表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおねがい  作者: もやしいため
第五章:休息の時間
77/537

報償の値段3

遂に領主、ギルバートとの対面です。

タイトルの話数が3になってますが、ガゼルとも交渉しているのでこのタイトルにしました。

朝食を食べ終え、大満足状態でセリナとあれこれを話した。

訓練の内容や、初討伐のこと。

血なまぐさいことは省いたが、セリナにとっては結構な大冒険だったらしい。

今思えば確かにたった10日くらいでハイオークを倒せるのだから成長率が尋常じゃない。


そうして時間が過ぎるにつれてノイズが討伐者を連行…もとい、送迎する。

彼らが泊まっている宿や家まで送り届けるらしい。

何とも手際が良い。

たった2時間ほどでそこまで調べての連行…ではなく送迎だ。

信用されるはずである。


お昼近くになり、フィリカが降りてこないので見に行った。

自分が借り受けている部屋なのに何だか変な気分だった。

そこで寝惚けたフィリカにベットに引き込まれるようなイベントが発生したがセリナが助けてくれた。

というか目の前でセリナがフィリカ相手に説教しているのが新鮮だった。

フィリカも流石に悪かったと思ったのか、ジッと聞いていた。

理熾はというと、「フィリカさんもだらしないね」とか思ってた。

まだまだ子供である。


そんなこんなでお昼になり、ギルバートが待つ領主館に到着した。

案内はノイズ。

徒歩ではなく馬車で。

歩ける距離だが『来客』なのでそれなりの対応が必要らしい。

「貴族ってめんどい」と思う瞬間である。


「ギルバート様、お連れ致しました」


そういって執務室が開かれる。

やはり執務室の扉や家具などは重厚だった。

校長室の軽やかさを思い出してため息を吐きたくなる。

「校長先生も可哀想に」と。

理熾に思われたくは無いだろうが。


「よく来てくれた、リオ君。

 ノイズ。

 お前はお茶でも入れてきてくれ。

 食事の前にちょっと真面目な話をするからな」


そういってノイズを追い出す。

すると不意に視界に《!》のマークが入ってくる。

最近…というか、緊急依頼以降初めての【神託】だ。


 何だろ?

 急に。

 緊急っぽいけど割り込むほどじゃないのかな?


そう思ってすぐさま開ける。

急ぎであれば困るからだ。


---+---+---+---+---+---

【神託】

報償を追加せよ!

達成内容:相手の提示する報償以上を求める


ギルドが君に報償を提示するという

償いとは軽いものではない

故に、相手には誠意を見せる必要があるのだ

時には心を鬼にし、請求するべきだ


それによって相手も納得するのだから


報酬:任意のスキルのLvUP

---+---+---+---+---+---


 はぁ!?

 吹っ掛けろ(クレームを言え)と!?

 てかギルドの報償交渉はもう終わったよ!!

 今更遅すぎる!

 ………のに、何その報酬…?


今更過ぎるくせに報酬が破格と言うか、何というか。

何故このタイミングなのだと思うような報酬だ。

全く神の意向が分からない。


---+---+---+---+---+---

【神託】

報償を追加せよ!

達成内容:相手の提示する報償以上を求める


領主が君に報償を提示するという

償いとは軽いものではない

故に、相手には誠意を見せる必要があるのだ

時には心を鬼にし、請求するべきだ


それによって相手も納得するのだから


報酬:任意のスキルのLvUP

---+---+---+---+---+---


 内容一緒ッ!?

 相手が違うだけ手抜きにも程があるよ!!


だがこちらの交渉はこれからだ。

いくらでも何とでもなる。

相手もギルバートだし。

とか思っていたが、ギルド側での報酬を受け取れるらしい。


 あれ…?

 「提示された報償以上を求める」ってあるけど…。

 もしかして単に「条件を変えろ」ってこと?


