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神様のおねがい  作者: もやしいため
第五章:休息の時間
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分配の交渉法

置き去り風味になっていた緊急依頼での分配分を回収しに行きます。

しかも最強の交渉者(フィリカ)が参戦です。

対するジンはどう戦うのか…乞うご期待下さい。

急な話だが。


「リオ君、私もあけみやで夕食を頂きたい」


と、夕方まで庭で昼寝(気絶)をしていた理熾にフィリカが言い出した。

理熾的には「食べたいのなら勝手に食べればいいのに」とも思ったが、恐らくそういう意味ではない。

そんな訳で夕食会が開かれることになった。

あけみやは宿屋ではあるが、食事処としても利用できる。

きちんとしたメニューなどは無いが、依頼すれば大概作ってくれるらしい。

値段は時価。

そして材料があれば。


そうして理熾は今ギルドの倉庫に立っている。

材料の調達ではない。

単純に素材の処遇についての打ち合わせである。

早くしなければ買い取り額も出せないし、何より勝手に売られてしまっても困るのだ。


「ジンさん、今朝言ってた素材の話をしに来ました」

「早いな…って、フィリカ…」


後ろにはフィリカが居て、ジンの動きを見守っている。

ジンからすれば見張られているような視線だが仕方ない。

それがフィリカの普通なのだから。


「専属だからな。

 どんな素材が手に入ったのか見定めに来たのだよ」


専属契約(・・・・)を結んでいたらしい。

ちなみに理熾に心当たりは無い。

今更他の店で装備を整えるというのも面倒だし、別にいいのだが。

心の中で「知らなかった…」とつぶやくのだった。


「でだ。

 必要なのはハイオーク、アーチャー2体、オークが…2体か?

 ウッドウルフは別にいらんが…その他、リオ君はどうする?」

「見立て通りで良いんだけど、アーチャーは全部欲しい。

 ウッドウルフも2体追加で。

 この辺はフィリカさんに譲るからお好きにどうぞ」

良い(高級な)ものばかり引き上げるんだな…。

 少しはコチラ(ギルド側)にも残しておいて欲しいものだ」


「んー?

 アーチャーって高いの?」

「まず個体数が少ない。

 それと眼球からレンズが。

 食材としてなら通常のオークとは違った味だな。

 他にも腱とか皮が使えるが…上位のハイオークが居るからそれなりだな」


とフィリカが答えていく。

素材としては上質でも、それ以上が目の前にあるのだから仕方が無い。

そんな上質な素材を理熾やフィリカは恐らく実験材料として処分する。

所有者の意向が全てではあるが、何とも贅沢な使い方である。

売れば結構な額になるはずなのにとジンは隠れて嘆息する。


「ではハイオーク、アーチャーは全部。

 プラスでオークとウッドウルフを2体ずつで間違いないな?」

「構わんが、ジン。

 その2体分は手ずから選りすぐってくれる(・・・・・・・・・)のだろう?」


「……鬼か貴様」

「え?

 どういうこと?」


フィリカの言葉にうめくジンと疑問を浮かべる理熾。

笑みを浮かべながらフィリカが説明する。


「例えばだ。

 これだけあれば良いものも悪いものもあるだろう?

 だから『2体分』と言ったんだよ。

 リオ君ならもう分かるだろう?」


何だか良く分からないがことある毎に試されている感じがする。

少し考えて答えに思い当たる。


「…『最高の良質素材の組み合わせで2体分欲しい』ってこと?」

「くくく…ジン、見てみろ。

 察しがよすぎる子供は困るよな?」

「はぁ…まぁいい。

 わざわざギルドの『鑑定士』まで呼んでやるよ」


と投げやり気味に言う。

恐らく鑑定士を使うのも手間だし資金も掛かるのだろう。

それを言わずに飲み込むというのは報償の件が響いているのだろうか。


「そうですか?

 無理しないでくださいね」


理熾はそう言い置いて倉庫を後にする。

既にとても今更な気もするが。

解体されていたハイオークとアーチャーは全て亜空間に保管済みである。

Lvが急激に上がった上にカルマも押さえられたので、亜空間に入る容量が尋常じゃなく増えたのだ。

そろそろ一杯かなぁとは思うものの、解体済みオークアーチャー12体が入れられるというのは脅威の収納力である。


「フィリカさんも余り無茶言わないでよ」

「リオ君、これは『正当な報酬』だから気にする必要は無い。

 私が交渉で勝ち取った権利だしな?

