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ファミリートリップ  作者: きたくま
対魔神連合
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057 空の旅1

「お父様、お母様、お姉さま、ユイカ、それでは戻りますね。また遊びに来ます。」


 ルミナが転移能力を授かったことによって、いつでも遊びに来られるようになったのでカルナル家のみんなは大喜びだ。


 ちなみに、ブーンとベールも一緒についてきていたので、俺とルミナだけの能力ってわけでもなさそうだし、もしかしたら、何人か一緒に飛ぶことができるかもしれない。


 アルソーさんは、ブーンとベールにお菓子を山ほど、俺とルミナには超大盛焼き肉セットを持たせてくれた。


 カルナル家から、エルフ領のマザーツリーを思い浮かべたルミナが、それでは行きます、と声をかけてくる。


「お世話になりました!」


「元気で!」「またね!」「気をつけるのよ!」「みんなによろしく!」


「わかった!じゃあね!」


 ブオン!


 とん!


 ブオンっと体を引っ張られて、大体どさっという感じで地面に放り出されていたのだが、タイミングさえあえば、両足で着地するのも簡単そうだ。



「お~おかえり!」


「ただいま~。ほいおみやげ。」


「戻りました。無事、実家への帰省終了しました。」


 お土産で渡した焼き肉にママが大喜びしている。


 おっと、ルミナがふらついた。


 肩を抱いていたので問題なかったが、これは魔力切れかな?


「どう?魔力の消費が結構きついみたいだけど。」


 ルミナを手近な木の根に座らせながら聞いてみる。


「ベールがいなかったらもう倒れていたかもしれませんね。でも大丈夫そうです。」


 でも一回目で限界がわかったのは嬉しいな。


 デンジーレまでなら飛んで買い物できるし、一晩くらい休めば魔力も回復しているだろうから、安全に飛べるだろう。


「距離と限界と人数はそんなもんか。飛んだ先でゆっくりできるなら、もう少し遠い距離は大丈夫そうだな。」


 この様子だと、ドワーフ郷や、デンジーレ、もしかしたらロッカの町までも行けそうだな。



「ところで、ルミナの力って、どうやって発動させているの?」


「行きたいところを思い浮かべて、一生懸命そこに行きたい!って願うだけですよ。」


「なるほどねえ。発動条件をもっと煮詰める必要があるね。それから行ったことのない場所でも行けるかどうかだけど、人を目指しても行けそうだね。大知にそうだったからさ。」


 そういえば、ルミナは男風呂なんて入ったことがあるわけないしね。


 飛ぶときの目標に、人物がなることもあるんだろうな。


「あの、一つ問題があるんです。」


「なんだいルミナ。」


「私、白子だったせいで、デンジーレのお屋敷以外、ほとんど外に出たことがないんです。」


 ああ、そういうことか。


「大丈夫、大知を必死で飛ばせて、ロッカの町経由で、自宅がある場所へ行ってもらう。もちろん、ヤタにルミナと美月を乗せてね。」


「なんだ、美月もか。」


「当たり前だ。お前とルミナの二人に外泊させるなんてことは絶対に阻止する。ああ、それから自宅に行って欲しいのは、カレーとシチューとコショウの他、味噌にマヨにケチャップとか持ってきて欲しいからだな。それから猫の餌がやばい。精霊どもが人の食い物より猫のカリカリのほうに興味持ちやがった。」


「どうやって、あのドームを壊すんだよ?」


「できれば、ダイドリルでドアを作ってほしいな。あと、粘土を渡すから、ルミナの力でドアを閉じた後、もう一度焼き固めてほしい。」


「わかった。とりあえず、今まで来た道を逆走して、ルミナに場所を覚えさせればいいんだね。」


「そういうことだ。あと、この国の地図を作りたいから、地形と方向と距離をなんとかまとめてほしい。」


「ルミナは地図はわかるかな?わかるんだね。じゃあ、作れそう?」


「作るのは恐らく無理です。地図をゆっくり見たこともありませんので。」


「じゃあ、美月、メモ帳と鉛筆忘れるなよ。休憩の度に大知としっかり話し合って、大まかな地図を作ってくれ。」


「えー。できるかな。でも頑張ってみるね。」


「地図を作るってことは、ドワーフの郷やデンジーレの上空も飛ぶんだね?」


「そうだな。そうしてくれると助かる。」


 ということで、空の旅をすることになったが、親父達はどうするんだ?