そうなれば余計に簡単である。

【神託】の迂遠な表現のせいでやたらややこしい。

目的がほんわかと抽象的で対処に困る。

最初の方にあった「野うさぎを捕まえろ」とかなら分かりやすいのに。

まぁ、未だに完了していない訳だが。

そんなことを難しい顔をして考えているとギルバートが声を掛けた。


「リオ君、そう難しく考えなくて良いぞ。

 こっちが悪いのだ。

 どかっと座って、文句と迷惑料を請求してくれれば良いのだ」


とソファーを勧めてくる。

が、とても困った。


 うっわー…まさかの問題だよ!

 向こう側(ギルバートさん)が条件を提示しない!

 ということは条件を変えることが出来ない!

 こっちが言うこと全部通りそうだし!!


と内心で「ヤバイ」と焦る。

せっかくの大盤振る舞いの【神託】なのだ、絶対に手に入れたい。


「ありがとうございます」


内心の焦りを見せないようにソファーに座る。

目の前には領主(・・)である、ギルバートが座る。

優しい雰囲気は今は無い。

やはり領民の税を扱う身だ。

出来る限り出費を抑えるように考えるのだろう。

この辺りは好き嫌いではない。

義務と矜持が試される。


「ではまず事の顛末を教えて下さい。

 確か騎士団が見つけたんですよね?」

「騎士団…そうだな。

 騎士の一人がオークの大群に気付いたのが始まりだ。

 その報告はすぐに為され、即座に斥候が派遣された。

 距離もそれ程離れていなかった為、本当に緊急だった」


そういって話し出す。

恐らくこの話は又聞きだろう。

でなければ『報償』という大事になるような隠し事をする訳が無い。

少なくともそんなことでギルバートが討伐者(領民)の命を使い潰すことを認めるはずが無い。


「最初の斥候がもたらした数は依頼書通りだ。

 だが、その付近に魔獣…ウッドウルフも確認された。

 流石に共闘をするはずが無いと、依頼書にはオークの数。

 そして付近に居るので襲ってくる可能性を踏まえて『魔物討伐』と」

「なるほど。

 だから依頼書の中で情報がちぐはぐだったんだね」


「あぁ、整合性を取る為に広く取れる言葉を使ったのだろう。

 フィリカ君から聞いているが、それを全て読み切ったらしいな?」

「ぁー…まぁ、おかしなところがあったから大体予想で」


と苦笑いする。

というかフィリカの手の早さに驚いてしまう。

この短時間でギルバートへの報告やら、祝賀会やらを終えているのだ。

本当に同じ24時間しか行動してないのだろうか…何となくフィリカなら1日が26時間くらいあるかもしれないと思ったりする。


「ならば次からは受付で…いや、ガゼル嬢に言うと良い。

 既に報償を受け取りに行ったらしいじゃないか。

 ガゼル嬢がしきりに感心してたぞ。

 『あんなに頭が回るとは思いませんでした。是非、当ギルドに欲しいです』とな」

「そうなの?

 けどそんな話されなかったなぁ」


思い返すがそんなことは無かったはずだ。

感心した顔と、嬉しそうな笑顔、そして最初の眠そうな顔くらいしか覚えてない。


 あれ、表情コロコロ変わってる?