 有効に使わせてもらっただけさ」


と特に気にもしない。

相変わらずジンへの風当たりが強い気がするのだが、気のせいだろうか。

以前に何かあったのかもしれないし、単にいじりがいがあるだけなのかもしれないと気にしない方向で頭を切り替える。


「さてと。

 あけみや行こっか」

「今夜こそは祝杯だな」


「祝杯って?」

「討伐依頼の祝賀会だよ。

 『小さな英雄』に領主(ギルバート)がささやかながらもてなすらしいぞ」


本日の夕食はどうやら大事らしい。

貸切で場所の提供もしているらしい。

というか、


「聞いてない!」

「それはそうだろう。

 はじめて言ったからな」


慌てる理熾にシレっと返すフィリカ。

いつも対等な会話をしている二人だが、今回ばかりはちゃんと大人と子供っぽい。

あけみやに至る帰路で理熾はワタワタしているし、フィリカは楽しそうに眺めていた。


「うぅ…こういうのホント慣れてない…」

「といっても、ただ食事を取るだけだろう。

 わざわざ貴族式でやるわけでも無いし…というかやるなら領主館に呼ばれるからな」


そう言ってフィリカがあけみやに入っていくのでその後についていく。

ただ単に食事を取るだけなら良いかとも思っていた。

多分今日は豪勢に奢ってくれるのだろう。


 とか考えていたことが僕にもありました。


目の前のテーブルを彩る料理の数々。

そして緊急依頼に携わった討伐者が居る。

全員では無い辺りが今回の依頼の過酷さが垣間見える。


「さて君が今日の主役だぞ?」

「は?」


「約半数を叩き伏せといて何を呆けてるんだ」


フィリカが呆れながら言う。

確かに倒したのは理熾である。

でも戦線を支えたのは理熾ではない。

理熾は横から手柄を奪っただけなのだ。


「冒険者の方々。

 緊急事態とはいえ、余りに性急に戦場へと向かわせたことに謝罪致します。

 そして良くぞアルスを救ってくれたことに大変な感謝を。

 謝罪と、感謝を込めてこの場を設けさせて頂きました。

 今後支払われる報酬は勿論、今夜は食事に酒に、存分に楽しんでいって下さい」


と挨拶を終えて祝賀会が開始される。

挨拶したのは領主側(・・・)の人間だがギルバートではない。

流石に領主自ら出張るのは拙かったのだろう。

気さくに対応してもらっているが、身分的にはコチラが下位なのだから。

そんなことを思っている内にも場は進む。

ぎゃーぎゃーと食堂が騒がしくなっていくも、そういう場なのだから仕方ない。

理熾は出されている食事を片っ端からちびちび食べる。

どれもこれも美味しすぎる。

料理に舌鼓を打っていると急に進行役に引っ張り出されて紹介される。


「今回の依頼の功労者を紹介です。

 助けられた者も多いでしょう。

 ミカナギ・リオ君です。


 彼は先日アルスのギルドマスターが直々にスカウトした(・・・・・・)人材です。

 故に討伐者歴は誰よりも浅いですが、今回の依頼でも十分な実力で応えてくれました」


と注目を集める。

たまったものではない。

理熾はシャイではないが、さりとて目立ちたい訳でもない。

まさかフィリカに言った「認めてもらう」ということがこんな大事に発展するとは思わなかった。


「どうも…」


この場面で一体何を言えばいいのか分からない。

討伐みたいにやるべきことが決まっているならまだしも、この場で何をしろというのだろうか。

もし空気を読めと言うのならせめて前もってこの展開を教えておいて欲しい。

知ってても何かが出来るとは思えないが。


だからといってそんな煽り文句で紹介しなくても良いじゃないかと理熾は思う。

こんな子供が前に出て威張っても全く面白く無い。

逆に問題の火種を撒きかねない。

なのに


「ちなみにアルス最年少のEランクになります」


と司会者はわざわざ火種を撒き散らす。

他人(理熾)の個人情報を燃料に。


「「「おぉぉ!!」」」


とどよめきが辺りを包む。

最年少という言葉と、その最年少が『Eランク相当』というのがどよめきの原因だ。

肩を並べて戦ったとはいえ、理熾の戦いをきちんと見れた者がどれだけいることか。

それだけあの戦場は死力を尽くす必要があっただけだ。

だから『ギルドマスターが認めた』とはいえ、実力の程を確認しあっているのだろう。

小声で話し合うのはやめて欲しい。


 待って、待って!

