プロローグ ‐超能力発動‐
ノリと勢いで書いてみました。初投稿です☆読んで頂けたらうれしいです。
肉塊と化した兵士たちが、村の地面に転がっていた。
その数約四十。
多くの折れ曲がった剣、潰れた兜、ひしゃげた鎧が凄惨極まる一方的な殺戮を物語っていた。
「・・あと五人。」
銀髪の少女が呟いた。
彼女の前方十数メートルの地点に西洋の甲冑姿の男兵士五人がいた。
皆震え、殆ど戦意を喪失していた。
「こ、こんなバカなことがあってたまるか! ありえないっ!!」
「あのクソガキッ! 小さいくせして何て魔法使いだ! クソッ! クソッ!!」
「いや、だ。死にたく、ない。」
「た、たた隊長! もう撤退しましょう! これじゃぁ、い、犬死にだっ!!」
パニック状態の兵士たちは、次々と感情を顕わにする。
あちこちの、無数に抉れた地面の窪みに、血が溜まっている。
雨の代わりに、血が降ったかのようだ。
「―――最終手段だ。切り札を使う!!」
「「「ぉぉおおおおおお!!!!」」」
隊長と呼ばれた年長の男が、声高らかに宣言する。
同時に兵士たちの目に希望の光が宿る。
だが銀髪の少女は変わらず無表情だった。
隊長は懐を探り、小瓶を取り出した。
中には濃い紫色の液体が入っている。
「おい、お前」
「は、はい隊長っ!」
「これを飲め。そしてあの小娘の首を持って来い!! いいな!!」
「は、はぃいっ!!」
震える手で小瓶を受け取り、一気に飲み干す兵士。
直後、筋肉が肥大しはじめ、周りにどす黒い、モヤモヤしたオーラが見え始めた。
苦しそうな叫び声をあげながら、男はさらに肥大し、身長も高くなっていく。
急激な体躯の変化に耐えきれなくなった兜、鎧が弾け飛ぶ。
肌の色が漆黒になっていき、ますます異様な空気を漂わせる。
その兵士を背に、隊長が銀髪の少女に向かって叫ぶ。
「フ、フフフ。フハハハハハハ!!! アーーッハッハッハ!!!
貴様もこれでもう終いだ小娘! 今奴に飲ませた物は、将軍より賜りし秘薬!! まだ試作品だが、貴様を倒すには充分の代物だ!」
変化し終えた兵士が銀髪の少女を見据える。
体長約四メートル、全身に禍々しい漆黒のオーラを纏っている。
異常に発達した筋肉、頭部には二本の角が生えていた。まるで悪魔だ。
「行けっ! 殺せぇぇええええ!!」
化物と化した兵士は、その丸太のような両腕を胸から外側へ振り払うように素早く大きく広げ、咆哮した。と、同時にその動作によって暴風が起こり隣接した家屋が数棟、跡形もなく吹き飛ばされてしまった。
「ハ、ハハハハ! 見たか魔法使い!?
貴様は風を操るようだが、新しいわが兵士は、腕を振るだけでこの有様だっ!! どうだ!? ハハ、ハハハハ!!」
ゆっくりと、化物となった兵士が少女に近づいてゆく。
勝利を確信した隊長と残りの兵士たちが不気味な笑いを浮かべる。
「・・そうね。そろそろ、お終いにしましょう。」
右腕を前へ突き出し、手のひらを巨体の化物に向ける銀髪の少女。
再び少女の体が青白く光り始め、右手に嵌めている指輪も光りだす。
次の瞬間、四メートルもある巨体がうつ伏せに倒れた、いや、倒された。
地響きと化物の大きな呻き声が辺りを満たす。
普通ではなかった、地面に吸い寄せられるように急激に倒れこんだ。
何か見えない力で強力に拘束されているようだった。
かなり苦しそうな鳴き声から推測するに、必死に抵抗しているようだが、
指一本動かすのがやっとのようだ。
「・・うるさい。」
「―――――っ!!?」
ゴォォォォォオン
更に大きな地響きの音と同時に、化物の巨体がうつ伏せの状態で半分以上地中にめり込んでいた。
化物の体中から紫の血のような液体が噴き出る。
舞い上がった土埃越しでも、ぐったりとしているのが見える。
今度こそ完全に動きを封じられたようだった。
「そそ、そんな馬鹿な!? 魔獣すら超えるというのか? 風の魔法使いの力は!!?
き、貴様は一体何者だ!? なぜその若さ、いや、幼さで魔法が使える?
なぜだ? どうやって、これほどまでにも強大な力を手にした?」
「・・風の力じゃないし、魔法も違うし。」
誰にも聞こえない程小さな声で呟く。そして最後の四人に右手を伸ばす。
「ままま、待ってください風の魔法使い、様ぁああ!
どうか命だけ、命だけはお助け下さい。お願いします!!」
「・・そうやって懇願する村人をたくさん殺したんだよね。あなたたち。
あと、魔法じゃなくて、超能力だよ。
よろしく。そして、さよなら。」
そう言うと、銀髪の少女は伸ばした右腕の手のひらに、力を込めた。
お読み頂きありがとうございます。
読むと書くとではこんなにも違うのですね、むずかしー。