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ファミリートリップ  作者: きたくま
婚約者発見
17/75

017 3姉妹

『なろうコン大賞』挑戦中

 その光景はろくろを回して陶器を作る光景に似ていた。


 渦巻きを中心に持つ炎の柱が20mくらいの高さまで立ち上っている。


 山賊達は声を出そうとした瞬間に、肺の中の空気を一気に炎に持って行かれ、声も出すことができないまま、窒息していく。


 馬達も同じように何度かいななくと、ばたりと倒れていく。



「親父、これって気絶してんのか?それとも窒息死してんのか?」



 自分がやっていることではあるが、現実離れしている光景にぼーっとしてしまう。


「蘇生作業しないと、お前を殺人者にしちまうな。よし、3分の1は残っているが、もう動けないだろう。魔法を消してくれ。」


 魔法を消した瞬間に、ママが水を竜巻状にして灯油を巻き込ませ、あたりを消火していく。


 親父が考えた討伐法は、火と風を利用した窒息であった。


 竜巻で火を大きくし、竜巻の中の空気をすべて燃焼に使う。そうすることで中にいる山賊は酸欠の空気を吸い込み、一気に意識を失うのである。


 これで蘇生法を用いなければ最悪死に至るのだが、やはり人殺しには抵抗がある俺達は、無事な奴の両手両足を縛った後、山賊仲間に人工呼吸をさせる。



「ほれ、鼻塞いで、顎あげさせろ!そんでぶっちゅううと口と口を合わせたら、息を吹き込め!何度もやるんだぞ!」





 地獄がそこには広がっていた。





 おええ・・・




 山賊には人工呼吸をさせておき、俺と親父でアンパンマンのテーマを歌いながら、心肺蘇生を施していく。

 本当は人工呼吸は蘇生法に必要ないらしいのだが、親父の趣味でやらせてるんだろう。


 気道を火傷したような奴も何人かは見かけたが、大体は無事なようだ。すでに両手両足を工事用トラテープでぐるぐる巻きにされているため、なにもできないはず。


 粘着力最強。ついでに口にも貼り付けておく。



 しかし、こいつらなんか関係ない切り傷が多いな。俺達の他にも誰かと戦ったのだろうか。



「さて、あんたが頭領らしいな。とりあえずアジトを教えてもらおうか?」


 親父が思いっきりテープを剥がしたら、トラ髭も一緒にごっそりと抜けたようだが、気にしないことにする。


「てっめえ!覚えてやがれ!どんな魔法を使ったかしらねえが、絶対に許さねえからな!お前の家族全員ぶっこあべし!」


 あ~あ。家族になんかしたら、親父に魂まで消されるぞ。


 言っておくが、俺の2倍ある横幅は脂肪じゃねえぞ。ゴリラなんだぞ。


 頭領さんはもうふがふがとしか話せなくなっていた。


 頭領はそこらへんに転がして、一番年上っぽい爺さんのテープを剥がす。


「ひぃ…こ、この道をすす少し西にもどお、戻っていくと、右の方に小高い岩山があって、そそその裏にどど洞窟があるんじゃ」


「何人残っている?」


「た…たぶん、4人くらい、戦いに使えない子供ばかりのはずだ…です。」


「お前らが追いかけていた相手は?」


「都からきた奴らだ。たぶん売られるかどうかしそうになって逃げてきたんじゃねえか?でも見た感じはまだちっちゃいのか小柄なのかしらんが、うまそうじゃなかったぞ。…です。」


 必要な情報は手に入れたので、山賊と馬を整理することにした。



 馬は11頭、山賊は14人いた。馬は頭絡とハミに手綱を結び、一列で引けるようにしておいて、ノアの後部へとつなぐ。


 山賊どもは全員の手をトラテープで結び、大岩の周りにぐるっと数珠つなぎにしておく。まあ、都からここまで2,3日で着くなら、警備の人が確認に来るまでなんとか生き残ってくれるだろう。


 山賊を繋いでいると、逃げていた馬車が、美月の乗ったブーモとともに帰ってきた。


「3人とも無事だよ~。怪我もないし、元気みたい。」


 3人が近づいてくると確かに小柄ではあるが肉付きはしっかり・・・


 てか、みんなうちのママみたいなドラミちゃん体系なんだが。しかも髭っぽいものまで生えてないかあれ。


 かなり愛くるしい顔ではあるが、ちょっと人族とは違った人種ではないかと思う。


 大人には見えるが、ママよりさらに10cmは背が低い。


 あ、足短いな。あれだ短足族だ!


