士魂の強弓
ようやく戦闘シーン突入です。
強さの基準なんかはその場の思い付きで書いてますので、おかしな部分があるかもしれません。
説明を求めるとあっさりと答えてくれた。
魔石に関する情報をギルドに確認したところ、丁度リザードの討伐依頼が出てると返答されたらしい。
ボードに掲載する直前だったらしいものを、横からさっと受けたらしい。
ちなみにランクはCだったのでどっちにせよ理熾には受けられなかったのだが、何となく悔しい。
「そういうことなら先に言ってよ!
探し回る羽目になると思ってたのに!」
と憤慨する理熾。
岩山を歩き回る趣味は今のところ無い。
何せ見渡す限り岩肌しかないのだから、景色すら楽しめない。
そんな訳で、スピード解決すること自体はとてもありがたいのだが、色々と準備してきたことが全て杞憂だったらしい。
フィリカのことだし当てがあるとは思っていたが、これは酷い。
準備不足より遥かに良いのだが。
「すまんな。
先程のグリフォンを自慢したくて忘れてた」
としょーもない言い訳をし出す辺りがフィリカらしい。
というか自慢したかったのか…。
フィリカさんも子供っぽいところあるよなぁ。
と正真正銘、子供の理熾が思う。
日帰りが出来ると言われた理由がこれなのだ。
何せ絶対に居るし、場所も割れてるのだから時間が掛かるはずが無い。
簡単に倒せればという注釈がつくが、フィリカがいる時点で負ける要素も無い。
「んー…でもさ。
何でリザードの討伐依頼が出るの?
ここって誰も来ないよね?
迷惑に感じる人が居なければわざわざ高い金額出して依頼として出す?」
と疑問に思う。
魔物の世界なのだ。
人が関与すべきではないし、する理由も無い。
であれば放置していても良いし、むしろしていた方が良い。
「まずここは鉱山として利用されている。
だからここまでの街道があるんだ。
加えてリザードは特別警戒種なんだよ。
繁殖力が高くて…あぁ、違うな。
『食欲が旺盛』なんだよ。
このままだとこの山ごと食い潰すんだ」
「それって歓迎されることじゃ?
魔物を食べつくしてくれるんでしょ?」
「それがそうも言えない。
リザードという種が山の魔物を食い潰した。
すると何処に被害が出ると思う?
すぐ近くの人里…アルスに進撃してくる。
まぁ、この辺りになるとリザードが増えてB・Aランクの討伐になるから大事だけどな。
それに加えて、この山が『魔物の空白地帯』になる訳だ。
すると今までの魔物とは違う魔物が住み着く可能性が高い。
その所為で今まで講じてきた対策が全て無駄になる。
今現在住み着いている魔物は、他の魔物の『風除け』になってるからな」
という風に世界の縮図的なものを説明される。
リザードの能力で言えばこの山を征服するのは容易いからそういう予想も立つのだろう。
というよりは過去に何度かそういう事態が発生していて、今は落ち着いていると考えた方が無難かもしれない。
「うわぁ…ややこしい。
てことは、今回の依頼はこの山を持ってる地主さんから?」
「その通り。
ちなみに鉱夫が発見者だ。
良く逃げ切って報告してくれたと雇用主が喜んで迎えたらしい。
そりゃ山を全部持っていかれる可能性があったから褒賞モノだな」
というのが概要らしい。
今回の依頼は理熾とパーティーを組んで受けているらしい。
通常のカウンターではなくガゼルを通したというのだから何とも手回しの良い事だ。
むしろガゼルが「それは良いことです!」とか言ってねじ込んだというのだからツテは偉大だ。
使い方を考えて欲しいが。
ガゼル的には『理熾の実地研修』的な思惑があるのかもしれない。
「さてリオ君。
周りに何体か気配がするんだが、分かるか?」
「ここに着いてからはずっと【索敵】を切らせて無いから一応は」
「流石に抜け目無いな。
今回は私が戦うか?
それとも私も戦う?