「お前達を待つ間に、ママには勇者の日記をしっかりと解読してもらう。俺は飛行機の状態確認だな。まあ、動かすのは無理だろうけど。それからエザキエルの処遇を決めておく。」


「どうするの?」


「最終手段は使いたくないが、魔界へ送り返す方法がなければ、始末する必要があるかもな。」


「そっか。」


「まあ、エルフの精神通話でなにができるかも試しておくよ。まずは明日に備えて焼き肉パーティーだ!」


「いやっほ~!」



 焼肉をする場合は、あまり肉を食べないエルフ達から少し離れてやるようにしていたのだが、俺達の影響か、何人かのエルフも焼肉を食べるようになっていた。


「カールクラムさんは焼肉を好きになったみたいだけど、やっぱリアコールさんはだめかあ。」


「彼女は殺生にかかわることはあまり好みませんからね。でも、私が食べることは進めてくれていますので問題ありませんよ。」


 日本から持ち込んだ焼肉のタレを気に入ってしまったカールクラムさんは、俺達がいなくなったら残念な気持ちになるんだろうなあ。


 結構大きな焼き網を使っているのだが、果物採取や領内の見回りを終わったエルフ達がどんどんやってきて宴会になってしまっているため、焼き係の親父は休む暇もなく焼き続けている。


「大知、肉が足りなくなってきた!なんかとって来い!」


「そんなこと言ったってさ、血抜きもなんもできねえぞ。」


「やっぱそうだよな。てことで、こっからはお好み焼きだな。肉と野菜を細かく切っておいてくれ。それと車からダシとマヨネーズとソース!!」


 おお、久々の粉物だ!


 カツオブシと青海苔はないけど、我慢だな。


 てか、すでにママは食べ過ぎて戦線離脱してるのが高坂家の力関係を示しているよな~。


 ルミナがお好み焼きの作り方を知りたがったので、一緒に野菜と肉を刻んで、粉と水を溶きダシと塩で味を調える。


 焼きソバと卵がないのが残念だけど、それでも旨そうな匂いが森に広がっていく。



「今度はなにをつくっているんですか?」


 焼肉の強いにおいが薄まったので、リアコールさんも近づいてきた。


「お好み焼きってやつなんだけど、そういえば果物を使ったクレープとかもできそうだな。」


「パンの粉と砂糖でつくるお菓子はエルフ領にもありますが、このお好み焼きという食べ物は初めてですね。少し食べさせてくださいね。」


「わかったよ。たくさんあるから、少しと言わずたくさん食べてね。」


 リアコールさん用に、肉を入れないバージョンのお好み焼きを作ったら、他のエルフさん達も喜んで食べてくれた。


「さあ、これで小麦も焼肉のタレもマヨネーズも全部消費しちまったから、しっかり家から持って帰って来いよ!」


 わかりましたよ~だ。



 お風呂で焼肉の匂いを洗い流していると、親父が質問があると言い出した。


「大知、たぶんあの塔が魔界への入り口へと続く鍵になるだろう。そうしたらたぶん、突然のタイミングで日本へ帰ることになるかもしれない。そのときお前はどうするんだ?」


「どうするって・・・そりゃあ帰りたいよ。どうしてそんなこと聞くんだ?」


「ルミナだよ。このまま連れて帰ったら、たぶん一生この世界へは帰れなくなるだろう。それでいいのかと思ってさ。」


「・・・ルミナは一緒に行くって言ってくれているけどね。確かに俺達だって、故郷へ帰りたい帰りたいと考えているし。ルミナもそうなるかもね。」


「ママは地球の反対側から、日本のパパのところに来てくれたけど、それでも何年かに一度くらいはコロンビアへ里帰りできるんだ。しかも今ならインターネットでテレビ電話もできる。だけど、ルミナはなあ。」


「難しいね。本当に難しいよ。俺がこっちに残ることも考えないとだめかな。」


「それも考えたが、お前をこの世界に置いていくくらいなら、みんなで残りたいとも思うんだよなあ。正直、日本にいる母さんだけが心配だけど、おばさんたちが面倒みてくれているだろうからそんなに心配はしていないんだよ。」


 親父の母親はもう80近いはずだが、最後に会ったときはまだ若々しく活動力に溢れていたからあまり心配はしていなかった。


 だけど、俺達がこっちの世界に来たってことを知らないのだから、心配しているだろうなあ。


「ま、行き当たりばったりが、高坂家の信条だ!なるようになるさ!それに、ルミナの転移魔法がもしかしたら次元を超える可能性だってあるかもしれないぞ!」


「いや、それは無理だろ。」


「いいから希望を持っておけや。さ、出るぞ!明日は早くから出発してくれ。」


「あいよ。」




 白い翼を広げさせて、ヤタに鞍をくくりつける。


 今回はエルフが使う革帯を大量に使い、がっちりと固定しているおかげで、二人乗りしてもまったく問題はなさそうだ。


 この前はママが振り落とされそうで死ぬ思いをしたとか言っていたからね。


「パパの部屋に、でかいリュックがあるはずだから、そいつにできるだけ物資を補給してきてくれよ。あとは、ロッカのゲンネーさんに頼んで、ビーフジャーキーとメロンジュースを頼んでおいたから、ちゃんと受け取って来いよ。」