 勝手に僕の情報出さないでッ!!


と理熾は気が気で無い。

そんなことにも気付かず司会者はノリノリで紹介という名の情報公開(公開処刑)を進めていく。

自分の情報は手札として持っておきたい。

周知してもいいが、それは自分でやるべきだ。

少なくともこんなに軽く扱われていいはずが無い。


「しかも今回の働きd「ストーップッ!!」」


「ガシッ!」と司会者の頭を握る(・・)

流石にDランクへ内定が決まっていることまでバラされては拙い。

理熾のお陰で完勝した訳ではないのだ。

それにこの場に来れなかった者も居るのだから。


「ちょっと黙ってくれるかな?」


と、頭を理熾の高さにまで押さえ込んで耳元で囁く。

幼い顔立ちで、しかも可愛い顔の笑顔で目が冷めているという表情で。

身体能力強化と剛力、肉体強化に魔闘技を携えた理熾の力はハンパではない。

しかも虚弱化(アビリティロスト)もほぼ無効化したので本当にハンパない。

ギリギリと音がしそうなくらいの握力を込めているので一般人である司会者の頭蓋骨がヤバイ。

Eランク…いや、Dランク相当の者の圧力(プレッシャー)に司会者は口をつぐんで顔を縦に振る。

彼にはそれ以外の選択肢が無い。


そんな強行に及んだ為、周りは静まり返っている。

一応周りからは『理熾が制止しただけ』に映っている。

殴っては居ないし、何より子供に頭を掴まれたところで脅威は無い。

だが事態の異常は感じている。

祝賀会でこの空気はとても拙い。

厨房の入り口付近でセリナが口元に手を当てて「あわわ」という感じで慌てている。


 うん、今まさに僕がそんな感じ!


心の中で同意しつつ方法を考える。

切羽詰っていたとはいえ、暴力的(殴ってないので平和かもしれない)に沈黙させたのは拙い気がする。

逆鱗に触れると『こうなるよ』という脅しとしては良いかもしれないが。

理熾に頭を掴まれてプルプルしているヤツ(司会者)は置いておくとしても、この場を収めねばならない。

「よし」と心で区切りを入れ、司会者の頭を手放す。


「皆さん、改めてご紹介頂いた理熾です」


と『自己紹介』を始める。

他人に紹介されて困る情報を流されるよりは遥かにマシである。


「今回の依頼の最中にうろうろさせて貰ってました。

 邪魔に思われたかもしれませんね、すみません。

 それでも、この場に帰ってこれたことを何より嬉しく思っています」


そう言いながら歩き出す。

この場で注目を集めているのは自分だと自覚しながら。

失敗しても良い。

むしろ既に失敗した(黙らせた)のだから、気にするだけ無駄だ。

「やるだけやれば良い」と決めて。


一番近くのテーブルにある酒を手に取り、器に注ぐ。

そうして


「全員、飲み物は足りてますか?」


と問いかける。

皆おなかも減っているだろう。

せっかく来たのだから騒ぎたいだろう。

だったらやることは一つ。


「では、依頼成功を祝して。

 かんぱーい!!

 んじゃ、一杯食べて飲もう!!」


と宴会の再開である。

「こんなのでいいのか」とか思いながらもやってしまったことは仕方ない。

場の空気は最早飲み会の席に早変わりしている。

後は放っておいても場が進むだろう。

「終わりの挨拶はへたっている司会者に丸投げすれば良い」と理熾も楽しみ始める。


ちなみにこの世界のお酒は何歳からでも構わない。

ただし『酒に酔ったから』という言い訳は基本無視される。

理熾は初めてのお酒をチビチビ端っこで飲んで過ごすのだった。

お読み下さりありがとうございます。

あっさりとジンは封殺されてしまいました。

流石フィリカですね。

さて、ひょんなことから祝賀会突入しました。

これで理熾も一躍有名人です。

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