表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファミリートリップ  作者: きたくま
対魔神連合
48/75

048 粘土で遊ぼう♪

 エルフは長命である。

 

そんな風に考えていた時期が俺にもありました。


 本当はさ、ないんだって、寿命。


 まあ、物質的な限界はあるけど、そこまで同じ姿をしているエルフはいないそうだ。


 そろそろ森に帰ろうかな~とか、ぷかぷかと浮いていたいな~とか考えると、木の洞に収まって、木と同化しちゃうんだと。


 そうするうちに、浮いていたいな~と考えていたエルフは、若芽と一緒に精霊として生まれ変わり、好きなように漂っているんだって。


 ときどき欲しがっている人に力を貸したり、一度貸すと契約したことになって離れられなくなったりと、精霊の人生を楽しむこともできるんだ。


 静かに暮らしたいな~と思うと、そのまま森の木として生まれたり、そろそろ動きたいな~と思うとエルフになったりと、転生を自分でコントロールしているみたいだ。



 そして、ブーモとヤタにヒポポの情報も手に入った。


 精霊が集まってできたのが上位精霊なんだって。


 強い魔力があって、それが優しくて暖かいものだと感じると、精霊はそれに集まってくる。


 魔力があるからこそ精霊は魔力を対価に魔法という力を貸してくれるそうだ。


 そして、必要以上に集まってしまった精霊は、自らの姿を変えようとみんなで集まり、上位精霊へとランクアップするのだそうだ。


 なるほど、俺達家族の回り以外では一切見ることのできなかった上位精霊が3体も発現するわけだよ。



 今いる場所はエルフ領にできた一直線の道を60km程入り込んだ場所だった。


 カールクラムとリアコールの夫婦はノアを引き離す程の速度で1時間も走り続けたわけだ。


 まあ、今の俺ならできるだろうけど、エルフってすごいね。



 説明してくれていたのは、一番長くエルフの姿を取っているルーベルソアという男エルフだった。


 といっても、木の洞にほぼ同化しているので、口元がかすかに動いているのが確認できるくらいではあったけど。


 この場所は木の根の一本一本に一人ずつ座れるほどの大きさがある、マザーツリーと呼ばれる木の根元だった。


 長い生を生きたエルフは、この木の洞で静かに森へ帰って行くそうだ。


 その洞も、そろそろかなと思うエルフが出現すると自然にできているそうで、不思議なもんだね。



「上位精霊は、好きになった相手がいなくなると自然と精霊に戻ってしまいます。そして、精霊は帰巣本能によって、この場所へと戻り、マザーツリーに同化して行くのです。」


 マザーツリーの枝に腰掛けていたリアコールさんが、ルーベルソアさんから話を受け継ぐ。


「この子たちはとても安定していますね。よほどあなた方のことが好きなのでしょう。」


 ブーモとヒポポは故郷にいることをわかるのか、一生懸命あたりの匂いを探っている。


「精霊は今もあなた方のまわりにいて、助けてあげたい、力になりたいって思っていますよ。」


「精霊が見えるのですか?」


「いえ、精霊の心がわかるのです。みんなあなた達を大好きですよ。」


 じゃあ、挨拶しないとね。


「いつも助けてくれてありがとうな!飛んでる途中で逃げていくんじゃないぞ!」


 上空で精霊に見放されるとか恐ろしいわ。


 なんとな~く、まわりの風が優しくまとわりつく感じがした。


 いや、実際透明な何かがぐるぐると回っている。


 ルミナのまわりでは暖かくやさしそうな火花が舞い、美月の周りではキラキラと粒子が踊っているようだ。


 ママの周りではDNAの螺旋のように水がくるくると踊っている。


 てか…


「あれ?親父って精霊に好かれていないの?」


 親父のまわりだけ、なんの現象も起こっていない。


「いつも身体強化くらいしか使ってないからなあ。」


「身体強化は精霊と関係ない純粋な魔力です。精霊はシュウイチさんのまわりにたくさんいますよ。精霊たちは待っているようですね。シュウイチさんが力を使ってくれることを。」


 げ、ただでさえ強いのに、まだ欲張るのかこの親父。


「まあ、みんなの精霊を考えると、順当に行けば地の精霊かな。地の精霊はなにができるのか、教えてくれますか?」


「なにができるとかそういうことでもないのです。あなたの心に映った欲求や独創的な考えでも、できるなら精霊は答えてくれます。」



 やばくね?



 そんなこと親父にやらせたらやばくね?



「じゃあやってみよう。」



 あ。



 やらないほうがいいと思うぞそれ。



 土がもこもこと立ち上がり、すぐに人の姿へと変化してきた。


 やっぱりやりやがった。



「ミアモール?なにしてんの?」


「パパ?」


「お父様、それはちょっと・・・」


「お約束だからしょうがないよね・・・」



「なんてグラマラス!!!!」



 エルフはあえて無言だねやっぱ。


 親父が作り出したゴーレムは、100-60-95ってとこか?


 顔はママなんだよなあ。


 そしてもちろん全裸。


 息子の前でなにしてくれてんの!


