010 歓迎の宴
12/4 国の名前をモンブシオに変更。デンジーレの方角を変更。
ママの能力がそういう経緯で得た力であろうことはこれでわかったのだが、美月の猫族語がわかる能力については未だに不明だ。もしかしたら神様の贈り物かもしれないが、まだなんともいえないな。親父のレーダーに関しても同じだ。しかし、いまのところなんの能力もない俺はなんなんだ・・・
そろそろ夕日の時間になったので、親父は最後の質問に入るようだ。
「大体わかってきましたが、最後にこの国についてと、魔玉により特殊な力を得るということですが、その力にはどのようなものがあるのか教えてくれますか?」
「この国ですか。それについては、この後の晩餐会で領主様に聞いたほうが詳しく教えてくださるかもしれませんね。それから特殊な力についてですが・・・」
そのときドアをノックする音が聞こえて、警備隊長の来室を使用人が教えてきた。使用人の後ろから現れた人間は、親父よりも小さく、結構貧相な体をした人間だった。警備隊長というよりは、田舎の警察署長といった感じか。
しかし・・・
((((くっさぃ・・・・))))
4人はいっせいに鼻に手を置こうとして、美月以外はなんとか止められた。
このクミン粉の匂いにたまねぎのくさったような匂いは・・・こいつワキガ持ちだな。しかも風呂にも入っていないんじゃないか?
「ロッカ警備隊長のイトッチュです。ようこそロッカの町へ!」
いい顔で両手を広げ歓迎してくれるのだが、頼む、脇をしめてくれ。死ぬ。
なかば魂を抜かれた顔で親父はそれでもイトッチュと握手する。だめだ吐きそうだ。早く出て行け。
「まぎれもなくベヒモスの角とフリルでございますな。これは都の冒険者ギルドへと出した討伐願いを取り消す必要があります。まことにありがとうございました。そしてこれは討伐依頼として用意していた100万タンです。どうぞお納めください。ちなみに角とフリルはこちらでは買取できる範囲を超えてしまいますので、のちほど都にでもいかれたときに、冒険者ギルドで査定していただくのがよろしいでしょう。」
10万タン????
100万円かよおい!親父、くれ!それくれ!
袋には10枚の金貨が入っていた。硬貨が10枚しっかりと確認しておく。
1タンが銅貨、100タンで銀貨、1万タンで金貨か。それぞれ、10円、1000円、10万円か。
うわ~。一気に大金持ちだな。いまさらだけど、あの一度の戦いで100万円なんて、この世界すばらしい。
親父は持っていたかばんに出していたものとお金をしまうと、車に荷物を取りに行きますと家族みんなでノアとところに行くことにした。
納屋のところへきた途端、親父とママは抱き合って涙を流しながら喜んでいたよ。忘れずにお小遣いアップをお願いします。
あ、イトッチュのせいで、ミラクルパワーのこと聞けなかったわ・・・
ノアから着替えや贈り物にできそうなものを集めバッグに入れてから、あてがわれた部屋へとみんなで移動する。ちなみにお金は金貨一枚と銅貨全部を持つだけにして、他はダッシュボードに入れておく。鍵がかかるから、なにかあった場合一番安全なのだ。でも、警備隊長であの体格なら、親父一人でこの町は制圧できそうだな。
部屋で一応親父は礼服、ママはドレス、おれは学生服、美月は吹奏楽部の制服に着替え、呼び出しを待つ。ちなみに風呂はなく、汲み置きの水で体をふくだけのようだ。領主の館でこれなら、おそらく浴場もないんだろうな。
水しかでない家の風呂がなつかしくなったわ。
ネクタイが黒か白かで迷っていた親父は、結局ワインレッドのネクタイにしてしまった。それならスーツのほうがいいんじゃなかろうか。ちなみに呼びにきた使用人は、4人の服装にすばらしいものですと賛辞を送ってくれた。
使用人の後ろを4人でぞろぞろついていくと、集会所のような部屋に、町の主だった人や、ご近所様が集まっている。
俺たちが他の地域から来たことや、ベヒモスを討伐したことはすでにうわさに流れた後だったようで、みんなが感謝の気持ちを表してくれた。さすがにここまで感謝されるとうれしいより恥ずかしい気持ちのほうが強くなってしまったが、若い女の子に囲まれて武勇伝を話し始めた親父はそのうちひどい目にあいそうだ。背後には悪魔のようなオーラをまとったママが腕をふりかぶっていたからね。あ、親父、おやすみ。。。