 初めて見た短足族はオーストラリアのアボリジニの人達のイメージが近い。浅黒い肌と、剛毛、くっきり二重に厚い唇など、愛嬌はあるけど原始的なイメージだ。

 あの山賊達、良く見ないで追いかけたんだろうな。



 さっきまでんんん~~~(離せ~~~?)とかおおええおおお~~~(覚えてろ~~?)とか唸ってた山賊達が、その3人を目にしたとたん、14人が一斉にがくっとうなだれてしまったのが気の毒だった。




「んうばあばばぶあうぶばぶん」「うがあうばばうぶばういおばうん」「ばううばぶぶん」


「本当にありがとうございました、このご恩は一生忘れませんって言われたから、忘れていいよ~って答えておいたよ。」


 おい美月。どこで覚えたんだ。でもこのパターンで行くと、美月は言語チート持ってるよな。おそらく公用語は日本語でいいんだろうけど、他の部族はこのパターンか。


 なんか、3人と美月が車座になって、こそこそ話している。そして4人で俺の方を向くと一斉ににやりってやりやがった。無視だ無視。


「ホントウニアリガトウ、ミヅキカラタビヲシテイルキキマシタ。ミヤコヲコエテワタシタチハブゾクノマチモドリタイデス。イッショニツレテイッテモラエマセンカ?」


 聞きづらいけど、短足族の町に戻りたいから連れて行ってということだな。


 まあ、急がないでいいのならいいんじゃないか?と親父は言っているので、俺も頷いておいた。ママも異論はないらしい。


 3人は働ける状態ではなくなったデンジーレの都から落ち延び、ロッカの町に行く予定だったそうだ。なけなしの財産で馬車を購入し、壁をくぐって街道に出たとたん、山賊どもに追いかけられてしまった不運な子達だ。


 ロッカの町には鍛冶屋があまりないため、家事や畑用の包丁や鍬、鋤を売ろうとしていたらしい。しかし逃亡しているうちに、山賊相手にすべて投げつけてしまって、売り物がなくなってしまったらしい。


 ああ、山賊達の傷ってそうやってつけられていたのね。つおいんだね。


 確かに都からここまで、かなりの距離を逃げてこられたわけだ。



 3人の名前は、ブーナにヤーナにキーナと言い、姉妹だという。3人の容姿は似通っており、黒髪剛毛、浅黒い肌、ドラミちゃん体系で、眼はぱっちり二重、唇は厚いが愛嬌のある顔だ。


 服装はなんとなく昔のワンピースといった形で、足元は編上げのサンダルっぽいものを履いている。特徴的なのは頭のてっぺんで結んだパイナップルのような髪型だ。


 親父、デンジーレの都に行けばたぶん貴族の令嬢もいるはずさ…



 とりあえずノアに親父とママと3姉妹、馬車、馬、最後尾にブーモと美月と俺で街道を進み、山賊のアジトへと向かう。


 すぐに小高い岩の山が見えてきたので、裏手を探索してみるとすぐに洞窟が見つかった。別に扉とかはないが、丸太でバリケードはしてある。


「入口近くに4人、黄色の気配だからあまり痛めつけなくてもいいかもな。奥にはだれもいないようだが、洞窟なのでよくわからん。さて、いってみるか。」





「ご”おおお ら”あああああ!!さっさと出てこいやああああ!お前らの頭領はもう降参したぞおおおお!!」




 親父の胴間声が洞窟を揺らすように響く。ラグビー部と応援団を掛け持ちしていた親父は、大声援中の野球場でも、その声が野球場の外へと通るほどだったと自慢していたが、あながち嘘じゃないかもしれない。


 結局中にいた4人の少年は、武器も持たずにすぐに出てきた。


「お前達の頭領はすでに捕えて縛っておいた。お前らは今からデンジーレへと連行するから、大人しくするように。それから、お宝の位置を素直に教えるように。」


 親父がそう言って手をトラテープで縛っていく。少年達は中学生くらいかと思うが、それなりの目つきになっていたので、結構悪さはしてたんだろうな。


 この世界に校正施設でもあれば多少は良くなるかもしれないが、放っておけば、盗賊になるしかないんだろうな。


 4人とも美月に見とれていたが、そんなに飢えていたのか…かわいそうに。


 でも、美月がお宝のことを聞くと、素直に全部白状してくれた。

 貴金属だけでもナップザック一つ分になり、換金と鑑定が楽しみだ。


 すでに朝日が昇ってきていたので、そのままデンジーレまで行くことにした。


 ノアに3姉妹を詰め込み、馬車の荷台には山賊たちの装備と、4人の少年を縛って放り込み、御者台には俺と美月が乗った。馬車はノアに引かせるので、御者台の上で俺たちは居眠りしていた。



 そしてデンジーレの都がついにその姿を…うわ、寂れてるよ…。


 とりあえず、ブーモにノアを、馬に馬車を牽いてもらうために、みんな協力して準備をした。3姉妹によると、ミヤコノナカトソトトアマリカワラナイヨとのことだった。




 令嬢…


正直すんません。

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