むしろ今度もリオ君が全部やるか?」
これも実戦経験に含まれる。
フィリカの戦闘を見たいとも思うが、『今度こそ見学者で返す』という目標を立てるのもありだ。
何よりフィリカから「倒せる」というお墨付きを貰っているのだから、大丈夫だろう。
なので
「…危なくなったら手伝ってください」
と言ってこの場を任される。
完全に保護者扱いしていることは理解しているが、少しでも能力を伸ばしたい。
まだまだなりふり構っていられる状況じゃないのだ。
「了解した。
ならば何もしなかったら報酬は全て譲ろう」
「せめて運送料くらい貰ってください。
ついでに護衛料も」
「その辺はおいおい。
楽しませてくれればそれで良いし…そろそろ来るぞ」
フィリカの声が合図というわけではないが、動きが生じた。
目の前に現れたのは岩石兵が3体。
ごつごつとした岩の塊3mが何とか人の形をしているような魔物だ。
ランクはEと理熾と同じ。
距離約30m。
理熾達が立っている場所よりも高いところから見下ろしているような位置だ。
すぐさま解析によってステータスを展開する。
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種族:岩石兵
Lv :32
スキル
パッシブ
頑堅Lv5
硬質化Lv3
アクティブ
土魔法Lv3
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む…Lv高いな…。
岩石兵の動きは単調。
けれど力が強く…というか重量のせいで攻撃力が高い。
しかも硬い…というか庭の土手みたいなもんかな?
斬撃系統よりも衝撃…鈍器の方が良かったはず。
とりあえず弓で様子見してから殴ろう。
とギルドで集めた情報と相手のステータスを見ながら考える。
すぐさま亜空間からハイオーク製の弓である【士魂の強弓】と矢を取り出して放つ。
属性無し、単に強弓の最大威力で。
すると「ガオン!」という音と共に岩石兵の肩口に着弾し、はじける。
うそぉ!?
弓の強さに矢が吹き飛んだよ!!
岩石兵の肩が抉れてるし!
あいつ超硬いんだよ!?
上に向かって放っている筈なのにこの威力。
確かにハイオークの威力が出るならこれくらい余裕だろうが、最早弓の威力じゃない。
放てる理熾が凄いのか、単に弓の性能が凄いのかは分からない。
が、凄まじい威力で放たれた矢は岩石兵の硬度に負けて弾け飛んだ。
むしろその分威力は全て伝わったらしく、辛うじて肩が繋がってるレベルで抉れている。
余りの威力にフィリカに視線を送るが、フィリカは単に「おぉ」という風に感動していた。
自分の作った弓の威力を見て喜んでいる。
うわぁ…子供のように目が輝いてる…。
これホント僕以外に使える人居るのかな…?
「無茶苦茶だ…」とそんなことを思ってると速度は遅いのだが、3体が走りこんできた。
弓の距離では不利と感じ取ったのだろうか。
相手の方が高い位置にいる上に、体重が大変重い。
移動速度はともかく、落下速度は大したモノで、すぐさま近接してくる。
思った以上の速度で突貫してくるのですぐさま武技の《乱れ撃ち》で矢を放つ。
《乱れ撃ち》は1矢を見た目も威力も20本程度(任意に増減できる)に分けて面へ攻撃するための技術で、足止め用。
元々が破格な威力であるため、分けたところでそれなりの威力になるはず。
と思って放ったものの、やはり『普通』にまで威力が落ちた矢では岩石兵は止まらない。
そもそもあの魔物はガチガチの甲冑を着た上に弱点である関節までが硬いような魔物である。
矢で止まるはずが無いと理熾は改めて悟る。
次いで《二の矢》と《影矢》、を放つ。
《二の矢》は高速2連射で、《影矢》は1矢目のすぐ後に同じ軌跡で放つ技術。
《二の矢》の合間に《影矢》を放てば計4連射出来るという寸法だ。
だが《影矢》は同じ場所にしか向かわない。
つまり4連射できても2体分への攻撃にしかならない。
だから最初に肩口を抉った岩石兵はさておき、他の2体の肩口を吹き飛ばす。
腕が千切れ飛んでいく様を見ると威力の程が分かる。
そのままバランスを崩して倒れこみ、一時的に時間稼ぎ(という威力でもないが)をする。
