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神様のおねがい  作者: もやしいため
第六章:魔石収集
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新型投剣

新人の癖に用意周到な理熾は手持ちの戦力で満足しません。

新しい手札(カード)を手にするために、新たな試みを始めます。

まずは形状を夢想する。

投剣をイメージし、そこに欲しい形を刻み込む。

最初はラフ絵のように軽く形を思い浮かべ、次に座標を割り出しより精密に。

微細の歪みもないように、イメージの鉄線(フレーム)を幻視する。


「よし」と気合を入れて新型を投下する。

すぐに新型投剣の結界を起動させる。

形は投剣を軸に送風機(ファン)の様な羽。

展開した矢先に落下スピードががくんと落ち、空気抵抗によって投剣の回転数が上がっていく。

投剣を軸に回転しつつも落下を加速させていくが、それもかなり緩やかになってきた。

そろそろ羽がある状態での最高落下速度に近付いたみたいなので、すぐに結界を解く。

すると当然の如く羽の空気抵抗が無くなった投剣は一気に落下速度を上げて行く。

そのまま暫く落下させると最後の加速(アクセル)が発動し、すぐに亜空間へ仕舞うと、理熾はにんまりと笑顔になる。

精神的に疲れたので「ふぅ」と一息入れてしまうが、


 出来た!

 出来ちゃったよ!


と内心小躍りしたいくらいのレベルである。

まさかこんなに簡単に出来るとはというのが本音である。

今回も間で何も聞かずに待っていてくれたフィリカの質問が入る。


「リオ君、一体何をしたんだ?

 結界のせいで一瞬速度が落ちただけに見えたが…違うのか?」

「ふふふ…フィリカさん。

 これこそ誰にも止められないよ!!

 って、言っても…撃てばあの土手貫通しちゃうからなぁ…どうしよう?」


とフィリカに振る。

土手の向こうは住宅街だ。

貫通すれば大惨事にもなりかねない。


「たったあの工程だけであの土手を貫通するのか?

 まぁ、何もしなくても貫通しかかったから分からなくはないが…。

 そもそもその投剣を誰も止めたことなど無いんだがな?」


とフィリカは首を傾げる。

たったあれだけの工程で威力が上がるなど信じられないのだ。

何せやったことは結界を一時的に展開させただけなのだから。


回転させる理由は簡単。

拳銃は弾丸を回転させることによって安定した命中率・飛距離、そして貫通力を生む。

だが投剣は銃みたく砲身(バレル)が無いので本来なら安定することは無いし、高速の回転力を生むことは出来ない。


対して理熾がやったことはとても簡単だ。

ヘリコプターの逆である。

ヘリは羽を回すことで機体が浮かぶのだが、投剣に羽を付けて落ちることで羽と投剣を回したのだ。

この際にズレやブレがあると正確な回転力が得られず、バランスを崩して暴れまわる。

だが幸運なことに理熾は空間使いの補正で細かな標準(座標認識)が行える。

細部まで誤差無くイメージを描ききることが可能なのだ。

しかし今度は結界を張る能力が無い。

理熾の使う空間魔法は『空間に作用する魔法』なので、起動したところで空間に固定してしまう。

要は投剣と同じ動きをしない(・・・・・・・)のだ。

それについては投剣内部に仕込まれていた結界の刻印を使うことでクリアした。

不定形の一時的な力場として存在する結界を、『出し入れ自由な羽』として利用したのだ。


本当にたったアレだけの工程で貫通力が上がるとは思わないだろう。

そもそも比類なき貫通力を持つ投剣である。

それが更に研ぎ澄まされても意味が無かったりする。

理熾のテンションは上がったがそれだけになりそうだった。


 まぁ…使う場面があれば良いなぁ程度に思っておこう。


そう思って心に仕舞う。

結局もう1本旧式を準備して合計5本を追加で発射準備した。

これで新型2本(内1本は回転型)、旧式8本が発射準備中となっている。

ついでにフィリカにはタネが割れている矢も新しい弓で3段階中の最上位の威力で300本を準備しておいた。

前の矢は残り10本程しか残っていないかったのだ。

そう思うといかにハイオーク戦が綱渡りだったかが実感できる。

狩りの時は前のから発射する予定である。


これらの準備だけで結構な時間が掛かり、既にお昼を超えている。

あけみや製の昼食を食べ(最近はフィリカやノルンの分も用意している)、すぐに騎士団の訓練場に向かう旨をフィリカに伝えて出発する。

見学は一区切りを伝えなければならない。

ついでに領主館にも連絡を入れて、久しぶりにギルドにも顔を出そうと本日の予定を決める。


 他にやることあったかなぁ?

