表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおねがい  作者: もやしいため
第六章:魔石収集
97/537

職務質問

リザード戦お疲れ様でした。

これからは汚れ集団との面接です。

フィリカは理熾のリザード討伐の作戦工程を聞いて唖然とした。

そもそも障壁や結界を2枚作るだけでも結構な労力なのだ。

それについては店の庭先で『10枚並べた』と言われた時に指摘した。

だから普通は1枚の障壁や結界を強靭に、強固に作るものなのだ。


「障壁と結界という2種類を並列起動した上にそれぞれ『違う形』を作るなんて聞いたことがないぞ?

 それに一瞬とはいえ、別々の意味を持つ3つの結界を扱ったというのは最早結界士の領域だ。

 リオ君、人はそんなに器用じゃない。

 一体何をしたんだ?

 謝礼は出すからやり方をお姉さんに教えてみなさい」


「見た目はともかく『お姉さん』って年じゃないよなー」とか失礼なことを思いながら理熾が答える。

一瞬ピクリとフィリカの眉間に皺が入ったのはきっと気のせいである。

むしろ気のせいじゃなかったら怖すぎる。


「いや、ほら。

 フィリカさんもやってるでしょ。

 右手と左手で別々の作業をする、みたいな」

「やらんわ!

 いくらなんでもそんなこと出来るわけないだろ」


「あれー?」と理熾は首を傾げる。

やってること自体はそんなに難しい話ではないはずなのだ。

ただそこへ意識が向けられるかは別だが。


「そんなことないはずだよ。

 右手に針を、左手に布を持つ。

 縫い物って右手の動きと左手の動きは違うよね?」

「いや…確かにそうだが…」


「僕もそんな感じ。

 それぞれ独立で考えるから難しいんだよ。

 関連付けてそれぞれの役割や動きをイメージしてから始めたからさ」

「それでも3つの結界はおかしいぞ」


「そう?

 2つの結界で1つの結果。

 追加の結界は2つの結界よりもコンパクトに作っただけだよ。

 ほら、サイズが違うだけで同じことやってるでしょ?」


いくらフィリカが「できない」と言葉を重ねてもやった本人がやり方を説明しているのだから出来ること、なのだ。

納得できて無さそうだったので更に続ける。


「その後の障壁と結界の並列処理も同じ感じだよ。

 2つの魔法で1つの結果を出すために使っただけだから。


 全体の形をまず決めておく。

 その次にその形に添うように結界で作る場所と障壁で作る場所に分ける。

 そうすれば2つの魔法で『全体の形を作る』という処理の為に、結界と障壁が作れるよね?」


元々が1つの結果をもたらすために、2つの処理をするという考え方。

それぞれを分けて組み合わせようとするから難しいのだ。

だから逆に1つのものを分けて作っただけ。

色々と言いたいことがあるだろうが、現時点で理熾が説明できるのはこれくらいである。

むしろこれ以外に分からないからこれ以上説明のしようがないのだ。

とはいえ、結局魔法の処理能力が足りずに【限界突破】が勝手に使われていたのだが。

この辺りは【直感】(シックスセンス)が補足したらしい。


「本当に。

 リオ君と話をしていると頭が固いと突き付けられている感じがするよ」

「いや、固い人は認めてくれないよ?

 楽しんでる時点で十分柔らかいと思うけどなぁ。

 それはともかく、この四人なんだけどさ」


等と言い合う。

ちなみに二人の目の前にはフィリカが捕らえた四人が転がっている。

全員ロープで腕と口元を縛られている。

魔法士であるフィリカがどうやって四人もの人間を縛り上げたのかは謎だ。


四人とも理熾とフィリカを睨みつけている。

怒りの目だろうか。

それとも憎しみだろうか。

少なくとも好意的な目ではないことだけは確かだ。


「ん?

 あぁ、どうする?

 とりあえず私達が知っている中では何もしていないはずだが」

「んーエリルさん達に預ける、で良いと思うよ。

 盗賊狩りに来たらしいから喜ぶんじゃない?」


理熾の声に四人がそれぞれ表情を変える。

声も上げるが口を塞がれているため、くぐもった音しか出ない。


「確かに。

 あいつに貸しを作るのも良いな」


そうフィリカはにこやかに答える。

だが理熾はそれで済ませられない。

【神託】が真相究明である以上は、引き渡して終わりというわけにはいかない。

しかしこのまま引き渡してしまうと恐らく内容を知らぬまま、『盗賊』として処理される。

恐らく機密に関わるようなことだから、まず確実にそんなことになる。

だから今問い詰めておかないといけない。

四人に聞こえないように理熾がフィリカに言う。


「でもその前に。

 僕が尋問をしたいと思います」

「……出来るのか?」


「さー?

