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第六話 ‐会合と嘘‐

第六話です☆

少し長めになりました(´Д⊂ヽ


それではどうぞ☆

―――ガッタン―――


「んぉ!?」

「・・起きた?」


馬車の車輪が石に一瞬乗り上げたらしい。

大きな音がしたが、特に問題はないようで、前へ進み続ける。


「・・マコトぐっすり寝てたね。中、結構揺れるのに。」


欠伸をしながら瞼をこするマコトに向かってサラが話しかける。


「それは、あれだけのことが一日で起きたからね。

かなり疲れたんだと思う。

その後の話し合いも長かったし、ね。」

「・・そうかな? サラにとっては有意義な時間だったけど。

今後の方針も決まったし。」


あいかわらず感情の乏しい表情で淡々と語るサラから目線を逸らし、外の景色を眺めた。

マコトは昨日の出来事を思い出していた。



――――――――――――――――――――――――――



日が暮れた19時ごろ。

五人はニーナの家で談笑していた。

その中で一番年長であろう白髪に白ヒゲを蓄えた老人が明るく喋りだす。


「改めてわが村を救ってくれたこと、革命軍への参加意思表明に感謝じゃ。

礼をいうぞい。サラさん、マコト君。」


部屋には村長、ニーナ、彼女の父、マコトとサラの五人が木製の椅子に腰かけていた。

円形のテーブル上には豪華な肉魚の料理と薬草入りのサラダが多く並んでいた。

薬草は食す度に体が内側から癒されている気がする。

多少は疲労回復にも効果があるのだろうか、などと考える。


「しかし、二人の”救世主”に対して小さな集まりですまないのう。

 じゃが、今は誰が信用できるかは分からんのじゃ。」

「村人たちは二人に勿論感謝しています。

 が、色々と理解不能なことが一度に起き過ぎた為、多くは混乱し、同時に恐怖しているというのも事実です。」


筋肉隆々の男が肉をガンガン口に運びながら、村長の説明を補足する。


「どうしたのじゃニーナ? 