終始ガゼルの機嫌が良かった気がする。

報償の(交渉)をしたはずなのに、思った以上にさらりと終わってしまったのだ。

理熾が思いの他ごねなかったということと、ガゼルが願った結果に落ち着いたことが勝因だろう。


「断るだろ、リオ君は。

 それくらいガゼル嬢も分かったから言わなかったのだろう」

「ぁー…そうかもしれない。

 ガゼルさんって諜報員かってくらい心読めてそうだし」


「違いない」


と理熾の言葉にギルバートが笑う。

実際それくらいの能力が無ければギルドマスターなど勤まらないのだろう。

ギルド職員を取りまとめるのも大変だな、と理熾は適当なことを思う。

そこはむしろ「ソロって気楽」と思うところである。


「さて、そんな訳で作成された依頼書だが、そのまま発布してしまった。

 拙い情報で、緊急なのだから仕方ない部分もあるだろう。

 だが、新たに得た情報を更新しなかったのはこちらの手落ちだ。

 リオ君が居なければ全滅だっただろうと聞いている。

 大変申し訳ない。

 領民を守る立場として、これ以上無い問題だと認識している」


と謝られてしまった。

謝罪が欲しいわけでは無いので、本当にどうすればいいのか分からない。

それに「次、頑張ろう」とか寝起きで言った覚えもある。

あの時は何のことか分かってなかったが、正直今もそんな気持ちである。


「今回の件に関して、依頼者、監督者を共に処罰する。

 騎士団の出動要請を止めた輩も居るから、その辺りにも罰を与えよう。

 騎士団長が渋るはずも無いから、そもそも防衛の話で聞かされているはずだ。

 とりあえず内部の処罰に関しては後日改めて伝えるということで良いだろうか?」

「良いですよ」


と答えるも、何故こうも理熾に対して処罰内容を告げたいのだろうか。

別に内部事情なのだから、聞いても分からないし、分かったところで感想も出ない。

単に「その程度なのか」か、「そこまでしなくても」という感想だけだ。

恐らくガゼルもギルバートも『誠意を見せる』というところなのだろうが理熾には全く響かない。

というより響くほどの人生経験が無いのだ。

組織的な動きを知らないから「だからどうしたの?」と思うだけで。


「他に何かあるかね?」

「というより、報償ってピンと来ないんですが」


ととても今更なことを言う。

何となく「ごめんなさい」の場だと思っているが、その程度である。

ガゼルの時は面接風味であったので聞きそびれたのだ。


「ふむ…普通なら金で解決することが多いな。

 その他なら労役や、条件なんかもありえるか」

「なるほど。

 だからガゼルさんが提示したのはお金と条件なんですね」


「ふむ。

 ギルドはいかほど支払ったのだ?

 決めかねているのならばそれと同額支払うということでどうだろう?」

「5万カラド」


と提示する。

この金額が高いか安いかは分からない。

が、それでも理熾には過分な金額であることは確かだ。


「なるほど、張り込んだな。

 それだけ嫌われたくないのだろう。

 よかろう、わしも同じ額を支払おう」


こうして交渉が終了する。

だが、これで終了させては困るのだ。

『条件を変える』ことで【神託】をクリアせねばならない。


「いえ、お金は取り合えずいりません」

「……謝罪を受けない、という意味かね?」


「違いますよ。

 代わりに、騎士の方々の練習風景を見たいです」

「なるほど、条件に変えようという訳か」


「です。

 騎士の戦闘訓練なんて普段見れないと思いますし、身になると思って」

「ふむ…」


とギルバートは口元に手をやり考える。

実を言うと領主からの5万カラドはそれ程痛くは無い。

むしろポケットマネーで処理することすら考えている。


追加された騎士の訓練なんかも別に見せても構わない。

そもそも客分扱いなら誰にでも見せられるのだから。

しかし見せたところで意味が無い。

何せ理熾は魔法使い(・・・・)なのだから、騎士を見せても何にもならないはずなのだが。


「その条件は構わないが…。

 リオ君に得な話しでは無いように思うのだが」

「大丈夫だよ。

 こう見えて僕は弓兵でもあるからね」


「どうにも見えないのだが…。

 ならば追加で条件を加えよう。

 報償として5万カラド。

 騎士達の訓練の見学…というか弓か?」

「うん、弓」


「ならばわしが持つ兵力の見学と言うことにしておこうか」

「おぉ…そんなにあけっぴろげで良いの?

 スパイかもしれないよ?」


「いや、スパイなら緊急依頼受けずにあること無いこと煽るだろう」

「それもそうだね」


あの状況下なら少し情報を漏らして、煽ればアルスの中も外も壊滅しかねない。

情報とはそれ程恐ろしい毒なのだから。


「では以上で報償の件は終わりとしよう」


そう言って握手を交わす。

「じゃぁめしだな」と笑い出すギルバートは既に優しく、領主の顔ではなくなっていた。

お読み下さりありがとうございます。

この見学会でようやく理熾が武技を知ることになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