 まぁ思い出さないならその程度のことなんだろうなぁ。


とか思いながらフィリカの店を後にした。


訓練場に着くと一番初めに向かったのはエリル団長のところだ。

明日以降の見学を見合わせる旨を伝えて、お礼を言うため。

だが残念ながら今日は居ないようだった。

アイゼンが「本日から副団長と共に遠征に出ています」とのこと。

しかも帰りはいつになるか分からないそうである。

仕方が無いのでアイゼンに伝言を伝えると共に「また挨拶にきます」と言って訓練場を後にする。


たった一週間ではあったが、十分に濃かった。

今後用が無ければ来ないことを思うと少し寂しく感じる。

ギルバートにも許可を得ているし、邪魔にさえならなければいつでも行けるのだが。


 さてと…次はギルバートさんとこかな。

 でも二人揃って遠征って何かあったのかなぁ?


そんな事を思いながら歩を進める。

領主館には門番が居るし、利便性と安全性の為にも騎士の宿舎もある。

門番に挨拶をして、ギルドカードを見せる。

するとすぐにノイズが出て来て対応してくれた。


「こんにちは、リオ様」

「こんにちは、ノイズさん。

 ギルバートさんに挨拶しにきたんだけども時間あるかな?」


「生憎と外出しております。

 何かありましたら用件をお伺い致しますが…?」

「相変わらず堅苦しいね、ノイズさん」


思わず苦笑いする。

丁寧に相手をしてくれるのは嬉しいのだが、凄く違和感を感じる。

「何せ相手は子供(理熾)なのに」という風に。


「ま、良いか。

 うん。

 訓練場の見学ありがとうございました。

 団長と副団長にも挨拶に行ったんだけど遠征してるらしいからね。

 またお礼の挨拶に来るけれど、とりあえず報告って感じで来たんです」

「承知致しました。

 わざわざありがとうございます」


そう言って深々と頭を下げる。

本当に堂に入っている。

にしてもやはり子供相手に、という思いがぬぐえない。

理熾が日本式の価値観を持つからこそかもしれない。

そう思いつつも「イル(ハンマー)のあれは無い」とこっそり思う。

「ノイズに教育されれば良いのに」と思いながら領主館を後にした。

最後はギルドである。


 にしても。

 団長、副団長にギルバートさん。

 この面子が居ないってことは何か起きたんだなぁ。

 僕がアルスに来た時も魔物が多すぎるって話してたし、群れでも居たのかな?


そんな事を思いながらギルドに到着する。

中央カウンターで受付嬢(ガゼル)に会釈し(ちゃんと挨拶すると役職がばれかねない)、討伐カウンターに向かう。

狙う対象が分かっている以上は情報収集をするべきである。

それにせっかくリザードを狩るのだから何かしら依頼が無いかを確かめるのだ。


 んー?

 いつものゴブリン、オーク。

 D・Eランクだとちょっと遠いけどオーガとか?

 赤猫って何だっろ…あ、リザードの素材依頼が出てる。

 牙、爪、鱗に目、角…筋や肉まで…ホントに何でも使えるんだなぁ。

 そういえばオークの肉ってまだ食べて無いなぁ…リクエストしないと。


等とボードを眺めていく。

特にめぼしいものも無かったのでとりあえずリザードについての資料を見ていく。

少なくとも『知らなかった』で死にたくは無い。

場所は平原を越えた森の更に奥。

森が急に開けて岩石だらけの山に生息するらしい。

直線距離では100kmくらい。

道なりに行くなら150km以上先なのでどう頑張っても最低で一泊は必要だ。

それなのに「リオ君なら日帰りできる」とか意味が分からない。

ちなみにリザードはフィリカの言った通り魔物のランクはCだった。


 んー…今Eランクだから一つ上のDランクまでしか依頼受けられないのか。

 ならホントにリザードは素材集めに行くだけになっちゃうねぇ。


等と思いながら生息地図からその他の魔物や魔獣を見ていく。

ゴブリンやオークといった相変わらずな連中の他に岩石鳥(ロックバード)や山猫、岩石兵(ロックゴーレム)などがいるらしい。

それぞれのランクはD・Eランクなので理熾であれば負けることは無いだろう。

「そんな中のCランクはボスクラスなのでは…?」と思うが、単に分布の違いなのだろうと思い直す。

必要だと思われる情報を手に入れたのでギルドを後にしてフィリカの店に向かった。

理熾の発想はシンプルです。

手持ちの情報を繋ぎ合わせて新しい結果を生み出すということだけです。

後は結果の見直して過程を再構築(最適化)するのも含まれます。

やってることは組み合わせだけなので、実は誰にでも出来たりするのですが、この速度でぽんぽんと新方式を発見する者は居ません。

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