013 川釣り
ブーモをちっちゃくしてノアで家を目指す。この世界にきてからまだ4日目だが、お金も十分に手に入れられるし、食べ物も意思の疎通も問題なくできることが判明し一安心だ。
親父もママも暗い顔はしない人なので、精神的に落ち込むことがないのがうれしい。しかし、残してきた祖母や友達に会えないのがつらいといえばつらいな。高校生活半年にして、せっかく仲良くなれそうだった女の子もいたんだけど、まあまだ傷は浅いか。
家に帰ると、ゼウスとルナが寂しかったよおおお!って感じで甘えてくる。てか、こいつらなんか大きくなってないか?
考えてみると、ベヒモスもこのあたりを縄張りにしようとしていた感じがあったから、魔力が多く存在していて、猫共に影響を与えているのかもしれないな。まあ、襲ってこない限りは、どんなに大きくなってもいいんだけど。
「じゃじゃじゃじゃあああん!」
うん、親父古いぞそれ。なんか親父が延長コードをひっぱってきたが、電気はないんじゃなかったっけ?
「車のソケットからコンバーターかまして電源引いてきたよ。これで家電製品が使える!」
おお!ガソリンチートのノアなら、いくらエンジンかけっぱでもいいのか!これで風呂に入れるよ。長かったなあ。
まあ、容量の関係でボイラーくらいにしか使えないけど、それでも風呂に入れるだけで十分だ。親父の話では、レンジやトースター、ドライヤーには無理だけど、パソコンや、ビデオ、テレビ、ボイラーにファンヒーターあたりなら問題なく使えるそうだ。ただし、ボイラーを使っている間は、どれか他のものをひとつだけという制約はついているが。
しかし未だにわからないのが、なんで水を使えるかということだが、どうやら原因がわかった気がする。
パパはこの世界に来て、かなり肉体強度があがっている。それにレーダーも持っている。
俺は素早さと筋力かな。それから風の魔法。別に魔玉を所持していなくても、普通に竜巻は出せたからね。
美月は猫族語を話せたし、弓の達人になっている。
そしてママなのだが、水を作ることができたのだ。バザーのところでジュースを冷やした力だが、俺が竜巻を起こしたときに、みんな真似をしていたけど、それ以外に魔法を使うことができたのはママだけだった。手のひらに集中するとその上に水の竜巻ができ、ぐるぐるとまわっていた。
「あら、お洗濯が簡単そう」
いやママ、そういう使い方限定かい。
それを考えると、水道の水はママの力だったと考えるのが自然だろう。だって、水道管はこの世界まで延びているはずはないもの。
「そういえば、あの日最初は水がでなかったのよね。こら!出なさい!って考えたら、水道から出始めたのよ。」
その言葉を聞いた俺と親父は、とりあえずママをソファーに座らせ、買ってきた服などをしまうようお願いした。そちらに集中している間に、お風呂に行って蛇口をひねってみたのだが、やはり水は出なかったのだ。
「ママーお風呂に水を入れたいんだけど」
と親父が叫んだ瞬間、水道から水が出るかと思いきや。。。水道をひねる前に湯船には水がたまっていた。
久々にボイラーの力で熱いお風呂を用意できた。
久々のお風呂はさすがに生き返る。湯船に入るだけでこんなに体がとろけるなんて、やはり日本人でよかったよ。あ、コロンビア人とのハーフだけど。
美月はお風呂に入ると延々歌い続けているのだが、ご近所さんがいなくなったことで、枷が外れたようだ。騒音公害ってもんじゃねえぞこれ。
親父とママはなぜかすぐに風呂へ入らずに、俺たちを寝せてから入っていたが、そんなに気を使わなくていいのに。聞かないふりはもうできるんだよぼくちゃん♪
翌朝、洗濯物が大量にあったのだが、ママの魔法でとんでもないことができた。お風呂の残り湯に洗剤と漂白剤をいれ、そこに汚れ物を入れた状態でママが魔法で渦巻きを作った。
強度に気をつけながら3分ほどまわしたら、黄ばんだ汚れもあらすっきり!現代技術が魔法に負けた瞬間だった。すすぎもらくちんだったけど、一番の問題は排水が遅いってことだね。外でやるにはまだなれないので、練習していけばいいさ。
すすぎのあとは俺の出番だった。風の竜巻を作り、そこにパパがどんどん洗濯物を投げ込む。そう!脱水機だ!
俺と親父がびしょびしょになったのはどうすればいいのだろうか・・・
自分を乾かすために一生懸命風魔法を使ってみたが、お気に入りの服がずたずたになったよ。乾いたけど。
洗濯の後は、家族で釣りに行くことにした。ママも美月も魚は食べないけど、親父と俺より魚を釣る才能は無駄にある。まあ、美月は弓の練習のほうがメインらしいけど、矢で魚を取るために親父にロープをつけてもらっていた。結構たのしそうだなあれも。
前回渡った橋の手前に川へと降りられる場所があったため、早速ベースキャンプを作って釣りを開始する。今回は渓流竿に浮きと針と錘をつけただけの簡単な仕掛けで、そこらの石の下にいたヤゴを餌に釣り始める。
「わ、もう釣れちゃった!」
早い!あっというまにママの竿にヒットしたようだ。
背中の模様が山女っぽいが、30cmはある。虹鱒のような山女はとてもきれいに光っている。
親父が餌を付け替えてあげるとすぐにまた釣れた。家族で釣りに行くとだいたいこのパターンで、親父はいつも釣りができないのだ。
やっと俺が一匹釣ったときには、すでにバケツはいっぱいだった。恐るべしママの力・・・
美月は岩の上に登ってじっと川面を覗いている。どうやら狙いをつけたらしく、弦を押し込むように矢を放つ。あれは狩猟のプロだな。しかしさすがに水の屈折が邪魔をしたようで一発では仕留めることができなかった。
かなり悔しかったみたいで、その後は獲物がいなくなるまで乱獲していた。
もう2ヶ月くらいは釣りをする必要がないくらいの獲物を手に入れたので、家に帰って干物作りをすることにした。
家の中で生臭い匂いを出させはしない!という意見が通り、親父はキャンピングテーブルを出して、そこで山女をさばき始める。
俺はバーベキューセットで、内臓を抜いて塩を振った山女を焼き始める。
いい匂いがしてきたころ、親父の仕込みも終わったようで、りんごチップを使っての燻製と、干物作りにかかったようだ。
しかしなんつう量だよ。ダンボール2つ分くらいの干物ができそうだ。
家のまわりで草を食んでいたブーモがやってきて、ダンボールひとつ分ほど、まだ焼いていなかった山女を食ってしまったが。
親父にチョークスリーパーを食らって泡を吹いていたから、ちょっとは学習してくれるだろう。
魚が焼きあがったころ、2kg分くらいのステーキ肉を嬉しそうに下ごしらえしていたママが、これも焼いてくれともってきた。
せっかく焼いたけど、魚は明日でいいか・・・
書き溜め終了。ゆっくりペースになりますよ~。