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ファミリートリップ  作者: きたくま
始まりの平原から
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006 え?レベルアップ?

 3人で玄関を開けて親父のそばに行くと、まだ親父は奴を見ていた。

「まだ気をつけろよ。ツメ先が動いてやがる。」


 よく見てみると、完全に絶命しているわけではなく、少し指先とか動いているようだが、あれは指なのか?よく見ると恐竜というよりはサイのようなサイズなのだが、蹄ではなく指のようにも見える。それでも3mくらいの体長はありそうなので、家の壁とか簡単に破壊しそうだ。えりの部分の骨のかさみたいなのは恐竜といったものなのだが、体は長い毛に覆われて、親指の先には熊のような形の10cmくらいはありそうな爪があった。


 俺の中でこいつはサイベアドンと呼ぶことにしよう。サイベアドンは最後にびくっと震えてぴくりとも動かなくなった。


 その瞬間だった。俺たち4人の体を薄い光のようなものが数度包み込み、一気に体に力がみなぎった感じがした。


「でででで、でっで、でええ~~~ん!」


 ばか親父がなんか聞いたことのある効果音を出した様子から、もしかしてこれはあれか?レベルが上がったってことなんだろうか?そんなわきゃないと思いながら、

「親父、レベルアップしたみたいだな。」

 と声をかけると、親父がにやっとグーサインを出した。

「4回光ったから、これでレベル5なんじゃね?たぶん。」

 とりあえずハイタッチしてあげたら喜んでいたから、そういうことにしておいてやろう。


 死んだサイベアドンをとりあえずよく見ることにしようと、松明を手にみんなで近づいてみると、思った以上に不思議なものだった。

 角は80cmくらいあり、反りのないまっすぐな円錐形をしていた。顔は焼けてしまってなにがなんだかわからないが、牙が長すぎるのを除くとまるっきり熊のような口をしていた。

 首のまわりの板は骨でできているようでもあった。猫が病気になったときにやるカーラーを反対にして、二つの板に分かれた形をしており、動きやすくなっているようだ。つめは黒く光り、これで引っ掛けられたら簡単に体のどこかはふっ飛ばされそうだ。下半身はサイのような形で立ち上がることはできそうにない。


「親父、これにサイベアドンという名前をつけてみた。」

「安定のセンスなしだなお前は。おれだったら熊サイドンとつけ・・・」

 ママ、ナイス突っ込み。頭をはたかれた親父は涙目だったが、俺では肉体的突っ込みを親父にできないから非常に助かる。なんて危ないことをしてるの!とママに言われて、親父は倒したのに・・・としょぼくれていた。


 涙目になりながらも親父は角を引っ張りに行った。結構やけているから、なんとか引っこ抜けそうだ。俺も親父に手伝い、一緒に角を引くと、ぐびゃっとか変な音をたてて角が抜けた。


 観察してみると、この角は昔のヨーロッパあたりで使っていたような槍にも見える。ちょうど角の根の部分がもち手にすると握りがいいのだ。でも斬ったりはもちろんできなそうなので、突くだけならなんとかできるって感じだな。


 次に親父はその角を首筋に差込み、襟を取り外しにかかった。角は簡単に首筋に刺さり、襟の根元をこじ開けられそうだが、どう力を入れても取れない。すると親父は小屋からノコギリを取り出した。うわ・・・結構スプラッターだなこれ。生き物の首を切り始める親父からママと美月は逃げ出し、家の中に入ってしまった。