さっきから黙ってばかりじゃ、何を考えておる、言うてみい?」


ニーナは村長に促され、ようやく口を開いた。


「いえ、あの、本当にこれで良かったのかなって思っていまして。」

「どういうことだ?」


ニーナの父が心配そうに娘の顔を覗き込みながら問う。

ちなみに、彼の怪我はすっかり回復したようだ。

左肩に刺さっていた矢も無事抜け、今は古傷のような跡がうっすらあるだけだ。


「いえ、その、サラさんとマコト君が革命軍に参加して頂けるのは本当に嬉しいですし、本当に心強いです。

 ですが、お二人にとってこの国の争い事など全くの他人ごとのはず。

 それなのに、助けて頂けるなんて、その好意に私たちは甘えてしまって良いものかと考えていました。」


ニーナは申し訳なさそうな表情をしながら、上目遣いでこちらを見てくる。


「それについては心配しないで大丈夫だよ。

好意だけじゃない。

参加する代わりに村長さんにいくつかの条件を提示させてもらってるんだ。」

「・・サラたち兄妹は己の見聞を広める為、そして悪しき者を倒す為にあの島を出た。

 でも、重要な目的が他に後二つある。

 一つ目が先に島を出て行った仲間の捜索。」

「もう一つが時空魔法の探索。

 どちらも二人だけじゃ手に負えない。

 だからその情報を効率よく優先的に得る為に、

他の革命軍の方々からの積極的な情報提供や開示を村長さんにお願いしたところだよ。」


もちろん時空間を操る魔法が存在するか等は知らない。

だが元の世界に戻る方法があるとすれば、それはやはり魔法だろう、と考えた為だ。

ニーナを安心させる為、マコトは笑顔を見せる。


「で、でも!」


心配そうにこちらを気遣うニーナの白く柔らかな手を両手で握ったサラが目を合わせる。


「・・この世から悪を根絶してやりましょう。」


恐ろしい単語を口にする。はい! っとニーナは返事をするが、若干引いているように見えなくもない。


「ホッホッホ、頼もしいのう。

まぁゆっくり楽しんで食べるんじゃぞ。

ただ明日早いから酒は無いがのう。残念じゃ。

そもそもまだ酒の旨さが分かる年じゃないかの?」


サラの顔を見ながら村長が薬草サラダを頬張る。


「・・十四歳です。」

「――――ッ!!?」


村長、ニーナと彼女の父が驚愕の表情をする。


「まだあどけなさがあるとは思っておったが十四とな。

その年であのような風の大魔法を扱えるとは、大したものじゃのう。

それで、マコト君いくつかの?」

「僕は十九歳です。サラより年上なのに上手く魔法は使えないですけどね。」

「いやいやお主は颶風の剣を復活させた男じゃ。

 あれは一体どういう魔法じゃ? 見たことも聞いたこともないぞい?」

「えぇ。あの魔法は・・・」


マコトはニーナの家に戻る直前に、サラと交わした会話での約束を思いだす。

それは異世界、超能力の存在を隠すことだ。

というより、話したところで信じてもらえないだろうし、怪しまれたりしても面倒と判断したからだ。

そう、二人は、遠い小さな島国からやってきた世間知らずの魔法使いで旅の途中、という設定で押し通すことにしたのだ。


「・・古物を新品にする魔法です。」

「え?」

「なんとッ!?」


村長と一緒にマコトも驚く。

答えに詰まっていたマコトの代わりにサラが嘘を付く。

マコトは涼しい顔をしているサラの横顔を複雑な気持ちで一瞥し、


「えぇ、まぁ。そんな感じの魔法です。ハハハ。」


己の後頭部の黒髪を左手で撫でながら、なんとも自信なさげに返答する。


「それは変わった魔法ですね。素晴らしい! 

村長。武器庫に貯蔵している剣や弓を全てマコト君に新しくしてもらったらどうでしょうか?」


ニーナの父も驚きながらも興奮気味に村長に提案する。


「それは良いかもしれんのう。マコト君やってもらえるかね?」

「え? あ、えぇ。よろこんで!」


満足そうに微笑む村長。

そして話題はサラへと移る。


「それにしてもサラさん、本当にすごかったですよね!