そして最初に抉った岩石兵が落下速度を上げて突貫してくるのを理熾は微笑みながら眺める。
この1週間で培った技術は他にもある。
空間魔法の障壁を、岩石兵の落下軌跡の空中に縦5m、厚さ1mm以下、奥行き1mの極薄状態で展開する。
向きは相手に対して垂直に、厚さが正中線を通過するように。
そして魔力を惜しげもなく使って頑強に。
岩石兵が障壁に当たると「ガシィン!」という音と共に岩石兵が二つに割れた。
理熾は実験成功を喜びつつも他2体に向き直る。
岩石兵の弱点は身体の中心にある核らしい。
しかしこの核は魔核のような純度の高いものでは無い。
討伐証明部位であると共に、蓄魔石の原材料程度にはなるらしい。
つまり蓄魔石が欲しければ討伐料が貰えないということだ。
それと出来れば傷が無い方が好ましいが、それも難しい。
1体目のように核を壊すか、それに付随する機関を切り離さないと自動再生するのだから。
うっわ…土魔法ってそうやって使うのか。
これは瞬殺しないといつまでも殴り合う羽目になる…。
岩石兵に限らず、ゴーレム系種族は自動再生を持っている。
スキルという訳ではなく、種族の特性で。
『犬がスキルを持たなくても鼻が良い』という気軽さで。
この自動再生が強力なため、持久戦が得意なのが特徴だ。
ちなみに自動再生だけでは足りない場合、目の前の光景のように土魔法を使って身体に使えるものを補給するようだ。
痛みを感じず、身体が硬くて継続戦闘能力が尋常じゃなく高い。
ゴーレムの名前は伊達では無いということだ。
帰ったら鈍器系をお願いした方が良いかなぁ。
そんな事を思わされるくらいには、岩石兵は脅威だ。
黒鎖鋼では恐らく刃が立たない。
というより切れても刃こぼれしそうでやりたくない。
そうやって武器を選り好みしていると岩石兵が改めて突貫してきた。
2体とも、先程抉った肩は再生されて、腕まで繋がっている。
HPは流石に減っている(減ってくれないと倒せない)筈だが、吹き飛ばした部位が完治されてる姿を見ると徒労感を感じる。
今度は1体を確実に仕留めるために《二の矢》、《影矢》の4連射でほぼ同時に両肩を吹き飛ばす。
万が一にも撃ちもらしてもこれで攻撃は不可能だ。
最大威力に引き絞った上に魔力を乗せて《二の矢》、《影矢》の4連射で正中線より少し右を穿った。
一番硬度が高いであろう胸を貫通して核を半分ほど削り取ったので、そのまま岩石兵は沈黙した。
魔力を惜しまず使った結果とはいえ、恐ろしい威力だ。
魔力付与に加えて【剛力】の威力はやはり半端無いらしい。
2体目を集中砲火していたため、3体目は既に目の前。
重量で押しつぶそうとショルダータックルのような体勢で突っ込んでくる。
幅3m位の壁のような岩石兵がかなりの速度で突っ込んでくる。
すぐに弓と矢を亜空間に放り込んで、切れる鈍器である紅蓮鉄鋼の斧の出番だ。
タイミングを見計らって頭上から真下へ抜き放つ形で武技《両断》を発動させて3体目を真っ二つにする。
《両断》は字のごとく、打ち込みによって相手を断ち割る技術。
斧のような重量武器に似合わず発動がそれなりに早く、何より一撃必殺になる可能性が高い。
が、その分躱された時の隙が大きいので、ホームランバッターのような扱いだ。
今回のような鈍重な相手で、的が大きく、なおかつ動きが予測できてこそ扱えるような武技だ。
だから「当たればでかいが、当たればね」という感じ。
「ふー…フィリカさん終わったよー」
全ての岩石兵の核に傷をつけたため、もう動かない。
すぐに近寄って核の回収を行う。
岩石兵に限らず、ゴーレムは余程のことが無い限りは核しか価値が無い。
例えば鋼鉄兵なんてのは、金属系のゴーレムなのだが、不純物が多いので使いづらい上に重い。
本当に割に合わない魔物である。
「お見事、という他無いな。
岩石兵は対処さえ出来れば弱いが、初見で3体をほぼ秒殺とは…」
「訓練所に通った甲斐があるよね」
とあっけらかんと答える。
リザードの発見場所までまだまだある。
「気を抜かずに行こう」とフィリカと言い合い、歩き始めた。
お読み下さりありがとうございます。
タイトル名は原材料ハイオークのフィリカ作成銘付き武器の名前です。
今回ようやく活躍の場が出ましたのでタイトルにしました。