 襟は鎖骨の裏から肩甲骨のほうに続いているようで、肩の肉をそいでも取れなかった。

 そこで親父は骨からのこぎりで襟を取ろうと四苦八苦している。現代文明が勝利したようで、やっとはずしたところ黒光りする盾のようなものが2枚できた。

「ん~、肉も毛皮も灯油まみれで使えそうにないな。食えないならいっそ燃やしたほうが他のモンスターへの牽制にもなりそうだから、燃やしておくか。」


 親父と一緒にモンスター・・・サイベアドンの後ろ足を持って、移動させることになった。やはり家の前で火葬っていうのもなあ・・・


 そのときに驚きの現象が起きた。親父と二人、重そうな足をもつと声をあわせて移動させようとしたんだが、ひょいっと持ち上げることができたのだ。

 親父と顔を見合わせたが、これ幸いと丘の上へとモンスター・・・サイベアドンを引き摺って行く。両手両足の親指だけにある長いツメを引っこ抜き、灯油をかけて火をつけた。

 そのうち火葬というよりもバーベキューといった匂いに包まれながら、サイベアドンは燃えていく。そして家に帰り、シャワーを浴びてから、ベッドへともぐりこんだ。親父のレーダーがある限りもう大丈夫だろうが、とりあえず警戒しながら眠りにつくことにした。


 翌朝俺が目を覚ましたときはには、みんな起きて朝飯を食っていた。てか・・あれ?なんでパン食ってるんだ?昨日ので最後だったんじゃないの?オーブンも電気はないはずなのに。これはもしかしてあれか?


「そうなんだ。昨日の朝と同じ食材がそろってたんだよ。冷蔵庫の中だけに限るんだがね。ただし、冷凍食品は無理だったのが不思議だ。」


 ん~、本当になんなんだろう?4次元ポケット?


 とりあえず俺も適当に朝食をとり、冷たい水でシャワーを浴びる。10月だったはずの気候は真夏なみになっているから、それでもなんとかいける。途中何度か水が出なくなったのだが、親父たちのほうに言うと、なぜかまた水は出てきた。


 サイベアドンの燃えカスの所へと親父と一緒に行ってみると、不思議なことに、燃えカスがなにもない。灯油で燃えた草とかはありそうだが、肉片や骨なんかもなにものこっていなかったのだ。


 そんなときに、きらっとなにかが光ったような気がしてよく見たところ、オレンジくらいの大きさで朱色の渦を巻いているような宝石が、薄い光を放つように光っているのを見つけた。


「ママと美月に見せたら喜んで自分のものにしそうだから、見つかる前に隠しておこうか?なんか売れそうだし。」

 親父、うしろうしろ。

 なんでママの接近をレーダーで感知できないのかはなぞだったが、とりあえず涙目の親父から宝石の所有権はママに移っていた。


「よし!準備はいいな!これから北に向かってみて、人のいるという町に行くぞ。」


 やはり、人がいるということがわかったのはうれしい。俺たちみたいに他の世界からこちらへ来ている人間がいるかもしれないし、こうなった状況を少しでも説明してくれる人を探したい。猫族が言うにはあまり悪いこともなさそうだし、いいと思う。


「美月、いっぱいきれいなものがあればいいね!」

「うん!お店があるといいね!」


 よし、別行動決定。でも、武器や防具の店なんかあると少しわくわくするかも。

 よくあるゲームだと、ギルドやらがあって討伐したものを売って生活するとかありそうだけど、サイベアドンがいるくらいなんだから、なんらかの武器はあるだろう。


 昨夜探し出した売れそうなものをつんで、一路北を俺たちは目指した。

 猫耳族から聞いた情報では、北の町まで歩いて10日というはなしだった。

 普通に一日歩いて、現代人の感覚なら50kmいけるだろうか。休んだりキャンプの準備をしたりすることを考えると、こちらの人もそれくらいだろう。ということは、単純に考えると500km?・・・え?だって、うちから500km北上するってことは、北海道まで到達してしまうが・・・。少しは元の地形に期待したいという未練があったのだが、こうなるともう、座標もなにも完全に別物なんだろう。川の位置はただの偶然だったか。


「可能性はいろいろあるよ。まず、まるっきり違う星であるということ。それからうちの場所がそのままだと思っていたら、東京近くに移動していたかもしれない可能性。あとは、海が干上がっていたり、地形が変わっていたり、地軸が傾いていたりとかかな。」


 まあ、世界地図がない限り、真相は闇の中!



頑張って投稿します。よろしくお願いします。

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