027 ダンジョン攻略
更新後3分待ってくださると、修正が終わった読みやすいバージョンに変わりますよ。
あ、それからこれは本日2話目の更新ですのでお間違いなく。
19階で鎧スケルトンを倒したら、何個か鎧クマから出たウズラの卵のような魔玉が手に入った。
「帰還の魔玉です!どの階層からでも地上の入口にパーティー全員で戻れますよ!」
おお、便利すぎるぞ魔玉!
なんだかんだと20階に到着した。
事前情報ではこのダンジョンの深度は20階層という話だったので、ここが最後ということになりそうだ。腕時計をみると時間はまだ19時だった。
うまくいけば深夜までにはアルソーさんのお屋敷で寝ることができそうだ。
その20階なのだが、暗い森の中だった。どう考えても1階から19階まで潜ってきた分の高さ以上はありそうな天井を、月に照らされた雲が結構な速さで動いている。
後ろの階段を振り返ると、そこにはただの茂みがあるだけだった。
「親父、ダンジョンから出たのかな?」
「見た目は広大な森っぽいけどな、レーダーで探索すると3kmほどの広さがある空間だぞここ。天井だが、おそらく幻影魔法のようなもんだろう。正面に城のようなものがありそうだ。」
「よし、じゃあ一気に行きますか!」
と気合を入れた後ろで、誰かのお腹がく~~っと鳴ったので、夕食にした。
ルミナのお腹の音かな?かわいいなと思って振り向いたら、ママが赤くなってたので、きにしないことにした。
大鍋にお湯を沸かしうどんを大量投入する。
つゆ用の鍋に、水から昆布と魚の燻製を入れておいて沸騰直前に火を止め、昆布を取り出してから鶏肉をぶつ切りにしてどさどさと入れる。
醤油の代わりにうどんつゆを入れて、そこにわかめとネギを大量投入すると、汁が出来上がる。
そこでうどんもゆであがるので、ザルにすくい取り、青魔玉で水をざばざばかけてやる。最後にツユにうどんを入れ沸騰直前にドンブリにうつして玉子を一個かけてやると、とりなんばんうどんのできあがり!
ただ、普通のうどんとちょっと違うところがあるのだ。
丸ごと3個分ほどのニンニクを皮をむいて鍋に放り込むのだ。
これは高坂家でうどんを作る場合に絶対にやることなのだが、うどんにニンニクはデフォルトなのだ!
うちはこうやってよくうどんを食っているのだが、ルミナは白いうどんをまじまじと見つめて「だいじょうぶ、たべられる…はず…」とか考え込んでいた。
うん、知らない人にすればうねうねした白くて細長いものなんてな…
花の形の麩を見て、「花ですかこれ?」とか言ってるので、眼の前で食べてみせる。
「熱いから気をつけてね。」
と声をかけると、かき混ぜながらふうふうと息をかけている。
なんてかわいい・・・
まあ、お手本みたいにずるずる食べ始めると、目を開いて「お…お行儀が…」とか言っている。
「ルミナ、これだけは覚えておくんだ。日本では汁つきの麺類はずるずると音を立てて食べるのが正しい食事方法なんだ!」
おいしいし、冷める前に食いたいもんね。
なんとか口をつけられる熱さになったうどんをルミナも食べ始める。
「わあ、おいしい!これ小麦粉で作るんですか?このお肉も柔らかいし、ニンニクもとろけて汁といっしょに飲み込んじゃいそうです!」
そうなんだよ。上品じゃないけど、庶民の味代表にしてもいいくらいのうどんだ。これからは、どんどんB級グルメに慣れてもらおう。
作るのは親父だけどね。
さて、腹ごなしした後は城に向かって突き進もう!
2kmほど進んだところで、城のてっぺんが見えてきた。尖塔だろうか?