 てか、服まで作り始めやがった。


 まあ、ビキニだけどね。



「くっそ・・・色がつけられん。あ、土の種類変えちゃえばいいのか!」


 黄色と赤と白と黒が表面に浮き出してくる。


 白と黄色で肌の色、唇は真っ赤で、目の色は黒、見事にママの顔そっくりになった。



「ちょっと、これすごいんじゃない?私が痩せればこの姿に・・・」


「ん~。残念ながら胸はもとに・・・」


 ママは無言でゴーレムに手を向け、水分を凍らせて粉々にしてしまった。


「あああ!渾身の力作が!!」


 泣くな親父。次いってくれ。


「親父、人が乗れるのはいけるか?てか、その粘土は動かせるのか?」


 俺の言葉に続いてカールクラムさんが親父に感嘆の声を上げる。


「はじめての魔法で、ゴーレムを作りますか・・・やはりあなた方の魔力は底が見えませんね。」


「そういえば、魔力切れを起こすこともあるみたいだね。ママなんかは際限なさそうだったけど。」


「普通は、土の礫を投げたりするとこからはじめますからね。人族がゴーレムを作ろうとしたら、まず魔力が足りません。」


「そっか。まあ魔力が切れないというなら、これはどうだ!」



 おお!この足は!


 お、やっぱりあれか!?


 て、違うか?


「親父、ガンダ○じゃねえの?」


「ちゃう。ガ○ダムも好きだったが、こいつのほうが、数倍好きなんだよな。」


 なんかなんかずんぐりとした下半身ができたんだが、そこから親父はさらに集中する。


 ん?今作っているのはコクピットか?


 ハンドルやらスイッチやら作っているが、それいらないだろ?


「なんでそんなに内部構造にこだわっているんだよ。」


「お前にはまだ早いか。」



 そこで拳を握り高らかに叫ぶ!



「それが男のロマン!」



 もうママたちは飽きたのか、リアコールさんと夕食の話を始めてしまった。


 まあ、親父は始めてみるくらいのまじめな顔で、ディテールを作っている。


 なんか丸い顔?にスコープみたいなのが3つついているが、見たことないな。


 緑と白を基調に、でかいライフルを抱えている。


 あそこから土の塊でも飛ばすのかな。


 バンバンドを親父は取り出しゴーレムに放り投げる。



「キシューン、ブオオ、ガシ!」


 おお、なんか排気孔から煙は出すし、駆動音まで!


 しかも片手でバンバンドを掴みやがった!


「親父なんだこれ!かっけえ!ロマンじゃん!!」


「ふ。わかるか。さすが俺の息子だ。今からこいつに乗る。」


「乗れんの!!!???俺のも作ってくれ!!」


「まあまて。こいつはスコープ○ッグという。こいつのRGバージョンが俺の手で完成するとはな。」


 スコ○プドッグ?なんだろう?聞いたことないな。


「まあ、昔あったボトム○というアニメの中のロボットだよ。みてろ。」


 親父はそいつを膝立ちさせると、胸の部分を空ける。


 高さは6mくらいあるため、かなりの大きさだ。



 親父はコクピットに入るとぐっと親指を立てて見せる。


 そして胸の装甲を閉める。



 そして開ける。



「モニターがねええええええええええ!」


 うん。あほだろ。


「親父、なにを考えて作ってんだよ。とりあえず装甲に切れ込みでも入れたら?」


 また親指立てやがった。


「ブシュー、キュインキュインキュイン、ゴーン。グイーン、ドン。グイーン、ドン。」


 おお!立ち上がって歩いた!動くぞこいつ!!


 ママたちもさすがに無視できなくなったのか、近くに寄ってきてみている。


 胸のハッチを上げて、親父が顔を出した。



「酔った・・・」



 その瞬間、スコープドッ○とかって奴は崩れ落ちた。


「さすがに魔力が切れたみたいですね。複雑すぎて精霊の消耗がすごかったですし。」


 カールクラムさんも苦笑いだ。


 つか、それで戦えるわけがない。



「単純な形状の奴を量産して、盾にでも使ったほうがよさげだな。」


 でも、土魔法でかなり精巧なものを作れることもわかったから、十分じゃないかな。



 エルフ領には結構な数のエルフがいる。


 最初に迎えに来てくれたカールフラム夫妻もだが、美形揃いでママなんかは有頂天になっている。


 指○物語がリアルで再現されているようなもんだからな。


 そこでノアからBDプレイヤーを取り出し、指輪物○を再生してみた。


 それを興味深げに覗きこんでいたエルフ達だが、エルフが弓を使うところでみんな声をそろえて言う。


「かっこいいいいい!」


 え?そうなん?


 聞いてみると、エルフの攻撃手段ってやつは魔法に限られていたらしい。


 そういえば武器なんか持ってなかったもんねえ。


 そこで美月が光の弓をノアから持ってくると、みんなの前で自慢げに持ち上げる。


「おおお!綺麗だ!かっこいいい!すごい!」


 みんなで画面そっちのけで弓に興味を持ったようだ。


 天に向けて弦を引くと、シュっと音を立てて矢が飛んでいく。



「おおお!光の矢だ!勇者様の巫女だ!」



 出た。また巫女の話になりそうだな。


 まあ、その前に飯ができたようだけどね。


 エルフの食事は結構ヘルシーだ。


 取立ての果物、赤や黄色や青の果物、バナナのような果物、りんごのような果物・・・


 果物ばっかりやないかーい!


 腹が膨れるのかこれ?



「にく・・・」


 ママが非常に悲しそうな声で呟いているが、俺もちょっと悲しい。


「うっま!これうま!いけるぞこれ!」


「うまいお!はふはふはふ!ごくごくごっくん!」


 親父とブーンが揃って一生懸命かきこんでいる。


 ブーン、熱いものはないぞ?


 まあ、食うしかないか。


「うっま!これうま!いけるよこれ!」


 うん、今夜くらいはいいだろう。


 エルフはツリーハウスを作って、そこで暮らしているようだ。


 魔族の塔についての話は明日にすることにして、今夜はみんな寝ることにした。


 ノアから親父の寝言が聞こえる。


 「シュウイチ!イキマース!」


 どこへ行くんだか・・・はぁ・・・

男のロマンは続くのである!!!


よろしければ評価してくださいませ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