都市伝説――glock Mörder
しんとした夜だった。
俺の家の近くで、殺人があった。
早く犯人が捕まってくれりゃいい、と思ってたが、証拠がないらしい。
目撃者も、誰もいない。
警察は相当手こずってるみたいだ…。
今日、学校へ行った。
めんどくさかったが…殺人鬼が来るかもしれない家に、いれる訳がなかった。
授業中に親友の忍が、こそこそと耳打ちしてきた。
また新しい都市伝説を仕込んで来たらしい。
…昼休みに話しゃ良いのに…と思いながらも聞いてやる。
「なぁ、知ってるか?最近聞いたんだけどさ…」
「はよ話せ」
「ひどすwwえーと…お前ん家の近くで何か殺人起きたろ?」
何で知ってんだ。
ああ、ニュースで流れたんだっけ…?
「おう。それで?」
「それ、何でも“glock Mörder”って言う奴の仕業らしいぞ」
お、初めて聞いた。
「ソイツがどうしたんだ?」
「何でも、証拠も目撃者も出さずに殺しを成功させるらしいんだ。」
「なんだよ、普通じゃん」
「いや、それが…コイツ、銃で何度も打たれて死んでるんだってさ」
……ちょっと待って、コイツ、俺が幽霊とか嫌いなの知ってて喋ってる。
「嘘だろ」
「ホントだっての。あ、気を付ける方法ならあるぜ。ソイツが足首につけた鈴と、鎮魂歌だ。」
…突拍子もない。
「鈴って…あのチリンチリンなる?」
「そうそう。月の無い夜に鈴の音がしたら振り返らずに逃げろ。振り返ったら捕まるぞ。」
「へぇ…」
「後、たまにだけど鎮魂歌を歌ってるらしい。逃げないとヤバい…らしいぞ。」
「マジか…。」
「それと、逃げる時は心の中で“散れ散れ鈴よ、照らせよ星よ”って言うんだってさ。」
「何それ」
と、ちょっと騒がしくしてたら…
「おいお前等、俺の授業聞いてたか?」
先公が立ってた。
ヤベぇ。
「聞いてましたよ?」
俺は咄嗟に言った…が、忍は…。
「…お前……オカルトに現をぬかすのは良いが…授業は聞いてくれよ。」
「すいっませ~ん……」
「…罰として10枚、本の感想文を書いて来い」
なんだその謎罰は。
――部活も終わり…嘆く忍に別れを告げ、俺は帰路に入った。
随分と静かな日だ、と思った。
まるで、全ての生き物が息を顰めてるような…と思った所で、ハッとして空を見上げた。
月がない。
今日は…あの事件があった日から、丁度一カ月だ。
つまり――新月の日。
不味い。
俺はサッと耳に全神経を集中させた。
すると――遥か後方の方から、小さく
チリン…チリン…
と聞こえた。
鈴の音だ。
それも、普通の鈴よりも高い高い音の。
更に…小さく、歌が聞こえる。
この歌は――鎮魂歌…って事は…。
「っ……!(やべぇ、逃げよう!)」
俺は全力で走りだした。
走って
走って
家まで逃げる。
だが、家が見つからない。
道を間違えた様子も無く、同じ所を延々と走らされてる気がする。
「くっ…そ……!」
それでも、俺は走る。
逃げないと。
逃げなきゃ。
ヤバい。
捕まったら、ヤバい。
だが、もう足が限界だ。
それに“奴”の鈴の音が…もう、近い。
ああ、逃げられない。
ニゲ、ら――――
「だから、心の中で唱えろって言ったのに。」
意識が黒く塗りつぶされる直前、忍の声が聞こえた気がした。
『ニュースです。昨晩、○○県▽▽市にお住まいの――』
ニュースを途中で切り、男は外を見た。
「アア、退屈ダ。」
その目が捕らえるのは、次の獲物か、はたまた昔の自分か――。
夜、歩いてて思い付いたんだ。
――この作品は、フィクションです。