夜だからそう見えるのか、灰色っぽい外壁に、黒い屋根が乗っかっている。
近くに行くと、茨の外壁に敷地内には墓が並んでいるような陰気な城が現れた。
「まんまドラキュラ城だな。あっちのほうがまだ明るかったっけか。」
親父がそんなことを言うが、やはり最後のボスはヴァンパイアなのかな。
正門はレンガでできていて、落とし戸式の丸太門になっている。
てか、どうやればこの門は開くんだ?と悩んでいたら、親父が片手で丸太を上に引き上げやがった。まあ、壊さないで開けただけよしとしようか…。
門から玄関までの小道の両脇は墓地になっていて、いかにもゾンビかなんかが出そうな気配だ。最後のボスへの道なんだから、半端な強さではないゾンビが用意されていることだろう。
「ブーモ、ここらへんの土を全部固くしてくれ。」
まあ、屈強なゾンビには遭遇することはなかった。
無事玄関に着くと、両開きのオーク材のような光沢のある木材でできている重厚なドアがひとりでに開いて行く。
「ごめんください!」
親父が中に向かって大声であいさつする。これで最後のボスが出てきて「いらっしゃいませ」なんか言ったら、もう戦う気なくすわ。
なにも出てこないので仕方なくホールへと進む。
さて、どこに奴はいるんだろうと結構しゃれた城内を見ていると、上から蝙蝠の群れがぶわたたたた~と飛んできて、俺達の前で塊りになる。
と思ったら、正面の階段を上がった踊り場のところまで離れてからまた塊りになった。
「くっさ!なにそれ!くっさ!出てけ!くっせえんだよ!こっちくんな!」
ああ。ごめん。高坂家の料理にはにんにくがデフォルトなんだよ。我慢してくれ。
なんか勝手に苦しそうな吸血鬼だが、ルミナ視界に捉えると赤い瞳を輝かせ喜色を顔に浮かべる。
「おお、我が同胞よ。なぜその匂いが気にならないかはわからんが、こちらに来て顔をよく見せておくれ。」
確かに、銀髪、青白い肌、赤い瞳と似てはいるが、ルミナはお前のように黒い眉毛でも黒いまつ毛でも、どぎつい真っ赤な唇でもなく、精気に満ちたカワイ子ちゃんなんだ。
絶対に行かせるわけが…
「はい…ご主人様…」
メイド??ってかちょっと待て!行くな!
俺が慌てて握っていた手を強く掴むと、ルミナは杖で殴りかかってきた。
とっさにルミナを抱きしめ、意識が戻るように耳元で叫ぶ。
ところが、ルミナは口を大きくあけて、俺の首筋に噛みついてきた。
あ、気持ちいい。
がじがじやってるけど、牙もない女の子の甘噛みなんてただのご褒美だった。
「親父!ルミナは俺がなんとかする!あいつを頼んだ!」
親父はグッドサインを出してにやりとすると階段へ向かう。
ママもグッドサインを出してその親指を下に向ける。
え、なんで!?
「大知、とりあえず鼻血止めれば?」
美月の冷たい視線が痛いです。
さて、美月にティッシュをもらって止血しつつ、がじがじやってるルミナを愛でていると、高坂夫妻対吸血鬼の壮絶バトルが始まっていた。
「くっさ、こっちくんじゃねえよ!その臭いのせいで力でねえんだよ!」
「はっはっはあー!なに弱点自分から暴露してやがる。ほれ、ニンニク爆弾でも食らえ!」
親父は明らかに面白がって吸血鬼にニンニクを投げつけている。
もうそろそろ吸血鬼は動けなくなりそうなほど弱っているぞ。
ところで、十字架って効くのかな。
ママは敬虔なカトリック信者だから、いつもキリストを彫刻した十字架のネックレスをしている。
「ママ!ネックレスのロザリオを相手に向けて神様に祈るんだ!」
「わかったわ。Padre nuestro, que estás en el cielo. No nos dejes caer en tentación y líbranos del mal.Amen.」
おお!なんかわからんがそれっぽい!こう光とかなにかがばあっと!こい!
ママはロザリオを吸血鬼に向けて、決めポーズを作っている。
シーン。
親父と吸血鬼はしばし止まっていたが、すぐに行動を再開した。
「くせえから近寄るなっていってんだろ!うわ、なにその剣!差すな!やめろ!」
親父が大剣を吸血鬼の胸にどんっと突き立てる。
その瞬間、城をどごーん!という振動が襲い、周囲が明るくなった。
まあ、ボスとは言え親父にかかればねえ・・・
なんかうるさいだけだったな。
とりあえずがじがじしていたルミナは、ふにゃあっと体から力が抜けて、俺にもたれている。なんか顔が赤いので、なでておいた。
吸血鬼の倒れていた場所には、やはり朱色の渦がぐるぐる動いている魔玉が落ちていた。
ダンジョンの魔玉だ。
ギルドのスナーブさんによると、討伐されたダンジョンは自然に下層から埋まっていくらしい。
2階までしかなかった最初のダンジョンは、生まれたばかりで消滅も早かったのだろう。
とりあえず魔玉の他に落ちているものがあったので拾い、城の内部も見て回ろうかと話していた時だった。
ママがごん!っと俺の後頭部を思いっきり殴りつけてきた。うっすらと涙目になっている。
「いや、ママごめん。正直期待したけど意味なかったらしい。」
ママが両手を降ろしたまま、拳を強く握ってぷるぷるしているのを見て、逃げないでもう少し殴られてあげようと心に決めたのだった。
城の最上階には、宝箱が置いてあった。
その中には、金貨や銀貨が詰まっており、何個かの装飾具があった。
とりあえずはアルソーさんに鑑定してもらおう。
「さ、帰ろうか!」
親父がそう言って懐からウズラの卵そっくりな魔玉を出す。
みんなでおやじにつかまり、魔玉に魔力を流すと俺たちは一気に上へと体を引っ張られた。
そこには本物の夜空とノアが俺達を待っていた。
さて、戻りますか!
2話更新したのは熱に浮かされたせい。