 エルフの通信をなんに使っているんだこの親父は。


「ママの頼みを断れと?」


「ごめん。」


 しゃあないねそりゃ。



 さて、飛ぶぞ。


「ルミナ、美月、行くぞ。」


「「はーい!」」


 もう空を飛ぶという行為は、おれにとって歩くことや走ることとなんら変わらない行為になっていた。一気に上空50mくらいまで飛び上がると、ヤタも遅れずに隣まで上がってくる。



「ヤタ、やるなあ!」


「強くなったんだもんね!」


 美月がうれしそうにヤタの首筋をなでてやると、ヤタもクアアア!っと一鳴きする。


 さて、まずは北のドワーフの郷、そのあとデンジーレ上空を飛んでロッカの町だ。


「今夜はカルナル家で宴会の準備をして待ってくれているそうだから、とりあえずそこで一泊するよ。じゃあ、まずはドワーフの郷まで半日くらいだとは思うけど、出発しよう!」


 その前にヤタをその場でホバリングさせながら、俺だけさらに500mくらい上空へと飛び上がる。


「おお、塔があんなに遠くへ行ったのか。あの先にヌエバデンジーがあるんだろうな。」


 塔はエルフ領からはるか南にあるようで、いまは小さくしか見えない。


 エザキエルによると、エルフ領を魔族が蹂躙した後はヌエバデンジーへと行く予定だったようだから、その通りに動いているんだろう。


 塔自体に意思がありそうだよな。


 親父に塔の状況をつたえてから、みんなに手を振り、一気に北へ向けて加速する。


 飛んでいる間は、緊急以外ルミナには転移を禁じている。


 空中でいきなり背中に乗られたら下手したら落としそうだもんね。



 俺とルミナは青と赤のスケイルメイルを着ているが、正直ここまで寒いとは思わなかった。


 速度は100kmも出していないと思うが、顔にびしびし当たってくる風圧は正直体力を消耗してしまう。


「お兄ちゃん!風の精霊とお友達なんでしょ?私達のまわりに風の盾でも張れないの?」


 おお、でも魔力足りるかな?


 とか考えている間に、すでに風の幕みたいなものが展開しちゃっていた。


「すごい!お兄ちゃんあっという間に使えたね!ぜんぜん寒くなくなったよ!」


 美月、ほめてくれるのはいいのだが、俺はなにもやっていないぞ?


「精霊たちだよ。魔力も込めていないのに、協力してくれたみたいだね。」


「ダイチがそれだけ好かれているということですよ。素晴らしいです。」


「私達小人も精霊の魔法使えればいいのになあ。魅了と身体強化だけだと不便なんだよね。」


 ベールもブーンもそんなことは言ってなかったけど、美月の小人のアーマは結構わがままなことを言うんだよね。いかにも私は可愛いですよ~って感じで、見ているだけならほほえましいが、一緒に行動すると、ときどきいらっとさせられちゃう。


「アーマ、コウサカさん達は小人に幸運を届けてくれたんですよ。これ以上のなにを望むのですか?」


 ベールがお姉さんっぽく、アーマを嗜める。


 アーマも素直にはーいと言って、美月のフードの中に潜りこんだ。


 ブーンはすでに夢の中だけどね。



 すぐに山脈が見えてきて、遠くにドワーフの郷を発見できた。


 まだ昼前だったので、郷についてからお昼でいいだろう。


 ここまで、大きな川は一本だけだったし、エルフ領から森は数個、ほぼ荒地のような状況だった。


 美月は森と荒地の規模を比べながら、メモを取っている。


 もしかしたら、この美月のメモがこの国で正式採用されることがあるかもしれないね。



「ダイチ、ドワーフ領でお昼ご飯ですね。マヅダー王には挨拶していきますか?」


「いや、宴会になって酒を飲まされそうだからやめておくよ。3人娘に挨拶するか美月?」


「ん~。ご飯食べるだけでも目立ちそうだし、挨拶しないと寂しがるかもだから、会って行こうよ。」


「たしかになあ。マヅダー王もうるさくしそうなのが怖いよ。」


「見つかったら挨拶しましょう。さあ、そろそろですね。」


 ルミナが苦笑して先を促す。


 そういえば、ヤタは小さくできないんだよな。


「ヤタ、門番のところで休ませてもらおう。待っていてくれよな。」


「クアア・・・」


 寂しそうだなおい。



 門番達が騒ぎ始める門前広場に俺達は下降していった。


 まあ、まだここを離れてから、何日も経っていないし、問題はないだろう。



 さて、昼飯昼飯!



みんな覚えているかい?

自宅の中の物は、使っても朝にはまた補給されているんだよ!

さあ、その理由とは!?



・・・やばい・・・

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