 初めてだから分かんない」


そう言って四人に向き直る。

やり方を考えるのだ。

簡単に口を割るわけがない。

何故なら彼らは恐らく工作員だ。


「んー…よし、決めた。

 さて、皆さん。

 先程ユニーク持ちのリザードを討伐した理熾です。

 以後よろしくお願いします。

 これから僕が言うことを、是非ともしっかりと聞いておいてください」


「命にかかわりますからね」と笑って見せる。

相手の精神状態など分からない。

尋問方法も知らない。

だから理熾が最善だと思う方法を取る。

少なくとも危害を加えるつもりは無い。

というのも怪我などをしていると引き渡す時に面倒だからだ。


工作員(・・・)の皆さんの口は堅いと思いますが、素直におしゃべりした方が賢明です」


『工作員』という言葉に一瞬空気が詰まる。

どれだけ訓練されていようが、感情を殺せないのならば意味がない。

そして感情が生きているのならば崩すことは可能だ。


「一人ずつお話を聞きます。

 話してくれれば何もしません。

 が、答えてくれなければどうなるかは分かりますよね?」


そういって笑顔で亜空間を展開する。

理熾の背面に矢が1本、また1本と出現し、空間が揺らぐ。

結果無数の矢を背後に抱えつつ笑顔を浮かべる子供(理熾)が言葉を続ける。


「あぁ、あと。

 知らない情報を教えてくれた方には便宜を図るつもりです。

 最後の人には残って無いかも知れず申し訳ありませんが、是非とも早めに答えてくださいね」


「早い者勝ちですので」と締めくくりつつ、背後の矢が1本発射された。

頬に一筋の赤い線を入り、口元を縛っていた縄が解けてはらりと落ちる。

理熾は縄が解けた一人を指差し、


「あぁ、すみません。

 手元が狂いました。

 でもそれくらいは良いですよね?

 それでは貴方から始めましょうか」


そう、にっこりと笑む。

理熾は囁き声でフィリカに「他の人は向こうへ除けといて」と告げる。

誰にも聞こえないはずだが、フィリカはそれだけで他の三人を引きずって外に出る。



理熾は笑ったままである。

ガゼルの面接があってよかったなぁとかぼんやり思っている辺り、とても余裕である。


「さて、それではお話を窺いましょう」

「盗賊から何を知りたいって言うんだ!」


ちゃんと相応の対応をしてくれた。

いきなり「実はね…」とか言われたら逆に情報を疑うところである。


「その盗賊さんは一体何を狙ってたのかな?」

「…荷物に決まってるだろ」


「そうなの?

 ここは最後の街よりも先にあるんだけど」

「そりゃ知らなかったな。

 偵察に来たばかりなんだよ」


とそっけなく悪態をつく。

あれだけ脅したのにまだこの余裕があるなんて凄いなと理熾は感心する。

ともあれ、それはそれである。


「そっか。

 でも盗賊が街の位置も知らない。

 街道の重要性も分からないなんて、おかしいけどね?」

「………」


「沈黙は肯定と受け取りますよ?

 頑張って否定してくださいね。

 下見にしたところで『美味しい狩場』の目星をこの辺りにつけるのはおかしいんだよね」

「そういう盗賊も居るってことだ」


「このタイミングで話すんだね?

 沈黙すると『肯定』になるから大変ですよね」

「…っち」


「感情的にならない方が良いんじゃないかなぁ。

 隠し事するならポーカーフェイスでないと。

 あ、ポーカーフェイスって言葉はこっちじゃ使わないか。

 うん、もっと読みづらい表情をしてくれないと、聞いてもないことまで分かっちゃいますよ?」


理熾は楽しくて仕方なかった。

別に拷問をしているわけでもないし、尋問というにも拙い。

慣れない脅しもしてみたが全く通用しない。

これだけ問題があるのに、楽しかった。


対リザード戦で酷使した精神のギアが落ちないだけかもしれない。

処理能力の限界を超えていたため、知らぬ間に【限界突破】も使用していたのだから。

ちなみにそのせいなのか、お陰なのか、思考速度も落ちていない。

ついでに【直感】のLvも4になっているから手に負えない。

相手の情報はそれほどないが、それでも発言・雰囲気から、読み取れると本気で思っている。


「まぁ、それはともかく。

 洞窟に入った理由は何かな?」

「行きがけの駄賃だ。

 卵を持ち帰れば一財産だからな」


「なるほど、リザードの巣穴だと分かってたんだね」

「……そりゃな。

 俺らの方が先に見つけたんだからな」


「そう、そこだよね。

 何で逃げなかったの?(・・・・・・・・・・)

 盗賊なんでしょ?