 五十人近くいた兵士を全てあっという間に倒したんですから!」

「・・全滅させてやった。」


こころなしか得意げに聞こえる。


「そして、その右手の指輪、つまり魔道具について是非話を聞きたいのですが。」


場の空気が少し変わる。

村長もニーナの父も、サラの力の秘密、そして指輪について一番知りたかったのだ。

「すぅ」マコトが息を吸う。


「それは、いにしえの伝説の魔道具、リング・オブ・エターナル=ウィンド=マキシマムです。」


「・・ッ!?」

「それがその指輪の名称ですか!?」


今度はマコトがお返しとばかりに大嘘を付く。


「ええ、そうです。

 またの名を、リング・オブ・ネヴァーエンディング=レジェンド=エア

 我が家に代々伝わる古代魔法が封入された魔道具です。」

「なんとッ!!」


皆驚く。


「なるほどのぅ。

失われし古代魔法じゃったか、それなら説明がつくのう。

 効果はおそらく回数制限なしの攻撃魔法といったところかの。」

「・・そうです。」


助け船のつもりで言ったのに、サラに睨まれているのは気のせいじゃ無いらしい。


「今現在確認されている魔道具は主に二種類。

補助系か攻撃系じゃ。

ヒールリング等の補助系魔道具は、装備者が受け身なので、魔法を使えなくても効果を発揮する。」

「対して攻撃系魔道具は術者自身が放ち、コントロールする必要があるため、能動的に魔法を扱えることが必須です。

つまり相応の魔法の使い手であることが攻撃系魔道具使用者の条件となります。

術者の数倍の力を発揮しますが、使い捨ての一回、多くて二回が限界です。」


村長とニーナの父はこの世界の常識を互いに確かめあい、改めてサラを見る。


「あの威力! しかも制限無しじゃ!」


村長が少し涙声になっている。


「二週間前の出来事と言い、ようやく革命軍にも運が向いてきたかもしれんのぅ。」


自軍に強力な味方が増えるのが余程嬉しいのか、村長が鼻をすすりだした。


「・・二週間前の出来事って?」

「ん? あぁ。

 詳しくはワシも知らんが、西の方の部隊にも強力な新人が突然現れたらしいのじゃ。

 それがもう尋常じゃない強さともっぱらの噂じゃ。」


「まぁでも、かなり誇張されているとは思いますけどね。

なんせ百人の兵士相手に一人で立ち向かい、武器を使わず、鎧も盾も装備せず、素手で全てを粉砕したっていうんですから。ハハ。」

「「・・・」」


「確かにのう。

おそらく、実際多少は腕が立つのじゃろう。が、

それにしても尾ひれがついた話としか思えんのう。」

「「・・・」」

「ん? どうしたのじゃサラさん? マコト君?」


二人は我に返ると、何でも無いです、と返事をした。


「・・まさかアイツじゃないよね。」


サラが小声でマコトに耳うちする。


「分からない。

 僕たちは三日前にこの世界に来たばかりだ。

 二週間前からいるっていうんじゃ話が合わない。

 でも素手で粉砕って聞くと、うーん。」


二人がヒソヒソと会話していると、村長が背もたれに体を預け軽く伸びをする。


「おっともうこんな時間じゃ。先に年寄りは寝るとするかの。

 それから明日、二人には迷惑な話じゃと思うが、“真実の鏡”の前に立ってもらうことになるはずじゃから、そのつもりで頼むぞ?」

「・・真実の鏡?」


「“真実の鏡”をご存じないですか。

 島国まではまだ普及していないのかもしれないですね。

 お二人の参加は私も村長も心より嬉しく思い、感謝しております。

 しかし、おそらくはお二人のことを王国側の密偵じゃないか、とか、本当に革命に同意しているのかなど、すぐには仲間として信用しない者も出てくるはずです。」

「その通りじゃ。

 ならば先手を打ち、お主らが信用に足る人物というのを皆の前で堂々と証明すれば良いだけ話じゃ。

二人の確かな実力も知りたいことじゃし、よろしく頼むぞ。

ふぁあ。それじゃぁの。」


村長は一人家路についた。

他の者たちはその後も暫し歓談していたが、やがて各々のタイミングで眠りについた。

ベッドの中でマコトは判明した新たな情報を頭の中で整理していたが、思った以上に疲れていたらしく、横になって五分後には寝息を立てていた。

マコトにとって長い一日がやっと終わった。




――――――――――――――――――――




「・・元の世界に戻る方法、見つかるかな。」


珍しくサラが不安げな表情をしている、ように見える。


「他人の国、いや、他人の世界を救ってる場合じゃないけどな。

 革命軍、あるいは王国の中枢に行けば何か有力な情報があるかもしれない、それに期待しよう。」


二人は小声で話していると馬車が止まる。

どうやら目的地に着いたようだ。


「さて行くぞい!」


前の馬車から村長が降り、声を掛けてきた。

先頭が村長と道案内の村人。

二台目がマコトとサラ、そしてニーナ。

そして、三台目は道中で調達した食料や、様々な武器を載せていた。


村のことはニーナの父に任せているとのことだった。

朝早くから村を出発し今は昼時だ。

着くのに四、五時間は掛かったようだ。


「な、なんだか緊張しますね。」


なぜか付いてきたニーナが一番不安そうだが、

先に村長の手を借りながら大地に降り立つ。


続いて二人も馬車から降りる準備をする。

ふとマコトがまた小声で耳打ちする。


「そういえば昨日途中で寝ちゃったけど。

 結局、“真実の鏡”って何なのかな。

一体何をすればいいのかな?」

「・・鏡に映る者の全てを暴くみたい。

 名前、年齢、性別、属性、その他諸々。」


「へぇーすごいな。

 映るだけでそんな情報が分かるなんて。

まぁアリスの能力と似てるけど。」

「・・確かに。

ぁ、映るだけじゃダメだって言ってた。

鏡に触れ、魔力を流すことが必要なんだって。」


「――――――えッ?」

「・・だから、この世界の人々は魔法が使える使えないは別にして、魔力は持ってるわけ誰でも。

 属性も生まれながらにして必ず持ってるし、それを流せば言いって村長が言ってた。」


「――――――えッ!!? それって不味くないかな? サラ? 

 僕たち魔力なんて持ってないし。」

「・・うん。

 サラもこの道中で、突破口を何か思いつくかな、と思ったんだけど。ダメ。さっぱりだね。」


マコトはこの場から、本気で逃げ出したくなっていた。

何かの装置で自身の能力や数値が分かったら便利でイイですよね☆


・・・まぶたが重すぎて、もう開けられません。

おやすみなさいー☆


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