ちなみに警備隊長は町の警備に戻っていたので平和に過ごせた。
料理は、そんなに珍しい感じはしない。海苔巻きは緑っぽかったが、米は普通にあるようだし、海産物も生ものはないが、伊勢えびらしい巨大なえびや、魚のから揚げ、なにかの肉団子とか、餃子のようなものを蒸したもの、卵に包まれたなにかや、くろっぽいものがとぐろを巻いているようなのが浮かんでいるスープ・・・これには手をつけないぞ!など、結構理解できる料理だ。
「にくにくにくにく・・・」
ママは一生懸命ステーキとか叉焼のようなものを探しているようだが、大体こういう場所にはあまり出ないものじゃないのかな。美月は海苔巻きに手を出そうとしていた。
「お嬢様、それはそのまま食べるのではなく、リノの葉をむいてから食べるのですよ。」
美月の横に、15,6歳に見える美少年が立っていた。昔の貴族が来ていたような赤地に黄色の刺繍が入ったやぼったいマントに、白シャツ、黒ズボンという夏の学生って感じの服はいただけないけど。まあ、俺も学生服だけどな。
海苔に見えたのはリノの葉というらしく、ただの飾りだったようだ。結局はご飯の野菜巻きだな。でも、中にはいっているぺピとかいうきゅうりっぽいのとか、つけものらしい赤いものとかと一緒に食べるとおいしかった。ごはんは黄色っぽくてぱさぱさだったけどね。
突如顔が輝きだしたママが見ているほうを見ると、ああ、丸焼きだ。なんだろ?なんの丸焼きなんだろ?たぶん豚っぽいが、鼻が長いのが気になる。
親父が近づいてきてささやく。(たぶん、バクっぽけどなにも言わずにママに食わせとけ。知らなかったら肉ならなんでも食うから。)ああ。バクだなあれ。
ママは匂いをかいで問題なしとしたのか、給仕を断り自分で切り取って食ってる。あの量を食うのか・・・。異世界でも安定の食欲だな。肉に限るけど。
美月はやぼったい学生とまだ話している。ってか、話しかけられているだけか。完全に無視モードに入っているもんな。なんとなく自己紹介聞いたら、領主の息子っぽいぞ?アイディシとか言ってたが、まあ美月を振り向かせたいなら、もう少し食うのをまってたほうがいいぞ。食い気ならママにも負けてないから。
村娘からのアプローチもあったが、俺の好みは金髪ロングなんで、丁重にお断りさせてもらう。やはりこの世界でも俺はもてもてなんだな。現実世界に帰れたら、せいぜい自慢させてもらうか。
「どうした大知、またかっこつけすぎてなにもしゃべれずに女の子にキモがられたか?・・・悪かった、そんなににらむな。あと涙拭いとけ。」
親父なんか大嫌いだ。。。自分もエロビーム出しすぎて引かれてたくせに。
「ところで、この国の名前はモンブシオというらしいぞ。ここから西に馬で3日のところにある昔首都だったデンジーレの都に行けば、いろいろと楽しめるっぽいな。家にも帰らないといけないから、まだまだ行けそうにはないが、車でならすぐだろう。」
いろいろと話を聞きだしたそうなので、後でしっかりと聞くことにしよう。
この宴に集まった人々は、町の議員を中心に、誰にでも声をかけたようで、いろいろな人がいた。アイディシのようなやぼったいマントが正装のようで男性のほとんどがマントを着ている。女性はごわごわした素材ではあるが、一応昔のドレスといった感じのものを着ている。ママの着ているシルクのドレスなんて、その中では下着のような薄い素材なので、うらやましがられながらも、着てみたいと言ってくる人はいなかった。あっちのお姉さんなんかすごい似合いそうなんだけどな。まあ、モデルの体型が悪いからしょうがなかったか。
親父は、議会の議長をしているというおっさんや、領主の代理をしているというご婦人などに、ライターを贈っていた。全員じゃないのがかわいそうだが、そこは今後の充実ライフのためにしょうがないだろう。
ママはカチューシャやシュシュといったものを領主夫人などに贈っていた。それらは大いに喜ばれ、あとでぜひお茶会へと誘われていたよ。
料理も終盤になると、フルーツポンチの炭酸抜きで締めとなり宴は終わりを告げた。
頑張って投稿します。よろしくお願いします。