 リザードが居ないならまだしも何で?」

「それだけの価値はあるかるからな」


「質問に答えようよ。

 あぁ、言い直そうか。

 何で戻ってきたの?(・・・・・・・・・)

 リザードと戦う前に、この周辺を探ったんだよね。

 その時には居なかったのに、何でフィリカさんに捕まってるの?」

「……リザードが戦い始めたんだから、巣穴は空っぽだろう?」


「ふふ…またおかしなことを言う。

 ねぇ、何でこの巣穴のリザードが2体だけだと確信できたの?」

「………」


「そうやってまた黙る。

 会話しようよ。

 せっかく拷問もしてないんだからさ」

「…先に見つけたと言ったろう。

 だからリザードが2体だと知っていたんだ」


「本当におかしなことを言うよね。

 この巣穴の『深さ』を知ってるような言い分だよ?

 例え2体を確認していたとしても、2体だけだとは分からないよね」

「先に見つけたからな」


「なるほど。

 長時間張ってたのかな?」

「…ふん」


「じゃぁ何で監視が必要だったのかな?」

「お前に関係ないだろう」


「それを言い出すと最初から関係ないんだけどさ。

 ちなみに、リザードの巣穴に着くまでに貴方達を発見してるからね?」

「………」


「沈黙は金、と言うけども時と場合があるよね。

 さて、隠密行動が余り上手くない貴方達。

 開戦時に巣穴近くには居なかったのに、急に途中参加。

 こうなると見張っていたとかというより、慌てて戻ってきたって感じだね?」

「卵は希少価値が高いからな」


「その割りにはリスクが高いね?」


ここまでの話で本当か嘘かなんてのは実際分からない。

【直感】はとても優秀ではあるものの、結局は理熾に根付く技能だからだ。

だから理熾は会話の虚実などどうでも良かった。

反応、雰囲気…そしてそれらと同じ言葉こそが信用に足りると思っている。

人を信じるのではなく、その瞬間の言葉を信じるのだ。


「そうだねぇ。

 『持ち込んだリザードの卵』だもんね?」


その言葉を告げた瞬間、そっぽを向いていた視線が理熾に釘付けになる。

それは驚くだろう。

まだ一人目(・・・)である。

そして一人目の彼は何一つ情報を漏らしていない。


「驚いた?」

「………」


沈黙を守るも、反応をした時点で答えたも同然だ。

ふと理熾の耳元で「どういうことだ?」とフィリカの声で質問が来る。

相手も喋らないことだし、推測を話したところで違和感はない。

このまま続けることにする。


「そもそもリザードが2体居ることに僕達は疑問に思った。

 だってそうでしょ?

 魔力溜りから生まれるリザードは1体が一般的なんだから」

「……単に偶然じゃないのか?」


「うん、その可能性もある。

 けどもそれは確率的にとても低い。

 というか、その発想で言うなら何で貴方達は『2体だけだと確信したのか?』という疑問になるんだけど分かってる?

 まぁ、その辺は後で良いや。

 だからもっと高確率な話をしようか。


 成体になるまで1ヶ月掛かるのに、何で2体居るの?

 というより2体以上の成体が居るのに、2体しか(・・)居ないのは何故?

 理由は簡単だよ。

 最初から成体が2体居たか、卵が2つあった(・・・・・・・)かのどっちか。

 現実的に考えれば移動が簡単な卵をどこからか持ってきたっていうのが一番有力かな」

「………」


「沈黙は肯定ってことかな?

 他にも理由があるんだよね」


そう言って人差し指で地面に転がる石をコンコンと叩く。

そっぽを向いている相手に『こっちを向け』という合図だ。


「もし貴方達を知らずに終われば疑いもしなかった。

 けれども貴方達が居て、なおかつアルス騎士団が派遣されている。

 ねぇ、ただの盗賊相手に団長と副団長を含めた精鋭(・・・・・)が出張ると思う?」

「………」


「沈黙は肯定だ、ってさっき言ったよね?

 それじゃ貴方の言い分を聞こうか。

 もし新たな情報がない場合は前もって謝っておくけど、ごめんね?」


改めて理熾がにこりと笑った。

お読み下さりありがとうございました。

理熾はパズルのように物事を考えます。

意味や関連性を別々に並べて、『自分が望む結果』に繋ぎ合わせます。

誤差があっても結果的に何とかなるのは一応筋が通っているからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