入園手続き。
俺は電車に揺られ、窓の外を眺めていた。
向かうさきは、それぞれの剣法学園の中心にある塔だ。
入園するためには、一度その塔へ行き、入園手続きをする事になっている。
「めんどくせぇ」
と思いつつも、やはり気になるのは、なぜ俺が入園することになったのか。というところだ。
「魔力ゼロの俺が……なぜ?」
そう、この世界には魔法がある。
魔法は、一種の病気とされる。
病名は、電波性進化病。
なぜ電波が名前に入っているかというと、人間が電波を浴びすぎてしまい、脳の波長が変化したからだ。
それにより、異能力(魔法)が使えるようになったのだ。病気といっても、体に害はない。
むしろ他の病気への耐性がつき、少し頑丈になった。
俺も一応、電波性進化病なのだが、魔法は使えない。
この事に関しては、医師もビックリしていた。
その後も色々検査を受けたが、結局なにもわからず、今に至る。
魔法が使えなくとも生きては行ける。
だが、学校の体育の授業などでスポーツをすることがある。
魔法は、自分の身体能力を一時的に上げる事ができる。
だから俺は、体育の点数が低い。
俺の特技は、ちょっと足が速いくらいだ。
体育以外の授業は、人並み程度。
特別頭が良いわけではない。
魔法が使えない分、人間としては人並み以下だ。
それなのになぜ、剣法学園から入園のお知らせが届いたのか。
そうこう考えているうちに目的の駅に着いた。
電車を下り、辺りを見回す。
「迎えの人が居るって手紙に書いてあったんだけど……どこ?」
見回した限り、これだという人は見つからなかった。
少し探すか、と思った矢先。
「ゴメンなさーい、遅れましたー」
と、言いながら走ってくる金髪美女がいた。
その言葉はおそらく、俺へ向けられた言葉だろう。
ゼェゼェ言いながら俺の側まで走りよってくる。
「遅れましたー、それではこれからは私の車に乗って始まりの塔までご案内しますね。付いてきてください」
そう言いながら歩きだした。
俺も、言われたとおりに付いていく。
そして、止めてあった車に乗り込む。
車の中で、いくつか質問してみる。
「あのー、始まりの塔って何ですか?」
「ああ、始まりの塔って言うのは塔の名前です。正式名称はわかりませんが、皆さんそう呼んでます。」
「なるほど、あとそれから、何で俺はこの学園に入園させられたんですか?」
本題を投げ掛ける。
「うーん、それはちょっと私にも分からないですね」
「そうですか」
少しガックリしたところに金髪美女は、話しかけてきた。
「でも、生徒会長ならわかるはずです」
「生徒会長?」
「はい、生徒会長です」
「学園長じゃなくて?」
普通、生徒を呼ぶのは学園長であって生徒会長ではない。
「いえいえ、生徒会長です」
と金髪美女は答える。
「この学園の学園長と生徒会長は、同じくらいの地位につきます。特に生徒会長は、新しい生徒の勧誘、入園手続きなどを担当しています。」
「なるほど」
つまり俺は、生徒会長様によってこの学園へきたということか。
などと話しているうちに、目的地へ着いた。
車から下り、塔を見上げる。
「ス、スゲェ……」
俺は思わず口に出してしまった。
「それではこちらです」
金髪美女に付いていく。
そして話しかけられる。
「あの剣は、持ってますか?」
「はい、持ってます」
「それがないと入園生だと証明できませんから」
「そうなんですね」
話ながら少し歩くと、塔の入り口らしき所に着いた。
「では、剣を持ったままここを通ってください」
言われたとおり、剣を持ったまま入り口に入る。
塔の入り口から出口まで一直線で繋がっている。
そして、出口をつうかした。
「これで入園手続きは終了です。」
「次は学園を案内します。また車での移動です。」
「あ、はい、わかりました」
再び車に乗り込み次は学園へ向かう。
新しい生活の始まりだ!