのだろう。

ぜぇぜぇと呼吸が荒く、膝に手を付けている。


「悪い知らせが二つもある。

 ゾルアス様の処刑の日が早まった!

 エステ様が地下二階へ移動された!」


マコトとサラは訳が分からなかったが、

途端に周辺の戦闘員たちが絶望的な表情になる。


「いよいよ王国側が我ら革命軍を本気で潰す気のようじゃな。

 じゃがそうはさせん!

 西も東も期待の大型新人がいるんじゃ。

 目に物を見せてくれるわ!」


新人頼みとは何とも情けない話だが、それほど切羽詰まっている状況らしい。

一人決死の表情をするモゼ村長を横目でみながらマコトは、

一難去らずもう一難か、と、自身の境遇を憂いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